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第5症 学園のスーパーアイドル、参戦。(2/3)

「……心配してくれた?」


 ビクッとしたのを見てあー、と思う。


 やっぱり根は優しいんだよなぁ……考えがバカだけど。分かり易すぎるけど。だから勝貫(まさぬき)くんに手玉にとられるのよ。


「……埃っぽいところでよろしければどうぞ、オージサマ?」

「ふ、ふん。苦しゅうない。」


 それは王様じゃなかろうか。


 そんな心のツッコミはスルーされ(言ってないから当たり前だけど)、私の座っている階段、隣に腰掛けた。


 せめてハンカチでも引いてあげるべきでしたかね。すっごい不釣り合いな図。


「しかしよくこんなところ思い付いたな。逆に感心だわ。トイレで食べてるとかじゃなくてよかったわー。流石にそこまでは落ちぶれてなかったなお前」

「うんそれは匂いとか気になるし、個室も限りがあるのに本来の使用用途以外で占領は、迷惑だからね。休み時間終わりの15分前くらいから混むの考えると、食事処には適さないし」


 なんかいつもと違うところなせいか、それとも気を遣われたせいか……落ち着かずに、無駄なことまでしゃべる。


「……いやに具体的なのは、体験者は語る的なアレなのか?」

「まさか。中学でもそれは流石になかったな」

「ん?」


 おっと。本当にしゃべりすぎだ。

 マジで心配されかけているので、話題を変えることにする。


「というか私は静かなところが好きだからいいんだけど、貴方はここに来てていいのかしら?」

「えっと……」


 おや戸惑っている。どうしたのかな?


「喧嘩でもしたの? 教室に居にくいの? ……あんまり言いたくなければ聞かないけど」

「あ…いや…まぁ居にくいっちゃ居にくいけど」

「えっなに、大丈夫? 何やらかしたの。今なら謝れば許して貰えるから早く謝りなよ」

「おめーはなんでオレがやらかしたの前提なんだよ!!」


 心配したのに怒られるとは、こりゃいかに。

 そもそも肩を持ってあげるわけがないじゃないか。


「火のないところに煙は立たないから」

「どこからも噂出てねぇだろ!」

「着火剤がここにいるから」

「着火剤だけじゃ火はつかねぇし、オレは着火剤じゃねぇ!!」


 んん、一理ある。さすが主席は頭がいい。

 たしかに着火剤の例えは、間違えでしたね。

 正しく言おうか。


「じゃあ火元はあんただとして「……」ボヤ騒ぎを起こしたのは誰なの?」

「……。」

「あ、言いにくいならいいけど」

「はぁ……告られたから断った。そんだけ」


 私の淡々とした追求に、諦めたように漏らした。


 なるほど。それで気まずくなって逃げてきた、と。

 つまりそれくらい、近い子に声をかけられたと。


 何故わかるかって、だってこいつは一応、イケメンモテモテオージサマなのだ。告白なんてごまんとあるはずで、そして断ってもいるだろうことは想像に難くなく……まぁ、慣れてるはずなのだ。


 なのに逃げてくるってことはーー私の記憶が正しければ、そんなに近い距離の子は。




「え、あんた馬鹿なの⁉︎ なんで白雪(しらゆき)さんフッてんの⁉︎ あんたご大望の美女なんですけど⁉︎」




 そんな距離にいるのは、我がクラスというか我が校が誇る、アイドル級美少女ーー……白雪緋奈(しらゆきひな)に他ならない。


 くりくりのおめめ、ふわふわの茶色い地毛(羨ましい)を美少女にしか許されないツインテールにし、小柄ながらもつくとこついたお嬢さん。明るくはっきりした性格だが、わりとフレンドリーで男子ならず女子にも人気がある。


 なんというか、雰囲気が小動物……うさぎっぽい。ふわふわなのだ。白雪という名もあいあまって。


 私も目の保養として好きです。

 可愛いは正義。

 いや話したことすらないんだけどね。


 もちろん他にも、オージサマと仲良い女子はいるんだけど、なんかうちのクラスの暗黙の了解的に、白雪ちゃんより前には出ない感じがあるのだ。


 ちなみに陰で白雪姫と呼ばれてたりする。まぁ、王子の(つい)ですよね。




 だからこそ、こやつの行動が理解できない。




「白雪さん、スクールカースト確実に1番上だと思うんですけど?」

「知ってる」


 信じられない思いで聞くが、その横顔は不満げに応えるだけだ。


「え、あんたの当初の目的美女を(はべ)らすことじゃなかった?」

「侍らすとは言ってねーよ! 1人でいいわ!」

「え?なにいってんのあんた女の子の死体を積み重ねるつまりだったくせに? 飼い殺しも死体も多殺だからね? 誤差だからね?」

「大きくちげーし物騒にすんな! ……それに、別にスクールカーストは関係ねぇよ」


 そして少しふてくされたように、睨みながらこちらを見てくる。


 何言ってんだこいつ。美少女は自ずとスクールカースト高いんだぞ。あ、何? 自分がスクールカースト上だから関係ないと? ふーん? (いただき)にいるものには底は見えないってことかな。


 そもそもあんた、彼女がステータスだとか考えるクズ思考なのにーーそれを気にしないとか、ないでしょ?


「いやいや。百歩譲ってスクールカーストは置いといたとして、この学園1の美少女フるって、正気じゃないわ。ボヤ騒ぎどころじゃない大炎上ですわ」

「なんでフったことで怒られてんだよ……」

「いや正気を疑ってるだけ。あんたの目的お眼鏡に叶う念願の、最高の条件だったと思うのだけれど? 好みじゃなかったとか?」


 あのレベルの美少女ならなんでもよくない?

 あれ? 私の方が節操なし?

 据え膳食わぬはなんとやらじゃない?


 まぁ私今お弁当という据え膳を、あんまり食べれてないんですけど。


 私の言葉に、王子サマは不機嫌に目を逸らしていう。


「……好みではない」

「はぁー……贅沢〜。理想高すぎなんですけど。私でも告白されたら付き合うのに」

「は⁉︎ お前そういう⁉︎」


 世の発言を代表して言ったら、ドン引きされた。この王子、グローバル思考はないのね。というかそこでもない。


「あー勘違いしないでよ、そういうのを否定はしないけど私は違う。比喩ね比喩。そのレベルで可愛いのにってこと」

「なんだよ……驚かせんなよ」

「いやたとえ女の子好きでも、あんたには関係ないでしょーに」

「関係ある」


 いきなりトーンが変わったので、ちょっと驚いて箸を止め、その顔を見た。




「関係あるだろ」




 その言葉を噛みしめるように……もう一度口にした彼は、まるでラブシーンでも演じる俳優のようだ。


 イケメンって罪だわ。ずるいよね、私でさえもちょっとドキッとしちゃったんですけど。噛みしめるならその右手に持ってる、その硬そうなおしゃれパン噛みしめとけよ。


 はぁ……まさかと思うけどさ。




「それ、私が拒否してる案件と関係あるってことです?」




 そう聞きながら、ミートボールをパクリ。あ、うまい。お弁当は偉大ですね。糖分は頭を働かせて現実に引き戻してくれるからね。あ、ミートボール糖分ない? 私糖分足りてない? 何気に焦ってるな?




「あったり前だろ!」



 合ってました。

 合ってなくて良かったんだけどな?




「いや、あのね、冷静になって欲しいんだけど」

「オレは冷静で……」

「はいはい、お茶飲んでおちつこ?」


 そう言って、こいつのペットボトルを渡す。


 「ってオレのじゃねーかよ」って言いながらもお茶は律儀に飲む。当たり前だ。どこにお茶持ってるのに自分の水筒差し出す人がいるんだ。間接キス苦手な人もいるのだから、そんな積極的に勧めるわけがないだろう。


「落ち着いた? カテキンはリラックス効果もあるから」

「よく知ってんな……ってそんな即効成分じゃないだろ絶対……」

「プラシーボにかからないやつめ……」

「それ絶対お前もだろ」


 失敬な。言ってくれる人によるわ。

 仲良い人なら信じるわ。

 ……つまり今は信じないな。


 その気づきに悟られないよう、スムーズに話題転換を試みる。


「とまぁ、それは置いときまして」

「おい⁉︎」

「この社会において、結果は重要視される事項だと思うのだけれど」

「いきなり重いな⁉︎」


 そんなに重くもないだろう。言い方が堅いだけで。


「結局結果が全てで、過程はそれほどでしょう? どうあれ、目標が達成されることが1番大事だと思うのだけれど。さて、ここで問題です。」

「オレの意思は?」

「貴方の目的はなんだったでしょーか!」


 問いかけに答えていたらきりがないので、率直に解答を求める。


 解だ。正解。

 求めているのは回答じゃない。


 目を見つめて強く迫れば、しかめっ面で口に出す。


「……可愛い彼女をつくること」

「正直でよろしい! それに比べて貴方の行動は、正直でないことばかりじゃないかしら?」

「それは……つーか好みじゃねぇっていってんじゃん!」

「うっ……それはそうだけど」


 思わぬ反撃を食らう。でも白雪さんレベルなら(以下略)


 というか、そこではなくて。

 目を覚ませっていう話なんだけどね?


 しかし私がたじろいだのをいいことに、あちらは元気になる。




「あと! これはオレのプライドの問題なんだよ!」




 ビシッと指でさしてくるので。


「人を指さしちゃいけないって前も言ったでしょう!」


 そう言って指を掴んで、えび反りにしてやった。



****



「ん〜やりすぎたかな……」


 あのあと、ぎゃーぎゃーやっていたら予鈴がなり、慌ててお昼をかき込んで帰った。


 気まずいという理由と、くだらないプライドがあったにしても……一応心配して来てくれたみたいなのに、あの扱いはなかっただろうか。思えば、お礼も言ってない。


 ……いやそれ以上の混乱があったからなんだけど……でも心配してくれてたのは事実だしなぁ……。


 そんなことをもんもんと考えながら、もそもそと帰り支度をしていたら。



「根本さん、ちょっと話があるの」



 予想外の人物に声をかけられた。

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