第1話:再会と新生活
調子に乗って続けてもう1話いきます。
ここであらためて自己紹介をしておこう。
ボクは京橋遥今年の9月で19歳になる大学1年生だ。
通っている大学は中の上レベルの花咲大学だ。
電車で5分もすれば東京に行ける神奈川のはずれに住んでいる。
外見としては、身長160マイナス2cm、体重43キロという自分でも認めたくない小柄なかんじ。
髪型は男にしては若干長めで1度も染めたこともないから自然な黒髪。
顔はパッと見、男とも女ともとれる中性的なつくり。
勉強はなんとか単位を取れそうってところで少し危うい。
運動は全くダメで体育が免除される法学部に入れたことが嬉しい。
趣味は寝ることと食べること。
それなのに全然太らないのはボクの持つ特殊能力であってほしい。
我ながら誇れるところが全然ない残念な子なのだ。
そんなボクにはもちろん可愛い女の子との出会いもなく寂しい青春をおくり続ける運命しかないと思っていたある日のことだった。
恐怖の女王の襲来を聞かされたのは。
その日はいつもと同じように食っちゃ寝三昧の堕落全開の日曜だった。
ボクの父京橋五次郎が「再婚しようと思う」そう言いやがったのだ。
そんな名前のくせに実は4男なのだ。
紛らわしい。
ボクの母は浮気性の父に呆れて半年前に出て行ってしまったのだ。
出て行ったといっても50メートル先のマンションにであるが。
なんでも「生まれ育ったこの場所を離れるくらいなら切腹したほうがまし」と言っていたので切腹したくないのだろう。
ボクも同意する。
そんなことよりボクは父の再婚に別に反対するつもりはなかった。
相手を聞くまでは。
相手は父の従妹の美子さんだ。
美子さんの嫁ぎ先の倉池家も代々男はかなりの浮気性らしく我慢の限界を超え離婚に至ったそうだ。
そんなとき相談にのってあげていた父とついデキテしまったのだ。
ボクは美子さんのことは嫌いじゃない。
むしろ好意をもっている。
しかし、再婚には巨大な問題があった。
それは美子さんの一人娘の命さんだ。
命さんは僕より1つ年上。
でも誕生日が8月だから1か月くらい2歳上になる時期がある。
勉強もスポーツもまさに最強クラス。
そのうえとびっきりの美人だ。
髪型は腰に届くか届かないかくらいのストレートなボク好みの黒髪ロング。
しかもただの黒ではなく、黒いのに輝いて見える。
これは会うたびマジで感動している。
言ったことないけどね。
肌は太陽を知らないような純白できめ細かい。
目は大きくクリクリとしていて、まつ毛も程よく長い。
輪郭は卵型で鼻筋もとっているのにもかかわらずどことなく幼さを残している。
口元も上品なかたちであり、究極のバランスである。
身長はボクより若干、ほんとに若干高い170cm。
体重はヒ・ミ・ツらしいがボクといい勝負の痩せがたなので、48キロくらいと予想している。
そんな優れた容姿や才能を持っているので、今まで1000回くらい告白されたことがあるらしい。
でも、喜んでいいのかわからないけど全部断ってきている。
驚いたことに理由はボク以上に愛すことができる男はこの世には存在しないというのだ。
天才ゆえに感覚が常人離れしているのだろうか。
前に冗談でそんなことを言ってみたら「それならそれでハルちゃんを他人よりも多く愛せるから、私は世界で1番の幸せ者だね」という涙物の回答が返ってきた。
どーだ、うらやましいだろう?
確かにこのレベルならウェルカムさ!
でも、命さんはこんなのは序の口で会うたび束縛が強くなるから恐怖のほうが強い。
例えば、たまに遊びに来たときもボクが友達と遊んでいて、その中に女の子が1人でも入っていたら「ハルちゃんに近づくなッ」と周囲ドン引きな状況を作り出すという中級魔術から、果ては男の娘にも見える同級生と遊ぶことになっていた時も「ハルちゃん、女もダメだけど男に走ってもダメーッ!むしろ私以外キャラ選択不可能なのーっ!!」という上級魔術も見事に披露してくれた。
さらに上級中の上級として家に遊びに来るたびのことではあるが、盗聴器や監視カメラを設置していくのには驚いた。
まぁ、もう慣れたけどね。
自分でも慣れちゃいけないんだなーって思えるだけまだ手遅れじゃないのかも。
こんなこと数えてたらきりがないけど。
そしてその恐怖宣言から約2週間後の今日、とうとう再婚を止められないまま命さんが本格的に家に住むことになってしまった。
実は恐怖宣言も2週間ほど時間があれば、なにかと覚悟ができてしまうわけで、内心どんと来いな部分もあった。
だが恐怖宣言にさらなる続きがあった。
父と美子さんはこの家では住まず海外に行くと言うのだ。
具体的にはヨーロッパを転々とするという純粋な子供のようなことを言い出したのだ。
仕事で行くならまだ分かるが、子供たちがいると心から愛を育めないと言いやがった。
しかも昨日の夕方のことである。
そしてそのまま親父は出ていきやがりました。
つまりこれからボクと命さんの二人だけで暮らせということだ。
そしてインターホンが鳴り響く。
ボクとこれからのことを話したいと彼女は笑顔で語りかけている。
モニターに映る彼女の姿は画面を通しても美しい。
地区25年のこの3LDKはこんなにも狭かっただろうか。
少なくともここで生まれ育った身としてここまで狭く感じたことはない。
命さんが毎回遊びに来るときもあまり感じなかった。
2人きりという状況がボクを追い詰めているのだろう。
ゆっくりと立ち上がり恐る恐る玄関に向かう。
このドアの向こうに命さんがいるんだ。
勇気を出してドアを開ける。
するとそこには、地上に舞い降りた天使がいた。
モニターで見る彼女も綺麗だが、実物からみればやはり落ちてしまう。
こんなに綺麗だったっけ?
その瞬間は世界が止まったかのようだった。
そして、「ハルちゃーん。今日からいっしょに暮らせるね。大好きだよー」と抱きついてきたのだ。
「うわっ。急にひっつかないでよ」
「だってー、久しぶりに会えただけじゃなくて、これからは2人だけで暮らせるんだよ。ハルちゃんは嬉しくないの?」
ボクより背が高いから上目使いはできないけどその自然な悲しげな瞳は反則だろ。
くそ、かわいいぜ。
絶対本人には言えないけど。
「嬉しいことは嬉しいよ。でも2人だけってことは家事とかどうするのさ。それに命さんの学校はどうなってるの」
「それなら両方問題ないのだー!この日のために嫁入り修行を2週間してきたしハルちゃんも手伝ってくれるでしょ。学校もハルちゃんの通ってる花咲大学に編入したし。そんなことよりもその命さんっていうのを止めなさい。何回も言ってるでしょ。ミッタンって呼んでって。恥ずかしいならお姉たんでもいいよ」
そうなんだよな。
昔はミッタンって呼んでた時期もあったから命さんって呼ばれるのはやっぱり寂しいんだよな。
ってそんなことより編入したーッ?
「命さんが通っていた十城門大学をでなくちゃいけないのは分かるけどなんで花咲みたいな2流大学にくるのさ。命さんのレベルならこのあたりで1番のとこでも余裕なのに。もったいないよ」
「ハルちゃんの行く学校こそが私に本当にふさわしい学校じゃないのかなって思うんだ。だから、花咲に入った。それと、命さんは止めてー」
そんなこと、ボクだったら恥ずかしくて真顔で言えないよ。
仕方がない。
すこし譲歩してやろう。
「ミッタンは無理だけど、その・・・姉さんとなら呼んであげなくもない」
命さんの表情が輝いた。
「なら、姉さんで折れてあげましょう。ハルちゃんこれからよろしくね」
みことさ、姉さんが元気よく手を差し出してきた。
「うん。いろいろ不安だけど、こちらこそよろしく」
そう言って握手を交わす。
久しぶりに握った女の子の手は愛に満ちていた。
そんな気がした。
頑張って1週間を目標が1日で投稿できました。
次からは1週間を目標で投稿したいです。
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