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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

廃墟の学園

作者: ざくろ

意識が虚ろになりながらも、俺はずっと探していた。何を、なんてわからない。けれど、探しているんだ。ごめん、と謝るために。




急に視界がクリアになったのは何時だろうか。なぜ自分がこんなとこにいて、なぜずっとなにかを探しているのかはもうどうだってよくなる気がしてきた。


俺は私立明光学園高校に通っていたのに、なぜ学校がこんな廃墟になっているんだろう?階段は上の壁が剥がれて、パイプがむき出しだし、窓は割れ、廊下はヒビだらけ。


危ないなあと思いながら、ゆったりとした足並みで歩いていく。窓の外はもう夜なのか、真っ暗だ。夜なのにイルミネーションがなく、どの家にも光なんて無かったのになんの疑問も持たなくなっていた。早く、探さなきゃ。


途中で見かける学生もゆったり好き勝手に歩いている。探さなきゃ。


最上階の四階の特別練。ここは視聴覚室や音楽室しかない。

どこも同じで、代わり映えのない割れた窓が連ねる廊下の先に、男が見えた、学生だろう。自分と同じ制服を着ている。


「なあ、探してるんだけど、見なかったか?淡い赤の」

「ひっ!来るなぁああッ!」


俺を見て急に叫びだし、転げるように逃げだした。

呆然とした俺はようやくここの異質さを再確認した。おかしい、と。

彼の後を追おうと思い、足を動かすと、先程と同じ声の悲鳴。


何が起きた?怖い。

物音を立てないように反対側へ進み、渡り廊下へ。走ってもないのに息が苦しい。何が起きた?なんで、なんで?


なんなんだ?なにか大事なことを忘れている気がしてならない。


悲鳴の方角へ向かう気にはなれず、職員室に入り、職員準備室へ。鍵を閉め、安い合皮のソファーへ座った。ここの窓はまだあった。


ふう、と息が出ていった。


今見たことを整理しようか。なにかがあって、生徒はなにかから、逃げていると思う。廊下の窓は割れていて、階段は天井が剥がれて落ちていて鉄のパイプが剥き出しだ。いや、これじゃない。


さっき渡り廊下で赤黒いのがこびりついているを見た。あれはなんだったかなんて暗くてわからなかった。


そして俺は名前すらわからない。ただうすうす気付いている。そうだ、見つけなきゃ、見つけて、ごめんって言わなきゃならないんだ。ピンクに似た、淡い赤い髪の…。


そう思ったらこんな所にはいられなかった。

特別練から渡り廊下を渡っていたため、ここは教室練の四階だ。


それから全ての教室を見て周り、反対の特別練も一階から四階まで見ていった。


そして先程悲鳴があった方へ。

怖くないと言ったら嘘になるが、もう恐怖なんて無かった。


どの教室もボロボロで、死体が転がっていたんだ。俺はもう気付いている。



ふらりと、白い頭の男が見えた。

ああ、友達だ。思い出した。


「フシハ…」

「イグノ…」


お互い疲れているように見える。

フシハは黄色のパーカーが汚れているし、なんだかやつれているように見えた。

俺は階段を椅子がわりに座りこんで。階段の下を見た。


「大変だったな」


ぽつりと言ったのはフシハだ。


「ああ」


何かの管やパイプが落下している上に、ひきつった顔をして、俺から逃げ出した男子の死体が見えた。


「何がなんだか分からなくて、怖かったよ。でもフシハと会えてよかった」

「…俺もそんな感じだった」


昔のように。まだ教室が綺麗で、なにも起きてなかったあの頃のように能天気には笑えないのか、フシハは苦笑いだ。


「そっか。ナハナは?」

「……」


横に首を振るだけだけど、もう十分だ。


「そっか…。」


さらりと出てきたが俺はナハナを流していたんだ。薄い赤の肩までの髪をいつも下の方で二つくくりにしてた。


「俺、今さらだけどすごく楽しかったよ。お前と喧嘩別れしちゃったけど」

「ああ、そんなことか。喧嘩なんて毎度のことだろ?」

「うん、そうだけどな。でもすごく後悔してたんだと思う」


フシハとの喧嘩すらも楽しかったんだ。


「皆何処だろうって思って探して、死体ばかりで、すごく怖かった。けど、お前がいてよかったよほんと」

「…」


俺の瞳から涙がつうっと流れた。


「だって、気づいたらこんなで、全然分からなくて」


俺がまだ行っていない、音楽室の方から女子が二人見えた。俺が来た、視聴覚室からは男子だ。皆見覚えがあったけど、二人とも大分雰囲気が変わったように見えた。


「俺さ、バカだから分かんなくて今もうっすら、なんだけど」

「うん」


階段に座り込む俺、立ったまま廊下側の柱に背を預けるフシハ、四階の手すりの始まる下にあぐらをかいて座るミビ、俺の上の方に座るアキ。何時もの定位置にいて涙が止まらなかった。


「ごめん、ありがとう…」


そして涙を拭いて、立ち上がり今だゆっくりと歩いてくる彼女の前にたった。


「?」


不思議そうに見てる彼女を頭の上から下まで見る。


「…そっか、よかった」


何時もの二つくくりはほどかれて、やつれているけど、記憶のままだ。きっとまだ彼女は意識が朦朧としているんだろう。怖い思いをしたのかな。


ゆっくり、抱き締め「守れなくて、ごめん」と言った。


「あなた、だあれ…すごく、おいしそう」


俺も彼女がおいしそうに見えて仕方がなかった。

まさかこんな形で両思いを知るなんて、と思いながら、またつうっと涙を流した。


「いいよ」


俺がそう言ったとき、首を噛まれるような感覚がした。痛みはない。


きっと意識が戻ったとき、悲しい思いをするのは彼女だろう。だけど彼女がどんな形であれ、残れるのなら俺は、なんでもよかった。


「ごめん、ナハナ…」




「ありがとう、イグ、ノ」


ぼんやりしたままなのか、コチラを見す、口の周りを赤く彩った彼女の声。





俺はゾンビかなにかになったんだろう。意識が再び朦朧としていく中で思い出した。


もう一度生きられるなら、上手く生きられますように、と祈りながら…。

学校でバイオテロが起こり、モブのゾンビになった男子高校生のその後の話でした。ホラーとは少し違うかな?と思いながらの投稿…。カテゴリーに分けるとどこに入るのでしょうか?



ゾンビたんマジラブ!!!(//∇//)


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