ちょっとそこまで
語源的に使うかどうか悩んだ言葉がありますが、他に言い回しが思いつかなかったので普通に使っちゃいました。
「ユキトにぃ、ちょっといい?」
パン作りの魔法の謎を追いつつ、日常を過ごしていたある日のこと。計算塾を終えた俺に、珍しくラムノが声をかけてきたのだった。
「あぁ。珍しいな、ラムノが俺に声をかけてくるなんて」
「そうかな、そうかも」
「で、何か用か」
「この前の件、思いついたから言おうかと思って」
「この前?」
はてさて、何のことだろうか。ラムノと大きく関わった件といえば、以前のウォーラとの仲直りのために協力してもらったことであるが。
あ、そうか。そういえばあの時に何か形にしてほしいと言われていたっけ。思いついたら伝えると、そういう話になっていたな。ということは。
「何か思いついたのか?」
「まぁね」
そういうラムノは少し楽しそうで、意地悪そうでもあった。そして彼女がそういう風に笑う時は、大体俺が困るようなことを言い出すんだ。
「次の休みってあるでしょ」
「あぁ。またラムノと休みが被ってたっけか」
まだ大人になっていないからという理由もあるのだろう。年を重ねるごとに段々と働く日が増えてはいるのだが、俺たちは親父たちと比べて休みの日が多かった。特にラムノは計算塾の教師としての仕事がメインであるため、塾の開催日でない日は全て休みとなる。代わりに彼女が自主的に仕事を手伝うこともあるが。
「そうそう。で、せっかく休みが被ってるんだからさ」
「あぁ」
「デートしようよ」
……。
……?




