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10 目指せ、国家樹立



「と、いうわけで、アレフ様の護衛、この城のメイドや執事、この城に在住し、街、延いては魔王様が創る国の管理をする文官、城専属の医師、街用の医師などが早急に必要かと。あと、国の治安を見守る武官……これは現状はオーガで足りておりますが、いずれ街がさらに大きくなり、国となったときは、絶対に足りなくなります」


 昨夜のうちに創り出したリストを読み上げる。


 特に護衛と文官と医師は早い方がいい。


 先日の冒険者チームの一件で、ポチが強いのはよくわかったけど、それでも魔王様の護衛が一人なんて不安すぎる。私はまったく戦えないお荷物なわけだし。


 そしてポチたちが進化していることを知らなったあの後、早急に調べた結果、ポチ以外にも、ゴブリンがボブゴブリン1500人、ゴブリンマジシャン1380人、ゴブリンジェネラル100人、ゴブリンクイーン5人、ゴブリンキング5人、ゴブリンロード10体に進化。

 オークもオークロード1人、オークジェネラル10人に進化していた。残りの89人は進化無し。

 グリフォン32匹、トレント130人、ドリアード12人は進化なし。

 ピクシーは5人ハイピクシーに進化。残り19人は進化なし。

 オーガは鬼1人、ショウグン2人、ヨウジンボウ5人、残り44人は進化なし。

 エルフ130人とドワーフ110人には進化なし。



 色々ツッコミたいが堪える。特にオーガとかオーガとかオーガ辺りの進化種族とか。



 で、ワーウルフがウィップウルフ10匹、ブリザードウルフ100匹、ポイズンウルフ75匹、ホワイトウルフ85匹、ウルフリング30匹。

 それから先日配下になった、フォレストスパイダー20匹。

 人型がゴブリン3000人、オーク100人、ドリアード12人、ピクシー24人、オーガ52人、エルフ130人、ドワーフ110人で3458人。


 動物や虫がワーウルフ300匹、フォレストスパイダー20匹で320匹。

 その他がトレントの130人……木だから本で数えるべき……?


 結構な大所帯です。もう立派な大都市だと思います。……違うのかな? 違うのかも。これでまだ、街の規模は城の周り半分に満たないわけだし。


 しかし、人数多すぎて、調べるの大変だった。私ではなく、城に食料を取りに来る代表の人たちが。でも一つ分かったことがある。城に直接食料を取りに来る者がより上位種族に進化していた。あとは、私に言われて特定の任務に就いている人たちもそう。


 ドリアードやトレントは、基本が城の周りにある森の中で勝手に光合成しながら、流れる水を吸い上げているだけなので、進化がなかったとみられる。いや、あの人たち、なんでここにいるんだろう? 特に交渉した記憶がないし、挨拶したらウキウキついてきちゃったから、私の配下じゃないのかもしれない。3年経った今更気づくとか……私、相当ぬけてるわ。


 グリフォン、エルフ、ドワーフは進化例がないらしいから、変化がなかった可能性があると言われた。


 同じ種族でも、進化のなかったものも、ちらほら進化の兆しはあるので、そのうち進化するかも、と言われた。こういうのは個人差ってやつかな? 子供だって早くから言葉を覚える事、周りが心配になってもなかなか覚えない子もいるしね。気にしない気にしない。


「うむ……」


 爺が顎を撫でながら思案している。


「まず、メイドや執事じゃが、これはゴブリンたちの中から雇えばよかろう。ボブゴブリンとなり、背丈も160~170㎝が基本となり、城の中で働くにも不便はなかろうて」


 あ、そうそう。


 進化した人型は、より人間に近い形になってました。肌の色とかはあまり変化はないけれど、身長が伸びたり、顔の造形が人に近くなったり、と。しかし、私は気づかなかった。城に料理の受け取りに来る子とか毎日会ってたのに……!


 爺が言うには、毎日少しずつ変化していってたから気づかなかったのかもしれない、とのこと。


 つまり、アハ体験ってやつですね?!


 じわじわ3年かけて変化されてわかるか!!!!


 よかった、つまり私がアホすぎただけじゃないらしい。うん。


「文字やマナーについては、ここに来る者を中心とし、皆がお前にいつ呼ばれても良いようにすすんで学んでおった。まぁ、問題なかろう。問題があったときは、都度、教えてゆけばよい」


 マジか?!


 す、すまん……。特に私は気にしていなかったけど、皆はこの3年、自分こそが城に呼ばれるんだ、と頑張ってたのか! なんかもーほんとすみません……。もっとみんなの事みなくちゃ……。


 くっ……この街の広さが問題なんだ! 城だけでも島1つ分なんだぞ?! しかも、城と街を隔てる広い川……! いや、綺麗だし、文句はないけど……。あと、私の認識の甘さだ……。皆住居貰って好きに生活してるんだと思ってた……。だって街の建物は種族ごとに色も形も全然違うし……!


 エルフは丸太づくりのコテージみたいな感じで、ゴブリンは西洋のレンガ造り。オーガは武家屋敷風……!

 ピクシーはでっかい木にシルバ〇アフ〇ミリー風かいって感じの家を、鳥の巣のごとく設置してるし……!

 オークはモダンな現代社会にありがち意識高い系みたいなのだし……!

 皆かなり自由にやってたから……!


 でも、よく考えたら、探索隊だって、私のためだったんだなー……。そういや城に来る人達に風呂が好きだけど、少々不便、とか、明かりに対する不満をちらっと愚痴ったような……? いや、ただの会話の延長のつもりだったから、そう何か言ったわけじゃないし、私、忘れてたよ。そっかーああいうのが伝わって、魔石の発見につながったんだな? 仕事してないとご飯もらえないよってことより、私に喜んで貰おうとしてたんだな?


 3年経ってようやく知ったよ……! 


 ごめん、ダメな先生で!!!


 私が一人大きく反省しているのに気づかず、爺が続ける。


「医師ならピクシーで事足りるじゃろう。あれは回復を専門とする妖精じゃ。ハイピクシーもおるし問題なかろう」

「妖精、なのに、魔物、なのですか?」

「人間は自分達の種族以外、自分達に利となる者以外を認めぬのじゃ。ピクシーは妖精じゃが、森を伐る人間をよしとしない。ドリアードやトレントも同じじゃな。ドワーフとエルフならば技師としての腕を買われることもあり、人間と多少の交流はあるのじゃがな。それでも人間の都市に行けば基本は奴隷扱いじゃなぁ。ゆえにあやつらは人のあまり来ない領域で、独自の里や街を作り、生きておるのじゃ」


 すみません、自分勝手な生き物で。


 思わずそう口にしかけ、飲み込んだ。


 片方の意見だけ聞いて、それを信じたりしてはいけない。これは平等を心掛ける教師としては忘れてはいけないことだ。いや、私、教師じゃなくて保育士だけど。保育士なら、なおさら子供に平等ではなくてはならないので、この考えは当然。


「あとは護衛、文官、武官か……。そうじゃのぅ……文官ならばセイレーンが良いかもな。あれは自分達の中でルールを作り、そのルールを重んじる種族じゃ。

 護衛じゃが……竜族が良いのじゃろうが、儂の配下以外で魔王様の護衛を務められるほど強い者となると……うむ……黒龍しかおらぬのぉ……あやつは粗野じゃから、あまり好きではないのじゃが……。

 武官にはリザードマンが良かろうて。あ奴らは戦士の一族じゃ。オーガとの仲も良好じゃし、オーガの方が強さが上じゃから、部下としての上下関係も守れるじゃろう」


 うん。なんか、ちょっと不安な説明が一部あったけど、とりあえず、問題は解決しそうだ。取り急ぎ、文官のセイレーンだろうか? 秩序を重んじるなら、早急にこの城や街にルールを作ってくれそうだ。


 ところで、セイレーンってなに?


「セイレーンは上半身が人間の女で、下半身が鳥の怪鳥の類よ。海で歌い、船乗りの魂を奪い、船を沈めると言われておるが、実際は、美しい女の顔と歌声に、男が惑わされるだけじゃな。その昔、惑わされた船員が操舵を誤り、船が沈んだ。以来、そのように言われておる」

「……」


 きゅっと言葉を飲み込む。


 いや、すみません、とか、その船員のアホかとか、この世界の人間クソだな、とか、色々言いたいことがあるんだけどね? ね!? さっきも言ったけど、片方の言葉だけじゃ、ね? 状況証拠もないし……!


「えーっと、海、に行くんですか?」

「海より山じゃな。あれらは高い山に住み、餌である魚を求めて海に降りるのじゃ」


 なぁんだ……。ここ、森ばっかりだから、ついに海に行けると思ったのに……。


 当てが外れて残念。


「海、か。……うむ。そうじゃのう……。海に住む者とも交流は持ちたいが……ふむ……」


 私の思考を読んだ爺が何かを考え始める。


 いや、でもここ、地図で見た時、周囲を山に囲まれたでっかい大陸だったよね? で、この場所はその大陸の丁度中心くらいだって教えてくれたよね? どうやって海と交流持つつもりなの?


「うむ、海を作るか」


 何言ってんだ、この爺!


 何を名案だと言わんばかりに頷いてるんだ?!


 海って作る物じゃないよね?!


「後でドワーフ達と話すか」


 いやいやいや! ドワーフも困るよ?!


 爺、耄碌したか?!


「誰が耄碌爺じゃ!」


 ごつりと爺の杖が降ってきた。


 結構いたい。


「だめー!!! じいじ、りな、こつん、だめー!!」


 途端、魔王様が爺の足元に近寄り、ポコポコ叩く。


 おおおおおおお! 可愛い!


 あの大きなきゅるきゅるきらきらのおめめに涙溜めて、ぷにぷにおててをぐーの形にして、爺の太もも辺りと思われる場所をぽこぽこ叩く魔王様、まじで可愛い!!!


 全力で抱きしめたい!!!


 最愛の魔王様に涙目で睨まれた爺は相当焦っている。オロオロと「そうじゃない」と伝えているけど、魔王様は納得しない。


 最終的に爺は困り果て、私に謝ってきそうだったので、助け舟を出した。


「アレフ様、リナとじいじ様は仲良しですよ。こつんはアレフ様の見間違いですよ」

「う?」

「じいじ様はリナをこつんしておりませんよ」

「ふぇ??」

「しておりませんよ」


 にっこりと笑って重ねる。すると魔王様は不思議そうに首を傾げ、私と爺を交互に見上げた。爺は必至の笑顔でこくこく頷いている。


 うー? と唸る魔王様に、私は両腕を広げた。


「さ、アレフ様」


 抱っこのポーズに、ぱあぁああっと明るくなる魔王様の顔。


 魔王様が歩けるようになってから、基本的に、昼間は抱っこをしない。ねだられてもしない。だからこそ、昼間からの抱っこは特別感があるのだ。


 抱っこに気を取られた魔王様はすっかり『リナこつん事件』を忘れ、私の腕に飛び込んできた。


 随分重くなったなーと思いつつ、魔王様を抱き上げる。


 私は不老不死というより時間が止まっているらしく、筋力がついたりしない。この先、この調子で魔王様が大きく重くなったら、後2,3年も経たずに持ち上げられなくなる。私だって保育士だし、子供5人くらい、腕に背に抱き着いた状態で持ち上げてきた。そんな私が、重いと感じるほど魔王様の成長は早い。


 身長はそれほど伸びていないのに、体重がやたら重いのだ。


 鉛玉のように日々重くなる魔王様に、魔王城の床が抜けないか心配です。心配です。


 腰痛とか筋肉痛とか感じない身体でよかったなー。


 機嫌の治った魔王様に、ほっと胸を撫でおろす爺。


「デルフォリアス宰相閣下」

「う、うむ、助かったぞ、リナ」


 いえ、違います。


 礼を求めたのではなく、話を戻そうと思っただけなんです。


 ちょっとうっかり、驚きすぎた私の心の中が暴走して中座してしまった話を。


 自分で言うのもなんだけど、今日の私は随分真面目に真面目な話をしているつもり。そう、いうなれば、園の教育方針や、運営方針についてを園両先生と議論しているのです!


 先生が私と爺だけなのは仕方ない。


 先ずは先生=文官の確保でしょう。あ、セイレーンの数が多ければ、街で学校開いてくれないかな。今は独自で読み書きを覚えているらしいから、ちゃんとした教師をつけ、子供たちは好きな職業につけるようにしたいな。


 職人はドワーフやエルフが先生でいいのかもだけど、読み書き、マナーの先生、剣術なんかの先生もあっていいのかも。


「ふむ……。確かにそれは良い考えやもしれぬ。しかし、剣術はオーガやリザードマンたちの方がよかろう。うむ、この国はまだ建ちあがったばかりじゃ。これからも必要なものは増えそうだの」

「あの、前の時はどのようにしていたのですか?」


 私ばかりが提案する違和感。


 爺って7千年も魔王に仕えているんじゃなかった?


「うむ。国ではあったのだが、皆自由じゃったの。生活の基本は各々で、このように、人間のように寄り集まって国となるのは初めてじゃ。人間の領域に入って無闇に喧嘩さえうらなければ、あとは自由というのが基本方針じゃからな」

「人間の領域と、魔王様の領域って丁度世界を半分ずつ、でしたよね?」


 地図を思い出しながら問えば、大きく頷く爺。


 えぇー??? 世界の半分が支配領域なのに、国、なかったの?? 魔物ってよくわからん。人間なら喜んで建国して、領土争いだろうに……。


 同じような形をひっくり返したような大陸が二つ並んだ世界地図。その中央に小さな島があって、そこにそれぞれから橋が伸びている。それがこの世界の大陸の形だった。


 わかりやすく言うと、勾玉……人魂? を2つ、180度回転して並べて、間におはじき一つ置いたような、そんな感じ。特に島国とかはない。中央も橋が架かっていて、島とは呼べない。


 基本的にそれぞれの領域に侵入するには、中央の島を渡ってくるようだけど、飛行で空から侵入したり、海を渡り、山を越えて侵入することも多々あるらしい。国をしっかり樹立できたら、その辺の防衛に関しても色々問題がでそう。私、ただの保育士なのに……。いや、しかし、園でも不法侵入する不審者対策とかいろいろあった! あれの拡大版だと思えば、なんとか……! いや、嘘です。無理です。規模が違いすぎる。あと、世の中の理が違いすぎる。


 あーハゲそう! ハゲげないけどハゲそう!


「とりあえず、早めに色々な人員をそろえましょう。それから色々な意見を聞いて、作っていきましょう」

「そうじゃな」


 疲れたように呟く私に、爺もまた、疲れたように呟いた。


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