パーティーが始まりました。
眠い中で書いたので誤字あると思います!
申し訳ありません。
「どうでしょうか…」
「凄く素敵よジーク」
不安げなジークにそう言うと、彼は頬を赤くしながら俯いた。
「お嬢様の方が素敵です…」
「本当?…21にもなって張り切ってるみたいでは無い…?」
「お嬢様はご自分を卑下し過ぎています。もっとご自身の魅力に自信を持って下さい」
「ジーク……」
「歳なんて関係ありません。お嬢様はとても素敵な方です」
頬を赤くしてはにかむ彼につられて私の頬も熱を帯びた。
お世辞なのかもしれないけれど、それでも十分に傷ついていた心は満たされるように温かくなった。
愛した人にフラれ続け、弟には嫌われて、正直自信が失くなっていた。
いつからか私の価値は他者から見れば王族である事以外何も無いのだと思うようになっていた。
だからこそお世辞でも凄く嬉しかった。
“私自信”を魅力的だと…素敵だと言ってくれた事が。
「ありがとう」
コーデリアの瞳は熱を帯び、ゆっくりと閉じられた。
美しく微笑む彼女にジークは動悸を激しくさせながら見惚れていた。
「お熱いところ申し訳ないけど、そろそろパーティーが始まるわよ」
二人のやり取りを静観していたリリアンの声に二人は一気に現実に戻された。
「い、急ぎましょう!お嬢様!」
ジークはコーデリアの手を引きパーティー会場の方へ足を向けた。
「あ、待ってジーク」
それを引き止めてコーデリアは改めてリリアンの方を向き、深く頭を下げた。
「お義母様、わたくしの事をいつも気遣って下さりありがとうございます。この御恩は必ずお返しいたします」
「お返しなんて要らないわ。コーデリア様の笑顔がわらわの幸せなのよ」
扇子の上から見える優しい瞳に目頭が熱くなる。
血の繋がりの無い私をこんなにも愛して下さるこの方に私は何を返せるだろうか。
「折角のパーティーだもの。楽しんでね」
「はい、お義母様」
そうしてコーデリアとジークは会場へと向かった。
会場に入ると一気に私たちへ視線が突き刺さった。
ヒシヒシと肌に針が刺さるように感じる視線の量に進む足が止まりそうになったけれど、そのたびにジークが「大丈夫。俺がいますから」と囁いてくれた。
ジーク……一人称が「俺」になってるわ……
横目で彼の顔を覗き込むが、キリッとした顔でずっと前を見ていた。
もしかしたらジークも緊張しているのかも。
そう思うと頑張って私を支えてくれる彼が可愛いく見えて少し肩の力が抜けた。
ジークが隣にいてくれるだけで、凄く安心した。
お父様の挨拶も終わり、パーティー会場には沢山の料理が運び込まれた。
「お嬢様、いくつか私が料理を取って参りますね」
ジークはそう言って料理テーブルの方へ行ってしまった。
さっきまで隣にあった温もりが消えて、何だか寂しくなった。
ジークがそれまで立っていた場所を見ながらコーデリアが眉尻を下げていると、聞き慣れた、でも懐かしい声が聞こえた。
「リア」
呼ばれた方を見ると、ワインを両手に持つ金髪の美青年が立っていた。
「ウィル!」
私は嬉しくなって立ち上がり、彼に駆け寄った。
「おかえりなさいウィル」
「ああ。ただいま」
そう言ってウィルソンは右手に持つワインをコーデリアに渡した。
満面の笑みのコーデリアにウィルソンも目を細めて微笑んだ。
幼馴染みの関係にある二人はとても仲が良かった。
コーデリアにとって心を許せる友は彼だけだった。
なので幼い頃から二人で行動していることが多かった。
一部からは「恋人同士」だと疑われた事もあったが、実際のところ二人には全くそんなものは無かった。
コーデリアがウィルソンを好きにならなかったのは単純に好みでは無かったのもあるが、彼が不特定多数の女性と付き合ったりしているのを見ていたということもある。
泣かされた女性は数知れず…。
「北部はどうだった?とても素晴らしい功績を上げたと聞いたわ」
「早く王都に帰りたかったからね。つまらない攻防はさっさと終わらせたんだよ」
「フフッあなたらしいわね。無駄なことはしないスタイル」
「まあね、それが俺のポリシーだから。……ところでさ……気になってたんだけど、君のパートナーの彼は誰?カシオじゃないよね?」
ウイルが顔をジークの方に向けた。
楽しそうにお皿に料理を盛り付けているのが見えて、コーデリアは自然と笑みが溢れた。
「彼はジークよ。メルが辞めて新しくわたくしの執事になったの」
「執事がエスコート……?カシオはどうしたの?」
その質問に暗い顔をしたコーデリアにウィルソンは全てを察し、顔をしかめた。
「またエリウス殿下か……」
「エリーのか弱いところが好きなんですって…」
「エリウス殿下の何処にか弱さがあるのか甚だ疑問だよ。子供の頃から武術も勉も達人並みに出来る方なのを知らないのかね。あのバカシオは…」
溜め息を吐いた彼のバカシオ発言に笑いそうになったが、我慢した。
あんな人でも好きだったわけだし……。
「……それにしても、今日のドレスは随分と大胆だね。白い肌の君によく似合っていて凄く綺麗だよ」
ウィルが明後日の方を見ながら突然そんな事を言ったので、少し驚いた。
他の貴婦人たちに挨拶も兼ねてそのような事をいつも言っているけど、私にまで言うとは思わなかった。
と言うか、全く違う方を見られなが「綺麗」と言われても信じられないのだけど。
「ありがとう。そうよね大胆過ぎたわよね。これでエスコートも無しにパーティーに来ていたらいい笑い者になってしまっていたわ。だからジークに本当に感謝しているの」
胸に手を当ててそう言うと、ウィルは私に視線を戻した。
「…………ふーん…なんなら昔みたいに俺がエスコートやってあげようか?」
小さい頃パーティーへ行くときはウィルがいつも私のエスコートをしていた。
幼い子供がパーティーへ行くときのエスコートは誰がしてもいいことになっている。
所詮は小さい子供のおままごとの延長で、将来の恋人や結婚などとは結び付かないものだからだ。
不満げな声音のウィルを不思議に思いながら私は首を横に振った。
「あなたはクロエの婚約者でしょう。世間やクロエに変に誤解されては嫌だわ」
「………………そう」
元気の無い返事に不安になり、俯いてしまったウィルの顔を覗き込もうとしたところでジークがお皿を持って帰ってきた。
「お待たせしましたお嬢様!っと、お話し中でしたか。申し訳ありません!」
「大丈夫よ、ありがとうジーク。紹介するわね。彼はウィルソン・グレイ・アーデンロード。クロエの婚約者でわたくしの幼馴染みよ」
「アーデンロード卿ですか。はじめまして、私はコーデリア殿下の執事をしておりますジーク・フロイセンです。お噂はかねがね聞いております。」
気持ちのいい爽やかな笑顔を向けるジークをウィルソンは一瞬鋭く睨み付けた。
その目にビクッと肩を震わせたジークだが次の瞬間には甘い微笑みを浮かべるウィルソンがそこにはいた。
「よろしく♪ジーク」
ジークは握手を求めるウィルソンの手に自身の手を重ねた。
(見間違え……?睨まれたように感じたが……)
ジークは心の中でウィルソンに対して若干の不安を覚えながらも取り敢えず笑って誤魔化した。
次回も続けてパーティーのお話です。