衝撃過ぎる出会い
「ん。ん?」
まだふらつく頭をもたげる。
部屋は暗く、外の街灯の灯りだけが光源だった。
「寝過ぎちゃったな~。今何時だろ? お母さんが呼びに来ないってことはそんなに遅くないのかな?」
明日葉はベットの傍に置いた学校鞄に手を突っ込み、スマホを探す。
「ん?」
ふと、何か気配を感じた。
窓に目を移す。
窓には何かが映っている。
いや、何かが明日葉の方に飛んできている!
「きゃ!」
咄嗟に頭を抱えて身体を屈める明日葉。
刹那、破砕音と共に何かが窓ガラスを割って入ってきた。
「な、何なの?」
小さな破片が身体に当たったが明日葉は無事だった。
顔を上げると明日葉の目の前で誰かが引っくり返っていた。
誰かと言うぐらいだから人だ。
青く長い髪に魔女のとんがり帽子。
服装は何処のかは分からないがブレザーにスカート姿。
明日葉と同じ女子校生に見える。
「し、死んでるの?」
倒れている謎の少女はピクリともしない。
「ちょっと何やってるのよ!?」
ガラスを失った窓から飛んできたのは驚きの姿。
「よ、妖精!?」
人の掌ぐらいの大きさしかない羽の生えたファンタジー世界の住人が明日葉の目の前に居た。
「うっさい」
謎の少女がガバリと身体を起こす。
「あんなに強いなんて聴いてないんですけど!? 情報と違うじゃん!」
起きて早々、妖精に反駁する。
「仕方ないでしょ!? 私だって全ての能力を知ってるわけじゃないの!」
妖精も謎の少女を睨み返す。
「あんなのに勝てるわけないでしょ!? 私の能力知ってるでしょ!?」
「頑張って魔法を使いなさいよ! 相手の魔法を真似するのが、あなたの能力でしょ!」
「肉弾戦で来られてどうしろって言うのよ!?」
「あの~」
「「?」」
明日葉が声をかけると喧嘩していた二人が明日葉に気付く。
「誰?」
「いやいや、私の台詞なんですけど」
謎の少女に明日葉は苦笑を返す。
「いきなり部屋に突っ込んできて喧嘩まで始められて。私パニックなんですけど」
「そのわりには落ち着いているように見えるけど」
「怖いより驚きがうわまわってて。えと、明日葉です。佐々木 明日葉。あなたたちは?」
「私? 私はねーー」
「明日葉、大丈夫!?」
ドダドダと階段を駆け上がってくる音が聞こえる。
ガラスが割れた音がなったのだ。明日葉の母が気付かないわけがない。
「不味いわね。これ以上、只人に私たちに姿を見られるわけにはいかないわ。逃げるわよ」
「りょーかい」
妖精の言葉に謎の少女は窓枠でしゃがむ。
「またね」
その言葉を明日葉に残して謎の少女は二階から飛び降りた。
咄嗟に明日葉は窓から顔を出すが、すでに二人の姿は消えていた。
「何だったのいったい?」