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というわけで本日二話目です。読み飛ばしにご注意ください。あ、でもなんとなく書いた幕間な感じのものなのでスルーでも構いません。
ではどうぞ
「ここが、鉱山都市ミスリムか・・・。間違ったところ来てないよな・・・?」
「道は一本だったので間違いではないはずです・・・。あの冒険者たちが言っていたことは本当だったんですね・・・」
「そうらしいな・・・ったくさっきからキリがねえな・・・」
「そうですね・・・」
俺たちはブラッディタイガーとの戦闘後大きな戦いもなく無事に鉱山都市ミスリムにたどり着いた。しかし、今思えばおかしな点ばかりだった。異様に静かな街、そして、本来いるはずの門番がいない城門。嫌な予感を感じながらも、門番すらいない城門を通り、街に入ると、どこから見ても盗賊風な男たちに襲われたのだ。よほど噂されていた魔物が強力なのか、治安を維持する力を持つものや、冒険者たちすらいないのではないだろうかというほど街は静まり返っていた。さらに、街に人気はほとんどなく、ちらっと覗いたところ家具まで含め家には何も残っていなかった。そんな様子を見ると、みんな安全なところを目指して逃げ出したと予想できた。
「あー、お前らに最後の忠告だ!めんどくさくなったから、これ以上俺らに攻撃を繰り返すようなら、本気を出す!死んでも文句言うなよ!」
「うるせえ!良いから黙って女と荷物を置いて死にやがれ!」
盗賊のかしらと思われる大男が叫んだ。
攻撃の手が休まることがなかったため、全力を出し始めたハヤトとステラ。さっきまではあまり怪我させないようにと、手加減していたのだが、本気の魔拳が炸裂していく。ハヤトに至っては、蹴りまで繰り出している。蹴りは拳の3倍の威力があるとかなんとか。
「なんだありゃ!化け物か!!」
「囲んで一斉に攻撃しろ!!!!」
頭の指示でハヤトを包囲する形で攻撃し始める盗賊たち。しかし、予知スキルによって死角からの攻撃も易々と感知し、最小限の動きで躱し、魔拳をぶち込んでいった。そして、コマのように回転しながら一度に何人も巻き込みながら蹴り倒していく。殴られ、そして蹴られた男たちは民家に突っ込み、壁などを破壊しながら気絶していった。
(この家の持ち主ごめん!)
心の中でハヤトは謝罪をせずにはいられなかった。そして本気の魔拳を受けた連中は、よくて骨折、酷いものはこのままなら死んでしまうだろう。この世界は弱肉強食である。盗賊から襲われた場合それに抵抗して殺したところで、正当防衛であり、感謝されることはあっても罪に問われることはない。
「さーて、残りはお前だな」
「ば、化け物め!!!」
「ひでえいいようだな、おい。まあいいや、さっさと消えろ」
ハヤトが拳を構えると、頭は手に持った大斧を振りかぶり、襲い掛かってきた。
「あまーい!!」
振り下ろされる斧を、両サイドから拳で打ち合わせる。真剣白刃取りならぬ、一人サンドウィッチアタックである。このネーミングはやはり、どうあってもステラからいい評価を得られず、どうしたものかと悩んでいたりするのは内緒にしておこう。ちなみに、セラに至っては哀れな主人を見るような眼をしたかと思えば、必死に褒めてくれた。だが、逆にその好意が逆に自分のネーミングセンスのなさをはっきりと自覚させられ、しばらくいじけていたことも内緒にしておくことにしよう。
そして魔拳を両面から撃ちこまれた斧は、魔拳の威力が広がって呆気なく砕け散った。
「せー!!の!!」
もはや阿吽の呼吸といえるタイミングで、大男の正面からハヤトが、後方からステラが、魔拳をそれぞれ腹、背中に向けて放った。本家本元のサンドウィッチアタックだ。大男は激しく吐血しながら、白目をむいて倒れた。血泡を噴きながら激しく痙攣していたが、少しするとピクリとも動かなくなった。
「ふう、とりあえずギルドにでも顔だすか」
「そうですね、でもこれだけ治安が悪いとなると冒険者ギルドもやっているかわかりませんけど・・・」
「ギルドも逃げ出すレベルの魔物だったらもう手遅れかもだが・・・。ま、そのときはそのときさ」
しばらく道を行くと、アルストロメリアやラビリンスで見たのと酷似した冒険者ギルドが見えてきた。このギルドはどの街も同じような外観なのだろうか。多少屋根などの作りは違ったりするのだが、見た感じほぼ同じ見た目である。
ウエスタンドアを押しあけて中に入ろうとすると、正面からなかなかのスピードで拳が飛んできた。その拳に魔力を感じたので、同様に魔力を拳に纏い、攻撃を受け止める。
「いきなりなんだ?いつからギルドの中は無差別戦闘場になったんだ?」
「え!?」
「あ?」
「・・・・・」
「・・・・・」
殴り掛かってきた方と、殴りかかってこられてイラついていたハヤトが二人とも硬直した。殴り掛かってきた方は、身長がハヤトに比べかなり低く、何より目につくのがその髪の色だ。真っ赤な髪に、勝気な目が合わさり、かなり攻撃的に見える。そういえば、初めて会った時も殴られたんだっけ、なんて思い出しながら、ようやく思考が戻ってきた。
「アリス・・・?」
「は、ハヤト!!!」
普通なら、涙を浮かべて抱きついてくるというのがセオリーだろう。しかし、無事であったのならば無事であることを伝えてこなかったハヤトに対して、怒り心頭で、殴り掛かってきた。
「今まで!どこで!何してたのよ!!」
「わ、ちょ、待て!落ち着け!!」
「うるさい!私たちがどれだけ心配したか!」
「悪かった!俺が悪かったから!ストップ、パンチ!」
「避けるなー!!!!!!」
2分ほどアリスの全力の魔拳をすいすいと躱したり、同様に魔力を込めた拳で弾いたりしてようやくアリスの息が上がりキレが悪くなってきたところでハヤトは距離を取った。
「とりあえず、いろいろ話したいからいったん落ち着こう!な??」
肩で息をするアリスだったが、冷静さを取り戻したのか、ようやく拳を収めた。そこからこれまでの経緯をあっさりと説明した。その過程で、何度か喧嘩になったのは言うまでもない。迷宮に潜っていた辺りが許せなかったらしい。
「それよりなにより、今のこの街の状態は一体どうなっているんだ??」
「ん?え、ああ。この街から馬の足で3日くらいの山に竜種の魔物が出たのよ」
俺の中に残っていた中二な何かがうずいた。
「竜種って強いのか?」
「1匹なら数で押せば何とかなるし、それなりの腕の冒険者ならば狩ることはそう難しくはないんだけど、今回は異常としか言いようがないわ」
「なるほど、それが街の近くにまで活動範囲を広げてきたことでこんなことになっていると・・・」
「それにたちが悪いのが、この街で力のある貴族が調子に乗っちゃってね、大量に冒険者や腕利きを金に物を言わせて雇いまくっちゃったことで外に狩りに行く人がいなくなってしまっているのよ。さらに悪質なのが、雇われた人間の中に盗賊なんかもいたらしくて街の中が無法地帯になっちゃったのよ」
ふむふむ、要するに、
なぜか竜種が大量に表れた。貴族が自衛のために腕利きを自分の警護につかせたせいで竜種を狩る者がいなくなった。危険を感じた力のない冒険者は近くの街に逃げていった。雇われた中に盗賊団の頭がいたことで街が無法地帯になってしまった。そして、逃げ出せない人々や職人などが冒険者ギルドに立てこもり、何とか盗賊からの侵略を防いでいた。何とか竜種を討伐するメンバーを編成して近々出発する予定だった。
ということだそうだ。
「現れた竜種の情報は?」
「その辺は受付のマリアにでも聞いてちょうだい。いつ盗賊が襲ってくるかわからないから私たちは警護に戻るわ」
そうして、入り口でアリスたちと別れ、受付に向かう。受付にはメルさんと同じくらい可愛い受付嬢がいた。他に受付嬢らしき人がいないので恐らくこの人がマリアさんだろう。
「あら、見ない顔ね」
「今この街にたどり着いたところでな。現れた竜種について聞きたい」
「・・・あなたたちじゃどうせ勝てないわ・・・。諦めて逃げればいいのよ・・・。」
綺麗な顔を歪ませ、蔑むようにハヤトたちを見やるマリア。綺麗な茶髪を腰まで伸ばし、スタイルも申し分ない。これでこんなネガティブなことを言ってこなければハヤトのタイプだったのだが、恐らくこの人もいっぱいいっぱいなのだろうことを直感的に察したハヤトは刺激しないように再度尋ねた。
「そうかもしれないな。でも、困ってるやつらがいるんだ。少しでも力になれるかもしれないなら俺は黙っていられない。数は少しでも多いほうがいいはずだろ?」
「どうせ、あなたも逃げていくのよ・・・。エリクのように!!私だってこんなところから今すぐに逃げ出したいのに・・・!!」
マリアは絞り出すように言った。
これは少ない情報からの想像にすぎないのだが、エリクと呼ばれた相手はマリアにとって親しい中だったのだろう。恋仲にあった者だったのかもしれない。そいつはマリアを守るとでも言っていたのではないだろうか。もしくは結婚を申し込んでいたとか。しかし、実際竜種が出たときにすぐに逃げ出したのだろう。仕事への強い責任感と街の人々を思う気持ちでギルドを離れられなかったマリアにとって、この恐怖の中で唯一の心の支えだった相手が、すぐに逃亡してしまったらそれは心も折れてしまうだろう。どんな相手も結局自分の身が大事で逃げていく。そう思い込んでいるのだろう。
繰り返すがこれは、単なる想像だ。しかし、今にも泣きそうなマリアを見ていたら、自然と体が動いていた。手をマリアの頭に乗せて、知らず撫でていた。
「俺に任せておけって。信用しろっていうのも突然すぎて無理かもしれないが、とにかく信じろ。竜種だろうがなんだろうが俺がぶっ殺してきてやっからよ」
「信じろって言ったって、何の確証もないじゃない・・・!」
「ほら」
自身の体をきつく抱き、恐怖に必死に耐えようとしているマリアに、スッとギルドカードを渡した。
「これは?」
「他の奴らには内緒だぜ?とりあえず見てみろって」
促されるままにマリアがギルドカードを眺めていく。ランクは明らかに低いが、討伐した魔物の履歴がおかしかった。見たことも聞いたこともない魔物から、通常であればBランクAランク並みの魔物が尋常ではない数狩られていたのだ。中にはSランクに匹敵しそうな強さの魔物もいたりした。ちなみにこれらは迷宮の最後のほうで出てきた魔物たちで、何度死にかけたかわからない。
「え、こんな・・・え!?」
「しーっ」
騒ぎ出しそうなマリアの唇に指を当て、大人しくさせる。驚きのあまり目を見開きハヤトを見つめるマリア。
「な?これなら多少信用もできるだろ?それに、もし倒せなくても、この街の連中を逃がすこと位できるはずだ。それに、この街が嫌なら俺がどっか連れてってやるよ。その前に、やらなきゃいけないことがあるだろう?だからとりあえず情報をくれ」
そこからマリアは協力的にいろんなことを教えてくれた。どうやらすこしは信用を勝ち取ることができたようだ。
さて、現在確認されているだけで、火属性の魔法を使ってくる火翼竜と、日本にいたときの知識的には4本の足を持ち、前足が若干小さく、後ろ脚が発達していて、大きな翼をもつ西洋竜が確認されているらしい。ドラゴンの方は、表皮が非常に頑丈な鱗や甲殻に覆われ、並大抵の攻撃ではものともせず、魔法にも耐性が高いらしい。今回現れたのは、風属性の魔法やブレスといったものを使う所謂、風龍というものらしい。ワイバーンに関していうと、防御力的にはドラゴンに劣るが、尻尾に毒があったり、数が多く、囲まれたとき厄介だそうだ。
どうでもいいことではあるが、竜種の肉は、癖が強く、そのままではとても食用には適さない。しかし、料理スキルが高い者、もしくは特殊な調理方法で加工した場合最高級肉に変貌する。そして、ドラゴンとなると全長が25mを超えるものが多く、取れる肉の量もかなりのものだ。ワイバーンも中には15mを超えるものもいて、ドラゴンに比べ味は劣るものの、特殊加工すれば味はその辺の肉とは比べられないほど美味いそうだ。一般的に竜種の肉を手に入れた場合は『帝都ラフレシオン』にある、竜種専門の料理店に持って行って調理してもらうのだとか。
「ま、すぐにとは言えないが、必ず俺が何とかするから、まだ諦めんなよ?」
「・・・はい」
未だ心細そうな様子だが、さっきに比べ幾分か元気が出たような様子のマリアの様子にほっと安堵し、ステラに向かい直る。
「ステラ、本来なら逃げてもいいところだけど、アリスたちと再会できたし、このままこの街を放っては置けない。俺に力を貸してくれないか?」
「もちろんです!このままにしては置けません」
「ありがとう」
そして、ハヤトはまたマリアに向きなおった。
「マリア、ちょっとお願いがあるんだ」
「え?」
「この子を頼めないか?」
そういってセラを前に押し出す。いきなり連れていた女の子のことを頼まれたマリアと、突然自分のことが話題に上がり動揺するセラ。ちなみにだが、セラの身長だが、ステラの時のように次の日には大人ということはなく、徐々に成長していっている。戦闘面でセラは力にならない。それどころか足手まといである。なので安全と思えるここにおいていくことを決めたのだ。
「この子は俺の奴隷なんだが、まだ戦闘には早すぎる。無理して連れて行ったらきっとすぐに死んでしまう。必ず戻るから少しの間面倒見ててくれないか?」
「えっと・・・」
「当面のセラの分の生活費だ。尽きる前に必ず戻る」
そういって金貨を数枚マリアに握らせる。
「残ったら、それはマリアのものにしてくれていい。ただ、欲に目がくらんで金を出し惜しみしてセラに不自由な思いをさせたらあとでどうなるかは・・・わかるな?」
ほぼ無理矢理であることは分っているが、今はベストな状態で臨まなければ自分ですらまずい可能性もあるのだ。仕方ないと言い聞かせ、セラを見る。
「とりあえず調査に行ってくる。何事もなければ一旦戻ってくる。それまで留守番しててくれるか、セラ?」
「・・・はい」
「安心しろ。お前を捨てたりしないから」
心配そうに俺の裾を掴んでいるセラの頭に手を乗せ諭してやると、何とか承諾してくれた。
「さて、あとは・・・」
カウンターを後にし、アリスたちがいる入口に向かう。俺とマリアの会話を聞いていた人もいるのだろう、様々な目で見られていたが気にしない。
「アリス」
「ん?ああ、ハヤト。竜種の情報は聞けた?」
「おう、とりあえず俺とステラで先行して情報を収集してくる」
「え!?そんなの駄目よ!むざむざ死ににいくようなものだわ!」
「まあ、聞け。俺も迷宮で遊んでいたわけじゃない。今ならもうハイトロールを秒殺できるくらいの力をつけてきた。それに自分に倒せるかどうかの見極め位できるさ」
「だめったらだめよ!もうすぐ装備だったり食料とかの準備ができるのよ!編成もすぐに完成する予定だし、いっしょに行くべきよ!」
「いや、それだと残された奴らが盗賊にやられる可能性もある。それなりの実力のある誰かが、目標のおおよその場所を調査してから、全軍を投入すべきだ。いたずらに戦力を出しても、本陣がおろそかじゃ意味がない。俺とステラなら、それぞれ馬に乗れば機動力もかなりある。偵察にはもってこいさ」
「で、でも!」
「装備とかが整うまでどのくらいかかるんだ?」
「え・・・?えっと、確かあと1週間くらいって言ってた気がするわ」
「じゃあ、俺たちが出かけて1週間たっても戻らないようなら、他の街とかに馬を走らせて増援を頼んでくれ」
必死に説得してくるアリスを流し、話を無理矢理まとめた。普通ならば二人で偵察も厳しいところだが、迷宮で鍛えたレベルとスキルの力をもってすれば何とかなるだろうという予測のもとでの行動である。
「じゃあ、いってくる」
そういって、ハヤトは図鑑から、ゲイガニルとブルームを取り出し、それぞれ背負って出発した。ギルドにいた多くの人々は、調子に乗った愚かな冒険者の若僧と思っていたが、彼らが装備した武器は、彼らの思い込みを打ち砕いた。異様な圧力を放つ武器を前に、その場にいたものたちは息をのんで凍りついた。彼らなら・・・そんな期待感が
残された人々の間に生まれたのだった。
お読みいただきありがとうございました。
久々にアリス登場ですね。今後の絡みどうなることやら。
というかこのあたりから、話ぶっ飛び始めるかもしれません。もうちょっと先まで書いてあるのですが、もはやいろいろありえないこと起きている気がしてなりません。
生暖かくみまもってやってください。




