8話
「なあに、騒がしいわね。」
「事件よ! 事件っ‼」
朝から立ち話をするおばさんたちの見ている先には、廃ビルの前に止まる一台のパトカーと黒い一般車らしき車が一台あった。
その周りに警察が2,3人。
そして、黒い車の中から出てきたのは、カーキ色のピーコートを羽織った、見るからに刑事のようながたいの良い男。
眠そうにあくびをするその男が車のとびらをしめた途端、一人の警察が近づいてきた。
どうやら、昨日のうちにこの廃ビルに侵入者が出たらしい。
入口を閉じていたビニールテープが破られているのを発見した、近所の人が気味悪がり通報したらしい。
しかし、警察がいくら探しても誰も出てこなかったため、もう出ていったのではないかと結論が出かけたのだが、何かの手掛かりにならないかとそのビルを一晩中監視していた通報者や近隣住民たちがそれを否定し、捜査は難航しているらしい。
刑事は今までの報告をしてくれた警察に礼を言い、自らビルの中へと向かった。
コンクリートのひんやりとした空気の中をまっすぐ進み、階段をのぼる。
1階、2階、3階……屋上に続く扉を開いた。
広々とした四角いコンクリートのの床をカツカツと歩きぐるりと一周する。
特に何もないことを確認し、出入り口の前の淵に腰掛ける。刑事が来る前に自殺をするために入ったのでは、と踏んでいた警官らがこの屋上を調べてみたのだがやはり何も出なかった。まず、死体がないのに自殺だと思い込むとは、今回の警察はあまり頭が回らないようだ。
座ったまま下を覗き込むと、赤く光ったパトカーのランプが乗った白黒のパトカーとあちこちに散らばる紺色の頭がある。
それを無意識ににらみつけ、「またか」とため息交じりにつぶやいた。




