ゴブリンの強者達〜弍〜
誤字、脱字、文章が可笑しかったらごめんなさい。
生物にとって水とは生きていくために必要な存在だ。それは森の中の魔物達も当然必要としている。だから、池や湖がある所に縄張りを作るのは自殺行為だ。全ての魔物が必要としているために進入は後を絶たないだろうし、相手は皆必死になって縄張りを作った存在を排除しに掛かるだろう。己が生き残る為に。
つまり、基本的に縄張りを作る魔物は少ないという事だ。全くいない訳ではないが少なくとも縄張りに進入した魔物を追い出す様な事はしない。
だから、そこは魔物達にとって楽園だ。其処では争いはなくゆっくりして水を飲める。勿論奥まで泳いだりすると水生系の魔物に捕食されるが、水辺で水を飲む分には問題はない。
今2匹の鹿の様な魔物が湖の水辺で水を飲みに来た。大きな捻れた角を2つ持ち、その角を支えるためか首はとても太かった。身体は少し細っそりとしているが、体毛の上からでも分かるくらい筋肉が付いている。その2匹は喉が渇いていたのか早足で水辺に行き、水を飲む。
2匹は飲み終わってから少し身体を休めていた。ここは憩いの場でもあるのだろう。お互い身体が休まるまでその場で休んでいた。暫くしてお互い休まったのか、その場を後にする。
湖から少し離せてから前を歩く鹿の魔物の頭に何かが飛んで来た。食糧でも探していたのか飛来物に鹿の魔物は反応する事が出来ずに頭に強い衝撃が襲う。脳まで響いたのかその場でよろめいた後に倒れた。その横で石ころが落ちていた。急に片割れが倒れた事に慌てたもう1匹の鹿の魔物は引き返し、走り去ろうとする。しかし、走り去ろうとした瞬間に脚に衝撃が走り、鹿の魔物は飛ぶ様に転がっていく。その近くに石ころが落ちていた。転んだのを待っていたかの様に五つの影が森の中から出て来た。
鹿の魔物は目を見開く。
こいつらなのか。片割れを倒し、自分を殺そうとしているのは。
鹿の魔物に信じられない事だった。
こいつらは自分よりも弱者の筈だ。自分達の蹴りで簡単に吹き飛び、角で軽く倒せる弱者達。故に自分達が通ったらバレない様に必死に隠れていた弱者の筈だった。
倒れた片割れに4匹の弱者……ゴブリン達が囲み、手に持っている木の棒で突き刺した。暫く痙攣した後片割れは動かなくなった。死んだか。
次は自分か。ふざけるな。弱者の癖に。
鹿の魔物は必死に首を振り回しゴブリン達を近づけない様にした。鹿の魔物の角は確かに頑丈で石すら壊す事ができる。しかし、当たらなければ意味がない。振り回すのに疲れたのか、首を止めた。その瞬間に頭に石が飛んで来た。
酷く鈍い音と同時に鹿の魔物の意識は其処で途切れた。
俺らの主人からの命令で狩りに来て結構時間が経った。始めは太陽が上にあったが、今では山に隠れようとしている。
其処で改めて今回の成果を見た。小動物達がよく食べている木の実やその小動物達。そして先程倒した鹿の魔物が今回の成果だ。
中々の成果だと思う。今回は犠牲なしで鹿の魔物を狩れたのだ。気分はとてもいい。やはり石は素晴らしい。何処にでもあり、離れた獲物も にも攻撃ができる、優れた道具だ。
鹿の魔物を狩る時に、最初に俺が持つ石を頭に当てて倒れた所を他の同胞がトドメを刺しに行く。その間に俺はもう1匹の魔物の脚を狙い逃げられない様にする。作戦は単純だが、効果的だった。2匹目の鹿の魔物は頭を振って暴れていたが止まった時に頭に当てたら気絶した。動かなくなった鹿の魔物に同胞がトドメを刺した。
とても気分がいい。楽しかった。こんなに簡単に倒せる事に。自分の思惑通りになった事に。犠牲なしで倒した事に。全てが初めての経験でとても気分が良かった。
何故今までこんな簡単な事が考えられなかったのか不思議だったが、今はどうでもいい。この気持ちを噛み締めよう。
其処から俺たちは様々な魔物を狩っていた。兎の魔物、蛇の魔物、そしてまた鹿の魔物を倒した時にそれは起きた。
身体が熱い。他の同胞達も俺と同じ状況なのか四つん這いになったり身体を抱き締めたりしていた。
なんだこれは。まるで身体の中に炎が巻き上がっているかの様な感覚だ。
思わず自分の腕を見る。そこで目を見開いた。腕の血管が浮き出て強く脈を打っている。驚いて他の部位も見る。足が腹が胸が全ての部分から血管が浮き出て脈を打っていた。
何がどうなって…!
次の瞬間身体が膨張した。
身体が引き裂かれる様な痛みが走り思わず悲鳴を上げた。自分だけじゃないようで周りからも悲鳴が上がっていた。
目で見ていて分かるほどの速さで身体が膨張していくのに恐怖しながら自分の変化に何も出来ずに見ているしかなかった。自分の腕が丸太の様に太くなり、腹は石を入れた様に腹筋が膨れ上がり硬くなった。胸も分厚くなり、足は膨張する前のお腹くらいの太さになった。
なんだ?
気が付いたら痛みは引いていた。恐る恐る立ち上がりながら周りを見る。
そこには痛みが引いたのでろう同胞達が呆然と立ち上がり自分の身体を見ていた。
呆然としていたが時間が経つにつれ、それは歓喜に変わっていった。
これが!!これが新たな力か!
獲物を狩り。得た力か。
見違える大きくなった身体。鉄にでもなったのではないか思わせる頑丈な肉体。そして無限に溢れてくる様な力。
素晴らしい。素晴らしいぃぃ!!
俺は思わず笑い声を止める事は出来なかった。同胞達も同じな様で一瞬唖然としたが次第に顔を歪めて大き笑っていた。
あぁ試してみたい。この力を。今の自分の実力を。感じるぞ。これは魔物の気配か?
大小様々な気配を感じる。その中に一つ感じた事のある気配を見つけた。
こいつだ。こいつで確かめてやる。
俺は仲間達に獲物を置いて来いと言った。仲間達は不思議そうな顔をしていたが俺の顔を見て同じ表情になり、俺の後について来た。
分かるか、お前ら。あぁそうだ、獲物だ。
俺たちの力を。新たに手に入れた力を試す相手を見つけたぞ。お前達も知っている相手だ。さぁ行こうか
狩りだ。
森の中にそれはいた。白く頑丈な骨で顔を覆い額には鋭く太い大きな角が太陽の光で輝いていた。身体は茶色い体毛。脚には発達したかの様に骨で包まれてきた。それは、まるで森の主だと言わんばかりの堂々とした歩きで今日の食事になるキノコや虫を探していた。
そう。あの猪の魔物だ。大きさからして親の横にいた子供の方だろう。彼はそろそろ親から離れる時期が来ており、自分で獲物を取り、敵を排除しなければならない。だから、ここ最近は親から離れる事時間が多くなっていた。
見つけた。小さい方だが、まずはあれから倒すとしよう。
俺も含む同胞達の顔が歪んでいく。あぁ楽しみだよな。俺たちのこの力が。まるでオーガやトロールになった気分だ。この豪腕で強靭な足で暴れ回りたい。今の俺らならそれが出来る。
腕からミチミチと音がなる。力強く握りしめ、筋肉が盛り上がっていく音だ。
こんな音今まで聞いた事がない。これが堪らなく嬉しい。小さい事だが、前に出来なかった事が今は出来る。なんて素晴らしい事か。
まずは、俺が先頭を切り、予めに持っていた石を全力で猪の魔物にぶつける。
かなりのデカい音が出たが少し削れただけだったみたいだ。猪の魔物は突然の事に驚いていたが、俺を発見すると片脚で地面を蹴り、その自慢の角を此方に向け走って来た。
速いな!
横移動をしながら避けようとするが当たり前の様に方向修正をしながら走ってくる。
あの速さで良く修正が効くな。と感心する間も無く目の前まで来る。その瞬間に急に止まり、方向を変えた。
流石に此れには対応出来なかったのか通り過ぎていく。しかし、そのまま走りながら今度は森の木々を回避しながら走って来る。
なるほど、これは厄介だ足音は聞こえても音の出方に違和感を感じる。音が聞こえてくるのが遅い。スキルか何かか。
耳を澄ましていると急に後ろから大きな音と共に猪の魔物が現れる慌てて回避したが肩に擦り傷を負う。
なんて威力だ。肩の皮膚から摩擦で焦げた様な臭いがする。まともに当たると死ぬな。
この身体になっても死ぬかもしれない事に恐怖はない。寧ろあの攻撃を避けれた事に喜びすら感じる。以前なら最初でやられていた、以前ならあの速度を追う事は出来なかった。
俺は強くなっている。それが堪らなく嬉しい。
猪の魔物は角に張り付いた肉片を顔を振って落とし、此方に突進しようと脚を地面を蹴り始める。
そこに猪の後ろに潜んでいた同胞達が木の棒を猪の魔物に一斉に突き立て始める。
相手は俺だけじゃないぞ。ゴブリンの真骨頂は集団による物量戦だ。
猪の魔物は反応に遅れ攻撃を許すが流石と言ったところかダメージは負っていない様だ。
やはり木の棒ではダメか。俺たちの剛腕なら行けると思ったが木の棒が豪腕と強靭な猪の身体に耐え切れず折れた。
その瞬間に顔を振り上げ同胞の1人に角が襲いかかる。同胞は避けたみたいだが完全に避けたわけではなく、背中に決して浅くない傷を負った。しかし、そのまま力任せに猪の魔物に飛び付き首を絞め始める。これは小動物達を仕留める時のやり方。なるほど、武器より己の肉体の方が良いと判断したか。確かにそうだな。石ですら弾かれ木の棒も駄目ならば後は一つだけだろう。
この肉体を信じ、相手を屠る。
其処からの俺の。いや、同胞らの行動は速かった。1人が後ろ脚を持ち上げ動けなくし、もう1人が何度も何度も腹に向けて垂直に脚を振り落とす。俺は再び石を持ち奴の目に向けてそれを振り落とす。
猪の魔物は何度も腹を踏まれ、目が潰され、口から胃液を出し、必死に脚を持つ同胞を蹴り上げる。その度に、また捕まれ首を絞め、腹を蹴られる。
徐々に弱っていくが流石と言えばいいのかまだ抵抗する。また同胞の脚を持っていた同胞が吹き飛ばされる何度も食らったせいか立ち上がるのが遅い。次は俺の番だな。俺は即座に後脚の方に行き、万力の力を持って掴み上げる。暴れる度に発達した足の骨が身体を引き裂き俺の身体を血に染めるが知った事ではない。このまま千切ってしまうつもりで握りしめていく。
そのまま動けなくなった猪の魔物はとうとう動けなくなり、地に横たわる。
暫く俺たちは呆然とした後、今日で1番の咆哮を上げる。その音にビックリした鳥達や小動物達は慌てて逃げて行くが気にはしない。
こ、これが勝利か。これが強者の気分か。
なんと気持ちのいい事だ。俺は始めて、弱っていない強者と戦い、犠牲を出すことも無く倒した。
身体が弾けそうな程気分がいい。
世界にいる俺たちゴブリンに伝えたい。俺らは弱者では無く、強者になったぞ。狩られる側では無く狩る側になったぞ。と伝えたい。
俺たちは勝利の舞をしていた。他の同胞の達の集落にもあった様で同じく舞をしてくれている。違う集落から召喚されたからだろう皆が皆、全く違う舞をしている。
流れる様な舞。荒々しい舞。ただ跳ねてるだけの様に見える舞。様々だった。
気が付けば朝日が出てきた。流石にはしゃぎ過ぎたか。主人の元に帰らねば。背中に傷を負った同胞は俺たちが踊っている間薬草を付けていたから動けそうだ。1人が肩を貸して、残りの3人が猪の魔物を担ぎ運んで行く。その途中で大きな声が聞こえた。気づいたか。お前の子供は俺らが倒した。次はお前だ。俺たちはその咆哮聴きながら洞窟へ帰って行く。
洞窟に帰ると俺らの主人が驚いた顔をしていた。俺たちがこの猪の魔物を狩ってくるのが予想外だったのだろう。俺たちは胸を張り顔を歪ませながら俺らの主人に見えれる様に俺たちの武勇の象徴である猪の魔物を持ち上げた。
それから俺たちは狩の限りを尽くした。今では300まで同胞は増えた。1集落60匹の集落を5個作り、俺たちがそれぞれ長として率いている。俺の集落ではあの猪の魔物の親の頭部が飾ってある。あれから更に力を手に入れた俺たちは遂に親の方も狩れた。強敵だった。身体まで覆った骨は子供の骨より遥かに頑丈だった。同胞の部下に武器を作れる奴が居なかったら負けていただろう。同胞の1人が治める集落には物作りが上手いゴブリン達が多くいる。それは身を守る木で出来た盾であったり、木の棒に石を挟んだ斧であったり様々だ。直ぐに壊れるが一撃が凄く、あの親の猪の魔物の骨に一撃でヒビを作るほどだ。
そして、新たに俺らの主人が土の魔物を召喚した。主人は更なる戦力をお望みか。ならば一層同胞には子作りに励んで貰わねばな。あの二匹の事だ。快く承知してくれるはずだ。
俺たちはもう弱者ではない。狩られる側ではない。狩る側だ。新たに生まれてくる子供達には犠牲を出しながら獲物を狩るやり方教える必要もない。胸を張り仲間達と獲物を狩っていく方法知っていればそれだけでいい。
いや、教える必要もないな。この力が、更に溢れてくるであろう力が俺たちに教えてくれる。戦い方を、強者の在り方を。そして戦う事の快楽を。
そうだ。俺達は強者だ。
誰が誰なのか分かりづらいかな?まぁ彼らには名前ないしね。
そして、新発見ゴブリンは召喚された時から強化されてましたとさ。本来ならスキルはありません。集落の長が『仲間を呼ぶ咆哮・ゴブリン』を持っているぐらいです。それを人間側は利用し一気に片付けるって感じです。そして、猪の魔物。もし人間側で現れたら国の一軍が出るか、高位の冒険者が出張します。猪の魔物は四つスキルがあるのですが、まぁ出番なしだね。四つスキル持っていたら基本的に強者です。雑魚では勝てません。もしかしてもありません。
ゴブリンチートやん。知ってる。
彼らは急に授かったから使い方を完全に理解してませんが、まぁ彼らは戦闘思考たがら大丈夫。視点が変わればただの変態集団になるかもだけど大丈夫白目)
そして薬草はこんな読み方しないです笑
ゴブリン達の薬草の言い方を変えてみようかなと考えて、(くすりね)と書いてみました。特に意味はないですね。違和感が消えない方は薬草と読んで下さい