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第二十八話:仕組まれた罠

 

聖は朝日が燦然と輝いているのを眩しく思いながら、ギルドへと足を運んだ。最近では、外を通るたびに、通行人や知らない人に顔をまざまざと見られるということが増えてきていた。聖は内心奇妙に思いながらも、素知らぬ風を装っていた。実は今、町では聖の噂が絶えないのだ。悪霊を一人で倒したという無名の少年は、恰好の噂の的なのだろう。


 聖はギルドの扉を静かに開ける。左右を見回し、レートニイの姿を探していた。ギルドの中は、相変わらず人で賑わっていた。眉に皺をよせ何かを熱心に読んでいる年配者や、何かを熱心に話し合っている若い男達など、常に何かしらの事件が起こっているような、そんな落ち着きのないざわめきが感じられた。


 「おーい!こっちだ聖。」


 聖よりも先に見つけたレートニイは、大きく手を振りかざしながら、聖に大きな声で呼びかけた。聖がそちらに目を向けると、四角い丈夫そうなテーブルを囲んで、椅子に座りながら不機嫌そうにオレンジジュースを飲んでいるエレナと、隣の椅子に座り、退屈そうに肘をテーブルにつけ顔を両手で支えているターシャの姿があった。


 「おそいぞ聖。後でなんか奢れよな。」


 「早く早く〜」


 レートニイと笑いながら聖に話しかけた。エルナも聖の姿を見つけると、立ち上がりテーブルに身を乗り出して、聖にこっちに来るようと手を振っていた。ターシャだけは、肘をつくのをやめただけで、ただ黙っていた。


 「何言ってるんだよ全く…こっちこそ何か奢ってもらいたいんだけど。」


 聖は真っすぐレートニイ達の方に歩き、小言を呟いた。 


「はは、冗談。俺が奢るわけないだろ。とりあえず座れよ。」


 レートニイは指で自分の隣の椅子を聖に勧めた。肩をすくめ、仕方なく聖は腰をかけた。メルシーは何も言わず、聖の左側に浮かんでいる。だが心なしか機嫌はあまり良くないようだ。明らかに聖の左側に座るターシャを意識していた。無論、それはターシャも同じであった。


 「よーし、これでレートニイチーム全員集合だな。いいか。これから仕事の内容いうから、心して聞くんだぞ。」


 立ち上がったまま、意気揚揚とレートニイが嬉しそうに声を発っした。だが、その肝心のチームメンバー達の方はというと、


 「おい、聖。これはいつ終わるんだ?私は一刻も早くここから離れたいのだが。」


 「あら奇遇ね。私もそう思ってたところなの。」


 「だったら、お前がここから消えてくれると凄い助かるんだが。」


 メルシーは、聖とターシャの間に浮かびながら、レートニイの言葉…いや、まるで存在していないかのように、ターシャと睨み合って口論していた。エルナもエルナで、ジュースを片手に、物珍しそうに精霊と人間の喧嘩を眺めていた。


 「…メルシー、落ち着いて。今日だけ我慢してよ。レートニイ達と一緒に仕事やるのは、今日だけにするから。」


 聖は心底困っていた。このままでは仕事どころではないのである。つくづく引き受けなければよかったと深く後悔していた。


 「むぅ……おい、そこの馬鹿そうな金髪。早く仕事を話せ。何を呆けているんだ。」


 本心では気に食わないのか眉を少し寄せていたが、聖に言われてから、もうターシャに文句は言わなかった。それを見たターシャも、メルシーの相手をするのはやめ、レートニイに言った。


 「そうね。もったいぶらないで、さっさと内容教えてくれない。私も暇じゃないから。」


 「だ〜か〜ら〜、聖が来る前から俺が何回言いかけたと思ってんだよ!それをお前がボケーっとして、何一つ聞いてないし、今も言おうとしたら邪魔しやがったんだろうが。いくら聖が……ってターシャさん、なんでもないです。申し訳ありません。じゃあ、簡単に今回の仕事について説明させていただきます。」


 この前、ターシャに思い切り殴られた記憶が消えないのだろう。ターシャがレートニイの顔を、ただ黙ってじっと見つめただけで、急に俯き言葉が詰まってしまった。


 「ねぇねぇ、聖お兄ちゃん。」


 「ん?」


 いつの間にか、聖の後ろにはこれから先のことを想像して、思わず忍び笑いをしてしまっているかのような、そんな好奇心に充ち溢れているエルナがこっそりと佇んでいた。


 「実はね、ターシャお姉ちゃんね、聖お兄ちゃんが来るまでそわそわしててね。じっと扉の方を見つめてたんだよ。」


 「……なんで?今日の仕事をそんなに楽しみにしてたのかな。」


 「うわーある意味惜しいね。聖お兄ちゃん、カッコイイのに勿体ないな〜もっとこう、ポジティブに物事を考えないと。」


 「…?」


 聖はエルナが何を言いたいのか分からず、首をかしげていた。それを見たエルナはため息をついた。


 「こら、聖。俺の妹に手を出してないで、ちゃんと聞け。」


 「おいおい、手を出すって。話してただけ…っ」


 聖は後ろを向くのをやめ、レートニイの方へ目を向けたが、二つの視線が聖を静かに睨んでいた。だが、何故睨まれているのか分からず、聖は困惑していた。そんな聖の様子を、エルナは小声で(えへへ)と嬉しそうに笑っていた。


 「まったく聖は。いいか、この地図をよく見ろよ。」


 レートニイはテーブルに地図を勢いよく広げた。さっきまで、全くまとまりがなかった聖達の視線がようやく一点に集中した。


 「今回の仕事を簡単に言えば、賞金のついた悪霊の討伐だ。リリカの森に住み着いた大樹の悪霊。こいつを倒す。なんと、賞金は金貨五十枚!!」


 「…ってレートニイ、いくらなんでも高すぎでしょ!?相当強いんじゃないの?」


 「甘いな〜聖君は。賞金がついたのはつい最近で、しかも、そこの土地所有者は金持ちの領主でな。なかなか退治されないからって、痺れを切らしてこんな大金つけるんだってよ。こんなお得な仕事そうそうないだろう。」


 「ふーん…ねぇ、レートニイ。それじゃあ、もう先を越されちゃってるんじゃないの?その悪霊強くないんでしょ?」


 ターシャはあまり興味がなさそうに質問した。


 「確かに強くはない種類だ。今は悪霊が各地に発生しているから生き残ったんだろうな。それはおいといて、悪霊の場合ギルドに頼むのは手数料が結構かかるから、ギルドは通さずに話を進めたいんだってよ。金持ちって、変なとこでケチなんだよな〜。で、俺はあるつてからその話を聞いて、急遽お前たちを集めたんだよ。俺って凄くね?一番乗り間違いなしだ。」


 「じゃあ、早く行こうよ〜先越されちゃう。」


 エルナは焦れったいのか、聖の袖を両手で思い切り引っ張っていた。


 「そうそう、やっと俺の言いたいことが分かってきたか。聖もやるだろ?」


 「…その情報、本当に大丈夫なの?あまりにいい話すぎるんだけど。」


 どうやら聖は、その点が気にかかるらしい。少し都合がよすぎる…確かに魅力的であるが、かすかな違和感を感じていた。


 「大丈夫だって。なぁ、ターシャ?」


 「…そうね。私は別にいいわよ。どんな悪霊にだって私は負けないから。」


 ターシャは一点の曇りもなく、自信たっぷりにそう言い切った。そして、おもむろに立ち上がった。


 「聖も来なさいよ。どうせすぐ終わるわ。」


 「いや、そこのところは全く心配してないんだけど…。レートニイ、リリカの森までここからどのくらいかかるの?」


 「んなことも知らないのか?そうだなぁ…一時間あれば普通に着くだろ。」


 「…分かった。しょうがないから、僕も行くよ。」


 聖も立ち上がった。本当は行きたいくせにと茶化すレートニイを無視しながら、リリカの森への一歩を踏み出した。頭の隅に残る、表現できない何かを感じながら。



 一方、ここは聖の家。聖とメルシーがギルドへ出かけた二十分後。一人の男がその家のドアをノックした。


 「はーい。」


 アミリヤが普段と変わらない、明るい声で返事をしながらドアを開けた。だが、その男を一目見た瞬間、纏う空気が一気に変わった。息もすることを許さない緊迫感が周囲を押しつぶした。


 「ひひ、どーも。初めまして。」


 「あら…こちらこそ。」


  


このまま一気に終わりまで突っ走ろうかな〜とか思ってます。ここまで読んでくれて本当にありがとうございました。

次話から話が一気に進んでいく…かなと思います。

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