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第二話:いざ、ギルドにむけて(前編)



 「本当に助かったな〜あの感じは、ぜったい駄目って言われると思ったけどな。」


 聖は母の威圧感、迫力を思い出すたびに震えが止まらないようだ。普段はいい加減で、何を考えているかよく分からないような気楽な性格だが、あるスイッチが入れると、まるで別人である。ギルドにいた頃はどのくらいの強さだったのだろう。

その性格、母の遺伝子を聖は受け継いでいるはずなのだが、そんな様子は全くない。幸か不幸か父親に似たのだろう。


 聖は、母アミリヤにギルドへの許可を貰い、昼ごはんを食べた後、軽く運動しようと町へと散歩にでかけていた。これは少年の数少ない趣味の一つである。気晴らしや考え事をしたい時に、よく近くを散歩するのだった。


 ここで、いい加減少年自身について触れておきたいと思う。聖の、世間の評価は「少し変わってるけど憎めないやつ」といったところだろう。そんなに目立つわけでもなく、ターシャとは比較にならない、いわゆる凡人と言ったところなのだが、彼には何か人を引き付ける天性のものがあった。少年とは思えない一種の独特な空気を纏っているのである。

 背はあまり高くなく、小柄だが、整った顔立ちで美形と言える。容姿について、一言でまとめるなら、優男というのが当てはまっているだろう。


 聖については、また別の機会で触れることにして、話を進めよう。


 聖の町は、首都ギルバートから近く活気があふれるところだ。その分犯罪や他の問題も多いのだが…聖は町の、噴水が中央にあり、自然があふれる公園にたどり着いた。ここは地元でも人気の場所で、よくデートを楽しむカップルが歩いている。


 (うーん…これからどうしようかな。申請は明日だし…一応武器屋でも見に行っとこうかな。あの変な刀だけじゃ不安だし。っていうかあんなの使えって意味が分からない…)と一人黙々と考えていると、


 「!!聖?何やってるの?こんなところで。っていうか無事だったんだ。」


 そこには偶然、先ほどあったターシャが、見るからに裕福そうな格好の青年と一緒にベンチに座っていた。最も、聖を見た反応はターシャと正反対だったのだが。


 「あぁターシャ。母さん別に反対じゃないんだってさ。

            八つ当たりは辛かったけど…そっちは?」


 「一応ギルドの仕事仲間よ。名前は……」「ロム・グルポフだ。君は?」


 見るからにこの青年、ロムは機嫌が悪そうだ。聖に対し明らかに鋭い眼光、口調で敵意を表している。


 「聖です。どうぞよろしく。」


 だが聖は、ロムの態度に少し違和感を覚えただけで、平然とロムに目を向けていた。普通の人なら、すぐに関わるのはごめんとばかりに公園出て行くぐらいの迫力なのだが。


 「君もギルドの人間かい?あまり強そうには見えないけどね。ランクは?」


 「まだ入ってないです。明日申請しにいくつもりですけど。」


 聖が答えた後、ロムは、見るからに高慢な、自分のほうが優れていると確信をもった人によくある、嘲るような笑みを浮かべた。


 「じゃあ君、精霊は?ギルド入りたいっていうなら当然持ってるだろう?」

 

 「聖にはいないわよ。」


 聖に対するロムの態度に不快感を覚えたのだろう。ターシャが強引に口をはさんだ。

しかし、優越感に浸ったロムには、そんなターシャの気持ちになどは全く気付く様子もなかった。


 「あはは。君それは可哀想だな。僕はBランク。精霊も持っている。まぁ貴族だから当たり前だけどね。僕はギルドでも将来を期待されてるんだ。それに……」


 どこにでも、貧富の差が生じてしまうように、当然のように貴族と平民、一部の地域には、奴隷として一生労働を命じられる人々がいる。だが少し違うのは、貧富の差だけでなく精霊のランクによっても、身分の差が生まれてしまったことだろう。

 昔から、ランクの高い精霊を持つ人物は、尊敬の念を集めていた。それが時代を経た結果、こういう結果に繋がってしまったのだ。基本的に、貴族は高いランクの精霊を持つことが多い。その理由は不明だが、体質か遺伝によるものが多いのではないかというのが世間一般では有力説だ。


 「そうなんですか。すごいですね。」


 一応年上のロムに敬語を使い、笑みを浮かべつつも、一人延々と話続けるロムに対し、これ以上は時間の無駄だと思ったのだろう。だんだん投げやりな口調になっていた。最も他人の自慢話ほどつまらないものはないのだが。

 だがロムがあまりに得意そうに話すので、ぬけるタイミングを逃してしまったようだ。本人としては、ターシャに聞かせるつもりで話ているのだろう。


 「君がもしギルドに入れたら、僕のチームにいれてあげようか?これは光栄なことなんだぜ。」

 

 「いや、僕は一人のほうが気楽でいいですから。えっと、それじゃあ僕は用事があるので失礼します。」


 ようやく抜け出せた。と思ったのも束の間、ターシャが、


 「用事って?何かあるの?」


 と聖に話しかけてきた。思いもかけないターシャの質問だが、冷静に、少し考えた後、


 「明日に備えて色々することがあるんだ。」


 「ふーん。そう…じゃあ私も行くわ。」


 ロムは、この言葉を聞いた瞬間、まるで時が止まってしまったかのように、呆然としていた。今まで得意そうに話していたのが嘘のようである。おそらく信じられないのだろう。風が後ろで木の葉を揺らしていた。


 「いや…大した用じゃないから。」


 「早く行くわよ。さよなら、ロム。」


 聖の返事も無視し、追い打ちをかけるターシャ。少しいらだっているようだ。ベンチから腰をあげ、公園の出口の方へいつのまにか向かっている。


 そこでやっと元に戻ったロムが、必死にターシャを食い止めようと、声を張り上げた。


 「ちょっ…待ってくれ。君に話たいことが。大事で重要な。」


 まだショックから、完全には戻ってないのだろう。言葉がめちゃくちゃである。


 だがターシャは、それを冷めた目で眺めながら、何も答えない。完全な拒絶のサインだろう。数秒眺めた後、聖の方に目を向け、早くするよう呼びかけた。

 

 聖としては、抜け出せればそれでよかったのだが、これでは結果的に聖がターシャをさらったようなものである。戸惑いつつ、ターシャを待たせないように、駈け出した。後ろで一人。聖をにらむ青年の視線を感じながら。

  

 








 


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