序章1 『神様と出会い』
目覚めたら、そこは見たこともないファンタジー丸出しの異世界だった……なんて夢物語が実際に起こるなんてありえない……そう思っていた。
その日はいつものように、マンションの部屋の収納付きベッドの上で目覚めた。薄暗い部屋はうっすらとオレンジ色の淡い光で照らされており、寝ぼけている頭を少し起こし、目をベランダの窓に向けると、閉じているカーテンの隙間から、うっすらと朝日が差し込んでいた。
頭を枕の上に戻して視線を天井にやると、そこにあるのはいつもの見慣れた天井……いつも通りの目覚めだ。しかし、目覚めばかりの身体は気怠く、右や左に寝返りをうつ。まだ思考が鈍くて、完全に起きようという気持ちになるには、まだ時間が掛かりそうだった。
そんな状態でウトウトしていると、枕元に置いていたスマホからお気に入りの音楽が流れていることに気付く。目覚ましにセットしている音楽だ。その音はかなり小さく、先ほどまで気付かなかった程、目覚ましとして本当に機能しているのか怪しい音量だった。
なにかの情報番組で朝健やかに目覚めるのは大音量の音ではなく、ごく僅かな音量で目覚めるほうが良いとやっていた為だ。不思議とそれでも目覚めるもので、テレビの情報番組も侮りがたしと思い、ここ最近は目覚ましの音量は、最低音量に設定している。
しかし、目覚ましが鳴ったということは、時間はセットした八時半ということだ。長寝すると偏頭痛に襲われることが多いので、仕方なく気怠い身体を叱咤して起こし、ベッドから降りて、ベランダの窓に掛かっているカーテンを開く。
朝日が部屋に差し込んで、晴れ渡った青空が目に映る。今日は晴天だ。まとめたカーテンを窓の脇にある房掛けに束ね、踵を返して部屋のドアに向かい、開いて洗面所に移動する。
洗面所の引き戸を引いて入り、正面にある洗面台の鏡を見ると、寝癖が付いた頭に半開きの眼、そして無精ひげを生やした冴えない顔をした中年男が、鏡に映っていた……老けたな~という感想が頭に浮かぶ。だらしなく欠伸した後、冷たい水道水で顔を洗って拭き、歯を磨く。
サッパリした気分で洗面所を出た後、台所の下の戸棚の中から食パンの袋を取り出し、冷蔵庫からわさびマヨネーズと溶けるスライスチーズを一枚。それと野菜ジュースと乳酸菌飲料を取り出した。
まず食パンの中央に少し多めにわさびマヨネーズを絞り出す。それをパンに均等に広げたら、その上にスライスチーズをのせて部屋に戻り、食器棚の上にあるオーブントースターに入れてタイマーをセットした。
台所に戻り、野菜ジュースを愛用のコップに注いで、乳酸菌飲料と共に持って部屋に移動する。そして、ベッド脇にある折り畳み式のテーブルの上に置いた。
食パンが焼きあがるまでに着替えようと思い、クローゼットを開いて私服を取り出して着替える。着替え終わったタイミングで、チーンという小気味よいオーブントースターのタイマー音が鳴り、オーブントースター下の戸棚から皿を一枚取り出して、焼きあがったワサビマヨチーズトーストを乗せた。
それを持ってベッドの上に腰かけ、簡易テーブルを上に乗せた野菜ジュースが入ったコップをこかさないよう少し引き寄せて、皿をその上に置いた。ワサビマヨチーズトーストを手に取り、アチチッと呟きながら齧り付く。サクッと小気味よい音がして、齧り取ったトーストを口の中で咀嚼する。ツンと鼻に来るワサビの風味と共にチーズとマヨネーズの味が口の中に広がる。
いつも通りの味だ。いつも通りの朝、いつも通りの朝食、変わり映えのしない、一日の始まりだ。
朝食を食べ終え、後片付けを行ってテレビをつける。映し出されたのは、よくある旅番組だった。それをベッドに腰かけながら、ボーッと眺める。旅番組では、タレントが見知らぬ街の見知らぬ景色を見て、感慨に浸っていた。
「見知らぬ街の見知らぬ景色、か……」
ふと呟き、頭の中で同じように見知らぬ景色に昔焦がれたことがあったような気がしてくる。あれはいつだっただろうか……と思い出そうとするが、記憶は靄が掛かったようにハッキリしなかった。一向に思い出せないので思い出すのを止め、今日はなにをするか考える。
今日は土曜日で休日だ。しかし、外に出かける予定はない。最近、仕事に追われ、休日は気力が湧かない状態が続いていて、外出する気持ちにはなれなかった。よって、ボーとテレビを見たり、漫画を読んだりして、気が付いたら日が落ちている……というのが最近の休日の過ごし方になっている。
流石にこのままでは駄目だな~……と思いつつも、ベッドに寝転がりゴロゴロして動こうとはしない。しかし、ふと食パンを今日の朝に食べきったことを思い出す。買い出しに行かないといけない。
面倒くさいな~……と心の中で愚痴りつつ、ベッドから起き上がってテレビを消し、軽く身支度を整えて、スマホと財布、部屋の鍵を携え玄関に向かった。玄関のドアの鍵を開け、把手を掴みながら押し開き、外に一歩踏み出すが、その態勢で固まった。
「は?」
目の前には、いつものマンションの廊下ではなく、目が眩むような蒼天の空と、地平線まで緑に染まった草原が広がっていた。
「…………」
何故か、いつも通りの日常は、玄関から先には存在していなかった。しばらく絶句した後、ゆっくりとドアを閉める。
「……いやいやいや……そんなまさか……」
目の前で起こったことが信じられず、再びドアを開く。そこには先ほどと同じ、草原が広がっていた。再びドアを閉じる。
「……はぁ~……マジかよ……」
力が抜けるようにその場にしゃがみ込み、頭を抱えた。こんなことはあり得ない、起こるはずがないと……そう思っていたんだ。もちろん扉を開ければ、そこは見知らぬ世界でした、なんていうのは妄想したことがあるし、夢に見たこともある。だからと言って、現実に起こる訳がないというのが常識だった。そんな常識がなんの前触れもなく、いきなり砕け散った。
「……落ち着け~……冷静になれ~……そうだ、ベランダ!」
慌てて立ち上がり、靴を脱いで、ベランダに向かった。朝にカーテンを開けた時を思い出したのだ。確かその時、窓の外に広がっていたのは、見慣れた空と外の風景だったはずだ。
部屋に戻り、ベランダの窓に目を向けると、そこには朝見たいつも通りの風景があった。
「……朝と同じだ」
思わず呟く。窓に寄って外を見つめると、近くの公園の道を人がチラホラ歩いているのが見える。
「……」
踵を返して再び玄関に向かい、ドアの前に立って深呼吸する。
「フゥ~……よし」
小さくつぶやき、意を決してドアを押し開くと、そこには最初に見た通り、広大な草原の海が広がり、緩やかな風が吹きつけてきた。三度ドアを閉じる。
「訳わかんね~……なんでドアの向こう側だけ、こんなことになってんだよ~!」
その場にしゃがみ込み、混乱した思考が言葉になって飛び出す。
「あれか? どこ〇もドア的なあれか? なんで俺のマンションの部屋のドアがどこ〇もドアになってんだよ! どうすりゃ受け止められんだよ、こんな異常事態!! どこ〇もドアと言えば、の〇太ってどうやって、未来から来たネ〇型ロ〇ットなんて存在受け入れたんだ? 確か机の引き出しから、いきなり出てきたんだよな? あんなのがいきなり机の引き出しから出てくるとか怖すぎだろ! どうやってそんな異常事態を受け止めたんだ!? 教えてくれ、の〇太君!!」
だいぶ混乱してしまい、かなり支離滅裂な言葉が延々と出てきたが、おかげで多少落ち着いて来たので、立ち上がる。
「……とにかく、現実を受け止めよう。俺の部屋のドアはなんだかよく分からん場所に繋がった。夢じゃなく現実だ。とりあえず、いきなり放り出されたとかじゃないし、身の危険は今の所は無いはずだ」
随分と自分に都合のいい解釈だったが、現状を言葉にすると気持ちが多少は落ち着いた。
とりあえず、訳の分からない場所にドアが繋がっているのが怖かったので、ドアの鍵を閉め、ドアガードも掛けて部屋に戻った。ベッドにドスッと腰を掛け、そのまま寝そべる。
「……どうすりゃいいんだ、これ……」
途方に暮れて言葉を発する。多少落ち着いたものの、この先どう行動すればいいのか、考えが纏まらない。
ドアの外に広がっているのは、広大な見たこともない草原だ。どこなのか見当もつかないし、地球なのかも不明。常識ではありえない現象で繋がっている場所だ。安易に地球だなんて、楽観視は出来ない。ましてや怖すぎて外に出て確かめるなんて、容易に出来る訳がない。
しばらくベッドで寝そべっていたが、ふと思いついて起き上がる。
「ベランダからなら、外に出られるか?」
外の風景は、いつも通りの景色だったのだ。少なくともベランダの外は正常だ。マンションの五階だが、非常階段を使えばなんとか脱出は出来るか? と思い立ち、すぐにベッドから降りて窓に向かって鍵を開けようとするが、何故か鍵はビクともしなかった。
「え!? 嘘だろ!!?」
鍵を捻って開けようとするが、全く動かない。しかも、ただ動かないのではない。ピクリとも動かないのだ。
思わず窓自体を揺らすが、揺らすことすら出来ていない。まるで空間に固定されてしまったかのように、窓は全く動かない状態となっていた。
「やばいやばいやばい……完全に閉じ込められているじゃないか!」
異常が起こっているのは玄関だけだと思っていたが、全然違った。唯一の脱出口だと思われた窓も、訳の分からない状態で完全に塞がれていた。
身体を恐怖が遅い、背筋が少し震える。頭は混乱して、どうすればいいのかパニックになり掛ける。
とにかく落ち着けと頭の中で何度も唱え続け、激しくなる動悸を抑えようと、心臓部分の服をギュッと右手で抑える。
暫くそうしていると、多少落ち着いて来たのか助けを呼ばなければという考えが脳裏に浮上してくる。
とにかく、内側からは脱出出来ない状態だ。だが、外からなら可能性もあるかも知れないと思い、尻ポケットからスマホを取り出す。
そして待ち受け画面を見て、ふと上部のアンテナ表示に目が行き、愕然とする。
「おいおい……勘弁してくれよ……なんで圏外なんだよ!?」
画面上部の部分には圏外の表示がされており、おまけにWiFiも繋がっていない状態になっていた。
慌ててPCを起動するが、こっちも完全に繋がっていない状態だった。
「やばい……詰んだか?」
脱出口を塞がれ、おまけに通信まで何故か遮断されてしまって外に助けも呼べない……破れかぶれで窓をぶち破るか? なんていう乱暴な考えが浮かび、いきなり行くのは怖いので窓に寄って少し強めに叩いてみる。
だが、こちらの衝撃をまるで無かったかのように窓は衝撃を弾き返し、ピクリとも動くことは無かった。
「ハハハ……」
乾いた笑いが口から漏れ出る。そして、ハァ~……と深い溜息を吐いた俺は、身体の力が抜けてベッドの上に仰向けでドサッと倒れた。
どうする……どうする……と頭の中で同じ問答が堂々巡りをする。大声で叫んで助けを呼ぶか? ……いや、駄目だろう。なんとなくだが、そんなことをしても無駄のような気がした。
通信まで遮断されている状態なのだ。どうやっているのかは知らないが、外部への干渉を完全に防ごうとする意志が感じられる。そんなとんでもないことを出来る奴が、防音対策をしてないなんて片手落ちだ。
……だが、火災報知器ならどうだろうか? 後々の説明を考えるとあまり気乗りのしない方法だが、いくら防音対策をしたところでセンサーが一度起動してしまえば、連動して消防かセキュリティー会社、もしくは管理人室のいずれかに必ず連絡が行くはず。防音したところでこれを防ぐのは難しいのでは……。
通信を遮断されているから、それも防がれている可能性は高いが、藁にも縋る思いでベッドから起き上がり、台所でマッチを持って来る。
そして、火災報知器の下に椅子を持って来てその上に乗り、手に持ったマッチに火を付けて、南無参と念じつつ近づける。
だが、火災報知器はうんともすんとも言わなかった。まさか壊されたと思ったが、良く見てみると火災報知器の周りになにやら見えない壁のような物があるようで、火が火災報知機に届く前に遮られていた。その証拠に焼け焦げる跡すらつかない……。
マッチの火を消して、その見えない壁をガンガンと叩いてみると、窓の時と同じような感覚が返ってくるだけだった。
「クソッ!!」
思わず悪態を付いて椅子から降り、虚しく煙が立ち上るマッチを流し台に投げ捨てて、ベッドに戻って俯せに倒れ込む。
暫くそうしていたお陰でイラついた頭も多少落ち着いて来た。そして、もはや結論は出ていると、俺の心はある種の居直った気持ちになってくる。
何者の仕業か知らないが、是が非でもあのドアの向こう側に俺を行かせたいらしい。その為に、あらゆる手を尽くして完全に逃げ道を塞がれてしまっている。
その何者かの意図に乗せられるのは癪だが、あのドアを直接調べるしかない。あのドアをまた開けるのは怖いが……。
「……確かめるか」
現状を打開するにはそれしかないと、ベッドから起き上がり、意を決して玄関のドアに向かう。
玄関に辿り着いた後、ドアガードを外して鍵を捻って開ける。そして、ドアの前で深呼吸して把手に手を掛け、慎重に押し開いた。
ガチャッと聞きなれた音と共にゆっくりとドアが開き、目の前に広大な草原が広がった。
「……落ち着いて見ると、凄く綺麗だな」
先ほどまでは頭が混乱していたので、景色を見ても感想を抱く余裕はなかったが、多少落ち着いた今なら、目に映る景色の凄さに気づく。
目が眩みそうな緑だ。地平線まで続く緑の絨毯。こんな景色は、日本でもそう見られないのではないだろうか……それほど広く雄大な草原だった。
「見惚れている場合じゃないか……」
外には出ず、顔だけ外に出して様子を窺う。見た限り、草原が広がるだけで、獣などの生き物はいないようだ。
「……出ても大丈夫そうだな」
警戒しつつ、ドアの把手に手を掛けたまま、ドアの外に一歩踏み出す。草を踏みしめる感触を感じながら、一歩、二歩と進み、身体が完全に外に出るまで進んだ。
その間も把手からは手を放していない。外にいる状態でドアが閉まったら、ドアそのものが消えてしまう可能性がないとは言えないからだ。把手を握りながら、慎重に周りを観察し、ドアの状態を確認する。
「マジかよ……これじゃ、本当にどこ〇もドアじゃないか……」
そこにはマンションのドアだけが立っていた。ドアの後ろにはなにもない。同じような草原が広がるだけだ。傍から見たらかなり異様な光景だ。
「ハァ~……訳が分からん……」
目の前の異常なドアの状態に、理解が追い付かず途方に暮れる。
「そう? 君の世界ではポピュラーだって、聞いたんだけど?」
「ウワァァァァーーーー!!!」
突然後ろから声が聞こえ、飛び上がらんばかりに驚いて、慌ててドアの把手を引き寄せながら部屋に逃げ込む。
「えぇ!? ちょ、ちょっと待」
なにやら引き留めるような声が聞こえたが、それどころではない。
バタンッ! という大きな音と共にドアを閉め、大慌てで鍵を捻ってドアガードを掛けた。ハァ、ハァと荒い呼吸をしながら、ドアに背を預ける。
「ビ、ビビビックリした! なんだかよく分からんが、誰かいた!?」
心臓の音が五月蠅いほど激しく鼓動している。必死に落ち着こうと深く呼吸しながら、先ほどのことを思い出す。
確かに声だった。それもまだ声変わりしていない、まるで子どものような声。しかも、日本語じゃなかったか? 内容は突然だったから、ビックリして飛んでしまったが確かに日本語だった。つまり、日本人? ……いや、チラッと見えたが金髪のようなものが見えたような……。
ドアを見つめるが変化はない。どうやら謎の人物は、強引にドアを破ってくるような乱暴者ではないらしい。
もう一度開けてみるか? 心拍も落ち着いてきた頃、少しばかりの好奇心が顔を覗かせる。
あくまで勘だが、おそらく先ほどの声の主は十中八九、このドアの現象の関係者だ。ということは、今の現状を解決出来る唯一の存在かもしれない。
どの道、このままじゃ埒が明かない。勇気を出して接触してみるか? そう思い、ドアガードはそのままで鍵を開け、恐る恐るドアを開けた。
ちょうど目玉一つ分ぐらいの隙間を開けて慎重に覗き、ふと視線を下にやると隙間を覗くような形で目玉が一つ、同じくこちらを覗いており、目が合う。
「あ! 良かった。さっきは驚かしてごめ」
パタンッという軽い音をたて、すぐさまドアを閉じた。
「こえーよ! なんだよ今の、なに覗いてんだよ!!」
再び心臓がバクバクと脈打つ。ビクビクし過ぎだと思われるだろうが、しょうがない。だって、得体のしれない相手が外にいる状態でドアを開けるだけでも怖いのに、隙間から目玉が覗いていて目が合うとかチョー怖いに決まっている。しかも、ここは玄関でちょっと薄暗いのだ。
とはいえ、よくよく考えればシチュエーションは想像が付く。おそらく相手もドア前にいて、ドアが開いたので同じように中を覗きこもうとした際に、たまたまタイミングが悪く目が合ってしまっただけなのだろう。
声はやっぱり子どものようで、喋っていた言葉も日本語だった。それによくよく思い返すと綺麗な目をしていた。少し幼さがある整った目元をしていて、眉も綺麗な形をしており、瞳の色は鮮やかな青色をしていた。金髪碧眼……外人の子どもだろうか?
「フゥ~……」
ドアの前で深く息を吐きだし、再びドアを押し開いてドアガードで止まる一杯までドアを開く。
そこには誰もおらず、覗き込む目もなかった……いや、視線を外側に向けると、少し離れた所に綺麗な金髪の頭で、背を向けて体育座りをしている小さな子どもの姿が見えた。ドアが開いた音が聞こえたのか、ふと首が少し回ってチラリと目だけを向ける。
ちょっと涙目で、拗ねたような目と俺の目が合うが、プイッと目を逸らしてしまう。その背中からは明らかに、傷ついています、というオーラが出ていた。
なんだか居たたまれなくなって、ドアを閉じてドアガードを外し、意を決して大きくドアを開いた。そして視線の先にある体育座りをした、金髪の子どもの背中に恐る恐る声を掛ける。
「えーと……その、なんだ……どちら様ですか?」
我ながら素っ頓狂なことを言っている自覚はあったが、どう声を掛ければいいのか分からなかった。
俺の言葉を聞いてピクリと反応し、しばらくしてから体育座りを止め、その場にスクッと立ち上がった。そして、パンパンとお尻の埃を払い、こちらを向く。
そこにいたのは金髪碧眼の少年だった。中性的な顔立ちで、整った綺麗な顔の美少年だ。
服装は、白の上下で、袖口や襟元は黒く、所々にシンプルな金の装飾が施された制服のような格好だ。身長は俺のみぞおちぐらいの高さで、俺が一七〇センチぐらいだから、一四〇センチ前後といったところか。
少年は少し緊張した面持ちで居住まいを整え、礼儀正しく挨拶をした。
「始めまして、ボクはシオンと言います。貴方のお名前を、聞いてもよろしいでしょうか?」
「……俺の名前は……弥上……弥上 斗真だ」
「ヤガミ トウマ……トウマだね。よろしく、トウマ!」
そう言い、金髪碧眼の少年は男の俺ですら見惚れる綺麗な笑顔を浮かべた。それが俺とシオンの、初めての出会いだった。




