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異世界ライフ  作者: Peach
第一章
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 降り注ぐ陽光に日光浴を楽しむ草原一面に広がっている草花たち。吹き抜ける風が草たちの間を縫うように走り、頬をかすめていく。姿が見えないが、りんりんりんと小虫だろうか、の合唱が聞こえてくる。

 



 今俺は、住み慣れた日本を離れ、異世界転生なんて言うフィクションの中でしか聞いたことのない、体験を今まさに経験しているところだ。この世界は、日本のようにアスファルトに舗装された道や、涼しくて快適な暮らしというものではなかったが、幸運なことに今まで平和に暮らせている。転生して一週間ほどは驚くほど速く過ぎていった。ギルドに加入し、初めてモンスターもといウサギを、つまり生物を自分の手で殺した。だが、これは生きていく上で必要なことである、そう考えたら自分自身驚くほどすっと納得できたことを覚えている。

 宿屋で食べた料理の味が今一つであったことから、料理スキルなんて実戦にはおよそ使えないであろうスキルを伸ばしたり、そのスキルを使って料理を振舞ったら、大絶賛されて小さいながら自分の店を出すことになったり、たったこれだけの期間なのに、日本に居たらなかなかできない経験をすることができている。



 その過程で出会ったのが今俺の隣を歩いている少女のステラである。彼女は、この世界では亜人族といわれる種族に属しており、少なからぬ迫害を受けてきたらしい。詳しい内容は、本人に聞くのも憚られたので、もし本人から相談されるようなことがあれば全力で力になってやりたいと思っている。

 彼女の両親のことだが、俺と同じで冒険者をしていたようだ。冒険者は実力があれば、自分で稼ぐことができる世界だ。特に亜人族の人たちが商売をしようとした場合、何かしらの妨害が加えられそうなので、どうしても亜人族が人族の国や街で生活するとなった場合、その時選ぶ職種の割合は冒険者業に偏るらしい。

 なぜ、冒険者業を選ぶのか、それは単に基礎身体能力と成長の速さだと考えられている。彼らは生まれながらに人族よりも優れた身体能力を持っていて、なおかつ、レベルが上がった時のステータスの上昇値が人間のそれよりも高いらしい。あと、特筆すべき点としては容姿の変化だろうか。彼らは、レベルが上がってくるとそのステータスに合わせて、つまり自分の運動能力に合わせて、その行動が最適に実行される体形に変化していくのだ。もちろん、レベルが上がらなければ成長しないというわけではない。1つ1つ歳を重ねていって大人になっていくものもいるらしい。だが、そのような亜人族は少ないとのこと。理由は前述したとおり、実力をつける必要があったためだ。



 話がずれたが、ステラのご両親だが、依頼の途中何かの事件がありステラを残して命を落としたらしい。俺は本来自分さえよければ他人なんてどうなったっていいと思っているタイプの人間だと自認しているが、なぜだろう。出店を出しているとき、ステラの置かれている境遇を知って守ってあげたくなった。理由はわからないが、差別に曝されている小さな子供を見たとき、抗議してしまっていた。


 さて、出会ったころは、その日を生きるために必死だったというステラはがりがりに痩せ細ったかわいそうな見た目だった。軽く力を入れたら、腕なんて折れてしまいそうな印象を受けるほどだった。いまでは、毎日三食しっかり食べていて、ゆっくり眠ることができているため、そして、レベルが上がったことで体つきも変化した。前よりも肉つきが多少良くなり、身長も165㎝程まで伸びた。ステータスも俺に迫るものとなっている。





名前 オオカワ ハヤト

レベル 9

種族 人族

HP 900→1300 (+1)

MP 180→260 (+1)

力 60→100 (+1)

防御 50→70 (+1)

知力 70→90 (+1)

俊敏 50→70 (+1)

スキルポイント 26

固有スキル ステータス操作 図鑑

スキル 剣Lv3 料理Lv4 鑑定Lv2 探知Lv3 生活魔法Lv2 槍Lv3 重量操作Lv2



名前 ステラ

レベル 1→5

種族 狼人族

HP 300→900

MP 50→170

力 20→50 (+3)

防御 30→60

知力 20→50

俊敏 30→60 (+5)

固有スキル 神狼の加護

スキル 剣Lv2 探知Lv1



 それで、これが現時点での俺たちのステータスだ。ステラは初期値こそそこまで高いように思われないが、加護のおかげなのか、ステータスの上昇率が1.5倍になっているようだ。しかもいつの間にか、ステータスに+がついている。きっとスキルポイントが自動で割り振られたってことなのだろう。俺は結構な量のスキルポイントをもらっているが普通の人の場合はどうなっているのだろうか。確かめようがないことではあるのだが、このままだとステラのほうが強くなってしまう。兄ポジションの俺としては、より一層の自身の強化が求められてくるだろう。ステラを守ってやると決めた以上は。





 さて、今俺たちが何をしていたかといえばスモールディアという鹿を狩りに来ているのだ。

 

 都市アルストロメリアを出発した俺たちは目的地の森に向かっている。ギルドの受付嬢のメルさんの話だと一時間くらいで着くという情報は正しかった。道は途中まで親切なほど草もなく歩きやすく整備されていて、30分ほど歩いたところで分かれ道があったのだが、そこにも看板が立ててあり、隣街ブルーローズへの道と森への道がわかりやすくなっていた。


 俺たちは素直に看板に従って進んできたので何事もなくすんなり森にたどり着けたわけだ。今までは背の低い草が広がる草原地帯だったが、今は様々な種類の木々が繁茂し鬱蒼としてきている。高く成長した木々のせいで、日光が届かず地面に生える草は先ほどの草原と比べると減ってきていて、枯れ木や枯れ枝などが落ちている。


 ここは森といわれているが、小高い丘、というかは小さな山といわれても納得するような地形といっていいのではないかと思う。この森は平面というわけではなく、徐々に上り坂になっている。


 森に入ってから一時間ほど経った頃、巨大な岩が4つ組み合わされたようなオブジェを見つけた。これは自然によるものなのだろうか?下の段に3つの岩が三角形に置かれ、上に一つ乗っている。



「ピラミッド・・・?いや、鏡餅・・・?」

「え?」

「いや、気にしないでくれ」



おっと心の声が漏れてしまった。でも本当に鏡餅みたい。あ、餅食いたいな。いやとりあえずこれは置いておこう。

 岩は一つが直径が1mを超えるほどの結構な大きさのものだ。変なオブジェだが、ちょうどこの大岩の周辺は、他の冒険者たちの休憩スポットにでもなっているのだろう。火を起こした後が何か所も伺える。



「ステラ、一旦ここで休憩しよう」

「はい」



 そういって、武器をおろし、火を起こして肉を焼いていく。危険なモンスターが出るかもしれないとさっきまで気を張り続けていたが、美味そうなものが目の前に出来上がるとそちらに集中してしまう。

 

 

 余談だが、人が気を抜くのは、飯の時、寝ているときとトイレの時らしい。本当かどうかは定かではないが、俺の場合はなるほどなと思ったりしたものだ。

 

 

 あまりの美味さのせいで緩みきった顔した二人の冒険者だったが、がさがさと音がして、小さなリスのようなモンスター?動物?が現れ、すぐに逃げ出すということがあって、ウサギしか出ない平和な草原ではないということを思い出し、手早く肉を完食する。

 


 残り火を消して、散策を再開する。探知スキルだが、どうもこうモンスターが多い場所だと反応があるのだが、それがモンスターなのかどうかいまいちわからない。もっとレベルを上げたら変わるのだろうか。

 とりあえず近くの反応に向かって歩いていくと、逞しく枝分かれしているような角を持った牡鹿とであった。牡鹿と判断した角だが、俺の腕ほどの長さがあるように見える。体もウサギに比べるとかなり大きく、1.5mほどはあるのではないかというところ。鑑定を試してみると、スモールディアとでた。こいつが標的のモンスターである。



「ステラ、左右から挟み打つぞ!俺が正面から行くから、隙を見て攻めてくれ」

「はい!」



 そういって、俺は鹿に向かって駆けだした。鹿も同じように俺に向けて突進してくる。俺は槍を横に一の文字のように構え、角を受け止めた。正直ちびりそうなほど怖かった。今までウサギとばかり戦っていたので、大きい敵が怖く感じられるのは仕方ないことではないだろうか。ともあれ、角を受け止めることに成功したのだが、ずるずるずると後ろに押されていく。俺の体重が70㎏弱なのだが、結構力があるのだな。槍の重さも合わせればかなりの重さのはずなのだが・・・。

 あ、そうか。軽くしてる分押し負けるのか。何とか力ずくで微妙な鍔迫り合いを破り、少し距離を作り、槍を中段に構え、勢いよく突き出す。槍は角と角の間に吸い込まれるように直進していったが寸でのところで、角から弾かれてしまった。そのまま追撃せずに、距離を取る。

 そこにステラが剣を振りかぶった上段の構えから斜めに剣を切り落とす。剣は鹿の左後肢を切り裂き、鮮血が噴き出す。ステラはそのままそこにとどまることなくすぐに距離を取る。ヒットアンドアウェー戦法だ。

 


 というか、やはり、重さを減らすと威力の面で劣ってしまうのか。その辺はファンタジーな世界だし、重さは消えるが威力はそのままなんていうのを想像していたが、違ったらしい。だが、しかしどうしたら良いだろうか。あ、そうか、槍に使った重量操作のスキルを解除すればいいのか。


 さて、そう思い当ったのは良いがどうしたら解除できるものか。重量操作を念じつつ、解除を同時に念じてみた。ダメ元ってやつ。おっと、成功したようだ。重量を増やしたり減らしたりにはMP消費を伴うが、解除にはMPは消費しないみたいだ。

 重さの戻った槍を再度中段に構える。それに呼応するように後ろ脚から血を流しつつ鹿が駆けだした。もう一度突き出す。



「どっせい!」



 変な掛け声?知るか。こちとら武術なんてものと縁遠い世界で生きていたんだから仕方ないだろ。

珍妙な掛け声とともに放たれた槍の一撃は鹿本体を貫くことはなく、槍に当たりそうになった瞬間鹿が横に跳ねたことで躱された。



「逃がすかー!」



 体が泳ぎそうになるのを歯を食いしばって耐え、突き出した槍を無理矢理振りかぶる。そのまま体を捻りつつ、鹿を追撃する。振りかぶった槍を剣のように振り落す。柄の部分で全力で強打する。そしてすぐに距離を少しとる。そして入れ替わるように、鉄の槍に体を打たれて動きの止まった鹿の首にステラが剣を一閃。さっきの比じゃない血飛沫が舞った。

 でたらめに角を振り回す鹿に対して、矢継ぎ早に俺が槍を突き出す。今度は避けられることなく、槍は鹿の体に吸い込まれていった。悲鳴にも似た鳴き声を上げた鹿が体を痙攣させながら地に伏した。



 ウサギ以外の討伐は初めてだったが怪我もなく倒せたのは奇跡といえるのではないだろうか。今回の一戦だけでいろいろと課題が見つかった。これからはスキルの研究もしっかりしていかなければならないだろう。重量操作のようにスキルには一長一短が存在しているようだからな。



 さて、鹿の解体だが、何が出るかわからないから、核石だけ取り出しておくことに。というか、ここかなり血生臭い。しかたないことではあるが、いまだに慣れない。さっさと核石だけ取り出して街に戻ってしまおう。そして腹にナイフを立てようとしたときに、事件は起きたのだ。




 がさがさがさと音を立てて揺れる草むら。とりあえず地面に横たわる鹿を図鑑に吸収させる。すると、図鑑に納めるのと同時に草むらから音の正体が現れた。そこから現れたのは、今恐らく出会ってはならないといわれたモンスターの一つにあたるものだろう。



「ボ、ボッシュさん・・・?」



 出てきたのは、でかい図体で毛皮を着たボッシュさんもとい、でっかい熊。鑑定スキルを使ってみると、アーマードベアとでた。鎧熊ってことだろうか。普通の毛皮のようだが、きっとあれめっちゃ固いんだろうな。てかさ、でかすぎないか?3m以上ありそうだ。あんなの勝てる奴いるのかよ、某ボクシング漫画の6階級制覇を狙うプロボクサーでも無理だろこんなの。なんて考えつつ、俺もステラも硬直してしまう。ちらっと横目でステラの表情は顔面蒼白。俺もきっと同じようになっているだろう。



 山で熊に会ったとき、絶対にしてはならないのが背を向けること。背を向けると熊はそいつを餌だと認識して襲いかかってくるらしい。もともと熊は臆病な生き物で、人間を恐れているとか。熊と目を合わせながら、徐々に下がるように距離を取っていく。ステラも俺に続くように少しずつ後ずさる。


 だんだんと距離が離れていく。これは逃げ切れるか?そう思った矢先、ポキっと音を立てて落ちていた枝をステラが踏み割った。それと同時にバランスを崩して転んでしまった。



「この馬ッ『ぐおおおおお』!」



 悪態をつこうとした俺の言葉を遮るように、熊が咆哮を上げた。やばい。完全に敵として認識された。

 ゲームとかしていて、なぜか敵はプレイヤーと会うと問答無用で襲い掛かってくるのだろうか?俺何もしてないじゃん!って思うことがしばしばあったのだが、まさか現実世界で体感することになるとは。



「ステラ!走れ!」

「は、はい!」



 ステラを起こして、全速力で山道を駆け下りていく。





やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。




 後ろから迫る本物の死の恐怖。追いつかれれば恐らく待っているのは死。頭の中は、嫌な想像しか湧いてこない。




 足場の悪い道で何度も転びそうになりながら、走った。ひたすら走った。無我夢中で走り続けた。



急ぎ目で書き上げました。誤字は一応確認してからの投稿なのですが、見つかりましたら、報告お願いします。


最近ではたくさんの方々がご覧になってくれているようで、感想などいただけていて本当にうれしく思っています。始めた当初はアクセスが1増えるだけで喜んでいましたので、つたない文を読んでいただいている皆様に感謝しています。


あと、次話の投稿は今週から私生活が忙しくなるかもしれないので、今までのペースで投稿できるかわかりません。なるべくペース崩さず書き上げていこうと思っています。


今後とも頑張りますので、アドバイスなどあればぜひお願いします!

評価や感想もよければお待ちしております!


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