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06 魔王城建築



 現在、魔王城は解体、新しく建築中。私達は近くにご立派なログハウス的な家を作ってもらい、そこで仮住まい中。


 美味しいご飯と酒を無限に取り出せる私は、ドワーフ、エルフの両方に女神のように崇められています。ちょいちょい代表者がやってきては、何か不便がないか聞き、お世話をさせてください、と平伏される。


 わかるよ。


 美味い飯って最強だよね。うん。


 でも、君たちが忠誠を尽くすのは魔王様ですってのはちゃんと教えた。


 いや、だって、これもそれも魔王様のためだもんねぇ? まぁ? 延いては自分のためですが。建前って大事だからね! うん。


 彼らは爺の言う通り、美的センスが振りきってた。簡易で作ってくれたはずのログハウスもめちゃくちゃ綺麗。


 これ、日本とかで泊まろうとしたら、1泊何万ってするのかな? 旅行が趣味だった同期とかに聞けばわかるんだろうか?


 そんな場所に、魔王城から持ち出した家具が置いてあり、微妙にどうかな、という見た目になっている。いや、魔王城の家具はそこそこ良いセンスだと思うよ? ちょっと重々しいだけで! これは先代の趣味だったらしい。爺の美的センス、やばかったからな。


 今代は、この重々しい家具と、もう少し華やかな家具が、上手くマッチした感じの城にしたいなー。しかし残念! 私に家に関する美的センスはない! 家具に関しては無駄を削ぎ落せ派だ。そんなわけで、エルフとドワーフってすごいと思う。


 光と水と自然がふんだんに取り込まれた、美しすぎる城にしてください、といういい加減なオーダーだったんだけど、めっちゃ頑張ってくれてる。


 まず、白塗りの壁や、金の装飾。あ、この辺の材料は、爺がちまちま毎日創って、ドワーフ達が加工してる。それをエルフが組み合わせてた。


 すごいなー。うん。


 で、窓とか扉とかは高く広いけど、女性でも開けられるように軽めに。いや、多分、扉あけるの、主に私だからね? 魔王様、メイドとかいないし。爺が爺の城から連れてくるって言ってたけど、丁重にお断りした。いや、だって爺のとこのだよ? 美的センスまじで怖い。魔王様がいきなり可笑しな方にいったら困る。ある程度育って、自分の趣味でいくならいいけどさぁ……。いきなりアブノーマル系はちょっと……。


 心の中で勝手に爺をこき下ろす。


 と、ドワーフとエルフが一人ずつやってきた。


「おう、ちょっといいか!」

「リナ様、お忙しいところ大変申し訳ありません、少々お時間の程、よろしいでしょうか?」


 うむ。ドワーフはあれだなぁ……。魔王様の近くにはエルフを置くべきかも。


 いやいやいや。魔王様がもし体育会系に育った場合はドワーフが側仕えの方がいいのか?


 私の内なる葛藤はさておき、にこりと笑って対応する。


「どうなさいました?」

「おう! やっぱ人手がたんねぇな!」

「オーガやオークのような力の強い人手が欲しいのです。これだけ大きな建造物。さらに、城下町の作成、となりますと、やはり力自慢の作業員がいないと、少々難しくなってしまいまして」


 あ、やっぱり?


 いや、わかってたよ? 畑違いの私でもさ。いかにドワーフ達が見た目以上のパワーだったとしても、パワー系のデカい作業員足りないんじゃないかなって。


 エルフとか、身長170㎝くらいの細身美形だけど、丸太とか一人で担ぐんだよね。いや、もう、あれにはびびったよ。化け物かって思って、化け物だったって思い出したよ。あ、人間じゃないって意味だからね? 悪い意味じゃないよ?


 しっかしなぁ……オーガとかオークとか言われてもわからんわい。なんじゃそりゃ。


 爺ヘルプ!!


 チラッと爺を見ると、爺が嬉しそうに寄ってきた。


 あ、ヤな予感。


「ならば儂の配下の者を呼ぼう。なに、あ奴らは竜人や竜じゃ。力が足らぬことはあるまいて」

「げぇええ?! りゅ、竜だと?! 断るぞ! あいつらは破壊の代名詞じゃないか!」

「せ、せっかくのお言葉ですが……」


 真っ青になって断る2人。


 あ、やっぱりそんなかんじ?


 しかし爺しょぼーん。可哀そう。


「デルフォリアス宰相閣下」

「うむ、なんじゃ?」

「宰相閣下の配下の者は建築作業、できるのですか?」

「ふむ……そういえばさせたことはないのぉ……」

「簡単な作業ならどうでしょうか?」

「り、リナ様! ちょ、ちょっとよろしいでしょうか?」


 おそるおそる声をかけてくるエルフに、部屋の隅までつれていかれた。


 なんやねん。


「リナ様、竜にだけは作業させてはいけません! あいつらは、本当に壊すことしかできないのです! 善意で全壊にするのです!」


 善意で全壊?! 何それ?!


 ぎょっとして目を見開くが、本気で嫌そうなエルフの顔がそこにはあった。


 うーむ……足場組みぐらいはと思ったけど……そんなの怖すぎるな。


「わかりました。では、オークかオーガを配下になるよう説得にいきます。どちらのほうが器用で力があるのですか?」

「可能ならまずはオークでしょうか。アレは愚鈍ですが、図体も大きく、強者の命令に従って動くのが得意です。オーガは、我々エルフくらいのサイズですが、鬼なので力はありますが、どちらかというと職人よりも兵士というほうが正しいのです」


 ふむふむ。兵士兼パワー要員か、命令をしやすい雑兵かってことだな?


 じゃぁとりあえずオークか? オークってなんだかわからないけど、まぁ爺に聞けばいいか。


 とりあえず、作業員も兵士もほしいよな? 今攻め込まれたら……爺はいるけど、エルフやドワーフ達って戦えなさそうな外見だしね。


「わかりました。それではデルフォリアス宰相閣下と相談し、早急にその二種族を配下にしてきます」

「よろしくお願いします!」


 頷けばエルフとドワーフはほっとした面持ちで出て行った。


 ……そんなに爺配下の竜たちに手伝われるの嫌だったんかい。


 爺たちどれだけ破壊魔なんだ? 今のところ爺に破壊魔的な要素はないんだけど……。まぁいっか。とりあえず、オークやオーガについて話を聞こう。


「オーガは人のような見た目に2本の角が生えた鬼じゃな。エルフのような細身だからといって侮るなよ。あやつらはあれでいて力が強い。まぁ、儂ら竜人や竜の眷属に比べれば紙きれのような存在じゃがなぁ。オークは2m以上の身長をもつ筋肉だるまで、頭は豚じゃな。オーガよりも随分弱いが、力はある。力を使いこなす頭がないだけじゃな」


 振り返っただけで説明、ありがとうございます。


 今のは頭の中を読んだわけじゃなさそうだ。


「近頃おぬしの言いたいことは大分わかるようになったぞい」


 得意げに胸をはるとか可愛いな、おい。


 まぁ、それだけ爺を頼りにしているからかな。


 しかしなぁ……オークいやだな。今まではまだ人間に近いのが多かったけど……。豚頭かぁ……。


 爺は服装と美的センスがおかしいだけで、ダンディな近所の頑固おやじ風だし(頭が竜になったことあるけど)。


 エルフは耳が長いだけの超絶美形集団なだけだし(大食らいのわりと残念美形集団だけど)。


 ドワーフは大人でも120㎝と小さいけど、それ以外はずんぐりむっくりなだけだし(毛むくじゃら集団だけど)。


 完全に人じゃないのって、魔王様(下半身)くらいだったんだよねぇー……。魔王様は下半身だけど、オークは頭でしょう? 隠しようないよね? うぉ、こえぇ……。オーク仲間に入れると一気にファンタジー感が強くなるわけだ。人間以外のいる世界ってことになるわけだ。まじこえぇえ。


 いやいや、落ち着け私。


 全ては私の幸せライフの為。ある意味逆光源氏計画のため。自分好みの可愛いお子様を作成し、可愛さに癒されながら、美味いご飯食べて、酒飲んで、誰からも文句言われず幸せに生活するため……。


 よし、大丈夫。怖いとかないない。自分が幸せになるためですから!


 だいたい日本でだって、妖怪ストーカー厚塗りばばぁ共を相手にしてたじゃないか! あれ? 厚塗りの妖怪でばばぁだったら白粉ばばぁかな? まぁいいや。兎に角! こっちには爺(現在最強と豪語してた)がいるから、大丈夫! もし襲われそうになったら爺がなんとかしてくれるはず!


 あれ? 暴力で解決しそうなら、爺一人で行ってもらえばよくない?


「儂が一人で行ったら殲滅して帰ってくることになるわい」


 爺怖え!


 何さらっと大量殺戮予告してるの?!


 あともう、思考読むのは諦めたよ! 突っ込むのもめんどくさい!


「わたくしがご一緒して、どうこうなるとは思えませんが……」

「なぁに。儂がちょっとボコって、大人しくなったところで、お主の料理でも食べさせてやれば、言う事もきくじゃろうて」


 ……サルかな?


 どこぞのサル回しのサルとかも、上下関係をしっかり示して、ご褒美(食べ物)を与えて信頼関係をつくるとかなんとか聞いたことがあるようなないような?


 基本的に動物の集まりみたいなものかな?


 つまり、魔王様とゆかいな仲間達系なのかな?


 猛獣使いってやつかな……。なんか、魔王様とかいう厳つい名前なのに、微妙に格好悪いポジションだな……。


 まぁいいや。うん。考えるのはよそう。


 色々考えつつどっちから行くか爺に相談したら、オーガが先が良いと言われたので、オーガ用のご飯を用意する。


 えーっと、どうしようかな? 魔族は基本、肉食。オーガは鬼だから、当然肉を好むけど、彼らは魚とかも好きらしい。汁物なんかもいいとか。


 ふむ……。


 和食、かな?


 鯛飯のおにぎり、金目鯛の煮つけ、鳥つくねのすまし汁。これだけじゃ肉分が足りないね。肉じゃが、豚の角煮、牛筋とこんにゃくの煮つけ。こんなものでいいかな?


 小さなお釜が1つ、お1人様用鍋が5個。これで十分。何しろここからいくら取り出してもなくならないからね。


 あとは、向こうで使う食器。これはドワーフ達が大量にこさえてくれているから大丈夫でしょう。足りなかったら……その時はその時だ!


「準備はできたかの?」


 爺が自分の食器を荷物に混ぜながらきいてくる。


 こいつ……実は食いしん坊だろ?!


 えー……あの頑固爺みたいな見た目で、ちょいちょい可愛いんですけどー……。まいるよねぇ……。


「はい、準備できました。食器は各50ですから……随分大荷物になってしまいましたけど……」

「この程度なんの問題もない。しかし、やはり今後は荷物持ちを数名つれていきたいのぅ。オーガの中に、良いのがおれば良いが……」

「オーガの従者を、ということでしょうか?」

「うむ。あれは強いし、そこそこ見目もよい。まぁエルフとは比べ物にならぬがな。じゃが、魔王様の護衛としては悪くない。見込みのあるオーガがおれば、魔王様の護衛役兼荷物持ちに引き抜きたいのじゃ」

「荷物持ちと護衛はわけたほうがよろしいのでは?」

「いずれな。今は人手も種族も足りぬ」


 意外な程人手不足だったらしい!


 まぁ、私が来た当初は爺しかいなかったわけだし、仕方ないのか。


 爺の配下はあくまでも爺の配下で、魔王配下ではないらしい。なので、魔王様の側、つまり、私の護衛にするにはちょっと危険だったんだって。魔王様殺して、爺を魔王に祭り上げる可能性もあったらしい。


 意外です。


 爺がくそ重たい忠誠を誓ってるから、爺配下もそうなんだと思っていたよ。


 その点ドワーフとエルフは、私に忠誠を誓っているらしい。え? 魔王様じゃないの? とは思ったけど、魔王様はまだなんの力も示せていないので、違うらしい。残念。でも、魔王様がある程度力を付けたら、もしかしたら私よりも魔王様の配下になるかも、とのこと。


 あ、こういう主の鞍替えは普通のことなんだって。


 自分の主人に相応しいと思った相手に忠誠を誓うのが魔族らしい。だから、一度配下になったもので、裏切られては困る魔物には呪いをかけるらしい。自分以外の配下にならないように。爺の配下は既に爺から呪いを受けてるから、爺以外の配下にはならないんだとか。


 私は呪いとか知らないし、かけていないから、私の配下になった彼らはいつでも好きな主人に鞍替えできるわけかぁ……。


 これは困ったな。


 魔王様にはある程度は強くなってもらわないといけないわけか。おつむは弱くて、力はあって、でも暴れん坊ではなくて、私の言う事をよく聞く、大人しくて強い子……?


 なにそれ? どんな人間? よくわからんわ。


 こう、相反する性格を一つの身体にぎゅっと閉じ込めないといけないわけか。


 園にいた子供達を思い出す。「里奈先生、僕のお嫁さんになって」と言っていた子供達。うん、わかった。あのままの思考で力強い大人にすればいいんだ。


 魔王様の教育方針は決まった。


 兎に角私大好きなべったり甘えん坊にする。マナー等々はしっかりしつける。爺の協力の下、強さも身につける。以上!


 私なくしては靴下もはけない子にすれば問題ない!


 こうして私による魔王様育成計画が発動されたのでした。


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