カードケース
「ーーっと。明日葉、起きなーー!」
怠い身体を誰かに揺さぶられる。
明日葉は重たい瞼をゆっくりと開いた。
「やっと起きた。お休みだからっていつまで寝てるの。もう夜の八時よ!」
「え、あれ? あれ!?」
母に言われて窓を見ると外はすでに真っ暗だった。自分は昼からずいぶん寝てしまったらしいと明日葉は驚く。
確かに休みだからベットでダラダラしようとしていたが、眠った覚えなどなかった。なのにどうして?
「あッ!」
明日葉は思い出した。
昼間に再会した二人のせいで自分が気を失ったことを。
「あの二人、私に何したの」
「何ぶつぶつ言ってるのよ。ご飯だから下りてきなさい!」
「はーい」
何処か釈然としないが明日葉はベットから下りた。
そのときに何かが床に落ちる。
「何これ?」
拾ったのは縦長の少し厚めなカードケースらしきもの。月と太陽をモチーフにした良く言われる魔方陣のようなものが意匠として施されていて高級そうな革張りであった。
「この形、もしかして!」
明日葉は折り畳まれたカードケースの蓋を開けて中を覗く。が、中には何も入っていなかった。
「気のせい? じゃないよね」
カードケースは昼間の《贋作の魔女》のカードが縦にピッタリと収まる幅だった。一度そう思うとそれ用のカードケースとしか思えない。
そこで明日葉は、ふと思った。
このカードケースの厚さを考えるに《贋作の魔女》以外のカードもあるのでは?
それならば最近出会った通り魔や剣の少女もカードの可能性がある。
「明日葉、早くしなさーい!」
母に呼ばれて明日葉の思考は遮られた。