つながる相手は
今日の朝の会で、セミの声を聞きながら、園長先生といっしょに、光の呼吸と‘世界中の子どもたちが’を、歌って、踊った後、子どもたちは、もううっすら汗をかいていました。朝から日差しが強く、園庭に立っているだけで、足元からむわっと、熱気があがってきます。
園長先生も、汗をしたたらせながら朝礼台の上で、にこにこしていましたが、突然両手を上にあげて、空をみあげました。
子どもたちは、なんだろと、見つめていました。
園長先生は、ふんふんふんとうなずきながら、元にもどると、残念そうに言いました。
「ちょっと、今、風に聞いてみたんだけどね、・・・しばらく、風はまだ吹かないそうだよ」
「えーーー」
「なあんだよ~~」
「何かと思ったし」
「でも、いい話も聞いたよ。いいニュース、風からのメッセージーー!」
子どもたちは何々と、見つめました。
「HAPPY NEWSだよ!、明日から夏休みだけれど、夏休みの間にみんなに、いいことがたくさん起こるそうだよ! んー、素晴らしい。
それにはね、ずっと、いい気分でいてね、だって。そしたらね、素敵なことが起こる風が、ふわわわあと吹くそうだよ」
「ヘエ~~♡」
「それは、すごいぞ」
「いい気分でいよっと!」・・
「ハハハハハ よかったね~ 素敵なこといっぱい起きるよ!
あ、そうだ! 嬉しいことだけじゃなくって、悲しいことや、怒ったりすることがもし起こったりしたときには、・・・えー、そんなことは起こらないでって言っても、無理なので、・・ははは、あーその時は、その気持ちをいっぱい感じて、感じて感じて、出してしまいましょう。ね。」
「うん、」
「わかった」
「それから、夏休みの間にしてほしいことはもひとつあります。それは、いつもやっている光の呼吸と、グラウンディングとオーラを整えて、光でおおうことだよ。
みんなの持っている光が曇らないように、できたら毎日しましょう。
そしたら、朝の会は終わりです。
みんな教室へもどります。今日も楽しく過ごしましょう」
子どもたちが、軽い足取りで教室に戻っていきます。
みんながいっせいにもどったので、靴箱のところで混んでしまって、なかなか前に進みません。
ちょこちょことほんのちょっとずつ前に動かしている子どもたちに混じって、なすびくんが、朝の会が始まるまで遊んでいたサッカーボールを胸に持って、ぐいぐい押して、前にいるズッキーニくんを追い立てていました。
「おい、早く行ってよ!」
「行けないんだよ、つまっているんだ」
「行けってば」
「行けないんだよ」
「早くしろよお」
「待って・・」
「あ」
何かの拍子に、よそ見をしていたなすびくんの手から、サッカーボールが勢いよく手から外れて、ポンポンポーンと転げていってしまいました。
「おまえ、あれ、拾ってきて」
「え?・・な、なんで」
「いいから、あれ、拾ってきて」
「・・・・・・・」
「早く拾ってこいよ!」
「う・・・・うん・・・」
「こ~ら、自分で取りに行きなさーい」
いつの間にかトマト先生が近くに来ていました。
「取りにいったら、またここに戻ってきてね、待ってるから」
「えーーー」
なすびくんは、なんだよーと言いながら、取りにいきました。
トマトせんせいが、うなずいたので、みんなから少し遅れて教室に帰りかけていたズッキーニくんは、隣に誰か立ったのを感じて、見上げると、園長先生でした。
「ズッキーニくん、ちょっと重いけど、これを園長室まで運ぶのを持ってくれるのを手伝ってくれないかい?」
園長先生は、ほうきやら、ちりとりやら、草抜きやら、除草した後の草が入っている袋やらいっぱい持っていましたが、片手で音楽がなる機械を持ち上げて言いました。
「うん、いいよ」
「おお、ありがとう、助かるよ」
ズッキーニくんは園長先生といっしょに、園長室までついていきました。
なすびくんは、ボールを拾ってくると、トマト先生のところまで、戻ってきました。
「せんせい、取ってきたよ」
「はい、OKです。自分のことは、自分でするんだよ」
「はーい、わかりましたーー」
なすびくんは、あっちを向いてちょっとふざけて言っています。
「ちょっとおいで」
「なんだよーもう、いいだろー、おれ、行くから]
教室へ向かって歩き出しました。
「ちょっと、待って」
「ちぇ、・・うるさいんだよ」
なすびくんは、小声で言いましたが、ちゃんと、先生の耳に届きました。
「待ちなさい!こっちへおいで」
「何かようなの?」
「いいから、こっちおいで}
なすびくんが、トマト先生のそばまでやってくると、トマト先生は、なすびくんの顔をのぞきこんで目を見つめました。
「なんか、いつもと違うねえ。おうちで何かあったの?」
「え? なんにもないよ」
「ふ~ん、何か変わったことはあった?」
なすびくんは、ちょっと黙ってにやりと笑って得意そうに言いました。
「おれが何をやってるかを知ったら、先生だっておどろくよ。おれの言うとおりにしたら、いいことが起こるんだ。だから、おれを怒らないほうがいいよ」
「・・・・ばかもの!」
トマトせんせいは、いきなり大声で雷を落としました。
なすびくんは、びっくりして口を開けています。
「見えない存在と話をしてるでしょう。でもそれは光の存在じゃないよ。ただのしょうもないやつだよ」
「ちがう!光の存在だって言ったもん!光の存在だ」
「何を言われたか当ててみましょうか、、あなたは、とても特別です。他の子たちとは違うのです。あなたは選ばれました。私の言うことを聞けば、あなたは、みんなを助け、ヒーローになります・・そんな感じでしょう」
なすびくんは、怒った顔で聞いていましたが、だんだんと泣きそうになってきました。
「そうだよ、そう言ったよ、ぼくは特別だって」
「それは、光の存在じゃないんだよ、光の存在はそんなこと言わないの」
「でも、すごくやさしかったんだ、励ましてくれたんだよ」
「でも、おだてられて、いい気分になってぼくは凄いって思ったでしょう。その存在の言うことを聞いて動いているんじゃない?
心がきれいだったら、ズッキーニくんに、えらそうに取って来いなんて言わない」
なすびくんは、目をまん丸にして聞いていましたが、急に怖くなったようで、うっうっとうっと泣き出してしまいました。
「うっうっうっ、あ~ん、あ~ん、あ~ん」
トマト先生は、なすびくんをぎゅっと抱きしめて、
「大丈夫、大丈夫、気がついたから、もう平気」
と、行って背中をトントンしました。
「平気なの?」
ヒックヒックしながら、なすびくんが聞きました。
「平気平気。ほら、前にも言ったでしょう。その存在がコンタクトを取ってきたら、ぴっと違うことを考えるんだよ。それだけ。今日の晩御飯はなーにかなあとか、お、今度はこれで遊ぼうとか、何でもいいんだよ。テレビのチャンネルをかえるようにぴんだよ」
「うん」
「なすびくんの方が、強いから。あ、うるさいな、カチッで終わり」
「うん」
なすびくんは安心したようで、だんだん穏やかになってきました。
「光の存在と繋がるとね、とても温かいんだよ。こうしなさいと言わない。おだてたりもしない。ありのままで愛してくれているのが分かるから、とても安心するんだよ。暖かい波動で包んでくれるの。
それから、魂の成長につながるメッセージをくれるの。分からなかったら、何回も何回も同じメッセージをくれるんだよ・・・もう。わかったから、今度はきっと、光の存在とつながれるよ」
「うん」
「さあ!教室に戻ろう。みんなが廊下でこっちをみてる。行こう行こう」
2人が教室にもどると、こどもたちが、どうしたの?どうしたの?と、聞いてきました。
なすびくんは黙って自分の席に座りました。
「みんな~自分の席に座りましょう」
子どもたちは、、それから歌をうたったり、粘土をしたりして、すぐにお帰りの時間になりました。
トマト先生は。子どもたちの前に立って、ふと、子どもたちの顔を。見回しました
還る用意をして、こっちを向いている子どもたちの顔は、とても素直で、無邪気な目をしていました。
「みんなー、明日から夏休みです。元気に過ごしていてね。
光の呼吸と。グラウンディングとオーラを整えることもしてください。
それから、ずっといい気分でいるようにして、素敵なことをいっぱい創ってね」
「はーい」
「はーい」
「みんなは光の存在です。心の中にやさしさとか、思いやりとか、強さとか、いっぱいつまっています。
心の中にこうしてあげたいなあって、湧いてきたら。まわりのみんなにやってあげてください。
たとえば、どんなことがあるかっていったら」
「はーい」
レタスちゃんが手をあげました。
「お母さんのお手伝いをする」
「うん、そうだね」
「はーい」
「はい。じゃがいもくん」
「弟にやさしくする」
「うん、そうだね」
「はい、オクラくん」
「ごみを拾うー」
「ほー、なるほど」
「動物をかわいがる!」
「喜びそうだね」
「あいさつをする」
「おお、大事だね」
「ありがとうを言うこと」
「うん、いいね。
うん、みんなすごい、どんどん思いつくね~。
そうやって自然に思いついたことは、どんどんしてあげてください。
そうするとね、してあげたことなのに、こっちがいい気分になります。
あったかい気持ちになるよ。みんなは光の存在だから、そんな気持ちになります」
こどもたちは、うんとうなずいています。
「そしてね、やってみて、失敗したなーと思っても、あまり落ち込まないこと。失敗は、誰でもするし、失敗があるから、心が大きくなります。おお!新しい自分だーと思ってね!」
なすびくんが、口元をひきしめて、うなずいていました。
「せんせいー、まだズッキーニくんがいないよ」
「ズッキーニくんは、まだ園長先生とお話しています。大丈夫。
そしたら、みんな今日はこれで終わりです。楽しい夏休みを送ってね!」
トマト先生は、にっこりと笑いました。