第5症 学園のスーパーアイドル、参戦。(1/3)
キャラクター紹介
根本 梗子
本作の主人公。1年A組。
冷静沈着かと思われたが猫狂いと判明したぼっち少女。ぼっちはもう気にしてない。
ぼっちライフを満喫するつもりが、学園の王子様の恋愛ゲームの策略に嵌りいいように流されている。
平穏に過ごすために離れたかったはずなのに、いざ離れられるかもと思ったらちょっと寂しくなった。
ちなみに離れるとかそんなことはなかった。
変わらないお昼に安堵したのも、束の間かもしれない……?
イメージは黒猫。時々黒魔女。主に黒髪つり目のせいだと思ってる。
桜路 隆貴
学園の王子様。1年A組。
一見俺様系パーフェクトなイケメン。
恋愛はゲーム感覚で、恋人に梗子を据えることでハイスペ女子が釣る予定が、そもそも恋人断られたため頓挫。つまり性格はパーフェクトじゃなかった。
プライド的に梗子攻略を実行予定。意固地。
前回猫カフェデートで猫に敗北するも結果オーライだった。
今回ある意味1番目標達成近いかも?
イメージはライオン。そして王子様。キラキラした自分には当然と思っている。
勝貫 明聡
王子様の従者。1年A組。
隆貴とセットでいるので従者呼ばわりされる爽やか系男子。しかし腹黒。
実際は隆貴をおもちゃにしている。たまにちゃんとアドバイスする。
あまり話したことなかったけど改めて話して梗子への印象が変わる?
イメージはタヌキ。ところによりけり従者兼騎士。主にタレ目のせいだと思ってるけどみんなはそこじゃないと思っている。
?? ??(???? ??)※本話にて登場
モデル並みにめちゃくちゃ可愛い女子。1年A組。
波乱を呼ぶ女とは彼女のこと!
そう実は名前が出てないだけで1話から多分いたりするのだ……。
割と女子女子してるよ!割って入るよ!
イメージは……。
「やっぱりお似合いだよ〜」
「そうだよそうだよ!これ以上お似合いなのないって!美男美女でさー‼︎」
盛んに飛び交う肯定の声。
「えー? どうしようかなぁー……でも分かんないし」
回答が分かっていながら、曖昧な笑みを浮かべる。
「いやそろそろいけるでしょ! もう大分入学してから時間経ったし!」
「そうそう! 毎日話してるじゃん!」
「それは同じクラスだしー……」
「えーそれだけじゃないでしょ!」
「教室いるとき他の女子より話してるじゃん!」
「まぁ仲良いけどー」
ちやほやされながら、満更でもなく思う。
席が近いし、毎日話しててあっちも悪くなさそうだし?
いけそうといえば、そうかもね。というか、話してて、タイプは結構近いし。あっちもいつも楽しそうだし?
「いや緋奈ちゃんがいけなくて誰がいけるの⁉︎」
「くっついて目の保養になってほしいー! 絶対お似合いだしー!」
それはそうよね。学園1のイケメンだもん。
私の隣でも、見劣りしない。
「んー……じゃそんなに言ってもらえるなら頑張っちゃおうかな〜?」
浴びる賞賛の声も、みんなに肯定されてイケメンの彼氏ができるのも、いつも当然のこと。
だって緋奈は、可愛いから。
****
「雨ほんとにどうしよう……」
根本梗子は絶望した。
いやいや分かってた。分かってたよ。雨がいつか降ることは……逆に何故、今まで降らなかったという話で。
実際雨は何度か降ったがその際は早弁などしてやり過ごしてきた。お昼は図書館に逃げる。
それがこうも雨続きでは、ちょっと色々考えてしまう。特に、どこで食べるかを。毎回早弁は辛いものがある……女子の早弁は目立つから。
うちの学校に空き教室は無いし……。
いやあっても、鍵かかってるんだよねぇ……。
どうしたものかと、机に突っ伏し思案していると。
「おい、顔酷いことになってるぞ」
珍しく教室で話しかけられた。
相手は言うまでもないーー我が学園の王子様こと、桜路 隆貴その人がいた。ていうか何気に教室で話しかけられたの、初なのでは。
「……酷いって何」
「そのまんまだろ」
「伏せてる人間の表情を盗み見るキチガイとか、あんただけでしょ」
「おまっ……相変わらずだな」
はぁ、とため息をつかれた。最近私がお昼にいつものところにいか(け)ないので、あまり話をしてなかった。多分どこにいるか知らないんだろうし、あっちも他に友達いるしね。
それなのに私の性格を分かっていて、わざわざ話しかけるなんて本当に物好きだと思う。
……寂しいとかではないんだけど、なんか思ったより出た声がつっけんどんになって、自分でもちょっとびっくりしている。
「……どうしたの?」
謝るのもなんか変だし、とりあえず話を促す。なんとなく、教室で話してるとこっちが悪いことしてる気分になるのは何故だろうか。
「お前昼どうしてんの?」
「それはお昼ご飯の話? それともどこにいるかの話?」
「強いて言うならどっちも」
見下ろす顔を胡乱げに見つめ返す。
それを知ってどうするのか。
「なんか適当」
「はぁ? なんじゃそりゃ」
そう言われても私も困ってるのだ。これからのお昼ご飯は本当に死活問題なんだけども、なんかそんなこと言うのも馬鹿らしいというか。
割と真剣に悩んでいると。
「あれー女の子イジメとか最悪だねー」
私にとっては助け舟が来た。
私が心の中で勝手に従者呼ばわりしている王子様の友人、勝貫 明聡……ていうかこれもしかしなくても目立つのでは? あれ? なんか視線が痛くないか?
助け舟が怪しくなってきた。泥舟だったか?
「なんでオレが悪者なんだよ!」
「どうどう」
「だから馬じゃねー!」
流石手綱の握り方が上手い。一気に話がズレた。
そしてやはりクラスの視線が気になる……屋上だとあんまり人がいなかったから、気にしてなかったけど。2人は人気者なのだ。そりゃクラスのぼっちと話してたら目立つ。
「で、話はしたの?」
「誰かさんがちゃちゃいれたせいでまだだな!」
「ふーん馬じゃなくて牛だったと」
「話が遅いのはお前のせいだろ!」
「……私図書室行くから」
楽しいコントを見てるのは嫌いじゃないけど、今は視線が辛い。退却しようと声を上げると
「てかオレらと食えばよくね?」
随分とあっけらかんとした、食事のお誘いを受けた……が。
「……冗談。ありがたいけどお断りするわ。」
この視線に耐える強靭なメンタルは、あいにく持ち合わせていない。
……どんな理由にしろ、誘いを断るのはなんか申し訳ないけど。絶対に無理なのでそう答え、逃げるように視線と体を動かした。そして昼食の地を探す旅に出るため、教室を後にした。
****
「やはり穴場スポットだったか……」
誰もいない踊り場で呟いた独り言は、思いの外響いた。
ここは特殊教室や空教室の集まる場所、4号館だ。普段使われていないこの場所は、しんと静まり返っていて内装も新しいため、学校に人がいないかのような錯覚さえ覚える。
鳳鳴学園はアルファベットでいうG型の校舎だ。上が1号館、下が3号館、それをつなぐのが2号館で、付け足されたようにGの横棒のところが4号館だ。
校庭という名称の中庭に浮かぶように設置されたここは、ほとんどいつも使われない場所だった。
……まぁ1号館からだと遠すぎるしね。
2号館から来れないこともないけど、いつもは使わないため扉に鍵があり、最短距離は一度外に出なければならない。生徒が使う教室のほとんどは本来1号館に集まっているので、滅多に来ない。
しかも校舎の3階相当の部分しか存在せず、宙に浮いているから不便極まりない。なんというか、正直なぜ作ったと言いたくなる。
使うとしたら、AクラスかBクラスの生徒が分かれて勉強するときとか、そのくらいしか未だに使われてないと思う。
ちなみにAクラとBクラは3号館にある。
それ以外のクラスは3号館には存在しないため、隔離クラスと言われている……らしい。
よって部活に所属しない私は、それ以外のクラスの人達を昇降口ぐらいでしか見ない……うちのクラスの人気者たちのファンを除けば。
まぁ同じだったら、もう私は生活できてない。
すごいんだもん、みんな情熱が。
なんとうちには王子御一行以外にも、スーパーアイドルがいらっしゃるのだ……顔面偏差値まで高いのかこのクラスはと思ったものだ。目の保養と言えば聞こえがいいけれど……。
「……世の中不公平では?」
何故せめて1人くらいBにしなかったのか。クラスメイトに今年の目立つトップ2がいる気持ち、分かるだろうか。(従者殿は除く)
そして私はぼっちだ。……この意味、分かるな? って感じだ。
マシだとしても、もう軽く死にたい。落ち着かなさすぎるし、何も思わないつもりでも、なんとなく惨めになるのだ。……住む世界が違うと。
ダメだどうも暗くなる。ここが暗いからか。
全然使われていないであろう電気もついてない階段に腰掛けて、食事くらいしかもう楽しみがないのだから、1人でゆっくり食べれることに感謝して食べようとして。
「くっら‼︎ こんなとこで食う気かよ‼︎」
静寂は終わりを告げた。なんで来た。
「毎回教室じゃつまんねーじゃん?」
そういって隣に腰掛ける彼の手には、購買の袋があった。どうやらここで食べる気らしい。珍しい。
「なんで、食べてこなかったの?」
「気分」
そういうとそれ以上は話さない。……これはもしかして?




