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異世界ライフ  作者: Peach
第一章
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44

本日二話目です。

というわけでアルストロメリアに戻ってきました。

どうぞ

そこから見た景色は、依然と何の変りもないものだった。外敵からの攻撃を防ぐための城壁も、城壁の外に広がる草原の様子も、何一つ、本当に何一つとして変わっていなかった。ただ城門付近で飢えた獣のように何かを探し回る市民と、それを指揮する一人の懐かしき野獣の存在以外は。



「熊や・・・・おっそろしい熊がおるで・・・・」




朝方彼らは、ついさきほど長い旅路を終え、ようやくアルストロメリアまで帰ってきたのだった。そして、慣れた道を進んでいくと、見たことのある門番がいた。


「お久しぶりです!」


元気よく挨拶をすると、門番は呆気にとられたような顔になり、軽い身分検査を経てすぐに彼らを城門を通してくれた。しかし、ハヤトたちを通した後、その門番はすぐに伝令を走らせる。それは上司である、飯に飢えた熊のもとへと届けられる。偶然開かれていた飢えた獣たちの集会にその伝令がたどりつき、長に報告が伝わった。


「総員、配置に着け!!!!!!!絶対に逃がすなよ!!!!!!」

「おおおお!!!!!」



飢えし者たちによって結成されし軍団は、すぐに行動に移った。その頃ハヤトたちはのんびりと街の景色を懐かしみながら、そしてセラとマリアは物珍しげに辺りを見ながら歩いていた。街に入る際に、レイとシャディを亜空間に、そして馬車は図鑑に収納した。もう、本当にこの図鑑便利すぎると改めて噛みしめるハヤトであった。ただ、馬車や馬が突然消えたことでセラやマリアが仰天したのは言うまでもない。セラは武器がどこかに消えていくのをたまに見たことがあったがここまでの質量のものが消えるのを見たのは初めてだったからだ。マリアもハヤトが一体いつもどこから食料を取り出しているのか甚だ疑問に思っていたが、深く追求しすぎると嫌われると思い聞かずに今まで旅を共にしてきていたので、馬車が消えたときにはさすがに驚きすぎてハヤトに尋ねたほどだ。それに対してハヤトは話を濁して終わったのだが。自身のことをそう容易く口外するほど不用心ではないのだ。完全なる信頼を置いているステラにしか全容は話していないのだから。


さて、依然宿泊していた宿、満腹亭までもう少し、というところで問題は起きた。まずそれに気づいたのはハヤトだった。


「あ、お久しぶりです!あの時はウサギ肉助かりました!」


声をかけたのは、何時ぞやウサギ肉が足りなくなった時提供してくれた冒険者だった。前よりも装備がよくなっているような気がしたので腕を上げているようだ。久しぶりの再会だというのに、彼の表情は冴えない。何かあったのだろうか、そう不思議に思っていたハヤトだった。


「両翼展開!!!」


突如大声で冒険者が叫ぶと、一体どこにいたのかと思うほど人々がハヤトたちを包囲した。しかも、みんなどこかで見たことある顔ばかりだ。そう、みな一度は店に肉を食いに来た客たちだったのだ。全員ではないかもしれないが、かなりの人数に見覚えがある。名前は知らないが顔だけはよく覚えるタイプだったハヤトは異世界に来てもやはり人の顔はよく覚えていたのだった。


「これはいったい・・・・???」

「兄ちゃん、悪いようにはしないから大人しく捕まってくれ!!」



じりじりと包囲の輪を小さくしてくる群衆に、セラとマリアがそれぞれハヤトにすがりつく。ハヤトとステラはこの状況が読めずただ呆けてしまっていた。


「とりあえず、話を聞かせてくれないか?それに俺の仲間が怯えている。それ以上威嚇するなら実力行使に出る・・・!」


軽く辺りの連中にスキルを発動させて威圧すると、群衆は顔を青ざめさせて包囲を狭めるのをやめた。そのようすをマリアがうっとりと眺めていたがそれはあえて言及すまい。何とかこれで話し合いに移れるかなとほっとしていた矢先だ、それが現れた。


「はああああああああああああああああやああああああああああああああとおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」



かなり間延びした叫び声で、はじめ自分の名前が呼ばれていると気づけなかったハヤトだったが、駆けてくるそれを見たとき、叫び声が自分に対するものだと理解した。


「あ!ボッシュさ・・・ん!??」


喜びの色を顔に浮かべたハヤトだったが、一瞬で臨戦態勢へと移行した。なぜか、それは駆けてくる者の目が捕食者の目だったからだ。やらなければやられると本能が叫んでいたからだ。この時ハヤトは悟った。第六感が告げていた嫌な予感はこれだと。今にも襲い掛かってきそうなほどの圧を放ちながら、群衆の間を駆け抜けてくる知人に、ハヤトがとった行動、それは・・・。



「せいや!!」


何時ぞや、ウサギにお見舞いしようとして空振りした回し蹴りだ。さすがに魔拳の類は発動させていない。カウンター気味に決まった回し蹴りでボッシュは弾けるように元来た方に吹っ飛んで行った。通常ならばここで終わりだろう。しかし、先ほどのカウンターなどまるで効いていないとでもいうかのように、すぐに起き上がり、再び襲いかかってくるボッシュ。



「ステラ!!」



その様子に、どこか恐怖を覚え、セラとマリアを抱え即座に退散した。ステラは一言でハヤトの意を理解し、同時に逃げ出した。そして話は冒頭に戻る。



「おっそろしい、熊がおるで・・・・」


街の外まで逃げてきて、適当な茂みに逃げ込んだのだ。ぞろぞろと城門から先ほどの連中が溢れてきてハヤトはどこだと叫びながら辺りを探している。どうしたらいいだろうかと、みんなで顔を見合わせていると、群衆のなかよく知った人物が現れた。



「美女と野獣ですやん・・・・」


そう、彼女もハヤトの知り合いである、ギルドの受付嬢メルだ。あたりをきょろきょろと心配げな表情で伺っている。どうやら彼女もまたハヤトのことを探しているようだ。これは腹をくくって戦闘はなしあいをするときなのかと思い、皆を残して茂みからでて、門に近づいていく。少しして、群衆の中の一人がハヤトを見つけ、叫んだ。


「いたぞ!!」


50人以上100人未満といったところだろうか、かなりの数の人間がこちらを見ている。それに内心ビビりながらハヤトも大きな声で叫んだ。


「いったいこれは何の騒ぎですかー!!」

「心配かけた罰だー!!殴らせろー!!」


熊、もといボッシュさんが叫んだ。ああ、そうか、彼らは本気で俺のことを心配してくれていたのか。じんと心が温まるのを感じながら、彼らを見つめた。


「でも、うん、無理。あんなにたくさんの人から殴られたら死んじゃう」


確かめるように、だがしっかりと意志がこもった声でつぶやいた。しかし、彼らには届いていなかったのだろう。殴らせろコールが巻き起こっていた。少し悩んでいると


「こいつらは殴らせるまでお前のことを許しはしないからな!お前の飯が食えなくなってどれだけ苦しい思いをしたか!普通の飯がこんなにまずいなんて辛すぎた!生きてるなら生きてると連絡くらいすぐによこせ!心配掛けやがってこの野郎!!」


とボッシュが代表なのか叫んできた。これだけ聞くと、彼らはハヤトの作る料理だけが目当てに聞こえるが、彼らは全員ハヤトとの絡みを楽しんでいたのだ。それが突如行方不明で死んでしまったのではといううわさまで流れ、ただただ友人を心配していただけなのだった。それほどにハヤトの作る料理は人々の関係を親密なものにしていたのだった。もちろんすべての人がそうではないのだが。


(確かに連絡しなかった俺の責任もあるか。それに飯が食えなかったからイラついていたのなら話は簡単か・・・。)


「聞けー!!!!!」


ハヤトは威圧スキルを少し強めに群衆に向け放ちながら叫んだ。


「俺の飯が食いたい奴は一列に並べ!!そして点呼!!人数を知らせろ!並ばないやつ、そして点呼に応じないものに関しては金輪際、俺の店で飯を食うことを禁ずる!!!」


叫んだとたん、殴らせろコールがぴたりとやみ、あれよあれよという間に群衆が一列に整列し、大きな声で番号が叫ばれていった。誰しも自分の欲求には素直なものである。彼らがハヤトに抱いていたのは憎しみや恨みではない。無事に帰ってきた彼への祝福とちょっとした悪ふざけがメインだったのだ。しかし、その様子を呆気にとられたかのように見ている人間が数人いた。まずはボッシュ、群衆のリーダーとして立っていたはずなのに、今や、群衆を指揮しているのはハヤトその人だ。一瞬で味方が裏切ったことに動揺を隠せていない。まして、メルに至ってはにこにこと笑いながら一番前に並んでいたりする。そして、他にはセラとマリアだ。さっきまでの殺伐としていた雰囲気が一瞬にして崩壊し、まるで操られるかのようにハヤトの指示に従い整列した群衆を珍妙なものを見るようにしていた。


「何人だ!?」

「97人です!!!」

「さて、ボッシュさん。あなたにチャンスを上げましょう。今大人しく列に加わり、俺を殴るということを諦めてくれるのならば、おいしい料理が待っていますよ?」

「くっ!」

「いろいろといいたいことはあるかもしれませんが、こんな物騒なことはやめにして、美味い飯を食って酒でも飲みませんか?」

「はあ、仕方ねえ・・・今日のところはここまでにしておこう・・・」


(今日のところはなんだ・・・・)


ボッシュの返事に、苦笑いしつつ、事が治まったことを素直に喜ぶハヤト。しかし、彼はこの後大きな仕事が待ち構えていることもあり、すぐに気を引き締めた。


「ボッシュさーん!メルさーん!どっか広い場所借りられたりしませんかねー?」

「ギルドの敷地なら申請すれば貸し出せますよ!」

「よっしゃ!野郎ども!今夜は宴だ!迷惑かけたお詫びに料金はいらねえ!場所はギルドの敷地!時間は夕刻!腹を空かせてやってこい!」

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」


懐かしいなこれ、なんて思いながらさっそく準備に移っていく。帰ってきた、心からそう思えた瞬間だった。




お読みいただきありがとうございました。

今後のストーリーでは賛否両論ですね。うまい具合に進められるよう頑張ります。


感想ありがとうございます。ほんとに参考になってます!

この場を借りてお礼申し上げます!

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