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異世界ライフ  作者: Peach
第一章
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 昨夜はなかなか寝付くことができなかった。遠足前の小学生になってしまった気分だった。ベッドの中で出店の経営方針などを考えながら何回も寝返りをうって、うんうん言っているうちにいつのまにか寝てしまっていた。睡眠時間はいつもより少ないはずなのだが、目覚めはとても晴れやかなものだった。

服を着替えて、二階の部屋から降りていき、おかみさんにあいさつをして、朝食をいただく。今日は、昨日ボッシュさんと約束したように午前中に役所に行かなければならない。もしかしたら、異世界に来て初めてウサギ狩りをお休みすることになるかもしれない。まあウサギは置いておくとして、役所の所長に出店を出したいという申請に行くわけだが、正直すんなりいくとは思えない。それとも俺の考えすぎだろうか。でももしもの時に備えはあったほうがいいだろう。



「おかみさん、ちょっと買い物したいんだけど、商店街のお店はどのくらいから商売を始めるんですか?」

「そうさね、あと半刻もしないうちにだいたいの店が店を開けると思うよ」

「そうですか。ありがとうございます」



なら、ちょっと買い物してから役所に向かうことにしよう。急いで飯を食べて、さっそく商店街へとむかった。



 満腹亭をでて、商店街の店によって、目当てのものを購入した俺は今役所に向かっているところだ。本当に欲しかったものは高くてどうしようもなかったので、安かったこれで代用することに決めた。ギルドから出て左に歩いていくと目的地の護衛官役所が見えてきた。建物の前に誰か立っている。あ、ボッシュさんだ。



「おはようございます」

「おう、ハヤト!待ってたぞ。所長が待ってるからさっさと話をまとめてしまおう」



 そういわれ、彼は俺の手を取り役所の中に引っ張っていく。役所は木造二階建てで、広さは結構なものだった。入口から入ってすぐに受付があり、すぐ右手には上に上る階段と、見えるだけで、5つの部屋に通じるドアが見える。ボッシュさん先導のもと、階段を上っていく。二階の一番奥のドアの前で立ち止まり、ボッシュさんがこんこんこんとドアをノックする。するとすぐに返事が返ってきた。



「開いているよ、どうぞ」

「失礼します。昨日お話した冒険者を連れてきました」



 紹介されているようなので、軽く頭を下げで会釈した。部屋の中には作りがしっかりしてそうな机とソファーがあり、机を囲むように本がびっしり詰まった本棚が並んでいる。椅子に腰かけているのは、ボッシュさんよりも一回り若そうなお兄さんだった。



「はじめまして、冒険者のオオカワハヤトです」

「はじめまして、役所所長のルークだ。話は聞いているよ、店を出したいんだって?」

「はい。街の外のスモールラビットの肉を焼いたものを売り出そうかと思っています。昨日ボッシュさんにご馳走したところ、店を出してみることを勧められまして」

「彼がかなり熱心に君のことを勧めてきたから、よほどの腕なのだろうね」

「それなりのものだと思っています」

「商売をするうえで、商品とその値段なんて言うのはもう考えているのかい?」

「今のところだと、すべての人たちに分け隔てなく楽しんでもらえるような店にしたいんです。それで商品ですが、その日私が狩ったスモールラビットを焼いたものを、値段は1匹丸ごとで銅貨2枚、半身ならば銅貨1枚としようかと思っています。スモールラビットの討伐報酬が銅貨一枚なので、このくらいが妥当かなと考えていました」

「あれが、銅貨2枚だと!?毎日通うしかないじゃねえか!!」



 ボッシュさんが叫んでる。安すぎたのだろうか。でも、ほとんど苦労しないで集められる肉でそんなに法外な値段をとるのも気が引けるしこれで様子見したほうがいいだろう。



「ふむ。もしこの先ランクが上がっていった場合はどうするんだい?冒険者をやめて商売一筋かい?」

「いえ、冒険者はやめないと思います。ランクが上がっていって忙しくなれば、営業日を決めて、その日以外で狩りをして、決めた日のみ営業といった感じになるかと。倒せるモンスターが増えていけば、出品する料理も増えていくかもしれませんね」



 これは継続性を見るためか。店を出す許可を与えても長く続かなければもとより許可を出さなければいいわけだしね。



「ふむ、継続して行っていく気はあると、わかった。店を出す場所だが、何の経験もない君に貸せる場所は役所とギルドの間にあるごく限られたスペースだけなんだ。今後評判にでもなれば他の店に交渉もしてあげよう」



 まあいきなり一等地に店を出せるなんて思ってすらいなかったので気にしない。狭かろうが美味い料理の所にはきっと人が寄ってきてくれるはずだよな。



「わかりました。他に確認することなんてありますか?」



 もしこれで終わるようなら商店街で買ってきたあれは今度の俺の昼飯の時に使われることになるだろう。まあそれでも俺は全然かまわないのだが。



「あー、ハヤト?ここは所長にお前の料理がどの程なのか味を見て貰ったらいいんじゃないか?」



 おっとまさかのボッシュさんが提案してきた。まあもとよりそのつもりで準備してきているのだが、恐らくこの人、所長に便乗して肉を食おうとしてるな。



「そうですね、ちょっと食材を買ってきてあるので、所長さんに食べて貰えるのならぜひご馳走したいですね。あ、でもボッシュさんは今度ですよ?メルさんとの約束ですからね。二人は店が始まったらご馳走しますね」



 そういうと、ボッシュさんはこの世の終わりでも見たかのような絶望を顔に張り付け、床に手をついて落ち込んでいた。



「おいおい、ボッシュよ、どれだけ食べたかったんだ?ここまで彼を虜にする料理か、楽しみだな。許可を出すうえで、ぜひ味見させてもらおうと思っていたのだよ。正直うまくもない店を出す許可を与える気はなかったのでね」



 やっぱりか。ただの話し合いで決まるとたかを括っておかなくてよかった。まあそのまま焼いただけでもボッシュさんたちは大絶賛だったから問題はなかっただろうが、所長さんの胃袋を掴んでおければこれから先いろいろ都合がよさそうだし、準備しておいて正解だったと考えるべきだろう。



「あの、調理する場所があればお借りしたいのですが」



 そういうと一階の台所に連れて行かれた。テーブルと洗い場、あとかまどがあった。かまどには木炭のようなものが置いてあり、それにボッシュさんが火をつけて、できたら声をかけてくれといって外に出ていった。かまどの上に鉄板をおいて温め始め、まな板の上で買ってきたあれを細かく刻んでいく。図鑑からウサギを1匹取り出して、いつも手順で焼いていく。全体的にこんがり焼けてきたところで、細かく刻んだあれを振りかけて、追加で両面少しだけ焼いていく。肉特有のジューシーな匂いと鼻の奥がすっとするような爽やかな匂いが役所の中に広がっていく。出来た料理を皿に乗せて、温かいうちに所長のもとに持っていった。



「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」



 出来上がった丸焼肉からは、美味そうな匂いとともに焼き立てを示すように湯気が昇っている。ルークさんは豪快に肉にかぶりつくと、昨日のボッシュさんと同じように固まってしまった。しばらくすると我を忘れたように肉にかぶりついていく。その横でボッシュさんがうらやましそうにそれを見ている。ルークさんは骨についた肉までしっかりと完食して満足げにふうと息をついた。



「いかがでしたか?」

「ボッシュがなぜここまで君の料理に執心していたかわかったよ。これは一度食べたら忘れられない味だな」

「今回作ったものは、特別製で、ハーブを刻んで加えてあります」



 そう、俺がこのために用意してきたのは、ハーブだったのだ。肉料理はどうしても脂っこくて飽きてしまいがちだから、さっぱりとした風味のハーブを一緒に調理することでより肉を食べやすくできるのではないかと思ったからだ。本当は塩コショウで味付けしたかったんだが、何分高すぎてEランクの冒険者では手が出せそうになかった。



「だからか、肉をかんだ時に、肉汁とともに口の中に広がったあの爽快感は」

「お気に召しましたか?」

「ああ、堪能させてもらったよ。その類稀なるその腕を振るった料理の並ぶ店が大繁盛している様子がイメージできてしまったよ」

「そうなればいいんですけどね」



 とりあえず所長さんの胃袋はつかめたようだ。ボッシュさんあまりこっちを恨めしそうに見ないでくれ、男に見られても何もうれしくないんだってば。



「では、出店の件はよろしいでしょうか?」

「ああ、場所は君の準備ができたら案内させるから、準備ができたらまた役所に来てくれ」

「わかりました」



 そういって、ギルドを後にした。話がまとまって外に出てきた頃には昼を過ぎていた。とりあえず副職ゲットだぜ。出店をするとなれば、出店を屋台を作らなければいけないな。木材店とかで張りぼてを作れないかな。構造をシンプルにしていけばすぐにでもできるのではないだろうか。あとはかまどだが、出来れば鉄製の籠状の台座に鉄板を乗せて焼いていけるようにしたいな。まだ、昼過ぎだから、急いで商店街に行こう。目指すは木材店と鍛冶屋かな。鉄板とかおいてそうじゃん?


 することが決まれば、善は急げだ。すぐにギルドで話を聞いたら商店街で準備に取り掛かることにしよう。




「メルさーん」



 ギルドに駆けこむとすぐにメルさんのいるカウンターに駆け寄った。



「あら、ハヤトさんこんにちは。昨日はおいしい料理ご馳走様でした。役所での話は終わったんですか?」

「はい。無事に出店できることになりましたよ。それでですね、店の屋台を作ろうと思うんですけど・・・」



 俺がイメージしている屋台を作るために、必要なものが売っていそうな店をメルさんに聞いていくと、何とか商店街で手に入りそうだった。ただお金がそこそこかかりそうな感じだったので、材料を可能な限りやすいものにするなど工夫が求められそうだ。

 メルさんにお礼を言って、今度は商店街へ向けて走り出す。俺はこういう時間がたまらなく好きだ。自分の好きなことのために駆けまわるというのはなぜにこうも楽しいのだろうか。走る足取りがいつもの3割増しで軽い気さえする。まずは木材店だな。メルさんに教えてもらった木材店目がけて猛ダッシュする。昼時なので結構人がいるが俺は人ごみをかき分け進んでいく。


 目当ての木材店に入ると、若い兄ちゃんが対応してくれた。一番安い木材の板を組み合わせて張りぼてを作れないか相談すると、この世界にはしっかりと蝶番があったので、板と板を開閉できるように組み合わせてもらっていく。俺がイメージしているのは学園祭でよく見るような木の板を張り合わせてとりあえず立ってますといった完全に見せかけだけの屋台といった感じのものだ。木の板と蝶番、それらを組み立てる作業込みで銅貨20枚、完成までに1時間ほどだということなのでその間に鍛冶屋に行くことにした。


 鍛冶屋でも同じように俺のイメージを伝えて、鉄製の籠状の箱に風通し用の穴をいくつか開けてもらい、その上に置く鉄板を一緒に購入した。穴をあけたりする作業には1時間ほどかかった。ついでに焼くときに必要になるであろう鉄串も追加で20本ほど購入した。全部込みで銅貨40枚が飛んで行った。まあこれから世話になっていく商売道具だから先行投資ということで納得させるしかないな。


 昨日の稼ぎが丸々消えてしまったよ。とりあえず、店の準備はこんなものだろうか。あ、あと薪か木炭がないとな。ウサギを狩った時についでに木を集めてこないとな。


 鉄板や屋台セットなどを図鑑のその他コーナーにしまって、役所に戻った。図鑑本当に便利だわ。図鑑より大きいものでも押し当てればきれいに吸い込まれていってしまう。所長からはもう準備ができたのかと驚かれた。そのあと、役所の役員の人に連れられ、場所を確認したところで、俺は帰ることにした。役所であったボッシュさんには明日の夜から営業するということは伝えてある。もちろん帰るときにメルさんにもその旨報告済みだ。明日からはかなり忙しくなりそうだ



派手な戦闘は一章がもう少し進んだところで展開させていくつもりです。あと5話程度後で山場作りたいなと思っています。

今のところ一話で一日単位で書いていてテンポが悪いと思われるかもしれませんが処女作なのでいろいろ目を瞑って読んでいただけると幸いです。


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