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幼いときの夢

「あれだけ気をつけなさいって言ったのにどうして事件に巻き込まれるのよ?」

「……ごめんなさい」

 街灯が点き始める頃、車を運転中の母に叱られた明日葉は肩を落とす。

 通り魔が立ち去った後、気付けば剣の少女も妖精と一緒に居た謎の少女も消えていた。明日葉だけが警察に保護されて事情聴取、まあ現場に警察官が居たので簡単なもので済んだが連絡を受けた明日葉の母からしてみたら気が気ではない。すぐに迎えが来て今に至る。

「でも良かったわよ、足の擦り傷だけで。警察から電話がかかってきたとき、お母さんどうにかなりそうだったのよ」

「だからごめんって」

 母が心から心配してくれているのは分かるが、度を過ぎれば辟易していた。

「明日は学校休みなさい」

「ええ!? 友達と遊ぶ約束してるのに!」

「殺されそうになったのに元気ね。でも駄目、諦めなさい。どっちにしろ学校も休校でしょ。学校にも連絡したって警察の人が言ってたから。長いゴールデンウィークだとでも思いなさい」

「そっか。もうゴールデンウィークか。早いな~」

「そういえば進路決まったの?」

「う! その話はまた今度で……」

 明日葉の目が泳ぐ。

「今度って。三年生なのよ。就職か進学かぐらい決めてもらわないと、お母さんも困るわ」

「でもやりたいことないし」

「それならお父さんと同じ研究所を目指せば?」

 明日葉の父は『間道市』を作る理由になった大企業の研究所に勤めている。研究内容を詳しく訊いたことはないが、そうとう頭が良くないと入れないらしい。

「勉強するのは嫌だな~。頭良くないと行けないでしょ?」

「そうね。大学院は卒業しないと」

「じゃあ就職」

「じゃあって。別に良いけど、今の学校じゃ就職に不利じゃない? 検定とか資格持ってないでしょ」

「どっちも無理じゃん!」

「高一のときから明日葉がもっと頑張れば良かったのよ」

 頭を抱える明日葉に母は嘆息する。

「小さい頃みたいに夢はないの?」

「夢? 私何になりたいって言ってた?」

「忘れちゃったの? あんなに言ってたじゃない。"魔法少女"になりたいって」

「うそ!?」

 母の言葉に明日葉は目を丸くする。

「そうよ。日曜の朝にやるアニメ。あれを見て私も『魔法少女になって皆を守る!』って」

「ああ、そんなこと言ってたかもしれない。でも私だって高校生だよ。魔法少女って」

「冗談よ。でも参考にはなるんじゃない?」

「正義の味方ってこと?」

「そうね。警察官とか、裁判官とか」

「どっちも頭良くないと駄目じゃん! 今からじゃ無理だよ!」

「まったく、明日葉は。それなら本当に魔法少女になるしかないんじゃないの?」

「それは百パーセントあり得ない!」


 この言葉がフラグになることを明日葉はまだ知らない。

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