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2.あいしてるの


※暴力表現+ギリギリセーフラインで艶表現を書いております。ご注意ください。






ぐったりしてます。


ちなみに全裸。全裸で縛られて放置です。唯一助かるのはクッションが柔らかいということです。



「あ、アリス、さーん……?」



風呂上りなこいつはすぴすぴと睡眠中。さっきまで薬を飲ませて散々きゃっきゃうふふ気持ちいいねー☆な事しといて勝手すぎる。

俺の上に乗っかって寝てるから温かいちゃあ温かいんだが、こいつ自身はどうなんだろうか。湯冷めしちゃうから誰か毛布持ってきてあげて……っていっても、扉の前に筋肉ヤバすぎる白兎がいるだけなんだが。


「う、兎……さん?くん?……あの、毛布」

「きゅjfpごksm、bsん:yんbfすいぇfhrgmtb、lんlp」

「ひいいいい何言ってるのか分かんないいいいいい!!!」


いや、あの外見で和やかに話されても困るんだが。

まあ話は分かってくれたみたいで鍵がたくさんある扉を丁寧に開けて、十秒後に籠いっぱいの布を持ってきた。

「これ?これ?」と一枚ずつ持ち上げるのに首を振る俺。


「それタオル。短すぎ……それはハンカチかな……それ、は……」


小さい服。

赤ん坊用のだ。どんどん取り出すと、その籠の中身は幼児用のものばかり。



「ふふ……あかちゃん……」



起きたのかと焦ったが、こいつは未だ夢の中。幸せそうに腹を撫でている。


……俺の両親は死んでるし、こいつの実家だって当然ながら優しく声をかけてくれたもんだが、やはり時代が時代。俺のいないところで悔しい思いをしたんだろうか……。


いっそあの検査の時、二人で話を聞かなければ良かった。最悪の事態を想定して、俺だけが結果を聞いて。俺のせいで駄目だったのだと言えば、ここまで辛い思いをさせなかったんだろうに。


「もっと、もっとちょうだい」と微笑んだあいつは病的だった。俺がお姫様を孕ませたのも原因の一つだろうなあ……うわああああ死ねばいいのに俺。


「あっ、それ!それでいい!」

「きゃぶsfgんhしjjんjくp:じぃhtぐyrgvcふぁxsdg」

「お、おう……?」


あかん、何言ってるのか分からん。

白兎はこいつにそっとタオルケットを被せると、籠を戻しに行く。んで、またちゃかちゃかと鍵をかけ……ていうかこの部屋暗いな。窓には鎧戸が降りてるし……。


………俺、無駄に余裕だけど、これって結構ヤバい事態なんじゃ……。



「―――アーサー?」

「あひっ!?」

「…?なんではだかなの……?」

「お前がひん剥いたからだろっ」

「………」

「…ど、どうした?」

「……あかちゃん……できたかなあ」

「えっ、いや、えーっと……」

「………」

「あー!ほら、あれだ、お母さんになるならちゃんと飯食わないと!だ、駄目だぞ☆」

「!…ふふ、そうね!ご飯、ご飯にしましょう…ふふふふふ」



な、泣かすかと思ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


アリスは笑って起き上がると、タオルケットを訝しげに見る。ち、違うよ!持って来てもらったんだよ!


「きゅfんrvmgbhyふkぁえsrちゅ」

「そうなの?」

「dfrghtんbmb;sfhん」

「ありがとう。ふふふ……」


会話が通じてらっしゃる。


だけど、「ありがとう」と俺にすり寄るところは可愛らしくて、ちょっとほのぼのした。

これが全裸で拘束で無ければな……。


「―――な、なあ、アリス」

「なあに?」

「こ、これ外してくれないか。筋がおかしくなりそうだ」

「……」

「それに、お前の手料理だって食えないし、お前を抱きしめられない。赤子だって、抱けないだろ?」

「………」


頼む。もうこの際腕だけでもいい。

腕さえ自由なら案外何でも出来そうな気がする。だって曲がりなりにも俺は勇者様だし。


「………わかった」


やった!―――と思った数分後、俺は地獄を見る。




「い゛っ、あ゛、ま、待っ……痛いぃぃぃぃ!!」



包丁を手に帰ってきたアリスが、俺に馬乗りで戒めを斬る。革ベルトの抵抗で刃が揺れて、俺の腕に刺さるのは絶対ワザとだ。



「あっ、すごい。すごいわあ…ふふふ、みてみて、ハートマーク!」

「いだいいだいいだいいだい゛っ、やめ、痛い、痛゛っあああああああああああ!!」

「甘い、甘いよぉ。えへへ、えへへへへへ……!」

「だっ、やめ、おれ、もういい!!縛られたままでもいいから!!やめてくれ!」

「縛ったままでもやるよ。だってこの腕であの女を抱いたんでしょ?ねえ、どんなだった?覚えてる?覚えてるの?」

「も、あ、あああああああああああ!!!も、知らない!!覚えてない゛!!」

「ほんとう…?」

「ほ、……んと……」



涎を垂らして言えば、あいつはうっとりと恍惚の表情で言った。



「じゃあ、次は足ね」

「え、あ……やだああああ!!いい!しなくていいから!!」

「痛いのが怖いの?…じゃあ気持ちイイことしながらやろうねえ」

「やだやだやだやだ!!!やだああああ!」

「あはは、アーサーの足って綺麗だわ。ふふ、幾らでも舐めてあげたい…あっ」

「やっ、やめ、やだあ……!」

「はぁ、あは、大好きよ。大好き。ずっとずっと一緒に居てね…?」

「いる!!いるから!あああああああ!!!」

「えへへ、うれしい、んっ」



幸運なことに、腱はやられなかった。



流石は元薬師、痛み止めと塗り薬もよく聞いた。散々酷いことをされた後、あいつは俺の望む通りにさせた。部屋を飛び出さなければ、どんな屈辱的な事でも笑顔でやった。

まるで俺が主であいつが奴隷のように、あれこれと世話を焼き好物を言う前に出して、風呂の世話でも何でもしてくれた。


そうするとだんだん俺の方に依存症が出てきて、俺は首輪を付けられててもリードで引っ張られても平然としていられるようになった。いつの間にか外に出られるようになったけど、周囲の声も気にせずに俺はあいつの手を握る。

アリスの作った服しか着せられないが、別に変なものでもないしありがたいと思った。


………。



「アーサー!ふふふ、聞いて!先生がね、今度は子供が出来ますって!」

「おう、良かったなあ」

「えへへ、嬉しいなあ嬉しいなあ。えへへ」

「あんまりはしゃぐな。身籠って無くても何かあると不味い」

「うんっ」



その知らせまで、俺は大変おかしい脳だったのだが、「子供も身籠れる」と知ったアリスの行動がだんだんとまともになっていくのに合わさるように、俺も昔の感覚を思い出す。

アリスは前世であの残酷な真実を告げられる前の、甘えん坊に戻って来て、すごく安心した。


相変わらず外出時は首輪付きだし(我に返ると超恥ずかしい)、扉は鍵がいっぱいだし窓は鎧戸で閉められている。外の情報は与えられない。

それでも良かった。恋しかったあのころの暮らし。アリスが作ると嫌いな野菜や魚だって美味しく食べれた。


「薔薇風呂って微妙だねえ…」

「……その上、後始末も面倒だもんな……」


あの時は贅沢させられなかったから、今度はさせたい。


―――んだが、あいつはこの部屋で暮らす、それだけで良いらしい。


それに―――やっと、毎日の頑張りで子宝を儲けそうだ!このまま何事もなく、無事に出産……って産婆に話通さないとあかん。

安全策とって入院が一番なんだけどな。でもアリスは嫌らしい。妊娠中の浮気を疑ってるのかもしれない。


だが家を開ける決意はしてくれた。やはり子供には変えられないらしい―――俺は町までちょっと行っては医者を連れ、あいつの好物のプリンと柑橘類を買って家に戻る。

その際にちょっとでも寄り道をすれば俺は「外の世界を知る」事が出来るが、俺の脚はまっすぐ家路に向かう。

そうして自分で外の世界を閉ざし、鍵をかけ、縫い物中のあいつに飯を作る。嬉しそうに笑ってくれる―――はずが、今日は何だか落ち込んでいる。



「アリス…?どうした、何かあったのか?体に異常でも?」

「ううん……」

「…?」

「………多分、遅かれ早かれ、耳に入ることだろうから、言うね……」



"あのお姫様、もうすぐお子さんが産まれるって。"


"「あなた、帰って来て」って、言ってるらしいの"



―――俺は、固まった。


あ、ああ、そうなのか、と言えばいいのか、目を逸らせばいいのか。

あのお姫様のしたことは酷いことだが、だからと言って俺のしたことは最低と罵られるべきことである。幸い、お上は「勇者の血を引く子」を楽しみにしてるようだが。


(……魔王から貰った宝の半分贈って、手切れ金……それしかないよな、流石に、だって)


俺は、彼女の夫である。


式は前世のあの貧乏なものしか挙げていないけど。でも夫なのだ。いくらなんでも謝罪なり何なりをしに城へ向かえばどうなるか分かっている。下手なアクションはアリスの体に障る。


ならば何が良いか?―――無視だ。俺は世界中から「最低」と言われてもアリスと寄り添い生きるのが、一番であり俺の我儘である。



「…アリス、気にするな。俺はお前の夫で、その腹の子の父だ。そうだろう?」

「アーサー…っ」

「お前は悪くない。全部俺の馬鹿さゆえに起こしてしまったことだ。お前が罪悪感を抱える必要は無い。……大丈夫、矢面に立つのは慣れてる。な?」

「………ひと、りに。しないでぇ…!ひっく、わたし、親子を引き裂くのが、こんな、こんなにひどいことだなんて……!どうしましょう、償っても償いきれない…!」

「一人にしないさ。な?あんまり泣いてたら腹の子も驚くだろう。今温かいものでも作るから、もう忘れてしまえ」

「あーさー…」

「愛してるよ。」



ぎゅう、と抱きしめれば、アリスは一生懸命涙を拭い、落ち着こうと深呼吸する。


「もう大丈夫…」と掠れた声が呟くまでずっと、優しくその背を撫でていた。


「お前は悪くないんだから、変なことをするなよ?」

「うん……」

「じゃ、作ってくるからな」



頭を撫でれば、心底安心したアリスの笑顔。

まだ涙が零れているけれど―――「楽しみにしてるね」と言うから、俺は「任せろ!」って。


がちゃんと扉を閉めた後、アリスは天使のように微笑んだ。




「ふふ、アーサーは本当に優しい。……自分がされた事を忘れたのかしら」




口調はどこまでも甘やかで、ぞっとする。

枕の下に隠した手製の人形を取り出すと、刺したままの針を押し込んだ。




「私の夫を盗った女がどうなろうたって、気にするワケないじゃなあい!あっははは!」


「呪ってやるわ!よくもあの人を騙したわね、母子もろとも地獄に落ちろ!あっひゃひゃひゃひゃひゃ!!」




もう一度と縫い込んだ針に、憎悪が込められていたのは言うまでもない。






可愛い顔して野獣なの☆




補足:


現在のアーサーさん:調教のせいで共依存。盲目に愛してるけど覚めたらヤバい状態。


現在のアリスさん:デレたと思った?残念でした!と期待を裏切らないヤンデレぶり。


外の世界;「勇者様帰って来ない」けどわりと何とかやってる。アーサーさんが外出時にバレないのは顔が地味……ぐふん、医者とかで名前が必要な時は前世の名字を使用してる。


お姫様:実はどっかの貴族と恋仲だったり。産んだら交際するのかしら。


ちなみに、アーサー⇒子供に罪は無い 派ですが、アリスさんは「母子ともに有罪」と思ってますうわあああ…。




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