III「天」「ケータイ」「最悪の高校」
うちの高校は最悪だ。何が最悪化と言われても困るけど……、ふと気づいたらすごく電波だった。
クラスメイトは皆一様に生気を失ったような眼をしてところ構わず「ビビビビビビビ」と狂ったように言葉を発し続けるし、先生は先生で壊れたっレコードのように同じところだけしか授業をやらない。休み時間などになると校庭や屋上はごったがえす人であふれ、まるで蠢いているようにUFOを呼び出そうとしている。それを聞いているだけで私は狂いそうだったし、事実そうして狂っていった人も結構いたようだった。
だからこそ今日も登校するのが憂鬱だった。ケータイをカコカコといじりながら思う。イヤフォンで大音量の音楽を聴き続けてでもいないと自分が狂わないでいるのは難しかった。毎日のように音楽を聞きながらゲームをし続ける日常にもそろそろ飽きてきて、いい加減にこの最悪な日常を脱してはくれないかと薄い望みをかけてはいるけれど、今日も変わらず狂っているのはいかんともしがたい事実で、明日もまた狂い続けるのだろうと思う。そう考えただけで憂鬱だった。
校門をくぐる。すでに校庭ではかなりの人数の学生が無心に穴を掘っている。何をしようとしているかなんて考えてはいけない。私まで狂ってしまう。下駄箱では無数の上靴が散らばっていて、そこらから集められたのだろう人体模型や骨格標本が散らばっていた。階段には赤いペンキがぶちまけられていて、廊下には無数の画鋲が行く手を阻んでいる。本当に何がしたいのか、さっぱりわからない。
時折本当に狂ってしまった方が楽になれるのかもとは思うけれど、狂ってしまった後どうなるのかがわからないから絶対にいやだった。この苦しみを理解してくれた先輩は2日前に狂ってしまったし、同じ理由で保健室に日参していた後輩は今は屋上で無意味に転がっているのだろう。そう思うと友人を次々と失っているようでとても悲しかった。
そして今日も授業が始まる。相変わらず教師は壊れたレコードで、生徒は壊れた方位磁石のようにあっちこっちを向いて怪電波を発していた。”ggdihgsoizm;fosdjhalizsjgfv””ksdhfgvbsbvfdiuchabf”わけのわからない声。”glkhffsgjgbigjds””fhndgndgsf””kgnhgsdjfhgfs”「君も聞くかい?」やめろ。”lkghsigsifjasfisjkgaigajgsdhgs”「怖がることはない」”sgiuknvdfkgSijgknsiljkvnsogihjsg”「すぐに楽に慣れるさ」天は言う。”gldhgisfgjsfaogjh”「だってそうだろう?」やめろ。”gihfalsgjvsfdfs;jfgkbsdogsoifgs”「君はこの声が……聴きたいのだろう?」天は続ける。やめろ、やめろ。私が、狂ってしまう。「怖がることはないさ」天は、「すぐに楽に慣れるさ」天は……、「だって、そうだろう?」天も、壊れたレコードのように。
天すらも壊れていると知って、私は。私は。
……。
卒業式の日、私は高校時代後半1年余りの記憶を失ったまま、屋上から飛び降りた。
他の生徒と、まったく同じように。




