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遠征部隊が帰ってきたらしいです。



ジークが私の執事になって十日が過ぎた。


「お嬢様、北部の遠征隊が帰城するそうです」


私が書類の確認をしていると、香りの良い温かい紅茶を淹れながらジークが言った。



「北部って事はウィルがいる部隊だわ。そっか、終わったのね」


私がニコニコしていると、ジークも微笑んだ。



「お知り合いの方がいらっしゃるんですか?」


「ええ。幼なじみのウィルソンが北部遠征の副隊長をしているのよ」


「ウィルソン様と言いますと、アーデンロード卿ですか?」


「そう。ウィルってば今回の遠征でも活躍したと聴いたから、帰ってきたらまた女の子たちにモテモテになってしまうわね」


私がクスクス笑うと、ジークは「アーデンロード卿と仲がいいのですね」と笑っていたが、何か思い付いたのか笑うのを止めた。




「もしかして、お嬢様とアーデンロード卿は恋人同士なのですか?」


「フフッもうジーク、笑わせないで?ウィルはクロエの婚約者よ?」


「え、ああそうなんですか。お嬢様の机にある手紙の数を見ててっきり恋人なのかと……」


「ウィルのお兄様とは一度政略結婚の話が出た事があったけど、ウィルとは一切そんな話は無かったわね」


「お嬢様はアーデンロード卿が好きだったのですか?」


「だから…フフッジーク!笑わせないでってば!ウィルもわたくしもそんなこと一切思わなかったわ」



私の言葉に「そうですか…」とどこか納得していなさそうな彼の言いたいことは分かる。



これだけの手紙を一人の女性に送っていれば勘違いもされるだろう。


だけど、ウィルは本当に私をそういう目では見ていないのだ。


彼は女性に対して等しく優しい人、言い方を変えればタラしであるため、手紙だって私にだけでなく他の女性にも送っている。



彼の毒牙にかかり悲しい思いをした女性を今まで何人も見てきて、彼に対して自分が恋愛的な感情を抱く事はなかった。


そもそも、私の好みはがっしりとした筋肉だらけの人だからウィルの細身は私のストライクゾーンでは無かったのよね。





「式典とパーティーが催されるそうなのでドレスと小物の準備をしておきますね」


「ええ、有り難うジーク」


「衣装屋を呼んで新しいドレスを作りますね。お色は青でよろしいですか?」


帰城パーティーは基本、部隊の象徴色のドレスや紳士服を身に纏う事になっている。

たまに目立ちたい者などは全く違う色をセレクトして来たりもするが、かなり浮くので私は基本通りに象徴色を毎回着ている。

今回の北部遠征隊の象徴色は青であるため、今回の私のドレスは青である。



「そうね。よろしく」


「はい、畏まりました」




ジークはリリアン様の言った通りとても素晴らしい人材だった。


私が指示しようとした事を先回りして行動してくれて、教養もあるから私の仕事を手伝ったりもしてくれる。


そして並外れた器量の持主で、


執事服の彼を王宮のメイドたちは見るたびに頬を染めていた。


メイドたちから「ジークさんの好みの女性を聞いてください!!」としょっちゅう言われるため、実際に彼に訊ねた事があったが「秘密です」のいってんばりだった。




ジークは謎多き青年である。













数日後、北部の遠征部隊が帰城した。



王族である私たちは玉座のお父様の後ろで、長い階段の下に跪く部隊の隊長とウィルソンを見つめた。



「よくやった。そなたらには金500枚と一月の休養を与える」


「は!ありがたき幸せであります陛下」


「今晩、王城で帰城の祝いの宴をを開く。それまではゆっくり休め」


「はい。失礼いたします」




ウィルは顔を上げて立ち上がると、チラリとこちらを見た。


私の隣にいるクロエを見ているのだと思い、微笑ましくなった。



想い想われる関係は素敵よね。






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