第三話:いざ、ギルドにむけて(後編)
(なんでこうなったんだろう?)
今聖は、公園を出て、ギルドの支部がある建物の方に向ってターシャと二人で一緒に並んで歩いている。あの場面から抜け出すために、用事があるなどといったが、実際は何もなかったのである。しかし、ターシャには、聖の嘘などすぐ見破っていたらしく、わざわざギルドのある場所の近くにある、馴染みの店を紹介してくれることになった。
聖本人としてはありがたいことなのだが、ここまでなぜターシャがしてくれるのかが分からないようで、絶えず首をかしげ、ターシャの様子に注意を払っている。身近な人に突然親切にされると、どうしても何かあるのではないかと疑ってしまうのは、避けられないことだろう。
さらに、ターシャは先ほどから機嫌が悪い。おかげで話かけることもままならず、二人の周りには、沈黙と冷たい風が流れるだけであった。
気まずい空気の中、そのまま15分ほど進んでいくと、ギルドの支部が見えてきた。見た瞬間、聖に表現できないような感覚が襲ってきた。そこで明日、自分の運命が分かれるのだ。期待や緊張、不安などの感情が、一気に聖を包んでも仕方ない。鼓動が嫌でも高まっているようだ。少し顔色が紅潮している。
「馴染みの店はあっちよ。何?今更びびってるの?」
ターシャが聖の顔色に敏感に反応して、話かけた。聖の様子に少し楽しそうなのは気のせいではないだろう…
「そうだね。実際自分がどこまでやれるかたかが知れてるけど…やっぱり楽しみだ。僕もやっとギルドに…。」
(なれないことは考えてないのね。この聖は…)
どこか聖の反応にうれしそうなターシャであった。依然として憮然とした様子で、一人先に歩きだしてしまったが、抑えきれず、思わず漏れてしまったような微笑を浮かべてる。
「まったく、せっかちなのは相変わらずだ…」
そんなターシャの様子には気付かず、ターシャの後ろを、聖はおとなしくついていくのであった。
「ここよ。通称トロイカ。まぁ、ギルド専門店ってところかしら。ギルドに必要なものなら大抵そろってるわ。」
ギルドの向かい側、少し離れた場所にある、古い感じのする店である。建物自体は決して小さい…とは言えないが、大きいとも言えない。いわゆる個人店のようで、そんなに頼りになるような印象を聖は受けなかった。しかし、ターシャが勧めるのだから、そんなハズはないという気持ちも強く、一体どんなものなのか判断がつかなかった。
聖が呆然としていると、店の中から、
「いらっしゃい!!お!ターシャちゃんか。久しぶりだね。」
と周りに活気を与えるような、快活な大きな声が響いてきた。
「こんにちは。カミンさん。お久しぶりです。」
「最近どう?ハハハ、最もターシャちゃんに聞くまでもないか。活躍は色々聞いてるよ。ギルドのアイドルだもんね。」
「いえ、そんなことないですよ。ところで今日は……」
と、ターシャは聖を紹介しようと、目を向けた。カミンはそこで初めて気づいたらしく、
「君は?見たことないけど…ギルドの新人?」
「いえ、まだギルドには入ってないです。名前は聖。明日ギルドに申請に行きます。」
カミンは、見た目すごい筋肉質で、身長も高く、迫力があり少し怖い印象を相手に与えてしまうだろうが、その性格は、気さくで面倒見がよく、その人柄は周りに好かれ、年上のお兄さんとして慕われていた。
「お、それはめでたいね!精霊は?」
「いないです。」
「そうか…それだとこれから厳しいぞ。頑張れよ!俺も元ギルドに所属してたから、何かあったらいいな。力になってやるから!」
「ありがとうございます。」
聖は笑顔で返事をした。こんな力強い言葉をもらったのは、ギルドに入ると決めた時以来初めてであった。
「うん、いい返事だ。気に入った。よし、明日も来いよ。サービスしてやる。ところで、ターシャちゃんが男を連れてくるなんて珍しいな…もしかして付き合ってるのか?」
「まさか。ただの幼馴染で、さっき偶然会っただけですよ。」
今までの和やかなムードが、一瞬のうちに消え去った。さすがのカミンも、自分が決して踏んではいけない地雷を、愚かにも思いっきり踏んでしまったことに気づいたのだろう。聖はもう慣れたのか、平然としていたが、カミンは顔が少し青ざめ、なんとか言葉をしぼりだそうとしている。
「それじゃあ、私はこれで。たまたま会った馬鹿な幼馴染を紹介しに来ただけですから。」
と、ほほ笑みながら淡々と述べたが、目が全く笑っていなかった。
ターシャが帰っていくのを横目に、平常心を取り戻したカミンは、(ターシャちゃんが怒るなんてあまりないよな?それに、今のは本当に俺が怒らせたのか?)と考え込んでしまった。
「僕もそろそろ失礼します。そろそろ家に帰らないと…きっと明日来ます。」
そう言って聖は、頭を下げ、足早に帰って行った。
(まぁなんにせよ、どっちでもいいか。それより聖か…あいつは……これから面白くなりそうだな。)と、これからのことを思い、一人心を踊らせるのであった。
同時刻、あの公園では、まだロムが一人ベンチに座ったままであった。
「あのくそガキ……庶民の分際で……よくもこの僕に屈辱を…」
と、同じように一人、心に暗い闇、恨み(逆恨みだが)を積らせているのだった。
最近小説書くのがどんどん楽しくなってきました。
もっとうまく書いてみたい。
まだこれから、大学のテスト習慣まで書き続けてみます。
あと、もっと早く書けるよう頑張ります。