25 巨人族
やってきました巨人の里!!
今私は小人の気分です!!
目の前には見上げるほどの巨体。人間のようなシルエットながら、その身長は軽く10mくらいはありそうです。多分。
あの会議から2週間。
色々分かったことがあった。
ゴブリンが、ハイゴブリンロード1人。これが代表者兼食事係。名前はレルレル。この人だけはちゃんと覚えておこう。今後も会議でしょっちゅう顔を合わせるし。
ハイゴブリンキング9人。元ゴブリンロードの残り9人らしい。このキングたちがゴブリンを9つの班に分けて管理しているらしい。
ハイゴブリンジェネラル20人。彼らは防衛部隊に所属し、ゴブリン隊の指揮官をしているらしい。
ハイゴブリンアーチャー100人。弓特化のゴブリン。他のゴブリンより目と耳が良い。
ハイゴブリンナイト500人。剣技に特化したゴブリン。他のゴブリンより体力も高く、近接ファイター。
ハイゴブリンヒーラー300人。なんと、回復魔法を覚えた元ゴブリンメイジ。攻撃魔法は全て忘れてしまったが、回復ができる。すごい。ただし、他のゴブリンに比べ、撃たれ弱く、極端に体力は低いらしい。
ハイゴブリンメイジ1080人。元ゴブリンメイジ。より多くの攻撃魔法を習得しているらしいけど、残念ながら見たことはないので、どれくらいすごくなったのかはわからない。
ハイゴブリン990人。ようするに一般的なハイゴブリン。でも、ゴブリンより遥かに強く、内包魔力も多い。今のところ殆どは探索隊として鉱山に行く主力部隊。
総勢3000名。ハイゴブリンのうち、380名は子供。
男性の身長は180㎝前後、女性の身長は170㎝前後。全員可愛い系の顔立ち。肌の色も見た目も完全に人間と変わらない。
オークたちが、ハイオークロード1人。代表者兼食事係。名前はピッグレ。
ハイオークジェネラル10人。ハイオーク89人。総勢100名。ハイオークのうち20名が子供。
ほぼ全員更地化計画に随従中。
ゴブリンたち同様、男性の身長は180㎝前後、女性の身長は170㎝前後。全員可愛い系の顔立ち。元の豚頭はどこに行ったのか、完全に人間と変わらない。
グリフォン32匹、トレント130人、ドリアード12人、エルフ130人、ドワーフ110人には進化なし。これは以前どおり。
グリフォンの代表者がフルール。オス。
トレントとドリアードの代表者がドリアードのメルリアナさん。
エルフの代表者がリヌフォルさん。もとエルフの集落の長老。年齢は『老』でいいらしいけど、見た目は20代前半の青年。エルフは20代前半で成長が止まり、そのまま500年くらい生きて、それから100年かけて緩やかなに老いていくそうな。長生きですね。
ドワーフの代表者がドンさん。ゴンさんのお父さんで、元評議会の一員。鍛冶師として最も腕がたつので代表者に選ばれたらしい。
ピクシー1名ハイピクシークイーンに進化。代表者兼食事係兼城お抱え医師。名前はシリリル。
ハイピクシービー2名。この2名は回復魔法でも状態異常付与魔法でもなく、身体強化魔法を使える。今のところ2名しかいないので、オレガンディル総司令官につけている。
ハイピクシープリースト2名。なんと、蘇生魔法が使えるんだと。蘇生魔法しか使えないらしいけど。蘇生魔法って、本当に死んだ者が生き返るらしい。身体が在って、死後1日以内じゃないとできないらしいけど。とりあえず、この子達もオレガンディル総司令官につけている。
ハイピクシー19人。全員町医者。
総勢22名。全員相変わらずのリ〇ちゃん人形。とっても可愛い。そういえば、ピクシーには男の子がいるらしいんだけど、女の子と男の子は別々の部族に所属する決まりがあって、大人になって、配偶者を決める時は、1年に1度会う七夕夫婦婚らしい。
オーガ1名幽鬼に進化。これは勿論オレガンディル総司令官。
タイサ2人。元ショウグン。めっちゃ強いらしいけど知らない。
ハンシ5人。元ヨウジンボウ。咄嗟の判断力が高く、指令向きらしい。
ヒキャク1人。伝令に特化した足の速いオーガ。
ショウグン43人。普通、オーガの進化先はショウグンらしい。
総勢52名。男ばかりの種族。身長は180㎝~185㎝くらい。大体細マッチョイケメン。4本の鬼のような角はなくなって、すっかりきりっとした男らしいイケメン集団になった。
……そろそろ突っ込んでいいだろうか? いや、疲れるだけだからやめよう。
こいつらの進化に関しては今後も突っ込まないし、和風テイストな服装もやめない!!
ワーウルフが、ムーンウルフロード1匹。ポチだ。気が付けばめちゃくちゃデカくなっていた。魔王様とリリアナとエリアナが背に乗っても全く問題ない。それ以外は可愛いペット扱い。でもすっごく強いらしい。知らんし。
ウルフナイト9匹。ウィップウルフのように触手鞭を振るい、魔法を使うけど、桁違いに強くなったらしい。
ブリザードウルフロード100匹、ポイズンウルフロード75匹、ホワイトウルフロード85匹。全部以前の強化版。
人狼。ウルフリングの進化系で、要は狼男らしい。頭に狼耳、尻に尻尾の生えたイケメンだった。狼と人間の両方の姿をとれ、腕力が強いらしい。伝令要員。
総勢300名。
フォレストスパイダーが、全員ジョロウグモに進化。代表者はティアナさん。
総勢20名。
海の民が、マーマン58人。代表者はリムブルンドさんに戻した。私は切り捨てようとしたけど、一応、功労者だしねぇ? 爺から罰も受けたし。今は海に帰って海底鉱山の発掘作業をすっごく頑張っているらしい。
マーメイド18名。うち、プリシラさんだけお勉強の為、城下町在住。これはリムブルンドさんとその奥さんエルフェリーナさんには大いに感謝された。リムブルンドさんを含め、寛大な処置だと。
ダイオウイカ12匹。あの巨大イカはダイオウイカだそうです。
クラーケン3匹。イカの他に巨大タコがいるそうです。……どっちも食料にしたらすごい人数分になりそうだと思ったのは内緒だ。爺に睨まれたし。
総勢91名。
リザードマン834人。全員オーガの部下。内100名は城勤務。
竜人2人。リリアナとエリアナ。
黒龍1人。ジル。
あと、まだ会いに行っていないけど、セイレーンが32名。絶賛ジルの部下により教育中。
もう人型とか昆虫型とか数えていたら面倒なので、全員一纏めで、4868人。
城と城周辺の森に住んでいるのがトレント、ドリアード、竜人、黒龍、ポチ、ジョロウグモの166人。
城の厩舎に住んでいるのがグリフォン32人。
城の兵舎に住んでいるのがオーガ、リザードマンの886人。
城下町に住んでいるのが、ゴブリン、オーク、エルフ、ドワーフ、ピクシー、ポチ以外のワーウルフ、プリシラさんの3662名。
海に住んでいるのがマーマン、マーメイド、ダイオウイカ、クラーケンの90名。
牢に入ってるのが32名。
ふふ……もう数えるのも考えるのもしんどい。どこに住んでるとかはもう把握しなくていいような気がする!!
今後は各部署に人数把握を丸投げにしてやるんだ!!!
そんな決意と共に城から逃げ出す……いえいえ、配下の儀をするため、積み上げられた書類は見なかったことにし、巨人の国へととうぼ……いえいえ、やってきたわけですが……。
さっきも言ったけど、巨人デカい! 見下ろされているとなかなかの恐怖だ!
目の前にいる巨人たちは進化前のゴブリンのような緑色の肌。ごつごつとして固そうだ……。髪はある。耳は2つ。鼻と口は1つずつ。
……目が、一つだぁあ……。これは、一つ目小僧ならぬ、一つ目巨人ですか!
巨人がそっと膝をつき、視線を下げる。
「巨人の里へようこそ、小さな人」
女性だった!!!!
いや、胸ないし、顔の造形は男に見えるけど……声はすっごく可憐な女性だ!!!
どうしよう!!
驚くほど可憐な声過ぎて、一瞬意識がふっとびそうになった!!!
「あっえっと……はじめまして。わたくしは神により命じられ、魔王様のナニーをしております、人間のリナと申します」
「ああ、配下の儀を求めに来たのですね……。私はこの地に住むサイクロプスの族長、エンフェリアル・シリールル・ユーリカンデ」
「えっと、わたくしの配下になって働いてください。こちらからの提示は、貴方達に進化の可能性を秘めた料理を提供します」
「ああ、貴女があの魔法の料理の……。しかし、見てのとおり私達は巨人。小さな人間でしかない貴女が、私達を満足させられるのでしょうか? 私達は総勢64名。食事は1月に一度とはいえ、かなりの量を食べますよ? それこそ、この山脈に住むフロストドラゴンや、下の森に居るビッグボアといった大型獣を一人1体以上食べます。そんな量を、用意できますか?」
「可能です。わたくしの準備できる料理は無限大。一月と言わず、毎日提供できます」
はっきりと口にすれば、エンフェリアルさんは少し驚いたように瞬いた。
それから戸惑うように頬に手を当て、黙り込む。
考えているようだ。
ものすっごく男らしいお顔立ちですが、声も仕草も可憐な女性だ!
この人は多分女性で間違ってないと思う。異性というより、同性と言われた方がしっくりするし。もう、気配が完全に女性だ。
「にわかには信じられません……今から用意する大皿に、私の身長程料理を積み上げられたら配下に下りましょう」
「お安い御用です。ただ……あまり高くなると、わたくし、届きませんので、その手で持ち上げていただいてもよろしいでしょうか?」
「……私が怖くないのですか? この大きな手は貴女のように小さき人を容易く握りつぶせます」
「貴女は……誠実な方だと思います。そのようなこと、けしてなさらないでしょう」
真っすぐに見つめる。
だって、この人は私を人間だと侮らない。
対等のように話しかけてきた。視線も合わせてくれている。わざわざ膝までついて。
エンフェリアルさんは少しだけ驚いて、それからふふっと笑った。
「それでは、積み上げられなくなったのなら、私の手に乗ってください」
「……すぐなので、最初から乗ってもいいでしょうか? あと、わたくし、神によりアレフ様と離れられないようにされているので、アレフ様もご一緒してもよろしいでしょうか?」
「神が定めたのなら、それは従うべきことです。どうぞ、一緒に乗ってください」
「感謝します」
「では、大皿を持ってきます。少しお待ちください」
エンフェリアルさんが背を向け歩き去ったのを確認し、バケツを取り出す。その中にぎっしりと詰まったステーキ。重さ的には30㎏だろうか?
やがて戻ってきたエンフェリアルさんは、とんでもないサイズの大皿を持ってきた。いや、わかってたけどね?
あんな巨人が大皿って言ったんだから、私の想像の範囲外だってことは……。
しっかし大きいな……ジルが竜の姿になってまるっと乗りそうだよ……。
大皿を置き、さぁと差し出された手に、バケツを乗せ、魔王様を乗せ、私もよじ登るようにして乗る。
リリアナとエリアナとジルが背に翼を広げ、私と同じ高さをキープした。
一応彼らの仕事は護衛だし、仕方ない。
エンフェリアルさんも気にしていない。
指先に立ち、バケツをひっくり返す。
滝のように流れ落ちる肉。肉。肉。肉。
ステーキの塊なんだけど……いい香りもするんだけど……滝のように流れる肉の塊って、全く食欲がそそられない。けど、エンフェリアルさんとジルは違うようだ。目が輝いている。
積み上がっていくのに合わせてエンフェリアルさんが手を持ち上げる。
ああー……高い高い高い高い。
けっこうこわいいいいいっ!!!
高くなると風が強くなり、立っているのがつらい!!
足が震えてくる。
ジルがさっと飛んできて、私の身体を支えてくれる。
おう……やるじゃん。見直したよ。
こそっと肉を一切れパクんなきゃな!
小さな――私には大き目な――バケツだったので、エンフェリアルさんほど積み上げるのには2時間近くかかった。
きっと下の方は地面にはみ出している。でもエンフェリアルさんは嬉しそうだ。
「どうでしょうか? 貴女と同じくらい、積み上げましたよ」
「実に素晴らしい……この無限に湧き出す料理なら、私達もお腹いっぱい食べられます。私達はエルフと違い、生態系を壊そうとは思わないので、少ない量を分け合って生きていました……生まれて初めて、満腹を知る事が出来るでしょう。この出会いに、感謝します」
えぇぇ????
さっき聞いただけでも結構な量だったんじゃないの??? それで生態系気にして食べてない方だったの??? それとも、今まで食べる事が出来るけど、食べないでひもじい思いしながら我慢してたの????
ま、まぁ私の配下にさえなれば、お腹いっぱい食べられるよ?
「私達は貴女様の配下となりましょう。皆も、良いですね?」
いつの間に現れたのか、エンフェリアルさんの後ろで跪く巨人たち。
言葉はないが、一斉に頭が下げられた。
「エンフェリアル・シリールル・ユーリカンデ、私はリナ様、貴女の配下となります」
「では、今後ともよろしくお願いいたします。私達の住処には転移で参りますが、その前に……この料理、皆さまで食べていただいてもよろしいでしょうか?」
「よろしいのですか?」
「ええ。ついたら早速働いていただくことになりますので、しっかりと精をつけてください」
歓声が上がる。
いつかのエルフやドワーフ達が上げたものよりもすごかった。
咄嗟に魔王様の耳を押さえ、胸の中にかきだく。この時ばかりは、気も失えないこの身体が憎かった。




