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更新遅れました。23話です。
感想で報告もらった「着た→来た」修正しました。
迷宮都市、ラビリンス。ここには、地下に繋がっている異空間が広がっている迷宮エリアがある。迷宮とは洞窟の中などに長い年月をかけて魔素がたまり、洞窟自体が魔物化したものである。迷宮の最下層には迷宮の心臓ともいえる核魔石があり、それは法外な値段で取引されている。この迷宮都市ラビリンスには他の国に追随を許さぬ力がある。迷宮エリアがこの都市だけで6つあるのだ。そして、そのうちの3つを除いてまだ一度も踏破されたことのない迷宮もあるのだ。冒険者たちは迷宮の中で独自に生成される、魔道具や魔武器を求め、そして最終的には迷宮の踏破をめざし日々迷宮にもぐり続けている。
そんな迷宮に引き寄せられるように人がたくさん集まるこの街に、また2人、たき火に集る羽虫のように引かれていくのだった。
その人物の名前は人間族のハヤト、そして狼人族のステラ。彼らがなぜこの迷宮都市にやってきたのか、それは少しばかり遡って話さなければならない。
彼らは冒険者として依頼を受けて、ある密林を訪れていた。途中まで順調だった彼らの依頼だったが、討伐依頼が出ていたハイトロールが番になっていたというハプニングが起きた。彼らとともに依頼に臨んでいたCランクのパーティもいたのだが、彼らの善戦も虚しく、ハヤトとステラはハイトロールの攻撃を受けて近くを流れていた川に落下してしまう。
川の流れは速く、岸に上がることもできず流され続けた二人。大きな滝から落下した段階でステラの方は重症とも呼べる怪我をしていたが、ハヤトが回復魔法を何度も何度もかけ続けたことでステラは奇跡的に生き残った。ハヤトも決して軽くない怪我をしていたが、ステラが回復しきるまで回復魔法を唱えていた。川に流されながらの回復魔法は困難を極めたが、ハヤトの懸命な努力のおかげでステラも、そしてハヤト自身も生き残ることはできた。
しかしだ、彼らの苦労はここでは終わらない。どのくらい流されたかわからないが、だいぶ河口付近まで流されたころだ。流れがようやく緩やかになり始めたことで、何とか二人は岸に上がることができた。
ただ、流されているうちに二人の武器はどこかに行ってしまい、二人は丸腰同然だった。ふつうの冒険者がこの二人と同じ状況に陥った場合、遠くない未来、死は避けようのない現実としてやってきていただろう。
だが、彼らは違った。彼らというよりは、彼は違った。そう、ハヤトは人とは違う。転生者である彼は、チートとも呼べるようなユニークスキルを持っていた。図鑑、そしてステータス操作。この二つの存在のおかげで彼らは生き残れたのだ。図鑑とは、魔物の体内にある核魔石を吸収させることでスキルポイントといわれるものを手に入れることができる。このスキルポイントは名前の通りスキルを手に入れるときに必要なポイントなのだが、この世界の住人達はこのポイントのことを知らない。レベルが上がった時に自動分配されるため、自分でスキルを取ったりできないのだ。しかし、ハヤトは二つ目のユニークスキル、ステータス操作のおかげで、取得したスキルポイントの使い方を自由に決めることができるのだ。しかも、通常の人たちよりも、図鑑の効果で手に入るスキルポイントが多いこともあり、ハヤトと同じレベルのもので同格のものはきわめて少ない。
そして、ここはハヤトがまだ来たことがなかった場所ということもあり、図鑑に登録したことがなかった魔物が多かったため、スキルポイントが大量に入手することができたのだ。
もちろん、はじめのうちは、武器もない状態だから苦戦もした。魔力操作のスキルを戦闘に応用した、本人いわく魔拳を使うことによって魔核石を手にいれ、何とか生き延びてきたのだ。中にはハヤトでは本来太刀打ちできないような魔物もいたが、死闘の末大物を倒したりもした。これがもし前情報で勝ち目のない敵だとわかっていたら勝てなかったかもしれない。ただ生きることに必死だった彼らだったから生き残れたのだ。
そして、流されてから一月ほどの過酷な旅を経てなんとか迷宮都市にたどり着いたのだった。
※
あの日からずいぶん経った。ステラが川に飛ばされたときに咄嗟に自分も飛び込んでしまった。あの場にいたアリスたちは無事なのだろうか。だが、今の俺たちにはそれを知るすべもない。今はとりあえず、街にたどり着けたことを喜ぼう。ひと月ほどまともなベッドで寝ていないし、もちろん風呂なんて入れていない訳だ。
「止まれ、身分証を見せてもらおう」
奇跡的に川で流されなかったギルドカードを見せ、どこから来たのかなど簡単に街の入り口で衛兵と簡単なやり取りをした。俺たちのぼろぼろの姿を見て衛兵も俺たちの話を信じてくれたらしく、スムーズに街にはいれた。まずは宿だ。飯は俺が作れば美味いものができたが、何分二人で広大な森や草原を越えてきたので、昼も夜も魔物を警戒する必要があり、ぐっすり眠ることができなかった。常に緊張していなければならなかったため、心が休まらず、精神的に限界が来ていた。今すぐに眠りたい。そんな中見つけた宿で、受付嬢と思しき女性と数名の男たちが何やら騒いでいる。
「だからさー、ちょっとでいいんだよ。俺らと遊びに行こうぜ」
「仕事中なんです・・・困ります・・・」
あからさまに嫌がる女性の受付。下卑たニヤケ面でナンパしている男3名。恐らくこいつらは冒険者だろう。姿恰好がまさに冒険者な感じだった。すでに漂う小物感が何ともいえない。
「すまない。通してもらっていいか?」
「あ?なんだお前、俺たちが今話してんだよ」
俺は男たちのことを無視して受付の女性に話しかけた。
「部屋を借りたい。俺とこいつの2人だ。今すぐ眠りたいんだ、空いているか?」
「え、あ、はい。空いていますけど・・・」
「ありがたい、その部屋を借りたい」
「おい!無視してんじゃねーぞ!俺たちを誰だと思ってんだ!」
「知るか」
眠くてイライラしているところに絡んでくる男ども。ステラでさえもイライラしているのがわかる。お前たちが誰かって?知るかよ、こちとら今来たばかりだぞ。
「体に教え込んでやらねーと分らねーみたいだな!」
そういって殴り掛かってくる男A。テレフォンパンチを余裕で避ける。空振りしたことが恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして俺に罵声を浴びせながら再びのパンチ。面倒なのでカウンターで拳を顔面にお見舞いしてやったら店の外に吹っ飛んで行った。男Aを追いかけるその他。
「なんなんだよお前!」
「ただの冒険者だ。これ以上俺の睡眠を妨げようとするなら殺すぞ」
「でかい口叩きやがって!!おいお前ら!!」
男Aが叫ぶと他のやつらが剣を抜いてきた。ステラが俺の作った武器を抜いて迎撃態勢を取ったが、俺がそれを諌めた。
「もう一度言う。俺たちの睡眠の邪魔をするな。俺たちに関わらないならお前たちがどれだけ不細工な顔で女をナンパしてようが俺たちは関わらん」
「誰が不細工だ!」
「お前だ不細工」
男Aを指差して吐き捨てるように言ってやった。すでに真っ赤だった顔をさらに怒りでゆがめながら、剣を抜いて襲いかかっていた。馬鹿なやつだと辟易しながら、俺はスキルを発動させた。途端に男どもが、がたがた震えながら地面に倒れた。眠すぎて朦朧としていたためか、受付の女にも効果が及んでしまったらしく受付の裏で座り込んでおびえていた。対象から女を外し、眼前で震えながら地面に転がる男どもにさらに強く威圧を放ちながら、一人一人わざわざ近づいて首元に剣を宛がい、目を見ながら、もう一度忠告した。
「俺の睡眠の邪魔をするな。あともう二度とここに来るな。あの受付の女も迷惑しているし、それ以上に俺はお前の顔を見ると気分が悪くなる。次は容赦しない。死にたくなければ俺の前に二度と現れるな。道で俺を見かけたら顔を伏せて逃げるように去れ。いいな、これは命令だ。わかったら頭を縦に振れ。それ以外は拒否とみなし即座に首をはねる」
脅しかけたら男たちは青ざめながら首を何度も振ってどこかへ逃げていってしまった。
「騒ぎを広げてしまってすまん。最近碌に寝れてないんだ、できれば急いで部屋に案内してくれないか?」
受付の陰でまだ威圧の影響で震えている女に声をかけると、何とか立ち上がり、ナンパを追い払ってくれたことに感謝された。そして、ようやく俺とステラは一か月ぶりのベッドでの睡眠を手にしたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
急いで書き上げたので字数も少ないですが楽しんでいただけたら幸いです。
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