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第三十七話:crave for future

 


 今から約一週間前……聖は心に秘めた思いをアミリヤに打ち明けていた。それは…


 旅立ち…


 年少の頃から…といっても僕自身、記憶がはっきりしてるのがここに引っ越してからのことだけ。それ以前のことは、思いだそうとしても記憶に枷がはめられていて、強制的に拒絶されているかのように、全く思い出せなかった。


 だからギルドにも入ったんだ。母さんにも誰にも頼らず一人で生きていく力を身につけるために…どうやったら思い出せるか分からないし、所詮無駄な苦労かもしれないけど…嫌だった。このまま何となく生きていくのが……


 唯一分かっていることは、ほんのたまに…誰かと大きな宮殿で遊んでいる姿を夢に見たことがあったこと。そこにも大きな木がそびえてて、緩やかな水の音、木の葉に漏れる出る日差しが妙にリアルで、目の前には二人…男の子か女の子かも判断できなかったけど、追いかけっこをしていて…目が覚めたときの鼓動が…まるでついさっきまで遊んでいたかのように踊っていたのを、変わらぬ朝の日差しと共によく覚えている。


 そこに行ってみたい……けど、どこかも分からない…それに昔から母さんが僕を町から外に出すのを極端に嫌がっているのは、本当に…嫌というほど味わってきた。好奇心から一度首都に行ってみたいって母さんに言ったことがあったけど、軽く流されて一蹴…父さんも連れて行ってくれなかった。


 自力でチャレンジしたこともあったけど、すぐに母さんに捕まって、三時間くらいのお説教……そもそも、母さんには隠しごとも難しいんだ。勘の良さが半端じゃないし…


 だから……自分で探し出してみせる!僕の過去を…その場所を…


 「母さん…どうしても?」


 聖の住まい。一階のリビングで、聖とアミリヤ、そしてメルシーを加えた三人が座っていた。どっしりと構えたテーブルを挟んで、聖の隣にはメルシー、相対するかのようにアミリヤは真正面に座っている。そこで今、聖はアミリヤの発する圧力に必死に耐えていた。


 「どうしてもよ。」


 そこにいつもの和やかな空気はない。メルシーも傍観を決め込んだのか、黙って座っていた。自分は何も言わない…これも、この場でメルシー決意した覚悟と言ってもいいだろう。じっと二人を見つめていた。


 「……でもさ…ラスルコフ学院に行って、トップの成績をとれって…無茶だよ。」


 恐る恐るといった具合に聖が反論を述べた。何故…という疑問が何にもまして頭に浮かぶ…どうしても納得できないのだ。もう一人で旅をしても大丈夫という自信がある。お金も当分は困らないほどには溜まったのだ。聖は、それをこんな無理な要求によって阻まれるとは、予想もしていなかった。


 ラスルコフ学院…ギルバード中から選ばれた王族、貴族のエリートが通う最大の学院である。歴史に残る優秀な精霊学者、または精霊使いの大半はこの学院の出身者だ。


 すべての施設は国の全面援助の元、常に最先端のものばかり、また精霊について研究している機関としても名高く学者を目指す若者にとっては、まさに目から鱗と言わんばかりである。必然的に精霊を研究、もしくは従がえる講習が多いこともこの学院の特徴だろう。


 「別に卒業しろって言ってるわけじゃないのよ。単に、学院の定期試験。一度でもトップの成績をとればいいってだけ。そうすれば辞めてもいいわ。無論、取れなかったら旅はなし。帰っていらっしゃい。」


 アミリヤはそんな聖の態度を一蹴し、はっきりと断言した。そして立ち上がり、コップに水をくみ、一気に飲み干した。


 「何でそんなことを?ただ僕は…」


 「この家を出て、旅がしたい…でしょ?甘えないの。そのくらいの覚悟を見してもらわないと、とても一人で行かせることなんてできないわ。幸い、今変な奴が聖をぜひって言ってきてるから。そいつを尋ねなさい。」


 「………。」


 

 筋は通っているし、正論である。親としては当然と言った口調に、反論することは出来ても、それを相手に納得させられるとは聖にはどうしても思えなかった。そもそもこれは自分の我がまま、エゴなのだ。どちらかが譲らなければ、水かけ論で時が流れ、そのまま終わってしまうだろう。だが、この母親が譲るとはどうしても思えなかった。

 

 結局、聖には何も言い返すことは出来なかった。覚悟…その言葉が妙に聖の頭の中に響き渡っていた。そして、いたたまれず黙って席を発った。心配そうに、聖の後を追おうとするメルシーをアミリヤがさりげない仕草でそっと止めた。ガチャっ…聖がドアを開く音が、二人しかいないリビングに響いていた。


 「聖なら一人でも立派にやっていける。ギルドは国中どこにだってあるんだ。生活には決して困らん。何故認めない?」

 

 メルシーは、アミリヤを睨みつけ耐えかねるように言った。


 「事はそう簡単じゃないのよ。あなたにだって分かるでしょう?ただ何となく…ただ過去を知らないのが嫌…とかじゃ、真実を知ったとき聖は耐えられないの。さっきも言ったでしょ?覚悟…って。」


 「それとラスなんとか学院に入るのと何の関係がある?」


 「まぁ、一種の試練よ。後は私の優しさ…かな。聖がどのくらい本気か見極めたいし…それに…まぁダメならよし。もし出来てもまぁよしって感じなのよね〜。」


 息を吐きながら肩に左手をまわし、けだるそうに言い放った。先ほどとは全くの別人である。


 「あぁ、それとゾシマっていう爺さんが聖に会いに来るかもしれないから、メルシーちゃん…絶対目を離さないでね。もし何か企んでるようならすぐに知らせて。ぶっ飛ばしにすぐ駆けつけるから。」


 「…?あぁ…まぁ分かった。」


 突然のアミリヤの物騒な発言に、若干恐怖を覚えつつ、聖が行ったであろう森にメルシーは向かうのだった。


__________________________________________




 「ってわけで、数日考えた結果、逆らえないししょうがないか〜という結論に至りました。」


 「そうか。で、いつ帰ってくるんだ?二、三年後ぐらいだろ。」 


 気軽に発言するカミンに、マリヤは少し眉を曇らせた。そんなマリヤをよそに、聖は苦笑いを浮かべながら言った。


 「…さっきのこと根に持ってるんですか…帰ってくる気はないですよ。カミンさんも、怪我が治り次第、部隊に戻るんでしょう?レートニイから聞いた時は本当に驚きましたよ…まさか副隊長だったなんて…」


 「あの馬鹿は…口止め料は後で奪い返そう…でもお前…あそこは秀才、天才が集結する馬鹿げた所だぞ?いくらなんでも…なぁ?」


 「無理は承知の上ですよ。それでも僕は行きます。今日はお別れの挨拶に来たんです。もうレートニイやエルナちゃんには言ったし、ターシャにもきっと分かってるんで…。」


 そう言い放った聖の顔には、一切の迷いが見受けられなかった。おいおい…逆に自信にあふれている…聖が大きく見えたことが、少し悔く…寂しくカミンには思えた。


 「…そうですか…気をつけてくださいね…」


 マリヤは笑顔で呟いた。


 「うん、マリヤも元気で。今度遊びにくるから。」


 「はい?」


 聖が言ったことが理解に苦しむようで、マリヤは首をかしげた。それを見た聖も、どうしてマリヤがそのような反応をするのかが分からず、思わず戸惑ってしまう。


 「はは、聖は何言ってんだか?俺が首都に戻るってことは、マリヤも行くに決まってんだろ?」


 「え…本気?マリヤ?」


 「ええ、迷ってましたけど、今決まりました。私も行きます。」


 「迷ってたっておい…」


 「すいません。そろそろお店の方へ戻らないと…それでは失礼します。」


 マリヤは持っていたお酒を傍にあった小棚に置き、足早に病室を出ていった。その頬が妙に赤かった理由を知る者はこの場にはいなかったが、とにかくマリヤは去り、聖とカミンは初めて二人きりとなった。まぁ、どっちらにとってもそれほど嬉しいことではないが…ぎこちない空気が二人の間を漂っていた。


 「それじゃあ用も済んだので…僕も失礼します。」


 そそくさとカミンに背を向け、病室を後にしようとした聖の背中を、カミンは心地よい日差しが体中に照らされている気持ちよさを久々に感じ、中に入りたがっている風を抑えきれない窓のように、込み上がってくる衝動を我慢できず、つい笑ってしまった。


 「どうしたんですか?」


 突然の笑い声に、聖は不思議そうに耳を傾け、どうしたものかと声をかけた。


 「いや〜…悪い。さっきも、俺に冗談言ったのってマリヤを元気づけようとしてだろ?聖はレートニイとは違うからな。ラスルコフもお前なら大…もしかしら出来るだろ。」


 「そこは、大人らしく大丈夫って言うところじゃないんですか?」


 「俺は現実主義者だからな。まぁ頑張ってこい!」


 「はい。」


 聖は一言返事をして、静かにドアを開け、カミンの視界から消えていった。聖なら首都でもこの町のようにすぐに有名になるかもしれない。マリヤから、ラシヤ・ルーロ以上の悪霊を聖が倒したと聞いた時は、すぐには信じられなかったが、会って理由が分からないが不思議と納得してしまった。


 「不思議な奴だ…」


 一人残った病室で、嬉しそうに呟くのだった。



__________________________________________



 誰もが恐れ、嫌い、近寄らない深く暗い森の中。朝は太陽の光すらその森には届かず、森の気まぐれで、霧が辺りを彷徨うように覆い隠していた。そんな、人里離れた森の地下に通称死神…シザールは眠っていた。その体は、かろうじて人間としての原型を留めているが、特に左半身の方は、見るも耐えないと言った具合であった。


 「おい。そろそろ起きてくれないか?こっちも暇じゃないんだよね〜。おーい?…………こら!起きろ負け犬!!この…」


 その横で一人の男が、所構わず叫んでいた。


 「黙れ…殺すぞ……お前は誰だ?ここは…」


 見えているかもわからない虚ろな目で、口元で喧しく叫ぶ声の主を、殺気を込めた表情で探し当てた。


 「よっし!やっと起きた。一応、お前も重要な人材らしいんで、生かしといてやれっていう命令が上から下ったんだよ。良かったね〜」


 白衣を着た男が、大袈裟に拍手をしながら、一人小躍りしていた。シザールは理解が出来ないのだろう。傍らで、ボサボサの髪をしていて、顔には大きな紫色の眼鏡が目立つ男が語るのを黙って耳を傾けていた。何故自分がここにいるのかさえ、分からないようだ。


 「でもね〜結構厄介なことも引き起こしてくれちゃったわけよ。ほら!うちの組織で話題になってた聖君勧誘の失敗。また、お前のパートナーであるマリヤの裏切り。僕は彼女の隠れファンだったのにな〜。そんでもって止めが、ギルバード第三部隊副隊長への敗北、及び情報漏洩、下っ端が捕獲されたのやらなんやら。うわ〜、やっちゃったね〜」


 シザールはやっと今の事態が飲み込むことができた。あの爆発…どうして自分が助かったのかは分からなかったが、どうやら命を拾ったようだ。自然と笑みが口元を支配する。


 「……ひひ、そうか…俺は生き残ったってことか…なら、さっさと俺の体を治せ。そうすりゃ全部俺がかたをつけてやるよ。」


 「それそれ、僕も期待してるよ〜。僕個人としては、お前に凄い感謝してるんだよね〜あの最高傑作を見つけてくれたことと…お前が前に依頼した、いい悪霊のベース…いや〜感謝感謝。」


 「はぁ?何言ってやが……まさか…俺の体を?…冗談じゃない。ふざけんな!!やめろ!!」


 必死に体を動かそうと手足に力を入れるが全く入らず、しかも体中を鎖で縛られていることに、感覚が蘇ってくるのと同時にやっと理解できた。計り知れない恐怖が体中をすみずみまで纏わりついた。


 「あ〜り〜が〜と〜。お前は今までで最高のベースだよ〜。特別に僕のものにしてやるからね〜。」


 「やめろーーーーーー!!!!!助けてくれーーーーー!!!」


 届きもしない、叶うわけもない救いの言葉を、暗い地下でシザールは叫んでいた。その横には、都合の良い時に救ってくれる調子のよい神などいるはずもなく、本物の死神が鎖と化して、シザールに纏わりつているだけなのだった。


 「次は君だよ〜待ってね〜。メッルシ〜ちゃ〜ん。」



ひ:一応終わったね…

メ:そうだな…

タ:って駄目よ!最後の方私全く出てきてないじゃない!!どういうこと?作者!

作:え〜っと、登場させるタイミングを逃したと言うかなんというか…すいません!!

タ:第二章の方は?私はちゃんと出るのよね!?

作:え〜っと、それも第二章を書いてくれって言う読者様の御要望があったらにしようかな〜…と…思ってます…

マ:あるわけないでしょう?私としては、このまま終わっても仕方ないかなと思いますよ。

タ:よくない!私は全然活躍出来なかったのよ?大体、マリヤは最後の方は、なんかヒロイン的な扱いになってたじゃない!何で私は…

レ:まぁまぁ、俺がいるんだ。似た者同士仲良く行こうぜ。

タ:ぶち…(殺)

レ:うぎゃーーーー!!

作:こんなこんなでグダグダですが、第一章は終りです。感想、意見がありましたらぜひお願いします!半年間ありがとうございました。

タ:あんたもよ!

作:うぎゃーーーーー!!

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