サーバーZFT48
72年の赤ワインと聞けば
普通の感覚では1972年に作られて、寝かされたワインを想像するが、
なるほど、西暦4000年に生きる人の感覚では、2072年産と思うのか。
ひかるは納得して、自分は未成年だからお酒は飲めませんと、
丁重に断った。
「ヤノヒカルさん未成年だったんですか?同じくらいの年齢だと思ってました」
今までテレパシーで語りかけていた男が、突然声を出してきた。
めぐみは目を丸くして言った。
「あなた、普通に話すことができたのね?」
男はメガネ(のような物)を外して、優しい口調で語りかける。
「すみません、最初のうちは不安だったのであなたの脳波を読んで会話していました」
「マジで4000年の人?普通の発音で日本語しゃべってるじゃない」
「ニホンゴ?ああ、昔この地域をニホンと呼んでいたんですよね、その時代の言語ですね」
ニホンという国の名前も検索しないとわからないという41世紀の男性は、
ひかるのたくさんの質問に気さくに答えてくれた。
その話しをまとめると。
国というものは存在し、この時代日本は「ヤマト」と呼ぶらしい。
1つの国の中に無数の「サバ」が存在している。
サバとは、気の合う仲間と暮らす「村」のようなもの。
他のサバに行くことは可能だが、格上のサバには基本的には移動できない。
同じレベルや格下のレベルのサバには招待コードがあれば自由に行き来できる。
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったわね?」
「すみません、ヤノヒカルさん、あなただけ名乗らせてしまって、わたしは・・・」
「だから!フルネームで呼ばないでよ(笑)、ひかるって呼び捨てでいいよ」
「わたしの名前は コウZFT48 です」
「はぁ?コウ、ゼットエフティーヨンジュウハチ?」
「ZFT48はサバの名前なので、普通に コウ って呼んでくれていいです」
なるほど、4038年の人口が何人であれ、「コウ」という名前では、
多くの人と、被ってしまう。
突如、
机に置いていた、コウのメガネ(のようなもの)から美しい電子音が聞こえた。
聞いたことのない音階だが、この時代の音楽家が作曲したのだろうか?
「すみません、友達から着信です、スカウターを装着しますね」
このメガネのような形をしたものは、視力を矯正するためのものではなく、
多機能な用途に使える、便利な未来の道具だと、
頭の回転の速いひかるは即座に理解した。