回想ノ夢 富美貴
産まれながらの白い髪と肌が嫌いだった。
誰もが奇妙なものを見る目で、フミキを見ていた。
夜にしか歩けない女。家事もろくにできず、川に洗濯も、山へ狩りにも行けない。
果たせるのは、男に対する女の役割だけ、と口さがない者は言う。
「ふふっ」
フミキは笑った。愛する男の腕の中で。
それでも義経は手を引いてくれた。お前の飯は美味い、お前の布は綺麗だ。褒められたものではないものを、義経は笑ってくれた。
オレよりは立派にできるじゃないか、十分だ、と。
「お前たちはいかにして、婚姻を結ぶのか」
そのように問いかけられたとき、胸が弾んだ。
父は義経を気に入っていたわけではない。倭人は忌むべき相手だと語っていた。フミキ自身もそう思っていた。父は許嫁を用意していたし、村長の娘としての役割を果たせばいいと考えていた。
しかし、フミキは義経に恋をしたのだ。
胸を焼くほどの恋を。
「ええ、ええ! お教えします」
声が弾む。義経の胸に手を当てる。心臓の音が聞こえてくるだけで、自分の鼓動が早くなったように感じられた。
「結ばれる者たちは……まず、男が身につけている小刀を女に渡すのです」
「渡すだけでいいのか?」
「いえ、いえ。鞘には美しい文様を描かなければなりません。男の度量を示すものです。そして女は、小刀を身につけて歩くのです」
「なるほど、そうだったか」
義経は歯切れ悪く言った。どうしてそのようなことを気にしたのか、フミキにはわからなかったが、彼は続けて口を開いた。
「小刀は置いてきてしまった。育った場所から旅だった時からずっと持っていたのだがな」
「まあ。そしたら今すぐ戻って、取ってきてくださる?」
「阿呆を言うな。どれだけ時間がかかると思ってるんだ」
「待ちます」
フミキは言った。冗談であったが、まるきりの嘘をついて上手く笑えるかはわからなかった。
あなたにとっての一番の女になろうとして、こんな嘘をついてしまうなんて、愚かだとわかっていたけれど。
「例え千年だって、待ちます」
行くのなら置いていかないで、と言えたらよかったのに。




