表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ライフ  作者: Peach
第一章
37/55

37

ハヤトが若干壊れます

作者はしばらく前から壊れてます

どうぞ



いつの間にか、駆けていた。荷馬車に乗っていたはずだが、視界にそれが映った瞬間、電撃に打たれたかのような衝撃が全身を襲った。


普通冒険者が魔物に襲われているこの光景を見れば、力ある者は助けなければと思うことが多いのではないだろうか。もちろん自分から危険に飛び込むのを愚の骨頂ととらえる人もいるだろうが。しかし、彼、ハヤトはいろんな意味で違った。かつては生きるのに必死で、自分の力がないことで諦めたものがあった。力をつけた今、再び会いまみえたとき、今度こそはと心に決めていたものがあった。


「もふもふやー!!!」


彼は風になった。今までで最速だっただろう。足に魔力を集め、爆発させた彼を目で終えたのは、この場で唯一レベルの近かったステラだけだろう。風の切りながら、ありえない速度で人間砲弾が行く。狙いは、牙が成長しているオスではなく、その凶暴さがなければ愛くるしい見た目のメスの方だ。


だが、その選択が冒険者たちには幸運だった。今まさに、とどめを刺さんとするメスの攻撃がリーダーのルーカスに迫っていた。彼の命はまさに風前の灯といったところだった。死を覚悟し、襲い来るであろう痛みに恐怖し目を固く閉じるルーカスだったが、いつまでも痛みが来ない。


「ふははははは」


目を開けたルーカスが見たものは、自分の目の前にいたはずの巨大な虎が数m離れた時目に横たわり、力なく倒れ、その首に人間が抱きついているという光景だった。突然のことで、放心していると、突然現れた男がすっと立ち上がった。


「・・・・しまった、感動のあまり、勢いをつけすぎた・・・・・・・次はもっと優しく・・・」


うわごとのように呟き続ける男に、恐怖を感じたルーカスを誰が攻められよう。明らかに今のハヤトはおかしかった。ハヤトは狙いを変えて、オスに向かって走り出した。感動のあまり速さと勢いの限界を超えた抱擁タックルで、幸運にもメスの首の骨を折ってしまい、その生を終わらせたのだ。これは、感動のせいで剛力スキルとかその他身体強化系のスキルが無意識にフルに働いてしまったせいでもある。


突然の味方の死と、現れた異常者に野生の勘が働いた虎が襲い掛かる。あわや爪が直撃すると思われた一撃だったが、男は容易くそれを躱すと、虎を撫でまわし始めた。まるで飼い猫を可愛がる飼い主といったように見えなくもない。もちろん、飼い猫がこんなに巨大でなく、人間を一撃で殺す威力を内包した爪での攻撃を仕掛けてきたりしなければだが。


「そんなにじゃれるでない。愛い奴よ」


訳わからぬ言葉を放ちつつ、その顔は至福の表情だった。もっともその顔が悲壮にくれる瞬間はすぐに訪れたのだが。



「な!?レイ!?シャディ!?やめろ!こいつはただ遊びたいだけなんだ!」



不穏な気配に、野生の魔物よりも早く気付いたハヤトが叫んだ。しかし、その叫びが彼らに届くことはなかった。それは、主人を危機から救わんと欲した結果か、いつまでも余所の野良猫にうつつを抜かしてるんじゃねえよという嫉妬からか、レイとシャディが攻撃をやめることはなかった。稲妻が迸り、空中に形成された氷の矢が虎に向けて飛来した。初めの稲妻を避ける際に、ハヤトは愛しい虎から離れざるを得なかった。氷の矢ならば槍で打ち落とすこともできたが、稲妻だけはどうしようもなかったのだ。冷静さを保ったままであれば、同質の雷撃魔法で対処することもできただろうに。


「ああ・・・あああああ・・・・・・」


目の前で愛馬たちが織り成す、氷と雷の魔法乱舞により蹂躙される愛しき虎、四肢を氷の矢に貫かれ、最後はシャディの雷を纏ったかのような速さの体当たりによって、虎は息絶えた。地面に伏して、絶望にくれるハヤトを駆け寄ってきたステラが揺する。


「はっ!俺はいったい何を!?」

「よかった、兄さんが壊れたのかと思ったわ」

「ステラ?俺はいったい何を・・・」


はっとしたように周りを見渡して、ハヤトはようやく現状を理解した。よほどもふもふしたかったのだろう。虎とのふれあいで解消されたのかつやつやした表情で冒険者のもとに向かった。


「大丈夫か!?」

「あんたは・・?」


一番重症であろうルーカスがまだ生きていることに安堵し、回復魔法をかけていく。みるみるうちに傷の痛みが消えていくことに驚愕するルーカス。続いて倒れていたタリウスの傷も同様に治していく。彼らが落ち着くまで、剥ぎ取りを手早く済ませ道端で休憩がてら飯にすることにした。もちろん血が辺りに広がっているところで飯にするのはさすがにありえないということで、しばらく道を戻ったところの見晴らしのいい場所で調理を開始する。


「上手に焼けました~」


かつてやりこんだゲームを懐かしみつつ、買い込んでいた食材を贅沢に使って何品か作っていく。


「ほら、そろそろ落ち着いたか?」


未だ放心している彼らに対して、ハヤトがスープや肉を持っていく。リーダーがいち早く意識を覚醒させた。


「あ、あんた・・・その、すまない!本当に助かった!もう駄目かと思ったんだ・・・何かお礼をしたいんだが・・・」

「まあたまたま通りすがっただけだし、俺も俺でもふもふできたから文句はない。だから気にすんな」

「すまない・・・。前に拠点にしていた都市でいろいろあってまともなものがなくて・・・」

「気にすんなって、とりあえずこれ食って落ち着け」


ハヤトに促されるままに、料理を口にした冒険者たち。そしてすかさずハヤトは彼らから距離を取り、手で耳を塞いだ。何度も経験した危険から自然と体が退避したのだ。


「「「うまーい!!!」」」


叫び声を上げ、呼吸も忘れたのではないかという勢いで料理に食らいついていく冒険者たち。まったく、やれやれと振り返ってみると、セラまでも同様に料理Lv5の魔力に飲み込まれていた。ステラと目が合い苦笑いしてしまった。恐らく、日常的にハヤトの料理を口にしていたステラ位しか、叫ばず泣かず暴れず食事をすることができるものはまだいないと思われる。ちなみに今回の献立は、手頃にできる蛇肉焼きと野菜スープと買ってきたパンだ。パンの味は普通そのものだが、他がすごすぎてパンまでうまく感じてしまっているだろう。肉とスープには塩、胡椒、その他香辛料を贅沢につかっている。それがうまいのなんのって・・・。


その後料理を絶賛され、ブラッディタイガーを倒した実力を讃えられ、何度も何度も感謝された後彼らと別れた。なお、素材はオスのものは全部俺たちが、メスの方は餞別代りに冒険者たちにプレゼントした。核魔石だけはもらったが。かなり恐縮していたが、装備を作るにしてもそれ以上のものがたくさんあるので気にすることもなく、次の街を目指した。


ルーカスの話だと、次の街は鉱山都市として栄えていたらしい。しかし、強力な魔物が山に現れたことにより、鉱物を取ることができなくなり、街が廃れていっているらしい。しかも、その魔物が街の近隣にまで現れ始めたこともあり、力なき冒険者たちは蜘蛛の子を散らすように各地に逃げ出したのだとか。そのせいでまともに戦えるものも少なくなり、街の治安も悪くなってきているとか。


「なあ、ステラ」

「何ですか兄さん?」

「ルーカスたちが言ってた魔物ってそんなに強いのかね?」

「彼らの話だと竜種かもしれませんね。もし本当に竜種ならばかなりの強敵だと思いますよ。戦ったことがないので何とも言えませんけど、私たちなら何とかできそうな気がします」


これは驕りなのかもしれない。しかし、迷宮産のでたらめな力を持つ武器と高められたレベルのおかげで、野良の魔物を倒すのにまったく苦労していない。可能であれば、都市を困らせているその魔物を討伐してもいいかなと思いながら街道をゆく。


森でもふもふしてから、手持無沙汰だったのか、ハヤトがステラの髪の毛を結ったりして弄り始めた。初めはしっぽで遊ぼうとしたのだが、顔を真っ赤にして怒られたので諦めた。ハヤトは知らないが、しっぽを持つ亜人族の多くが、しっぽを性感帯にしているものが多い。この傾向は女性に多く、男性にはあまり見られない傾向ということもあるのだが。ゆえに、突然亜人族の女性のしっぽを触ろうものなら、怒られて当然である。ステラ自身初めての感覚に驚き、ハヤトを叱りつけたのだった。だが、ハヤトに至っては、びくっとして顔を赤らめ恥じらうステラにある種興奮していたりしたのだが。その後、またいきなりしっぽを触られるのを防ぐために髪の毛を弄られるのはスルーしているのだった。まあ、本人ハヤトとのふれあいを嫌がっている様子は全くないのだが。ポニーや三つ編みなどいろいろ弄っていると、木々の切れ目が見えてきた。


いつの間にか森を越え、また見渡す限りの草原に出た。彼らはゆく。大草原に伸びる一本の道を。最終目的地はアルストロメリア、だが次に訪れるであろう街で彼らがいろいろとハプニングを起こすことは彼らを知るものなら誰にでも予想できたことだったかもしれない。しかし、張本人である彼らにその自覚はない。



今日の空はこれから訪れる事件を思ってか、薄い黒みを帯びた雲が広がっていた。


お読みいただきありがとうございました。



一応この週末で少ーしだけ書き溜めできたのですが、平日更新するかは謎です。そして週末も今回と同じペースで更新するかは未定です。

こんな作者ですが今後もよろしくお願いします。ではまた週末に会いましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ