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22 防衛管理



 小さい方のソファーに爺とオレガンディル総司令官。大きい方のソファーに私と魔王様とジル。


 ハンシ5名、ジョロウグモ5名、ポチ。リリアナ、エリアナ。


 うん。なかなかの人口密度。


 広いといっても、所詮は子供部屋。


 そんなに広くはない。


 けっこうぎゅうぎゅうです。


「ふむ、そうそうたる面々じゃな」


 爺がじつに楽しそうに口を開いた。


 そう、なんだろうか?


 私にはよくわからないんだけど。


「幽鬼1名、ハンシ5名、ジョロウグモ5名、ムーンウルフロード1匹、黒龍1名……国どころか世界を落とせるのぉ」


 えぇー?? そんなすごい戦力がこの子供部屋に集まってるの??


 ま、まぁ、黒龍と爺達竜人って時点でそっか。


 ジルは普通の黒龍よりも遥かに強い的な話を以前、爺がしてたもんね。てか、その規格外の強さで、なんで竜人になってないんだろう? 竜から竜人の進化ってそんなに大変なのかな? 今度爺に聞いてみよう。


 ところで一つ聞きなれない単語があったなー。


 幽鬼?? 幽鬼って何? 他の種族名から考えてもオレガンディル総司令官の事だと思うんだけど……彼、鬼じゃなかった?? またいつの間にか進化っすか。これはもう、今日中に族長たちを代表者として、種族管理をするようにしなくては。


 主人である私が知らないうちに進化しすぎなんだよ。


 この城が城下町と距離があるのも問題かも。いつでも街に下りれるようなシステムないかなー。バスとか電車とかあればいいのにー。あ、高さ的にロープウェイ??


 ところで、今更だけど、この世界の移動手段って何? 文明レベルとか気にした事がなかった。魔法がある時点で私の常識の範囲外なわけなんだけど、どうなんだろう?


 えぇっと? 確か爺が色々貸してくれた本……あれらの殆どは魔物の歴史だった。それから、育児とかマナー本だったでしょう? で、人間に関しては少なかったな。


 私が知っている人間の知識と言えば、魔物と争っている――冒険者と呼ばれる人たちが魔物退治と称しては、中央の島(?)を超えてやってくる。人間領で暮らしてる魔物に関してはノータッチだけど、魔王領まで来たら迎撃しているらしい――ので、魔物は人類の敵という認識でいる。


 魔王が現れると呼応するように勇者が人間領に現れる。


 魔王と争っていない期間は人間同士の国と国で争う事もある。


 終わり。


 あれ? 殆ど知らないぞ。


 これも完全な課題だな。


 そもそもこの世界の理ってなんだ?


 あの自称カミサマっていうクソ野郎は何を求めているんだ?


 勇者と魔王が争っていればそれでいい?


 だって魔王が現れて、勇者が現れるわけなんだよね? しかも、勇者は異世界から神に任じられてくるって書いていた。だから魔王は勇者が現れたら倒されるって。


 勇者は神により選ばれ、神の祝福を受けてめちゃくちゃ強い、みたいなことも書いてあったし。


 この循環さえできていればいいのか? でもそれでは魔王様が魔王になったら完全アウトなわけで……でも魔王様は賢いから、放っておいても育ちそうだし……わかった!!! 魔物と人間の争いがなくて、且つ、魔王様は魔王ではなく、賢王になってもらえばいいんだ!


 このまま国を建て、建国宣言をする。で、この魔王領の魔物は魔物ではなく、人間として数える。無理に人間領と交流しなくてもいいけど、人間と魔物が同じ世界に生きる人間として、仲良くやっていける道を模索する。


 平和になればカミサマとかいらないじゃん!


 圧倒的武力は争いのタネだけど、人間が絶対に喧嘩を吹っ掛けてこない程までなって、それでいて対話可能な理性的な相手だとしたら……襲ってきた人間が悪い事にできる??


 つまり、このまま進化による兵力増強は悪い事じゃないのかな?


「ふむ……圧倒的戦力による、不可侵条約の制定とかもありだと思うぞ」


 考え込んでいた私に、爺が提案する。


 それだよ!!


 こちらの武力がすさまじく、人間が不可侵条約を結んでさえくれたら、それを破った方が一方的に悪いわけじゃん? 勇者が魔王討伐に攻め込んで来たら、それを盾にとれる!!


 やはり、ここは建国しよう!


「建国するならば、名をつけねばならぬな。誰ぞ、良い案はあるかな?」


 爺と私の会話は、私が頭の中で考え、爺が口にする。周りから見れば爺が一方的に何か言っているように見える。


 ジルだって私の中に入っていないと私の思考は読めない。でもジルは私の中で私が色々と考えているのを知っているから、爺とどうやって会話しているのかしっているっぽい。


「そりゃ、リナがそれがいいってんなら建国するのもいいけどよ、まず、国主は誰になるんだ?」

「アレフ様です」


 言い切る。


 いや、だってそうでしょう? ここは魔王領。其処にできる国なら、魔王様が国主に決まっているじゃないか。


 しかし、爺以外、全員が首を傾げた。


 オレガンディル総司令官が代表するように口を開いた。


「我々はリナ様の配下なのですが……」

「私はアレフ様のナニーです。あくまでも、アレフ様がご立派に成長されるまで、お側で支える役を神により授けられています」


 こういう時ばかりカミサマってのを利用する。


 そう! この世界は最上位に神がいて、後はそれ以下。カミサマが白だと言えば、黒も白くなる!


 カミサマに魔王様のナニーであれ、と言われているのに、他の事なんかしていいわけないじゃんねぇ?


 カミサマの言葉に、全員がうぅむ、と黙り込んだ。


 彼らは私の配下。当然、私を最上位にしたい。でも、カミサマが私を寄越した条件と合わない以上、無理は通せない。いやぁ、こういう時だけあのクソ野郎も役に立つもんだ!


 で、そうなると、次の候補は爺。しかし爺は魔王様の配下、と自らを称している――実際にはまだ契約の儀を行っていないので、違うらしいけど――ので、魔王様の上には立たない。


「当然、アレフ様に国主となっていただきますが、アレフ様がご成長されるまでは私とデルフォリアス宰相閣下で国政をいたします」

「うむ。それが妥当じゃろうて。魔王様が国政に関われるようになるには、最低でも10歳になっていただかなくてはならぬ」


 爺の言葉に全員が頷く。


 うん? 10歳って早くない? せめて16、7歳だと思ってたよ……。


「最近の魔王様の成長速度ならば10歳にもなれば十分な力を有される。見目も、大人とそう変わらないじゃろう」


 これにも全員が頷いた。


 えぇ? そうなの??


 成長早くない??


 子供の成長って恐ろしく早いものだけど、いくら何でも早すぎない?!


 10歳で大人と同じ見た目って?! あ、でも、この世界じゃ12歳くらいから結婚するっだっけ? ということは、それくらいで大人なのかな??


「それは違うな。リリアナ達はまだ子供、という。お前や儂らは大人じゃがな」


 ということは、やはり18歳以上が大人ってことだよね?!


 10歳くらいでそれくらいの見た目になるってこと?!


 さ、寂しい……。


 幼少期が短すぎやしませんか、魔王様……。


 まぁいいや。兎に角今は建国するにあたって、どういう防衛がいるかって話をしよう。


「では、この場所を中心として建国するとして、オレガンディル総司令官、どのような防衛が必要でしょうか?」

「……街の形は、現状のまま、城をぐるりと取り囲むように、ということでよろしいでしょうか?」

「はい」


 オレガンディル総司令官は少し考える。


 そういえば、今気づいたけど、オレガンディル総司令官、ちょっと小さくなった?


 180㎝くらいのオールバックの美形だ。私提案の軍服が良く似合っている。以前はもっとムキムキマッチョだった気がするけど、今は細マッチョ。黒髪、切れ長の目、ちょっと冷たい印象のある美形。


 魔物って進化するとどんどん美形になるのかな?


 ゴブリンたちもすっかり肌色の肌で、美人ではないけど、男も女も可愛らしく、愛嬌のある顔立ちの者ばかりだし……。ティアナさん達もまだ完全に人間とは言い難いけど、でも美人だし。


 私が余計な事を考えている間にも、オレガンディル総司令官と爺の会話は進んでいく。


「まず、現在想定される街の範囲は、この城に設置した海底魔石による結界内に収まる、と想定してもよろしいでしょうか?」

「問題ない。それは竜人であるわしが保証しよう。リナが言えばいつでも結界が張れるよう準備済みじゃ」


 え? そうなの? 知らなかった。


「今はリナが街のサイズを悩んでおったようだから結界を張っておらなんだが、今聞いた限りでは、問題なく最上位の結界が張れる」


 おお、と歓声があがった。


 んん?


 最上位の結界って何ぞや……?


 あとで爺に教えてもらおう。


「では、結界を考慮した場合、街の中は我々オーガ隊で守備、街の外にリザードマン隊による防衛陣を敷きたいと考えます。その為にも現在、魔王様護衛隊である5名を街の防衛隊隊長に充てたいと思います」


 オーガは総勢52名。


 オレガンディル総司令官が抜けて51名。


 ここから5部隊作るとして、一部隊だけ11名?


「1名余りが出ますので、その1名を伝令専門の特別隊隊長とし、人狼へと進化したワーウルフ達による伝令隊を組みたいと思います」


 ふむふむ。


 確かに伝令兵は大事だし、伝令の速度は大切。しかし、また知らない種族名だよ……。誰が人狼に進化したのかな?


 これも後で確認だ。


 ……確認しないといけないことが多すぎる……。


 何の反省もできてないじゃないか、自分。ちょっと前に似たような、というか、同じ反省しなかったかなー……。


「外は、リザードマン達を主力とし、オークロードを隊長としたオークたちによる部隊、ゴブリンロード達を隊長としたゴブリンたちによる部隊、と広げていけば、まず、人間に都市に攻めこまれる可能性はないでしょう」

「うむ。しかし、兵力はあるが、数が足りておらぬのではないのか?」

「はい。そこで、斥候として、周囲の森をワーウルフ達に巡回してもらいたい、というのと、ジョロウグモたちによる境界線兼、防衛ラインへの侵攻を確認する罠の設置をしてもらいたいと考えています」


 確かに、今の人数じゃちょっと全方位を守るには厳しいよね。


「あとは、リナ様に森を巡回する配下を増やしていただければ、と思います」


 あ、最終的に人数増やせ、となるんですね。


 まぁ明らかに人員不足な大きな街になりつつあるもんねぇ。まだ、街として切り開いていない場所もあるわけで……となると、完全にそこは無防備ってわけで……。


 先ずは国民を増やさねばならないのかぁ……。


「デルフォリアス宰相閣下と話し合い、早急に対処します。デルフォリアス宰相閣下、防衛面、どうでしょうか?」

「うむ、全く問題ない。流石はオーガじゃ。戦術となればこれほど頼りになる者はおるまいて」


 満足げに頷く爺。


 オレガンディル総司令官とハンシ達は鼻高々、というように胸を張っている。


 いやぁ……爺に言われて配下にしたとはいえ……なかなかすごい種族だったんだなぁ。爺、意外と先を見ている……。


「では、そのように致しましょう。オレガンディル総司令官、ハンシの皆さん、この街は皆さんにかかっています。頼りにしております」

「はっ!! お任せくださいリナ様! 我らオーガ族一同、リナ様の期待に応えられるよう、誠心誠意尽くしてまいります!!」


 さっと立ち上がったオレガンディル総司令官が頭を下げ、合わせてハンシ達が頭を下げる。


 うん……そんなキラキラした敬意を払われるような人間じゃないんで、辛いっす。


「ティアナ。貴女達5名には引き続き、アレフ様付のメイドをしてもらいますが、残り15名、オレガンディル総司令官の指揮下に入ってもらっても構いませんね?」

「はい。勿論です、リナ様。ただ……わたくし達は、布や糸の生成も担当しております。それらも考慮して、罠の設置は担当制にしていただきたいのですが……」


 ちらりとオレガンディル総司令官を見る。


 オレガンディル総司令官は大きく頷いた。


「勿論です。ジョロウグモの皆さまが布や糸を生成してくださるから、リナ様考案のこの、素晴らしい服を着られるのです! 皆さまの作業の迷惑にならないよう、詳細な打ち合わせをさせてもらえれば、と思います!」


 ……私『考案』ではないです。それは『提案』しただけです。


 それ、私の世界にありました。私は考えてなんかいないです。


 ほんと、すみません……。


 それを素晴らしいと思うなら、機能性とかを重視しつつも、デザインも優れたセンスを発揮した、最初の立案者に感謝して下さい。誰だかは知らないけど。


「お主が提案したから、素晴らしいものだと認識しておるのだぞ……」


 ぼそっと爺が言う。


 あ、やっぱそうっすか。


 そうだよね。主人が言ったから、どんなに微妙でも褒めちぎるんだよね。


「そうでもない。実際に儂らはこんな服を考えた事がない。そもそも上から被る服ばかりじゃ。この、なんじゃ? ボタンとかいうものは初めて見たわ。普通は上から被り、腰の辺りを紐で括るのが一般的じゃな」


 なに、その、園でありがちな、ゴミ袋に頭と腕の穴をあけて、腰の辺りを紐で括りました、みたいな衣装。


 それは、いくら何でも微妙な文化じゃないですか? 日本で言うと弥生時代、とか? それよりも前? でもそうか。確かに、獣の皮を腰に巻いてたり、肩の片側の方からひっかけるような服装が多かったよね。


 何か月か前に会った人間の男のうち2人も、上から被るような上着を腰の辺りを紐で縛っていたな。それにズボンとマントだった。


 魔法使いみたいなやつも、頭から被るローブみたいな服で、腰の辺りをやっぱり紐で縛ってた。


「お主が着ている服についておるチャック? とかいうものも凄いと思うぞ。 ドワーフもエルフもそれを作ろうと一時期躍起になっておっての? お主のその服、一着だけ、奴らにくれてやったわ」


 マジか。


 知らんかった。


 そういや、私の服、まだ爺が作ってくれてたんだ? それも知らんかった。


 てっきりもう全部エルフが作ってるんだと思ってた。


 でもそういえば、メイド服にはチャックがなかったからエルフたちでも量産出来て、私の服だけは爺がせっせと魔法で作ってたのかー。それで、私の服だけ、爺が質問に来たのかー。チャックのせいだとは気づかなかったよ。


 じゃぁ、このベルベット生地は他にないのか……。残念。この布好きなんだけどなぁ……。


 そのうちお城のどこかにグランドピアノを置いて、ベルベット生地のカバーとかかけたかったんだけどなー……。


 まぁ、それもやることがなくなったときにでも考えよう。うん。


「宰相閣下にも今度、服を贈らせてくださいね」

「ふむ。楽しみにしておるぞ」


 にっこりと笑う爺。


 お、これは本当に楽しみにしている顔だ。


 爺、実はここの服気になってたんだ。そういや、爺に服プレゼント計画、まだ実行してなかった。夜、なんか考えてみよう。


「では、防衛面に関しては、一旦オレガンディル総司令官達にお任せします。後日、会議を開こうと思いますので、その席で問題点があれば提示、解消のための提案をすること」

「かしこまりました」


 頭を下げ、オレガンディル総司令官達は出ていった。


 室内に残るのは宰相閣下、リリアナ、エリアナ、ジル。


 一旦ポチとティアナさん達はオレガンディル総司令官達と出ていった。しかし、なんか、この部屋に残ったメンバーだけでも人間の国を落とせそうだ……。


 だって、黒龍と竜人3人だよ? めっちゃ怖い。


「それに、そのうち悪魔が1人追加されるじゃろう?」


 ぼそっと突っ込む爺。


 あ、それ、思い出したくないので、帰ってくるまでは忘れさせてください。


 お主、と呆れた視線を向けられたけど、気にしない気にしない。


 忘れたままでいたいのです。


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