表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ライフ  作者: Peach
第一章
15/55

15


「だから条件って何よ?」

「次あなたたちが行く依頼に一度だけご一緒させてください」

「はああ?」

「だから一度だけあなたたちの戦い方を見せてくださいって言ってるんですよ。もちろん自分たちの身は自分たちで守ります。もし俺たちが死んだりしても文句は言いませんよ」



いきなり何を言ってるんだこいつって感じだろうか。一応これでも考えがあっての一連の行動だ。一度、そう恐らく一度だけで足りる。俺に足りないのは情報だ。一回見れればこいつの強さの在り所が見えるはず。自分を強化することを第一に考えるなら、ぶんなぐられたことには目を瞑る。俺が強くなるためだからな。正直な心境的には自分にそう言い聞かせて必死に我慢している。自分よりも小さな女の子にぶっ飛ばされて平気な奴はそうそういないだろう。



「あんた馬鹿なの?」

「俺は本気ですよ?可能ですよね?俺のランクはまだEですが、あなた方のパーティにその依頼の間だけ加えてもらえれば」

「確かにできなくはないけどさ」



これはすでにメルさんにも確認してあった事項だ。恐らくこれから先誰かしらとパーティを組んでの依頼もあるだろうと考えたとき、受注可能依頼のランクはどうなるのか気になって結構前にこっそり確認しておいたのだ。



「もし連れて行ってもらえれば、おかわりできますよ?それに依頼の期間中俺の作る飯が食えますよ?」

「ん・・・」



飯に釣られて考えてる考えてる。俺なら絶対に受けない条件だな。自分たちよりもランクが低く弱い奴を高ランクの依頼に連れて行くなんて、危険が大きすぎる。弱い奴らの命もだが、そいつらを連れていくことで自分たちに危険が降りかかる危険性が高い。

そして俺は他人の命に対してそこまで無責任にはなれない。自分のせいで死なせてしまったりした場合、心がつぶれてしまいそうだ。これは俺がチキンな小心者だからだろうか。いや、普通はそうだろう。



「いかがですか?こちらは報酬はいりませんよ?もちろん俺たちがモンスターを狩ったり採取したものについてはいただくつもりですが」

「どんなモンスターの討伐依頼がいいわけ?」

「何でもいいですが一番危険が少ないものがいいですね」

「あんたの目的が見えないわ」

「言ったでしょう?あなた方の戦い方を見たいんですよ」



戦い方もそうだが、ぜひとも確認したいことがあるわけだが。さて、結構条件を飲むのに渋っているがいけるだろうか。



「仕方ないわね。Cランクの中でも安全な部類の依頼があれば連れて行ってあげるわ」



よし!その言葉確かに受け取ったぜ!赤髪のおちびさんのパーティメンバーがいろいろといってるがリーダーの意見だから従うみたいだ。



「わかりました。ちなみにどんなモンスター討伐に行く予定なんですか?」

「もともとはハイコンドルの討伐依頼に行こうと思っていたのだけど、あんたらを連れていくのならハイトロールとかのほうがいいかしらね。あいつらは力はすごいけど動きは遅いし」

「コンドル・・・鳥ですか・・・?」

「え?ああ、そうよ。ハイコンドルをリーダーに20匹くらいのコンドルが縄張りを守ってるのが一般的ね」

「そうなんですか」



鳥。俺は個人的にあいつらが嫌いだ。理由は簡単。元の世界にいたとき、奴らから爆撃を受けたことがあるからだ。原動付自転車、通称原チャで道路を走っていた時のことだ。学校に遅刻しそうになっていたため、制限速度を超えて爆走していたら、道路を挟むように立っていた電柱をつなぐ電線に一羽の烏が丁度俺の走っている側の道路の真上に当たるところの電線にとまり、何か白いものを投下。やばいと思ったもののスピードが出すぎていたため、一瞬で落下物と激突した。原チャやバイクに乗ったことのある人ならわかると思うが、小さな虫でも弾丸のように飛んできて当たると涙出るレベルで痛い。カブトムシが刺さって死んだ人もいるらしい。マジでスピードの出しすぎには注意が必要だ。奴らの爆撃も同様にかなりの衝撃を受けて事故りかけた。その日学校を自主休講したのは言うまでもあるまい。

 おっと、長くなったが、何がいい対価というと鳥が嫌いということだ。ぜひともハイコンドルっていうのを討伐に行きたいが、敵の数が多いので俺たちも狙われる可能性が高いのでやめておいた方がいいだろう。



「ちなみにトロールってどんなやつですか?」



俺の中のトロールは某RPGに出てくる馬鹿でかくて、緑色の肌に皮の布?皮?を身にまとい、巨大な棍棒を持っている姿なのだが。



「そうねー。体長は2~3m位が普通かしら。ハイトロールはさらに一回り大きくて5m位だったと思うわ」



でかいな。どのように攻めるのだろうか。見た目についての情報は、まあ道中ででも確認することにしよう。



「わかりました。依頼はいつ出発の予定ですか?」

「前の依頼を終えたばかりだから一週間は休みを取るわ。装備のメンテナンスだってあるしね」

「そうですね。では出発する2日前になったらまた声をかけてもらってもいいですか?この時間だったらだいたい見せだしていると思うので」

「仕方ないわね。というか、条件飲んであげるんだから、ほら!」



おかわりの催促が来た。はいはいと器におかわりを盛りつけて渡してやる。もちろんその他パーティメンバーの人にも同様にだ。赤髪のおちびさんは4杯ほどおかわりして食べて、他の人たちは3杯食べた。他の人たちはわかるんだが、おちびさんは一体あの小さな体のどこに入っていったのか不思議に思えてならない。



 とりあえず、今日の商売も終わり、おちびさんたちに別れを告げ、ステラと宿に戻った。







「兄さん、なぜいきなり殴られた相手にあそこまで下手に出るんですか?」



宿に戻って、飯を済ませ部屋に戻るとステラが尋ねてきた。まあ普通疑問に思うよな。俺だって少なからず腹立たしく思っているわけだが、それ以上に今回一緒に狩りに行くことでそんなフラストレーションなどより価値あるものを手に入れられると考えている。でなければ、わざわざ近づいたりしない。そして、俺の目論見が成功すれば近い将来俺はあのちびを超える力を手に入れられると思う。



「今更なんだがステラにいっておく。実はな、条件はいろいろあるが俺は自分の望むスキルを取得することができるスキルを持っているんだ」

「え?それどういう・・・?」

「まあ最後まで聞け。でだ、アーマードベアを狩る前と狩った後だと俺のステータスはかなり上昇しているはずなんだ。なのにだ、あのちびには軽々とぶっ飛ばされた。俺の予想だとあれはスキルを応用した特殊な戦い方だと思うわけだ。俺はあのちびがどんなスキルを持っているのかを知りたいんだよ。鑑定っていう便利なスキルがあってな。他人のステータス情報を見ることができるということに最近気づいたんだが、ちょっとこいつが曲者でな。パーティメンバーならステータスをスキルなどを含めて細かく見れるんだが、メンバーでないものは名前と種族くらいしかわからないんだ」

「・・・」



ステラは口をあんぐりあけて固まっている。まあいきなりとんでもないチートな能力を持ってますなんて言われたらこうなるか。



「信じられない話だろうが俺のいうことを信じてくれ」

「兄さんは勇者様とかそういう方の類の方だったのですか?」

「いやそれは絶対に違うな。俺はそんなにたいそうなもんじゃない。というか勇者なんているのか?」

「昔話にですが、邪龍を倒して人々を守った勇者様がいたとか」



どこの世界にも勇者譚や英雄譚というものはあるものなのだな。だが、俺はそんなすごいものではない。というか、そんなものになろうともなれるとも思わない。まああこがれないと言ったら嘘になるが普通に考えて無理だろう。



「話が少しずれたが、俺はあいつの強さはステータスの高さと何かのスキル、そしてその運用方法とみている。だから一度パーティメンバーになれれば相手のステータスを見ることができる。見ることができれば俺も同じスキルを取得できる。そして闘い方を参考にすれば、かなりの戦力向上につながるはずなんだ」

「はあ」

「今はまだ俺は弱い。だから、苦汁を舐めざるを得ない時期があると考えている。それが今なんだ。あいつらとの依頼が終わった後の俺はきっと強くなっているはずだ。というか強くなる。もし今度あいつらと戦うときが来たときにはぼこぼこにしてやれるほどにな。俺の態度が気に入らないのはわかるが、今回は俺のわがままに付き合ってくれ」



まだ納得しかねる様子のステラだったが渋々といった感じで了承してくれた。俺はベッドに横たわりこれからについて考えた。残り一週間、仮にも高ランクの依頼に赴くわけだから今俺らにできる最大限の準備を整える必要がある。



武器、防具、回復用のアイテムなんて言うのがあるならもちろんそれも揃える必要がある。まず明日、装備屋にいって、武器をそろえ、一緒にアーマードベアの素材で防具を作ってもらえないか聞いてみることにしよう。そのあとはギルドで依頼を受けることにしよう。そう立て続けに初心者殺しに出合うこともないだろうからまたスモールディアの討伐に行ってもいいかもな。最悪アーマードベアなら何とかできる気もするしな。おっと、油断は大敵だな。慎重に慎重を重ねるくらいに慎重に行かなければならない。



でもとりあえず今はゆっくり休むことにしよう。ヒールのおかげで傷は癒えたが精神的な疲れは幾何も軽減されてはいない。気を抜いた瞬間、睡魔が俺に襲いかかってきた。ベッドが俺を呼んでいる。今すぐにでも眠ってしまおう。



「兄さん、気になったのですが、ステータスを見れるってどの程度まで情報を見ることができるんですか?」



すでにベッドに眠る体勢の俺なのだが、ステラが話しかけてきたので意識を手放せない。手短に答えて寝てしまおう。



「ステラ、出会ったころから比べると、最近では身長も高くなったし、体重も増えたよな」



顔だけステラの方に向けていってやった。ステラは初め俺の意図することがわからなかったのだろう。少しの間呆けていたが、気づいた瞬間真っ赤になって俺に抗議してきた。すでに睡魔に襲われている俺にはそれはただの子守歌にしかならない。ゆさゆさと俺をゆするステラ。



「おやすみーステラ」



目を閉じてそういって今度こそ本当に睡魔に身をゆだねた。


いつも読んでいただいてありがとうございます。

感想への返事ですが、申し訳ないのですがここでまとめて感謝を申し上げたいと思います。


誤字脱字など見つけた場合報告していただけると嬉しいです。時間見つけて修正します。


アリスとの絡みを嫌がるコメントが多数寄せられていましたが、数話お付き合いいただければなと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ