5話目
4月26日
朝
柊「桜が綺麗だね」
柚「そうですね。でも、もう4月も終わりますし、そろそろ散ってしまうんですよね」
柊「……そうだね」
柚「…………」
柊「…………」
柚「兄さん?」
柊「ん? どうかした?」
柚「いえ、兄さんが珍しく静かなので……」
柊「うん……ちょっと、ね」
柚「感傷的になってるんですか?」
柊「えぇと……」
柊「今日の柚ちゃんの下着も桜色だったなぁ、と」
柚「ちっ、いつも通りか」
朝その2
楓子「おい、弟」
椿「なんだよ、姉ちゃん」
楓子「桜がさいてるぜ!」
椿「あぁ」
楓子「…………」
椿「…………」
楓子「…………」
椿「…………」
楓子「…………」
椿「……えっ!? 会話終わり!?」
朝その3
楓子「ったく、察しろよ!」
椿「えぇと?」
楓子「ほら、桜だぜ? 春だぜ?」
椿「……あぁ! そういうことか!」
楓子「そうそう。この際だから花園柊とその妹も誘って……」
椿「おお、おぉ! さささそうかぁ……」
楓子「熊狩り!」
椿「花見!」
楓子「…………」
椿「…………」
楓子「…………」
椿「え?」
朝その4
椿「……だからな、姉ちゃん? 桜の樹液じゃ熊は来ねぇって!」
楓子「はぁ!? やってみなきゃわからんだろうがよっ!」
柚「あ、此森くん。おはようございます」
椿「へ? あ、ああぉ!? 花園っ!? おお、おはっようっ!!」
柚「は、はい」
柊「……………………」
柚「あ、兄さん。彼が一昨日話した――」
柊「あぁ、此森椿くんだね?」
椿「は、はい!」
椿「は、初めまして、お兄さんっ!」
柊「………………フフフ」
柚「……えっ? 何ですか、この空気」
昼
椿「あー、びびったな。まさか朝イチで花園に会うとは……」
楓子「……」
椿「いやぁ、にしても、お兄さん威厳あったなぁ」
楓子「……」
椿「いや、威厳というか……オーラ?」
楓子「……」
椿「というより、殺気? ……って、姉ちゃん?」
楓子「ひ、ひいらぎくん、かっこよすぎるよぉぉぉ!!」
椿「キャラが違うっ!?」
昼その2
柚「あれ? 今日はお弁当じゃないんですか?」
椿「え? お、俺?」
柚「はい。此森くん、いつもお弁当ですよね?」
椿「おお、おぉ!? そうだけどっ!?」
柚「あのお弁当って、朝一緒にいた、えぇと……」
椿「あ、あぁ、姉ちゃん……?」
柚「そう、お姉さんが作ってるんですか?」
椿「あ、いや……俺、が……」
柚「えっ!? そうなんですか? すごいですねっ!」
椿「あ、いや……べつに……」
柚「謙遜しないで下さい! いつも思ってたんですよ。此森くんのお弁当、綺麗だなぁ、って!」
椿「い、いやっ、花園の方がっ!」
柚「あっ!」
椿「ははははいっ!?」
柚「いいこと思いつきました!」
柚「今度私にお弁当作ってきて下さい! 私も此森くんに作るのでっ!」
椿「!!!」
柚「いいです、よね?」
――コクンッコクンッ!
柚「じゃあ、詳しいことは後で話しましょう」
椿「はは、ひゃいっ!」
柚「それじゃあ、また。午後の授業で」
――タッタッタッ
椿「…………や、やった……」
椿「花園のお弁当……っ」
椿「しゃああぁぁぁぁ!!!」
夜
柊「ちょっと出かけてくるよ」
柚「あれ? どこ行くんですか?」
柊「ちょっとスーパーまでね」
柚「なら、アイス買ってきてもらえますか?」
柊「いいよ。いつも通り苺味でいいんだよね?」
柚「はい! 兄さんは何買ってくるんですか?」
柊「藁と釘」
次回予告
柊「ぐはぁぁ!?」
椿「っ!? お兄さんっ!」
柊「ぐっ……。ゆ、ゆずちゃん……なんでっ」
楓子「もう手遅れ、だ」
椿「姉ちゃん、どういう意味だよ……」
楓子「もう花園柚に自我は残っていない……あるのは、ただの――」
楓子「破壊衝動だけだ」
柊「なんでっ」
柚「…………」
柊「なんでこうなっちまったんだよぉぉぉ!!」
柚「アナタハ――」
柊「柚ちゃんはっ――」
柚「ワタシガハカイスル」
柊「俺が破壊するっ!!」
柊「まぁ、嘘予告なんだけどね」
柚「…………兄さんを破壊……いいかもしれない」