24 初会議
だだっ広い部屋に長い長方形の机。そのお誕生日席に座る私と爺。近くに設けたキッズスペースで、魔王様はリリアナとエリアナが相手してくれている。ジルもちゃんとその近くで魔王様の護衛をしている。
ここは即席で作られた会議室。
魔物の中に会議という概念がなかったので、急遽一番広い部屋に机を運んで作った。
ふ、ふふ……一般人の私だって会議室なんて考えつかなかったんだよ……。いや、ほら、園の会議ってさ? 大体職員室でやるもん。会議室とか使ったことないからさぁ! 最悪、教室に机運んでやってたんだって!
さて、そんなわけで即席で作った会議室なんだけど……。
うん。ギリギリ。今度会議室、作ってもらわないとね。
ゴブリン、オーク、ピクシー、オーガ、エルフ、ドワーフ、ワーウルフ、グリフォン、フォレストスパイダー、ドリアード。トレントはドリアードと一緒とするので不参加。
グリフォンがめちゃくちゃ場所とってる……。
一応、大型の何かでも入れるように廊下も扉も幅も高さもとってはいるけど……。なんか、ごめん、グリフォン。今度専用の会議室1階建ての広々とした建物作ってもらうね。
と、とりあえず話をすすめよう!
「それでは、会議を始めたいと思います。まずは……えー……この街ですが、今後国とするにあたりまして、名が必要となります。その名を決めたいと思います。案がある方は挙手してください」
手元のメモを確認しながら声を上げる。
いや、だって、ねぇ?! 覚えられないって! こういう会議の時は、ちゃんと資料を読み上げるものだもんね?!
早速手を上げるオレガンディル総司令官。
「やはり、リナ様のお名前がよろしいかと思います」
「あ、それはダメです。この国はいずれアレフ様が治める予定です。私の名を国名に使う事は禁止いたします」
出ると思った。
出ると思ったんだよ、それ!!!
なので、初めから決めていた拒否理由を口にする。
きりっとした表情だったオレガンディル総司令官が、しゅんとなる。
うん、そんなかわい子ぶってもダメなものはダメです。あと、残念イケメンに見えるからね! 残念なだけだよ!!
というか、他の面々も残念そうな、がっかりした表情にならない!
隣で爺が苦笑いしているけど、その理由もわかるし無視!
そして、これを封じた途端、誰も手を上げなくなった。
……でしょうね! これも予想済みだちっくしょう!!!
と、そんな中、たおやかな手が挙手される。
え? ええ?? ドリアードさん……?
「は、はい、どうぞ……」
面食らってちょっとどもっちゃったよ。
指名されたドリアードは立ち上がる。
「ドリアードのメルリアナと申します。本日は会議への参加許可、感謝いたしますわ、リナ様」
あ、はい。
メルリアナさん、ね。といってもドリアード達って区別つかないんだけどね……。
「リナ様のお造りになる国は自然が豊かな美しき国だと思います。ですので、アルカディア、というのはいかがでしょうか? 遥か昔に私達ドリアードの里を訪れた、今より7代ほど以前の勇者様が仰っていた言葉で、確か……理想郷、という意味があるのだとお伺いしましたわ」
すみません、メルリアナさん。貴方おいくつでしょうか? 少なくとも、爺が3代前の魔王様から仕えているんだよね? それで7千歳オーバーなんだよね? 詳しくは知らんけど。それより4代は前の勇者だよね? 今から7代前って。
……。うん、ドリアードってトレントと同じ木なんだよね? だから長生きなんだよね? そういうことでいいよね? 多分。
「ドリアードは精神体じゃ。寿命がない。トレントとドリアードは、この世に木が産まれたと言われる神代から存在していると言われておる。真偽は不明じゃがな」
こそっと耳打ちしてくれる爺。
まーじーか!
まぁでも……木だもんね。そういうのもありだろう、うん。
しかし、アルカディア……理想郷、ね!
魔王様ユートピア計画、つまり魔王様理想郷計画を立てている私達にぴったりじゃない?
「うむ。儂は良い案じゃと思う」
ですよね!
では、それでいっかな?
「素晴らしい提案だと思います。今から創る国が、私達にとって理想郷となるよう心掛ける為にも、この名前は実に良い案だと思います。誰か、他に案がある方はいますか?」
全員キラキラした目でこちらを見ている。
うん、これでいいんだね?
わっかりやすいなぁ……。
「では、国名は『アルカディア』とします」
ぱちぱちと響く拍手。
あ、拍手って文化はあるんだね? 初めて知ったよ。
「では次は、建国した際、この街は王都となります。王都の名前を決めたいと思います」
ふ、ふふふ……まだ名前をつけないといけないんだよ……。
国名と王都名って一緒でよくない?!
でもさぁ、確認した地図には王都名と国名が別だったんだよ!!
すべての国が!!
嘘だろ、おい!!
でもよく考えたら日本という国名で、首都は東京だもんね!
普通は違うんだよね!!!
そんなわけで、王都名を決めないといけません……。
はいっと再びオレガンディル総司令官が挙手する。
おぉい? 二度目だよ君? わかってるー??
「オレガンディル総司令官、どうぞ」
「はい! 王都名はリナ様のお名前を入れたものが良いと思われます! いずれアレフ殿が国主となったとしても、それまで尽力されたのはリナ様で、国民を集めたのもリナ様です! ここには絶対にリナ様のお名前を入れた方が良いと思います! アレフ殿もそう思うと思います!」
却下!!!
「うむ、その通りじゃ」
なんとー?!
まさかの爺の裏切り!!!
マジ?!
爺の同意に押された皆がさっきよりも遥かにキラッキラした目でこっちを見てくる。
ぐぬぅ……爺め!!
「い、いいでしょう。ただし、あくまでも私の名前がメインではない名前にしてください」
わぁあ、と上がる歓声。
えぇー……??
歓声、いらんやろ……。
どうせ君たちそのうち魔王様の配下になるんだよ? 魔王様の配下になったら私への主人愛なくなるんだよね? その時、王都名に私の名前が入ってたら嬉しくないんじゃない?
しかし、突然次々上がる案。
次々却下する私。
いや、だって、ね?
『リナサマダイスキ』『リナサマシジョウシュギ』『リナサマヨメニ』等々、意味不明且つ酷い名前ばかりあがるんですけど? 流石の爺も頭の痛そうな顔をしている。
こいつらアホでしょ、ホント。
そんな中、たおやかな手が再び挙手される。
待ってましたよメルリアナさん!!! この中で唯一まともな人!!
「メルリアナさん、どうぞ」
「リナ様、どうか私のことはメルリアナ、とお呼びください。確かに私達ドリアード族はリナ様の配下ではありませんが、それでもこの国に住むことを許された国民にすぎません」
あ、やっぱり? そうだよね?
やっぱり配下じゃないんだよね! そうだと思った!! つい最近気づいたけど!!
「ではメルリアナ、どうぞ」
「はい。私達ドリアード族の言葉で『ルリリーナ』という言葉があります。意味は光、です。リナ様は私達をこの理想郷へと導き、そして、理想郷たる未来へと導く光だと思いますので、『ルリリーナ』というのはいかがでしょう? リナ様の名前も隠れていて良いと思います」
おわわわ!!!
サブいぼがたつ!!!
誰が光だ!!!
恥ずかしすぎて肌が粟立つわ!!!
しかし、『ルリリーナ』なら、リナは入ってても、『ー』で離れてるし、パッと聞いた感じ私の名前だとは思わない。いいんじゃないかな?
「うむ。良い名だ。国名である『アルカディア』は理想郷。そして光を意味する『ルリリーナ』儂ら魔物の未来を明るく暗示しておるようではないか」
しみじみと頷く爺。
他の皆もうんうん、と頷いている。
うん、満場一致なんだね? くっ……こそこそ「リナ様は光」「まさにリナ様に相応しい」とか意味の解らない変な言葉が聞こえてくるけど、聞こえないふり、聞こえないふり!!!
「他に案がなければ王都名は『ルリリーナ』とします。……ないようですね。では、国名は『アルカディア』王都名は『ルリリーナ』その他の街が出来ましたら、都度決めるか、新しくできた街で代表者を立て、自分達で決めてもらうとしましょう」
全員から諾の答えをもらい、話を進める。
えーっと……次は……街の建設だね。
エルフとドワーフの代表者2人に現状を説明してもらう。
どうやらこの1週間の間に、家を6つと噴水を叩き壊し、転移陣を置く場所の土台まで作り上げたらしい。
大丈夫? ちゃんと寝てる? 休憩とってる?
異様な速さに心配になる。
現在はドワーフ達が9つの転移陣を石に彫り込んでいるらしい。で、エルフたちが城壁に必要な資材の算出をし、オークたちに街予定地の残りの部分を更地にしてもらっているらしい。
「城壁の資材の確保、人員の動員に、ゴブリン、オークは全員貸し出していただきたい。さらに、城壁を建設の際にはジョロウグモの方々の糸が非常に役立つので、ジョロウグモの方々にも手伝っていただきたい。しかし、それでも足りないので、できる事ならばあと2倍の人員が欲しいと思います。できる事なら大型の昆虫や飛行可能な者達がいてくれれば、資材の運搬、高い城壁を造る際の足場の簡略化につながるので、よろしくお願いいたします」
ふむ……あと2倍……か。 ゴブリンやオークならってことだよね? ならそれよりも力強い存在ならもっと少なくて済むのかな? でも竜はダメなんだよね? 彼らは善意で全壊にするんだったよね?
「リザードマン達がドラゴニックやドラゴニュートに進化してくれれば話が早いのじゃが……そうよな……ここいらで巨人族でも仲間にするのもよかろうて」
「おお! 巨人族ならば心強い! 彼らは手先が器用で、大型の建築物の際には非常に助かります!」
爺の言葉に目を輝かせるエルフとドワーフの代表。
ふぅん? 巨人族、かぁ……。聞いたことないけど……豆撒いた雲の先にいるような奴かな?
「我々も巨人族はありがたい。城壁の建築後は我々防衛部隊の一員に是非、巨人族を加えたいとおもいます。彼らは力強く勇猛果敢。我々オーガでさえ、時には敗北を期します。一人で当千の兵と言われる我らでさえ、です。まぁ、進化前の話ですが」
はぁー……やっぱり強いんだねぇ?
でも、あんまり大きいと家建てられないんじゃないかな?
「大丈夫じゃ。巨人族は必要に応じて自らのサイズをある程度変えられる。と言っても、一番小さくても2mにはなるがな」
「それでしたら、皆さんより少し高い程度なので問題はないでしょう」
ところで、一番大きいと何mですか? 一番小さくて2mなんでしょう? それ以上なんでしょう? 一番大きな姿、考えると怖いよ?!
ま、まぁいい。普段問題ないならいいですよっ。
「では、とりあえず、巨人族への交渉には後日、デルフォリアス宰相閣下と一緒に行くとします。エルフとドワーフの皆さんは、オレガンディル総司令官達と相談し、城門の側に兵士の詰め所設置、戦となった際、城壁に上って戦う事を想定した場合の武器の設置、運搬経路等の話し合いを後日行ってください」
「おう!」
「はい!」
元気のいい返事が返る。
うんうん、良い事です。
「オレガンディル総司令官達もよろしいですね?」
「はっ軍事関連はお任せください!」
頭を下げるオレガンディル総司令官とリザードマンの代表者。
ふー……ここまでは順調だ……。
ええっと次は……。
「ゴブリンの皆さんによる探索隊なのですが、聞いてのとおり、これから沢山の資源が必要となります。デルフォリアス宰相閣下もお手伝いくださいますが、量が量なので、その全てを賄う事が出来ません。探索隊のみなさんに石を掘り起こしてもらうこととなるかと思いますが、採石所となりそうな場所を早急に探し出してほしいと思います」
「お任せください! それでしたら以前の探索でいくつか見つけてあります。しかし、今後石は沢山必要となるでしょう。そこで、持ち運びできる転移陣をいただけないでしょうか? 探索隊はその場に逗留し、採掘をする。そして、転移陣を使い、採掘した石材を即座に転送するのです」
「では、食料用に城と繋いだ転移陣と、資材を転移させる転移陣の2つを各探索隊に持たせましょう。宰相閣下、よろしいでしょうか?」
「うむ。会議後、即座に用意しよう」
「探索隊の食料は私が直接送りますので、その分は私にいただけますか?」
「!!!!!!」
メルリアナさんと爺以外の会議参加者全員が私を見、それからゴブリンの代表者を見た。
その顔にはっきりと書かれた「羨ましい」という言葉。しかし、ゴブリンの代表者の顔にもその言葉が刻まれている。
……。いいじゃん。送るだけなら。だってメニューは一緒よ?
「……王都から長く離れる事になるのです。かまいませんよね?」
「うむ。それで指揮が上がるのだと思えば良い事じゃ。どうせ、街中にはこれからしょっちゅう顔を出すのじゃろう? その為の転移陣じゃしな」
「はい」
ナイスフォロー爺!
羨ましそうな顔をしていた全員の顔が「そうだった!」と輝く。
にっこにこですよ。
整った顔立ちの皆さん、ほんっと残念な頭で残念です!
ドワーフは……うん、可愛い可愛い(棒)
今気づいたけど、ドワーフってちっちゃなム〇ク? あれ? 可愛いじゃん!
ははは! 相方のガチ〇ピンいないけど!
なんてアホな事はさておき。
これで探索隊に関してはオッケー。
次は、防衛に関する事だね。
「では、次は防衛に関する提案をオレガンディル総司令官、お願いいたします」
「はっ!」
立ち上がったオレガンディル総司令官は、1週間前に魔王様の部屋で聞いた内容を再び口にする。
街の中はオーガ隊で守備。街の外にリザードマン隊による防衛陣を敷く。
街の中のオーガ隊は、以前は魔王様護衛隊だったハンシ5名を隊長とし、1部隊10名ずつで構成。オレガンディル総司令官は総司令官として指示を出す係。余りの1名に伝令部隊を率いてもらい、指示を伝える。
伝令部隊には人狼30名を起用。街の外へ伝える者と、街中だけを担当する者に別れるらしい。
街の外は、リザードマン達を主力とし、オークロードを隊長としたオークたちによる部隊、ゴブリンロード達を隊長とした城仕え以外のゴブリンたちによる部隊を考えている、ということ。
現在、ジョロウグモたちによる境界線兼、防衛ラインへの侵攻を確認する罠の設置を進めているらしい。あと、残りのワーウルフ達に森の中を巡回してもらい、警戒をしているらしい。しかし、やはり守備範囲が広い現在、守りは困難。打開すべく人員が欲しいとのこと。
うーん……どうしたものか。
今この国は、それなりの戦力を有しつつ、豊かな餌場に近い。餌場と言われない理由は当然、爺だ。竜人である爺がいるので、誰も手を出さない。もし、爺がいなければ、爺配下外の竜族、悪魔たちがこぞってやってくるだろうとのこと。そうなると、現在の配下では太刀打ちできないんだと。
ジルとリリアナとエリアナがいるけど、それでも被害は甚大となり、3人が守る私と魔王様以外の生存は諦めてほしいとのこと。
これは、早急に強い配下が欲しい。
「ヨウスケコータシュンが戻っても、足りんな。あれと同種か、それ以上の悪魔、後は竜族の配下を持つべきじゃろう」
くっ……マジか……。
できるだけ早いうちがいいよね。
先ずは巨人、それから、爺と要相談で、味方の増強。
というか、ゆくゆくは全ての部族、種族を魔王様の配下に収め、この魔王領そのものを一つの大国家にしたい。そして、完全に人間領とわける。
中央の島は神の島で、不可侵らしい。
そこを起点に、今でも明確に人間領と魔王領と言われているんだけど、人間が攻めてくる。勿論、逆に人間領へ攻め込む魔物もいる。
魔王領が『アルカディア』国となったら、人間領へ攻め込む魔物、人間領に残ったまま、悪さをする魔物は自分達には関係のない存在、若しくは共通の敵と見なす。で、上手くいけば人間と平和協定を結びたいところだけど……。でもなぁ……魔王いないときは人間同士で戦争しているんだよねぇ……? そんな人たちって信じられるの??
うーむ……。難しいなぁ。
一応私は人間なわけで、人間と友好関係結べるならそうしたいけど……そうじゃないなら、別に無理して結ばなくてもいいわけだから……。
うむ、こんがらがってきた。これはまた後日にしよう。
とりあえず、今すべき議題はまとまった。
後はとにかくできることをする!
「では、本日の会議はこれまで。わたくしはこれからデルフォリアス宰相閣下と話し合い、早急に配下を増やす算段を立てます! 皆さんも各自、よろしくお願いいたします。次の会議は1週間後。その時は各種族の住民台帳を一新します。今まではセイレーン達が管理し、わたくしには一切報告がありませんでした。よって、今後、定期的に会議を開き、各種族の進化状況、人数の増加等の確認を行いたいと思います。各代表者は1週間後までにまとめておいてください」
私の宣言に、皆が了承の声を上げる。
あー……つかれた。
今日は魔王様が寝た後、爺と晩酌しながら相談だなー。




