IV「未来」「フクロウ」「最高の山田くん」
未来から来たと言ったら、人はどういう反応を示すだろうか。なんだかんだ訝しむのが普通なんじゃないだろうか。少なくとも私はそう言うだろうと思う。
だから私がこうして未来から来たなんてことを言うわけにはいかなかった。そしてどこから来たか言えない以上、私は隠れ潜んで動かなければならなかった。
私が未来から来た目的は簡単。世界を救うこと。
そのための相棒は肩に乗ったフクロウ一羽だけで、ここから私がどうやって動くかなんて計画もない、そんな粗末な救済劇。
だから私は、もっといえば私を送り出した人たちの全員がこの計画は失敗すると思っていた。人類どころか、地球上に生物がほとんどいなくなってしまった未来を、たった一人の手に任せるなんてそれこそこの時代の人間には理解できないだろう。でもそれほど事態は切迫していたし、そうするしかなかった。
でも私を待っていた運命はもっと酔狂だった。
私はそこで出会ったのだ。
この世で最高とも評された男、山田くんに。
私の降り立った場所は古ぼけた廃墟で、明らかに人がいなさそうな場所だった。もちろんそういう場所を選んだ結果だ。だから私は誰もそんな場所にいないと疑わなかったし、だからこそ警戒もしなかった。だから彼に、簡単に背後を取られた。……この私が、不覚を取った。戦闘訓練を積んだ、この私が。
「君は誰だ?」彼はそう言った。
「……」私に答えはなかった。なぜなら私という人間は彼にとって、存在しない人間だから。答えられるわけがなかった。
「答えろ」山田くんはそう言って私を乱暴に転がす。その瞳は、睨みつけられても最高であるなんて、そう思える馬鹿げた瞳だった。
私は仕方なく、ある程度と割り切って事情を話すことにした。すべて話し終わったその時、彼はその情報をつなぎ合わせて私の境遇をすべて理解していた。
「そうか、キミは……」山田くんはそこで一度言葉を止めると、コクリと一つ頷いて言う。
「それなら僕に考えがある」
その表情は悪戯を思いついたような輝かしい笑顔で、私はその時、もうすでに彼に惚れていたのだと思う。それを見ていたフクロウまでもがバタバタと暴れ出す。
準備は数日で終わり、決行の日がやってきた。用意したのは精々私が背負うリュックサックに入る程度の品々。それを持って夜の山で時を待った。
暗くなって、人気がなくなってから私たちの作戦は決行された。といっても、花火を打ち上げただけだ。なんだかもう、人類の救済になんて興味はなかった。
「楽しいね、山田くん」私はそう言って笑った。彼もそれに頷いて、一言。
「あぁ、だってようやく人類を滅ぼせたもの」
最高の山田くんはレアらしい。




