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魔女との契約

 昼食を食べ終えた明日葉は二階へ駆け上がり自室のベットにダイブした。

「ただいま~。私の愛しき相棒よ!」

 俯せになったまま枕を取り寄せてベットで丸くなる。

 そのまま夢の世界へ。

「……?」

 ドンドンと何かが叩かれる音がする。

「な~に?」

 母かと思い返事をするが声は返ってこない。

 気のせいかと目を瞑る。

「ん?」

 だが、やはり音が聞こえる。

 気になったが、起き上がるのも億劫だったので明日葉は無視した。

「~~~~~!」

 声がうっすらと聞こえる。何を言っているか分からないが叫んでいる。近所の小学生だろうか?

「起きなさーい!」

「!?」

 明日葉はバッと起き上がった。

 声の方に目を向けるとーー

「あッ!」

 昨日も見た妖精だった。窓ガラスを叩いて何かを言っている。

 明日葉は窓を開けてやった。

「私が呼んだらすぐに起きなさいよ!」

「いや、窓に妖精が居るなんて普通思わないから」

 明日葉は苦笑する。

「あ、昨日はありがとう。助けてくれて。そういえばもう一人は? 青くて長い髪の子」

 妖精の相棒? である謎の少女の姿が見えなかった。

「これよ」

 妖精が示したのは先程から彼女が大事そうに抱えていた一枚のカード。大きさは妖精の身長と同じぐらいでトランプというよりタロットに使われるカードのように長細い。

 どう見たって人ではない。

「よく見なさいよ」

 妖精が飛んでカードが目の前まで来る。

「女の子?」

 カードにはブレザー姿の少女が顔の白い仮面を外して不気味に嗤っている絵が描かれていた。

「確かに髪も青いし、あの子に似てるけど……これカードだよ?」

「そんなの説明しなくても分かるでしょ!」

「でも私が会ったのってーー」

「この子は元々カードなの!」

 苛立つ妖精。だが明日葉からしてみれば意味が不明だ。

「あなたが見たのはこのカードの魔女が具現化した姿なの!」

 いい加減分かれ、とでも言うように妖精は明日葉の額に蹴りを入れる。

「痛いな~もう。それで何しに来たの?」

 妖精の態度に辟易してきた明日葉は話を促す。

「今、この子は眠っているの。だから起こして」

「………………は?」

 カードが人間になるといった次は、そのカードを起こせと来た。

「何で私なの?」

 当たり前の質問に妖精は嘆息する。

「知らないわよ。この子があなたの魔力が必要だって言ったんだもの」

「え? 魔力? 私って魔法使いだったの!?」

 ファンタジー世界の住人に言うのもあれだが、自分に魔力があるなど信じられないし、そんなの二次元の話だと思っていた。

「この子が指名したんだもの。特別な魔力があるんじゃない? 私は感じられないけど」

 "特別"と言う言葉に明日葉の心が踊った。自分にも凄いことが出来るのかもしれない、と。

「でも起こすってどうやって?」

「このカードを手に取って念じるのよ」

「……それだけ?」

「それだけ」

「えー」

 魔法が使えるから格好いい呪文を唱えるのかと思いきや簡単すぎる方法。

 嘆息しながらも明日葉は妖精からカードを受け取る。

「これ何て読むの?」

 カードの絵の下に英語が書かれている。

Forgery(フォージェリー)。贋作という意味よ。それがこの子の名前」

「贋作って偽物ってこと?」

「そうね。本物に似せて作られた物。この子は他の人の魔法を真似る贋作の魔女」

「贋作の魔女……」

 何故だかズキリと胸が痛んだ。まるで進路が決められず未だに自分の道を進めないことを皮肉られたみたいだった。

「ほら、この子を起こしてみて」

 妖精に促されて明日葉はカードを見つめる。

「起きて、贋作の魔女!」

 刹那。

 ブワッと一陣の疾風が部屋を駆け巡り、明日葉は思わず目を瞑った。

 風が数瞬で収まる。

「ふああーあ。おはよう、エル」

 暢気な欠伸に目を開けると謎の少女ーー贋作の魔女がそこに居た。

「やっと起きたのね、寝坊助」

「仕方ないじゃん。私の魔力は少ないんだから。エルの人使いが荒いの」

 明日葉は毎回思う。この二人わざと自分を無視しているんじゃないだろうか。

「え、と。贋作の魔女、だよね?」

「ん? あれ明日葉だっけ? 何で名前知ってるの?」

 明日葉に気付いた贋作の魔女が小首を傾げる。

「説明したのよ。あなたが彼女を選んだんだから」

「あー。じゃあ決まったんだね」

 贋作の魔女が笑顔で手を出す。

「ん? 何これ?」

「握手だよ、握手。ほら手を出して」

 言われた通りに明日葉は贋作の魔女の手を握る。

「はい! 契約成立!」

「え?」

 ニコッと笑う贋作の魔女を最後に明日葉の意識は途絶えた。

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