第4症 にゃんこパラダイス! (1/3)
キャラクター紹介
根本 梗子
本作の主人公。1年A組。
マイナス思考の非リア充ぼっち。
本人はぼっちライフを満喫するつもりでいたが、学園の王子様の恋愛ゲームの策略に嵌りいいように流されている。
できれば平穏に過ごしたいので、放っておいて欲しい所存。
好きなものは猫で、今回は猫につられてデートに連れ出されているが、本人は気付かないことにしている。
イメージは黒猫。時々黒魔女。
桜路 隆貴
学園の王子様。1年A組。
学年主席のイケメン。オレ様系。
芋づる式恋愛計画を立て、白羽の矢を梗子に立てた張本人。恋愛はゲーム感覚。本来の計画では恋人になった梗子にイラついた女子が釣れる予定だったが、あっけなくなかったことにされた。
断られるのはプライド的に許せないため、梗子攻略を企てている。
攻略の為に猫カフェデートを計画した。
イメージはライオン。そして言わずもがな王子様。
勝貫 明聡
王子サマの従者(梗子談)。爽やか系狡猾男子。
割と全てお見通しで、それ故に隆貴を弄ぶことのできる数少ない人間。
自分以外に隆貴の手綱を握れる梗子に少し興味がある。
一応隆貴の事は尊敬してるし、後押ししたりもしている。
イメージはタヌキ。ところによりけり従者兼騎士。
あいつが猫好きだと発覚したあの日、それにかこつけてあいつを今日猫カフェに誘い出した。
オレ様モテモテ計画の為にはやっぱりあいつは攻略して、オレ様の告白を一度なかったことにしたことを悔いて貰わないとだからな!
けちょんけちょんになったオレのハートのために、とことん惚れさせて、崇拝してもらうくらいになったら許してやってもいい。
オレは寛大だからな!
しかしあいつは相当猫が好きらしく、返事は即答だった……チョロすぎてなんか逆にこっちが不安になるレベルだ。大丈夫かよあれで……。
まぁそういうわけで、オレの友達の含みあるアドバイスも元に学園以外で会うことに成功した。
したんだけど。
「はー……ないわー……」
正直こいつを舐めていた。
「お前、今から猫カフェ行く自覚あるか……?」
そう聞きたくなるくらいには……。
「あるけど? だからこの格好で来たんでしょう」
服装が激ダサだった。
いつも通りのストレートな黒髪から覗く、黒い目にはなんの濁りもない。ガチだわ。
思わず頭を押さえながら、聞いてしまう。
「猫カフェってどういうとこか知ってるよな……」
「当たり前でしょう、猫ちゃんがたくさんいるところよ」
まぁ間違ってない、間違ってないけど……。
「オレと会うのにその格好はないだろ!」
こいつの格好はパーカーにボーダーのTシャツ、ジーンズにスニーカー……。近所のガキか?
「猫と遊ぶんだから動きやすいほうがいいでしょ、何言ってるの」
平然と言ってのけたその顔を見て、オレはため息をついた。意識が猫に負けている事実を、噛み締めざるを得ない……。
****
今日の私はご機嫌だった。この男に会うまでは。
猫カフェについたというのに、まだなんか怒ってるみたいだ。どうも服装が気に食わなかったらしい。猫を主軸として考えたのに。
確かに、昨日の夜私は結構服について悩んだ。
一応というかなんというか、お出かけなのだしお洒落するべきかどうか。可愛い方がいいか。
相手がこの人でなければ、もう少しお洒落して来たと思う。思うんだけど。
相手は私を、自分の恋愛ゲームに巻き込もうとしている人間だ。警戒しすぎかもしれないが、なんかお洒落したら、まるで私付き合いたいみたいじゃない? と思ってしまった。
私は彼にさっさと計画を諦めて欲しい。
そして、その為には期待は持たすべきではない……とか考えてる時点で、すこし興味が出始めてるのは否めないな、と冷や汗が出た。私も乙女だったか……。
だから服で諦めてくれるなら、大助かりなのだ。
さっきの理由も嘘ではないし。
……でもせっかく来たのだから、ほんとは一緒に楽しみたかったけど……難しい気しかしない。もう若干服について、後悔しだしていた。
それに思い出したのだが、彼はそれは大層なイケメンだった。
移動するたび女性の視線が半端なく、かなり居心地が悪い。そういう意味では、まだ服装がもう少しお洒落していたほうが、隣にいやすかったかもしれない。
この猫カフェは先払い式で、支払いが終わると案内して貰える仕組みだった。
もう気が進まなさそうではあるが……一応彼もお金を出して猫のいるエリアに入った。
怒ってはいるけど、扉は開けてくれた。こういうところは、モテそうだなーと思いながら、一応お礼を言う。返事はないけど一応頷いてはくれたから、伝わってはいると思う。
中に入るなり、可愛い内装が視界に入った。そして……。
「‼︎」
沢山の可愛らしい猫が、いた!
にゃんこがたくさん‼︎
あれに見えるは天下の人気者アメショ様!
あの垂れ耳ちゃんはスコティッシュフォールド!
優雅な長毛と、美しいお顔立ちはノルウェージャンフォレストキャット‼︎
あぁ! あの人形のような愛らしさは正にラグドールですね……‼︎
「わぁ……! 沢山いる……‼︎」
すごいよここ! 天国でしかない!
私が猫にめろめろになって、突っ立っていると。
「……とりあえず、席に荷物置いてからな」
ちょっと苦笑されて、手首を引っ張られた。
よくわからないけど、ちょっと機嫌、直ったのかな? ……怒っていて居心地悪いより、笑われるほうがまだましかもしれないから、笑ったことは許してやろう。
席に荷物を置くと早速。
「ねこ! 見にいこ‼︎」
と言って、席に鎮座される王子サマを引っ張った。
「子供か」
ふっと、また苦笑された。
でも仕方ないでしょ、猫が可愛いのがいけないから、私は悪くない! それに、せっかく来たのに座ってるだけとは何事か。
「なんで見に行かないの?」
すこし不満に思い、尋ねると。
「いやだって寄ってくるからな……ほら」
そう言った彼の足元に、1匹の白い猫が擦り付いて来ていた。ずるい。
「え、来たばっかりなのに? なんで……」
「やーなんか昔っからそうなんだよな」
メスだけだけど、と言った彼の足元にはまた別の猫が寄って来ていた。な、なんて羨ましい……。メスの猫なんて警戒心が高い子が多いし、なかなかこんなに寄ってこないものだと思う。
まさか、天性の猫タラシだというの……⁉︎
「変なフェロモンでも出てるというの……⁉︎」
「変な言うなよ……まぁあってもお前には効いてないけどな」
そう言う彼は、ちょっと不満そうに猫を撫でていた。にゃんこ撫でてるのに、何がそんなに不満だというのか。本当に羨ましい。普通は逃げるでしょ!
あと私は猫ではないから効かないのは当然だ。
何言ってるんだろう。
ぼっちには、人間になる権利すらないと言うのか?
不服だが、彼の周りの猫ちゃんは彼にしか興味がなさそう。それに王子様は構うのに夢中だ。モテモテめ。
仕方がないので、他の猫を探すことにした。いきなり後ろから触ったりしたら、かわいそうだしね。そんなことで猫の怒りを買いたくはない。
でも私、猫は好きだけど遊び方はよくわからないんだよなぁ……。
道端にいるにゃんこは、触らせてくれる限り撫で回すくらいしかしてないし。
どうしたものかと考えあぐねていると。
また猫がテーブルの上に来た。どうもここは通り道のようだ。
「にゃあ」
「!」
な、なんと! こちらに向かってお話しされた‼︎
はぁぁすごい可愛い……この艶のある上品なブルーのコートと筋肉質な体つきはシャルトリューかな。人懐っこい感じからしても多分そう。
鼻先に少し手を出して、警戒させないようにしてから撫でさせてもらう。あーあ! 天国……っ‼︎
「すっごいにやけ面……」
はっ! そういえばいたんだった! 一瞬忘れてたよ。
声の存在で思い出し、あわてて顔を戻してそちらを見る。
来た時みたいに、また苦笑いかと思ったんだけど……んー機嫌直ったのかな? 今度は普通に笑ってた。猫効果か?
しかし笑われるのは不本意なので、反論しておく。
「し、仕方ないでしょ! 可愛いんだもん!」
そういうあんただって、撫でてるんだからわかるでしょ! しかも気持ちいいのよ! なにこれ! 抱きしめてしまいたいくらいですよ‼︎ でも抱っこは猫カフェ禁止だからね!
抗議の意を込めちょっと睨んでおいてから、にゃんこ様の方に向き直ってひたすら撫でる。うー癒される……!
気持ちよかったのか手にスリスリして来た!
なにそれどこで学んだの可愛すぎる‼︎
油断してると変な声が出そうだ。気を付けねば。
そしてさっきからなんかニヤニヤした視線を感じるので、そっちの方を見るとなんと膝に乗って来た猫を撫でていた! なにそれその技術教えてほしい‼︎ ドヤ顔は気に触るけど‼︎
「にゃあー」
また私の猫ちゃんが鳴いてきた。声も可愛い。
すごいお喋りさんだなぁ、もう少し近づいても許されるかな……。
そう思って少し近づくと、なんと!
腕に手をかけてきた!
え、なになに!
ちょっと困ってさらに近づくと、びっくりしたことに肩に乗った!
えっ肩乗り猫ちゃんなの! すごいサービス‼︎ しかもスリスリしてくれる! 今日私死ぬのかな! 夢かな⁉︎ でも肩に食い込む爪が痛いから、生きてるし夢じゃない‼︎
「えへへ」
肩にスリスリする猫ちゃんを撫でて、多分私は人生で1番幸せな時を過ごした。
なんと、こちらの話のFA頂きましたー!
ありがとうございます!
活動報告にて、ご紹介させて頂きました!
もしよろしければ、下にリンク貼っておきますのでご覧ください!かなり凝ってます‼︎