プロローグ
「やっと此処まで揃ったか。」
俺は眼前の配下達を見て満足感を得ていた。
俺の前には、脆弱なゴブリンとは思えないほどの強靭な身体を持ち、皺くちゃな顔の筈のゴブリンの顔は程度整っている。そして野生的では無く知性のある瞳。この瞳を見ればしかしその瞳の奥には破壊と闘争の色が見え隠れしている屈強なゴブリン。
本来なら人間程の太さと大きさしかないゴーレム。基本的にゴーレムは岩や土などで出来ている事が多い筈なのだが、硬質的な金属の光沢を放ち4mは超えるだろう巨大な身体。そして身体には古代文字の様な文字が書かれ、それは淡く光っている。人が見れば要塞の様なゴーレムだと恐れ慄くだろう。
他にも鋼の様な硬さと他のウォートロールよりもデカイ身体と無限にも思える体力を持つ亜人種最強のウォートロール。攻撃力だけならウォートロールをも凌ぐ破壊の申し子オーガ。
圧倒的な戦力を持ち同種なら追随を許さない我が最強の配下達。
この力があれば近隣の国家群など恐るに足らないだろう。もう何も恐れる事はない。そうだ。俺は………
「よし!!これで誰も辿りつけないだろう!!後は家(迷宮)に篭ろう。」
俺がこの世界に来た切っ掛けは知らない。
気付いたら此処にいた。
何で?誰が連れたてきた?よくある神様が転生させたとか?俺会ってないけど…。記憶が消去されたから覚えていないのかもしれない。
寝てる間に連れてこられたのかもしれない。
俺は周囲を見渡した。周りは薄暗く、土壁で覆われた立体四角形の様な部屋の様だ。真ん中には人の頭程の水晶が浮きながらゆっくりと自転していた。まるで水晶の地球みたいだな。
此処で考えていてもしょうがない。
取り敢えず水晶に触ってみるか。不思議とアレは俺の物だと身体が訴えかけてくる。悪いものでは無さそうだ。
触れた瞬間に水晶が輝いて頭に知識が激流の様に流れて来た。
「ぐっ、、、がぁぁぁぁぁぁ!!!」
凄い知識の数に思わずうずくまる。数分経つと頭痛が次第に引いていく。
「はぁはぁ。やっと治ったか。くぅ〜痛かったぜ!もう勘弁してくれよ。」
だがお陰でこの世界の知識や俺という存在が分かった。
どうやら俺のいる所はゲームとかでいうダンジョンで、俺はそのダンジョンマスターのようだ。まぁ此処では迷宮だけど。迷宮の目的は生きる事。まぁなんて当たり前の事を言っているんだと思うだろうが。
迷宮の生きるエネルギー…俺らで言うところの食事だがどうやら生物を吸収し魔力を糧に生きているみたいだ。
つまりその魔力でダンジョンを広げモンスターを作り魔力を吸収しろって事だ。
…え?
マジか!?
これアレだろ?ゲームだと人間を襲ってやり過ぎて勇者様に殺されるパターンやん!!
…よし。決めた。最低限の魔力を補給して殺されない様に篭ろう。
どうやらあの水晶は俺と一心同体で、水晶が壊れると俺が死に。俺が死ぬと水晶も壊れるみたいだ。
尚更、外に出られねぇ!!
まぁその辺の動物でも倒して補給すればいいだろ。だから、まずはモンスターを召喚して手下を増やすか。
俺は部屋の真ん中にある水晶に手を伸ばす。さっきの流れて来た知識にこの水晶の使い方も一緒に流れてきたから使い方がよく分かる。まだ、使った事ないから不安ではあるけど。
「えっと。起動。」
おうおう。ダンジョン拡大や魔物召喚。トラップ設置など色々あるね。ん?知識ではモンスターってあるけど魔物なの?どっちよ?……まぁ俺の半身が魔物って言うなら魔物なんだろう。
じゃあ魔物召喚っと。
俺は水晶の魔物召喚を意識すると、魔物の名前が浮かび上がってきた。
魔物召喚
ゴブリン・・・亜人種で身長は人間の胸位。何処にでも集落を作り、かなりの速さで繁殖するが狩りなど時は集団で行動はせず、力が弱く大人の人間に力負けするため、すぐ滅ぶ。魔力2
コボルト・・・亜人種で人種は人間の胸位。足は速いが力はゴブリンよりも弱い。主に森に集落を作り集団で狩りをする。魔力3
魔蟲・・・魔蟲種で力も弱く移動速度も低くく他の魔物の餌になりやすい。魔力1
殻蟲・・・硬い殻に覆われた蟲。そこそこ硬く一般の人間種の素手では壊せない。しかし移動速度が遅く、上位の魔物や中位の魔物の餌になりやすい。口には鋭い歯があり不用意に近づくと噛まれる。魔力4
オーク・・・堅い皮膚と脂肪に覆われた身体を持つ亜人種。力も強く一般人間種では歯が立たない。雌が生まれる事がないため他の雌種で繁殖する。そのため性欲が強い。また性的行動をする相手がいない時が長くなると暴走する。制御が難しい魔物。 魔力15
爆裂蟲・・・身体の魔力を暴走させ爆発する事で周囲にダメージを与える魔蟲種。爆発後は瀕死の状態で生き残る事が出来るが子供程度にやられる。しかしスキルに自然治癒・蟲があるため、暫くしたら元に戻る。 魔力17
おぉ!なんか色々とあるな。他にもありそうだが『???』で灰色になっている。これはレベルアップしたら解除されるって解釈でいいのかな?
それにしても迷うな。
まずはゴブリン。うん。定番だね。繁殖の速さで即戦力にしたり、肉壁にも出来たりするから悪くないね。
コボルトもいいね。集団行動に優れているなら格上の魔物も倒せたりするかもしれないね。
次に魔蟲は…え?なにこれ?餌か?周りに魔物の餌がなかった時の保険か?そうだよな。この魔物。なんて哀れな。
それに比べたら殻蟲はマシかな。移動速度が遅いのは気になるけど防御力はそこそこあるみたいだな。でも素手程度って…。武器の攻撃は無理って事だよね?
微妙だな。まだゴブリンの繁殖力の方が魅力的だわ。
次はオークか。中位の魔物に位置するのかな。消費魔力が明らかに高くなっているし。力も強いって魅力だけど。暴走か…。初心者の俺には荷が重いかもなオークだけだったら繁殖しないし、混ぜたら襲うだろうしね。ゴブリンやコボルトにも感情があるなら怒ると思うし、配下同士の争いは避けたいな。だから却下かな。
そして最後が爆裂蟲。こいつは攻撃力が高そうだな。スキルに自然治癒・蟲ってのがあるから敵にトドメをさす時に使えそうだ。
だけど、他のはデメリットがあるのに此奴のデメリットは低すぎないか?何か裏がありそうだな。不安過ぎる。
……やっぱりここは無難にゴブリンにしよう。此処で繁殖してある程度戦力を増やせばいいだろうし。お互いの集落を襲わない様に命令してこの周辺に集落を作って広げて行けばさらに効率的に増えていくだろうし、人間達も直ぐには近付けないだろう。その間にレベルを上げつつ魔物召喚の魔物の種類を増やしてダンジョン内の強化をして行こう。
あ、でもその前に俺の魔力はどれ位あるんだ?いやこの場合は水晶の魔力か?考えもせずに召喚したらダメだな。まずは調べるか。時間もあるし慌てる事はないと思うだろう。
俺は水晶にステータスオープンと念じた。
水晶
水晶ランクG・・・ランクGの水晶。ランクが低いため魔力貯蔵量は多くない。
しかしランクが低いため魔力の必要消費値も低い『12時間に1消費』
魔力値15/300
あっぶねぇぇぇぇぇ!!
誰だ!!オークや爆裂蟲を召喚しようとしたやつ!召喚したら即死んでいたよ!
な、なんて罠だ!危ねえよ!
いや、待てよ?
知識の中に迷宮主は水晶に魔力の譲渡が出来るそうだから、それで増やすか?
譲渡した分の半分しか水晶に入らないから効率は凄く悪いみたいだが無いよりマシだろ。
てか、俺はこのままだと後一週間で死んでしまうからな。譲渡した方がいいだろう。
だけど、その前に俺のステータス確認だな。
「ステータスオープン。」
進化の迷宮主レベル
RANK E
名前 『不明』 レベル1
種族 『迷宮主』レベル1 (魔力の強奪)
固有スキル 『種族の進化』
特殊スキル 『鑑定・迷宮』 『支配者』 『一つの進化論』 『七つの縛り・神』
通常スキル 『憤怒の感情』 『強欲な行動』 『怠惰の支配』 『嫉妬の衝動』『傲慢な態度』 『色欲の誘惑』 『暴食の波動』
魔力150/1200
種族
『迷宮主』レベル1・・・迷宮の主人。迷宮内の何処へでも転移が可能。しかし、外に出ると身体能力が低下する。
(魔力の強奪)・・・迷宮主の固有スキル『種族の進化』により進化条件(魔力の強奪)を取得。迷宮の水晶に一定量の魔力を吸収させる事でレベルが上がる。レベルが上がる度に種族固有スキルを取得が可能となる
残り0/150
固有スキル
『種族の進化』・・・本来は上がらない筈の種族のレベルを上げる事が可能。それにより、より強力な状態で魔物を召喚できる。
特殊スキル
『鑑定・迷宮』・・・自分の所有する迷宮内で様々なものを鑑定する事ができる。
『支配者』・・・自分の配下の統率力を高める。配下同士の連携率も少し上昇。
『一つの進化論』・・・固有スキル『種族の進化』を保有する場合に獲得可能。
ダンジョン内の魔物を一つに絞る事により種族レベルの必要経験値を削減する。
『七つの縛り・神』・・・無理矢理この世界に来たため神により与えられた縛り。七つの通常スキルを強制的に取得させ、他の通常スキルの獲得率を大幅に下げる。
通常スキル
『憤怒の感情』・・・怒る事により攻撃力が大幅に上昇するが、思考能力が低下し、暴走率上昇。
『強欲な行動』・・・敵から奪う時に確率で発動。命中精度が大幅に上昇するが、回避率が大幅に下がる。時間経過と共に思考能力が低下。暴走率上昇。
『怠惰の支配』・・・身体を一定時間動かさない事により発動。防御力が大幅に上昇するが。思考能力が低下し身体の始動率が低下する。
『嫉妬の衝動』・・・戦闘中に確率で発動。敵のスキルの中に自分が所持していないスキルがあった場合、攻撃力と移動速度が大幅に上昇する。嫉妬の感情により暴走率が大幅に増加。
『傲慢な態度』・・・敵が格下の時に確率で発動。敵の判断思考能力、俊敏性、回避率を大幅に低下させる。発動中は撤退が不可能となり、暴走率が大幅に上昇。
『色欲の誘惑』・・・敵対者が異性の場合に確率で相手を興奮状態にし、暴走率を大幅に上昇させる。自身の他の通常スキルの発動率を大幅に上昇させる。
『暴食の波動』・・・任意で発動可能。発動中は食事をする事により、本人を含む効果範囲内の味方の体力を回復し身体能力を上させる。『暴食の波動』を受けている者を強制的に暴走状態にする。
魔力150/1200・・・残りの保有魔力。魔力が尽きると身体の維持が出来なくなり崩壊する。生物を食べる事により魔力を吸収できる。12時間に1魔力が消費していく。
なにコレェェェェ!!
え、何?『七つの縛り・神』って。俺は神から連れてこられたんじゃないの?
無理矢理こっちの世界に来ちゃったの?
おいぃぃぃ!此処に連れてきた奴。ふざけんな!!神様お怒りじゃん!縛られちゃったよ。
ふぅ。いや待て落ち着こう。考えてみれば神様が縛り以外何もして来ないのならコレで満足して許しくれたんだろう。えぇとここの世界の神は確か…遊戯と悪戯の神 オティヌスか。
あぁそうか。遊ばれているのですね。分かります。
「はぁ不幸だ。何を召喚すればいいのかも分からないし、下手に感情を出たら暴走するそうだし。どうすればいいんだ?」