第6症 優良物件は従者付き。 (1/3)
キャラクター紹介
根本 梗子
本作の主人公。1年A組。
ぼっちライフを満喫するつもりが、最近身の回りがリア充で固められ始め、怯えている。
これもあれも、王子のせいである。
イメージは黒猫。時々黒魔女。
桜路 隆貴
学園の王子様。1年A組。
行動が残念なイケメン。
ちょっとやる気になったのに、狙いを定めた獲物が、何故か自分以外も絆してくるのが気に食わない。
イメージはライオン。そして王子様。
勝貫 明聡
王子様の従者。1年A組。
王子以外には爽やか少年。
イメージはタヌキ。ところによりけり従者兼騎士。
白雪 緋奈
モデル並みにめちゃくちゃ可愛い女子。1年A組。
王子に振られた結果、慰めてくれた梗子に懐く。
イケイケなクラスのマドンナだが、言う事はいう主義だし、自分が気に入れば他は気にしない。
イメージはうさぎ。そしてお姫様。
それは突然の衝撃。いや。いつかはくると思っていた……たださぁ、今じゃないじゃん?
頬を伝う汗、ぎゅるぎゅるしてくるお腹……そう、奴の、その敵の名前は名前は……。
「席替えをします。くじで決めるので、こっちから順番に引いてってー」
無慈悲な担任の声により、刑は執行されたのだ。右から順に、皆くじを引いていく。あれに今日の運勢はかかっているのだ……。
あぁ神様、せめて端のほうで!
ていうかできれば廊下の方で!
お昼のスタートダッシュ的に‼︎
愚者の祈りは、そのまま箱の中へ吸い込まれる。そして結果は……。
「あっ根本さんじゃーん! 隣、よろしくね?」
爽やかでにこやかに、そう話しかけてくるは……お昼にたまに見る顔。クラスの中心メンバーの1人で、あの付き纏い星人のお付きの親友殿……。
神様ありがとう!
そして違う!
何で従者付きなのよぉぉぉぉ‼︎
廊下側から2番目前から2番目、隣におまけの従者くん付き物件でした。これがなければまぁ有料物件だったのになぁ!
「勝貫君……あの、無理して私に話しかけなくて良いからね? お友達と仲良くしてて大丈夫だから……」
初夏の風でも吹いてんのかなってくらい、白シャツが似合いそうな笑顔に、ぎこちない笑みを浮かべて返す。……目線だけは明後日の方向だけど。
キラキラモテリア充オーラは、日陰地下大好きモグラでは辛すぎる眩しさなのだ。
何故話しかけてきた?
王子サマのためか?
私はおもちゃか?
……いやおもちゃだったわ。
「ぶっ! 『お友達』とか言っちゃうんだ? 根本さんって結構可愛いんだね」
従者殿はそうして爽やかに……つーかめっちゃ笑ってるんですけど⁉︎
何で⁉︎ お友達、そんなに変⁉︎ 私普通に言う……まぁ今はちょっと緊張してるせいもあるけどさぁ! そんなに笑わなくても良くないですか?
可愛いと言われた事はすでに頭から抜け、傷を抉られたような気分になる。
うるさい! これが陰キャというやつだよ!
慣れてなくて悪かったわね‼︎
「……楽しそうで良いわね」
そう、そんな思った事を1ミリも出せない私は、死んだ魚の目をしながら彼にこう返しただけだった。
「酷いなー、可愛いなーと思っただけなのに。冷たすぎじゃない?」
「私、いつもこの態度ですけど」
「嘘。怒ってるんでしょ? ごめんって笑って。いつもの優しい根本さんに戻って欲しいな?」
は? なんだこの人は?
私の目も心も抉りにきてるのか?
手を合わせて、申し訳なさそうにしながらウィンクしてくるやつがどこにあるのか。
そうか、イケメンだからか、そうかそうか……ほんとマジでイケメンだわ!
謝ってんのかわからない態度なのに、それより破壊力がすごかった。え、やだ生きてけるかしない……ぼっちには、相容れぬ光景すぎる。
「……優しくないので誤解しないでほしい……」
目を逸らし、無駄に頬杖つきながら壁を作る。
やばい、このままでは私のような魔女など成敗されてしまう。もうすでにちょっと女子の視線を感じるんですが。だから教室で話したくなかったのに!
割と失礼な態度の自覚はあるものの、私とて自分の身は可愛いのだ。許せ従者よ。
しかし、そんな私の態度に怒りもせず。
「ごめんね。まぁ、これも何かの縁だと思って仲良くしてね?」
顔を見てなくても、声で分かるくらい爽やかにーー光の化身かな? って感じで、引いていった。それと同時に、女子の視線も霧散する。
こ、こわ! 爽やかなイケメンこわっっ‼︎
自分の顔の良さ分かってるイケメン怖すぎる‼︎
あぁー! 早くお昼きてーー‼︎
従者殿に心を討伐されかねない危機に震えながら、時間が過ぎるのを待った。




