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お久しぶりです。気づいたら入院していた作者です。みなさま睡眠不足とかマジで注意してください。そんな中バイトとか、息抜きだって言っていきなりスポーツとかも注意です。いろいろ重なると意識飛びます。
さて、作者のどうでもいい身の上話はさておき、今回一話幕間を置きます。当初予定していたものと若干異なっている気がしなくもないのですが、寛容に受け入れてくださると。
短くて変なところあるかもしれませんがご容赦ください。
Sideメル
「はあ・・・」
一体何度目の溜息だろうか、数えている人がいるとしたら果てしない数になっているのではないだろうか。それもこれも、すべては彼らのせいだ。大丈夫だと言っておきながら、ふたを開けてみれば未帰還者だ。川に落ちただけならまだしも、流された先が滝で、いまだに発見されていないらしい。
「はあ」
憂いに満ちた彼女の姿は、荒くれどものたまり場となっていた冒険者ギルドに咲いたはかなげな花となっていた。もともとギルドの受付嬢として採用されている彼女は、類稀なる容姿を持っていた。スタイルもよく、いつも元気はつらつとした様子で、狩りや仕事に出かける冒険者たちの元気の源になっていたといっても過言ではない。そんな彼女がここの所ずっとふさぎ込んでいるのだ。男の冒険者たちも少なからず身を案じて話しかけてくるが、右から左に流されて終わっていた。
彼女は彼らと出会ってからを振り返った。
※※※
第一印象は、変な人だった。その服装もさることながら、子供でも知っているようなことを知らぬ人だったし、突然食事をご馳走したいと言って来たり、とにかく変な人だった。ただ、彼は他の冒険者の男たちとは違い、礼儀正しかったし、とにかく優しかった。時々言ってきた気障なセリフも冗談だとわかっていても、少しだけ嬉しかった。彼が作った丸焼肉は、この世のものとは思えないほどおいしかった。毎日毎食食べたいと思うほどだ。
その後、彼は出店まで出し始めた。彼の腕前だ、当然のこと店は大繁盛。連日店を開けば、店の前には大行列。そんな中、彼は私とボッシュさんに開業祝でまた食事をご馳走してくれた。その際、彼は初めてであった亜人族の少女に食事を与えただけでなく、その後の生活の面倒を見ると言い出した。
「やっぱり変な人だわ」
誰にとなく呟いてしまった。この世界では当たり前のように孤児がいる。街人はそれを見ていても見ぬふりをしている。孤児たちにもつらい過去があるのだろうが、彼らの面倒を見てやれるほど、皆の生活は裕福なものではないのだ。それを彼は、さも当たり前のことのように、亜人の少女を妹として受け入れていた。器が違うと正直思った。戦闘によりレベルの上がった少女は誰が見ても美しい女性へと数日で変貌した。亜人族の人々はレベルが上がると体が一気に成長するという特徴があるのは知っていたが、実際ここまで変化するのかと驚いたものだ。そして、彼と共に楽しげに話しているのを見ると、どこか羨ましく感じたりしていた。
さらに、彼の奇行はそれだけではなかった。スモールディアの討伐依頼を受けたかと思うと、帰ってきた彼の服はぼろぼろになっていて、顔色も悪い。彼のぼろぼろな姿を見て、血の気が引くのを感じた。何があったか聞いてみると、何と初心者殺しとして有名なアーマードベアに襲われ、剰えそれを倒してきたというのだ。もう、彼は驚きの塊だった。
冒険者たちに祝福されているなか、私もよく知る女性だけのパーティを組む冒険者たちに絡まれ、あっさり殴り倒されてしまった。普通の冒険者なら激怒するところだが、次に彼らを見たときには、何故か一緒に依頼を受けることになっていた。一体どういう経緯があったのかわからなかったが、それよりなにより、いきなり彼が高ランクの依頼に挑むと言ってきたときに、またしても血の気が引いた。
「なんで急にこんな高ランクの依頼を・・??」
彼に聞いても、笑顔で流されてしまう。どうあっても彼の意志を変えることはできないとわかったので、せめてと思い、その地形の特徴や魔物のことをいろいろ伝えた。普通の冒険者たちにはここまで説明したことないと思うレベルで事細かに伝えたと思う。
今振り返ってみても、自分の行動はおかしかったような気がする。あの時は一心に彼の無事を祈った。きっと私は、彼のことをかなり気に入っているのだ。依頼の時のちょっとした会話に心弾ませ、いつの間にか彼と話すことを楽しみにしていたのだ。
大丈夫だと言っていたのに・・・・。
裏切られた気持ちでいっぱいだった。確かに、討伐依頼で絶対などない。熟練の狩人も一瞬の気のゆるみで命を落としてしまうことだってある。でも・・・・
彼らが旅立ってから二か月くらい経った頃だろうか、とある冒険者たちが私を訪ねてきた。
「ここに、メルという受付嬢はいるか?」
「はい、私がメルですが、何かご用でしょうか?」
「おお、よかった。ちょっと君に伝言を頼まれてね」
「伝言ですか?」
一体誰だろうか?本気で思い当たる人がいなくて当惑していると、恐らくこのパーティのリーダーであろう男の人が耳を疑うようなことを言った。
「ハヤトという男から伝言だ。『もし心配していてくれたりしたら無事を伝える連絡が遅れて申し訳ないです。俺もステラも無事です。今迷宮都市ラビリンスでアルストロメリアに戻る準備をしているところでもう少ししたら帰ります。なんだかメルさんには派手に怒られそうですけど、帰ったら腕によりをかけておいしい料理をご馳走するから許してください。あ、あとお腹を空かせているかもしれないボッシュさんにも帰ったら料理をご馳走すると伝えておいてくれるとうれしいです。最後に料理スキルのレベルが上がったので、前よりもうまさ飛びぬけてるので楽しみにしててください。では、また近いうちに』だそうだ」
気づいたら、泣いていた。生きていた。ただ、ただそれがうれしかった。でも、同時に怒りも湧いてきた。帰ってきたら思い切り叱ってやろうと心に決めた。あれほど忠告したのにいうことを聞かなかったのだ。文句の一つでもいってやらないと気が済まない。
心にかかった靄が一瞬で晴れたような心地だ。そうだ、彼らがいなくなって以来、美味い物が食えなくなったと嘆いていたボッシュさんにもこのことを伝えないと!
そして彼が帰ってきたら、二人で思い切り文句を言ってやるんだ!これまでふさぎ込んでいたのがウソのように、元気が溢れてきた。
「いらっしゃいませ!何かご用でしょうか」
彼が返ってくる。すぐにまた話せると思ったら、元気が出た。私は私の仕事をこなすとしよう。彼と初めて会ったこの場所で、再会までがんばって待っていよう。
そうして彼女は、冒険者たちがもたらした素晴らしい伝言のおかげで元気を取り戻し、次々並ぶ冒険者に人々を、元気よく対応して捌いていった。
Sideボッシュ
「あー飯がまずい・・・」
最近、飯を食うたびに思うことだ。というか、気づいたら言っていることが多い。普通に味はうまい方なのだが、どうしてもあの味が思い出され物足りないものに感じられてしまう。一体あいつは今頃何をしているんだろうか・・・。依頼に出かけてそれ以来連絡すらない。根拠は全くないが、あいつは生きているような気がする。あいつの店の常連客達や、メルでさえ死んでしまったと思っているようだが、俺はあいつがそんな簡単に死ぬような奴には思えない。
「帰ってきたら思いっきりぶん殴ったうえで飯をご馳走してもらうかんな・・・」
門番の仕事をしながら、いつ戻るかもわからない友人の帰還を待ち続けていた。今日も同じように一日が終わっていく。
「はあ、飯食いに行くかあ・・・」
ようやく交代の時間になり、こきこきと首を鳴らし、晩飯を食いに街に戻っていく。今日はどこで飯にしようか・・・。昔なら迷わずあいつの店に駆けて行ったんだけどな・・・。
どこの店にしようかいろんな店の前を冷やかしながら歩いていると後ろからよく聞きなれた声が聞こえてきた。
「ボッシュさん!!!!!!」
「ん?おお、メルか。どうした?そんなに慌てて」
「はあ、はあ、はあ、ボッシュさん!」
「お、おう」
「ハヤトさんから伝言が届きました!!」
ほらな、やっぱりあいつは生きていた。そうは思っていたが、やはりメルの知らせには驚愕した。なんだろう、体の内側から何かがこみ上げてきた。喜びと怒り、そのほかにも色々な感情が湧き上がってきた。
「とりあえず、帰ってきたらぶん殴ってやろう」
「はい!」
丁度そのころ、ハヤトがくしゃみしていたとかなんとか。ハヤトがアルストロメリアに帰ってくるまで、もうしばらくかかるのだが、彼らと再会した時、手痛い歓迎を受けることになるのであった。
お読みいただきありがとうございました。この後もう一話投稿するかもです。
いろんな方からコメントいただいていたようで、この場を借りて感謝申し上げます。作者はもう元気です。冬ということもあり、ミカンがおいしくて仕方ないくらい元気です。




