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いつも読んでいただきありがとうございます。
9話です、どうぞ!
「はい!はい!はい!はい!」
襲いかかってくる奴に向かって、俺も駆け出し、手を叩きながら前方のそいつに向かって飛び蹴りを当てるべく低く滑空する。俺の蹴りは見事カウンターになり、やつを後方へ弾き飛ばす。ここで着地を決めることができれば、審査員がいたら10.0の判定になりそうだが、まあ、なんだ、その、こけたよね。ずさーって。
今俺はステラと一緒に今晩の営業のためにウサギ狩りに来ている。最近ではタックルをくらうことも減り、行動不能にするために蹴る回数も減ってきてさほど脅威にも思えなくなりつつあるウサギをひたすら狩っているわけだが、俺はその過程でゲーム性を求め始めてしまったのだ。ウサギことスモールラビットは敵を見つけると猛然と敵に突っ込んでくる傾向にある。ぴょんぴょんと跳ねながら飛びかかってくるやつらに、蹴りをカウンターで当てていくというものだ。うまい具合に決まるとかなり気持ちいい。さっきはテンションが上がってドロップキックまがいの行動に出てしまったわけだが、アクロバットなのは駄目だな。次からは後ろ回し蹴りを決められるようになることを目標にしておこう。
ステラはというものの、俺が蹴り飛ばして動けなくなったウサギどもにとどめを刺し、体内の核石を剥ぎ取って持ってくるという作業を延々と繰り返している。たぶん危険はないと思うんだけど、レベル1でいきなり戦闘させるのはなんとなく恐かったので、しばらく雑務に徹してもらっている。
そんなステラも3時間もウサギ蹴りに付き合っているとレベルが4になった。俺もレベルが1つ上がっている。経験値だが、自動で分配されているようだ。恐らく同じくらいは入っているはず。とどめを刺した奴には何かしらのボーナスとかが入っていたりするんだろうか。気になるが調べるすべがないので気にしない方向で。んーそろそろステラにもウサギ狩りに参加してもらってもいいかもな。
「ステラ、そろそろウサギ狩りを手伝ってくれ」
核石とウサギ肉を持ってきてくれたステラに声をかける。
「いいの!?」
めっちゃ嬉しそうな顔して聞き返してくる。まだ子供だもんな、ほぼ見てるだけとか飽きてくるよな。俺ですら遊びながら狩ってるわけだし。
「いいぞー!ただ俺から見える範囲でだからな。もし怪我したら今日は俺が倒した奴にとどめを刺す仕事をやってもらう」
「がんばる!」
そういうとステラはいい笑顔で駆けだした。一目散に野を駆けていく。向かう先には真っ白なウサギ。どのくらいの実力があるか見てると、ステラはギルドから支給された片手用直剣で、突進してくるウサギを躱してすれ違いざまに剣で切り付けるという、見事な立ち回りを見せた。あれならウサギに負けるということはないだろう。俺も次の獲物を見つけて、回し蹴りを実行する。ステラが見事な剣技を見せたんだ俺も!と意気込んだのだが、華麗に外した。めっちゃ恥ずかしい。幸い誰も見ていなかったので、唯一の目撃者であるウサギに蹴り倒しをとどめを刺す。
夕方過ぎまで狩りを続けた結果、本日の収穫ウサギ130匹とステラが捕まえた角付き1匹。あと、火を起こすために結構な量の枯れ木。途中で1人2匹ずつウサギ肉を焼いて食ったのだが、ステラは本当にうまそうに肉にかぶりついていっていた。これだけ働いてくれるんだもの、いくらでも食わせてあげようじゃないか。そんな気になるような笑顔だった。
最終的にステラはレベルが5、俺はレベルが9になった。ギルドに報告しに行って、すぐに商売開始だ。と、その前に、一旦鍛冶屋に向かう。頼んでおいたバーベキューセットを受け取りに行くためだ。鍛冶屋を訪れると注文の品はしっかりできていた。2セットあれば飛躍的に焼くスピードがあがるだろう。
「よーし、じゃあ今日も焼きますかー」
そういって、図鑑から屋台を出していく。俺が店の準備をし始めたのに気付いた人々が、いつの間にか集まってきた。自然と列になっていっている。中には列に並ぶように大声で誘導している人までいる。
「いらっしゃい!」
「よう兄ちゃん、また食いに来たぜ!昨日の味が忘れられなくてな!」
「そりゃどうも!」
すでにリピーターになりかけてる人もいるのか。うれしい限りだ。ちなみにこのおじさんが誘導してくれていた人の一人だ。昨日も来たってことは、列になれって俺が言ったの覚えていてくれて、今日も同じように注意される前に新しく来た人たちを誘導してくれたというわけか。てか兄ちゃんってなんだよ、まあ20歳だし、日本人は実年齢より若く見られるってやつなのかね。
「ステラー、客が何人いるか数えてきてくれるかー?」
「はーい」
そういって、ステラに人数点呼を任せて、俺は図鑑から肉を取り出し、皮を剥いでいく。あ、ちなみにこの剥いだ皮はギルドにあるモンスター素材買取店で毎回売っている。皮二枚でだいたい銅貨1枚。状態が悪いとそれ以下になることもある。
せっせと肉と皮を分けていると、列に並んでる客のほうが騒がしくなっている。なんだか嫌な予感がする。様子を見に行くと客がステラに絡んでいるようだった。
「なんで亜人がここにいるんだよ」
「あ、あの、数を数えてきてと頼まれて・・・」
「ああ?なんだとー?」
うわーチンピラかよ。冒険者風の出で立ちをした男が騒いでいた。ん、あれ、でもあいつ確か昨日肉食って泣いてたやつじゃね?てか、うちの看板娘に向かってケチつけるとは許せん。まだ子供だが将来は有望だろうと俺は踏んでいる。俺の実の家族ではないけれど、面倒見ると決めた以上俺は家族同然だと思っている。
「なんの騒ぎだ?」
俺が騒ぎに割って入っていく。俺に気付いた男が
「おう、兄ちゃん、なんでこんな亜人なんて使ってるんだ?」
「あ?ステラは俺の妹分だ。何か文句あるか?文句あるなら帰ってくれ。他のお客さんのみなさんも聞いてくれー!この子はステラ。本業の冒険者で一緒にパーティを組んでいて、俺の妹分であり、うちの看板娘だ。見ての通り、亜人族の子供だが、両親を失い懸命に今まで生きてきた子だ」
「そりゃ本当か兄ちゃん?」
男が訝しげに聞いてくる。俺は真顔でうなずく。てか兄ちゃんっていうのはみんなの共通の呼び方なのか??
「亜人が身分的に下に見られているのはわかるが、折角うまい飯の前にこんな事で騒がないで欲しい」
「でもよお・・・」
「いいたい事はわかるんだけどさ、種族なんて、生まれてきたときには勝手に決まってるもんだろ?親を選ぶことなんてできないんだ。それにな、今から売る商品だってステラが三割位捕まえたものだ。つまり、肉が食えるのはステラのおかげでもあるわけだ」
客は黙って話を聞いている。騒いでいた男も静かになった。
「これは本当に俺個人の考えなんだが、差別していいことなんてないんじゃないか?みんな仲良い方が何かとうまく行きそうじゃないか。だからステラを見下すような態度をとるような奴がこれからも何度も何度も出るようなら、この店を畳む。ステラにそんな苦しい思いをさせてまで店を続けようとは思わない。繰り返す、文句があるやつは俺に言ってくれ。文句がない奴はステラが人数数えていくから協力してやってくれ!」
俺が叫び終わると、なぜか拍手が起きた。騒いでいた男もステラに謝っている。俺はそれを見てもう一度叫ぶ。
「じゃあ今からじゃんじゃん焼いていくから、今日も肉楽しんでいってくれー!!」
「「「「うおー!!!」」」」
なんか新興宗教みたいだな。俺が叫んだのに対して、何倍もの音量の叫び声が返ってきた。なんだ、これ超楽しい。ライブとかやってるバンドの人たちとかっていうのもこんな感じなのかもな、なんて考えつつ俺は屋台に戻って、さっきの作業を再開する。ステラが戻ってきて、報告を聞くと、今いるだけで、200人もいるらしい。いやいや、昨日の1.5倍って、肉たりねーよ。
「すみませーん!この中でウサギ肉大量に持ってる人いませんかー?」
足りないなら追加しないと。誰ももっていなければ肉屋に行く必要があるかもな。客の返事を待っていると、さっき騒いでいた男が名乗りを上げた。
「俺持ってるぞ!」
「どれくらいありますかー?」
「30ってところだな」
「それ全部売ってください。全部で銅貨30枚でどうですか?」
「いや、嬢ちゃんに悪いことしたからその半分でいい」
「それではあまりに申し訳ないので、角付きの肉をご馳走するということでどうですか?普通のウサギよりおいしいですよ?」
「願ってもない提案だ!!」
そういって、何とか今いる客の分の肉を確保した。肉を提供してくれた男の名前は、リックという冒険者だ。彼は冒険者として、アイテムボックスのスキルを持っているそこそこ稀な人らしい。アイテムボックスは取り出し自由な収納ボックスだ。俺が持ってる図鑑みたいな効果だ。おかげで肉を確保できたわけだ。
「みなさーん!この冒険者のリックさんのおかげで今いる分のみなさんの肉が用意できました!リックさんには、お礼として、ステラが捕まえてきた角付きウサギの肉をご馳走します。色んな考えの人たちがいるでしょうが、こうやって種族が違う人たちと仲良くしてればいいことあるかもですよ?じゃあリックさんに感謝の言葉を!」
「「「「「「ありがとうございました!!!」」」」」」
これめっちゃ楽しいわ。笑
よーし、遊びも終わりだ。仕事に集中だ。それからは客との会話を楽しみつつ、ひたすら肉を売っていく。途中、手伝ってくれているステラのために肉を焼いてご馳走し、またガンガン売っていく。昨日より時間がかかったが全部売れた。完売御礼ってやつだな。
ふぅと息をついて後ろを向くと、ステラは荷物を置いておいた箱の上ですうすう寝息を立てて眠ってしまっていた。
本日も副業大繁盛。でも、そろそろウサギだと回転が悪すぎるな、すこし大きな獲物を狩りに行ってみようかな。この前依頼のボードを眺めていた時に見つけたスモールディアっていうのを狩りに行くか、なんて考えながら店終いをしていく。屋台とかを全部図鑑に納めたところで、寝息を立てているステラを背負って宿屋に帰ったのだった。
いかがでしたでしょうか?
近々少し物語が動き出すと思います。
今後ともよろしくお願いします。




