第11話:変わりつつある今
ゴールデンウィーク最後の投下
ボクが鏡と関係を持って1週間が経った。
平日は決まって午前中に授業を受けて、午後は犯されるのが日課となっている。
休日はボクの家で一日中恋人ごっこをさせられる。
そのせいであれから一度もサークルへは出向いていない。
恐怖の中でボクの見られたら社会的に死んでしまうであろう写真や動画で脅され、いつも一方的に犯されている。
鏡は決まってボクを弱みで脅すだけではない。
ボク自身が体もあまり強いほうではなく体型もやせ型で、呼吸器を生まれつき患っているため力を用いた抵抗はあまり出来ない。
普段の生活に何ら支障はないが、激しい運動は呼吸が不安定になるのであまり良くない。
さらに鏡は身長もボクと同じくらいということもあり、脅しがなかったとしても力で勝つことは難しいだろう。
鏡は最初に交わった日は別だったが、次の日からの情事には必ず「アリス」のフィギュアを出していた。
そして、アリスに話しかけながらボクのことを「霊羅」と呼んで、いや「霊羅」として犯していた。
まるで自分こそがもう一人の「アリス」になったかのように。
霊羅の原作では「霊羅」は戦いの中で「アリス」という親友と「幽亡」という姉の3人で協力して、時には守り合ったりして敵と戦ったり平和を守っている。
しかし現実の「アリス」は「霊羅」を守るどころか自分の欲望で汚している。
そして自分の手で汚した「霊羅」を支配することで幸せを感じているのだ。
今になって鏡のことを見ていると、情事に関わらず普段から「アリス」になる瞬間があるようだ。
ボクが鏡以外の女性に見られるだけでも「アリス」の片鱗が現れるようだ。
姉さんのおかげでボクは有名になった。
だから、ボクが歩いてるだけでも多くの人がボクに注目する。
当然その視線の約半数が女性である。
ボクが女性に見られてるだけで鏡は自分を「アリス」の一部としてしまう。
そして人が多い中で急に密着させてくる。
しかしボクにはそれを拒否することは出来ない。
なぜならその場の多くの人は気づいていないが、鏡は「ねぇ霊羅、あたしね霊羅が他の女に見られてると嫉妬しちゃうよ。苦しくて苦しくてみんな殺したくなるの。気づいてるでしょ、お姉さんに毒を盛ったこと。今ならまだ我慢できるけど、もし霊羅があたしを裏切ったら皆にも同じ・・・ううん。もっと酷いことして殺しちゃおうかな」と耳元に囁いてくる。
ギリギリとボクの体を強く絡め、「ボクではないボク」を見つめる。
だからボクは鏡の言いなりになる。
せめて「霊羅」としてこれ以上の犠牲を出さないことがボクの出来る唯一の抵抗なのだろう。
そして、鏡の気持ちを知るのが遅すぎた故の償いなのだろう。
鏡のことにもかなり精神的にダメージを受けるが、それ以上にボクが悩んでいることがある。
それは、姉さんのことだ。
意識が戻ってからは特に体に異常は見られない。
しかし、姉さんはまだ入院している。
姉さんは体以上に精神面が傷ついてしまったようだ。
いくら軽い薬物とはいえ、それを結果的に食べさせたのだ。
ボクもされたら立ち直るまでに時間がかかると思う。
今は精神科に一人で閉じこもっているが、いつ出てくるのかは分からない。
見舞いすら謝絶され目覚めた時の一度しか会っていない。
メールや電話も一切出てくれない。
鏡に犯されていく毎日でボクはたった一つの心の支えも失ったのだ。
今日も3限終了後に第5研究室で鏡に犯される。
もういっそのこと、心が壊れてしまえば楽になれるだろうか。
私は目覚めてからというもの極力彼のことを忘れようとしている。
目覚めたときに私の中に眠っていた「目覚めてはならないもの」まで目覚めてしまった。
それは、彼を憎まずにはいられない記憶だ。
しかし、その記憶すらも10年間は眠りについていた。
だからこそ彼の存在も私の中で眠りにつかせることはできるはずだ。
彼を覚えていてはいけない。
10年の嘘は19年の私の人生を罪に、そして罰へと戒める。
「矢波さん、また新歓前に逆戻りしたみたいですね。九さんが居ないのはデフォとして、新入生が一人もいないなんて。京橋の姉は倒れて入院だから仕方ないにしても、弟と千堂は何をやっているんだか」
ここ最近二人きりでいることが多くなった鬼龍院が読書を中断し、読書中の俺に話しかけてきた。
ちょうどいい区切りであったため本に栞を挟み、かけていた眼鏡をはずす。
「知るか。このサークルは基本自由参加だ。来たい奴は来て面倒な奴はサボればいい。樹さんなんて去年は月一だっただろ」
「それはそうですけど、なんで二人同時に来なくなったんですかね?授業の移動とかではよく見かけられるらしいんですけど、なぜか午後になると見かけたっていう話を聞かなくなるんですよね。もしかして二人ともデキテルとか?ありえますかね」
「別にできていようが、できていなかろうがそれは本人同士の自由だろ。それを言うならお前だってデキテルじゃないか」
「そ、それはいいんですよ。ただ気になりませんか。来なくなったのが京橋姉が入院した次の日からってところが」
「一応俺はほぼ幽霊な樹さんの代わりとして責任者代理で病院に行ってきただろ。それでケーキに薬物が入っていた。ここまではいいな」
「はい。そのケーキは千堂が持ってきたもの。つまり千堂が薬物を入れた」
「おそらくな。そのケーキは有名なブランドで入手困難であるがゆえに購入したユーザーの意見もメディアで取り上げられる。しかし毒が入っていたなんて報告は1件も無い」
「ええ。ですから千堂が毒を入れたとして、疑問が浮かび上がってくるんですよね。」
「疑問?」
「そうです。なんで京橋弟は自分の姉に毒を盛った千堂と毎日一緒に行動しているのが目撃されているんでしょう?もし私が弟の立場だったら千堂のことを憎みます。もちろん一緒に行動なんてとてもできません」
「なにが言いたい?」
「つまり可能性として2つのことがあると思うんです。1つ目は弟は実は姉のことを嫌っていた。千堂のことが好きなのにいつもべったりしてくる姉が邪魔だった。だからこそ姉を排除して二人で幸せになりたい。酷い話ですよね」
「仮にそれが本当でも俺には関係ない。それで、もう一つは?そっちは酷い話じゃないのか?」
「もう一つはもっと酷い話です。千堂が弟を狙うも姉が邪魔。ここまではさっきと一緒です。でもここからは違います。弟は別に千堂に対して恋愛感情を抱いていない。だから弟が一番信頼している姉を排除して弟が無防備な時に自分のモノにする」
「だとしてもだ、弟はそんなことをする千堂に恋心など尚更抱かないだろ」
「違います。姉という巨大な障壁が崩れ去った今だからこそ、城の中の姫は一人になる。その姫は姉という障壁があったからこそ立てていた。しかし一人になった時一人で立てていなかった分崩れてからの立ち直りが難しい。そこを何か脅しをかけたり弱みを握ったりしたんじゃないですかね」
俺と樹さんの前以外では見せない鬼龍院の顔がここにある。
新入生どももこんなにもよくしゃべる鬼龍院を見たらどう思うのだろうか。
こういう一面を見ていると守りたくなってしまう。
だからこそ、鬼龍院が行き着いたこの推理は否定しなければならない。
なぜならば俺もそうではないかと頭に過ぎっていたからだ。
「そんな馬鹿なことあるわけないだろ。お前は本でも読んでろ」
「そんな言い方しなくたっていいじゃないですか」
不機嫌になりながらも読書に戻る鬼龍院を見て改めてこのことに関わって欲しくないと思った。
だからこのことは俺だけの力で解決しよう。
これ以上このサークルの人間は傷ついて欲しくない。
京橋姉弟には正直まだ情が移った訳ではない。
だが、千堂はあの姉弟より少し長く居た分少し情が移ってしまったかもしれない。
とにかくこれ以上のことが起きないように俺自身の手で真実を突き止め解決しなければ・・・。
「霊羅、今日はどうやってエッチしたい?アリスはね霊羅にもっと霊羅らしくなって欲しいからこれを着てもらいたいな」
そう言って鏡が出したものは霊羅のコスプレだった。
「こ、これって女用だよね。こんなのボク無理だ、着れないよ」
鏡が満面の笑みからうすら笑いに変わった。
「へぇ~霊羅って口答えができるんだ。知らなかったな。じゃあそんな素直じゃない娘にはお仕置きとして、後ろの口で喜んでるときの動画をネットで流しちゃおうかな」
「ご、ご、ごめんなさい!着ます、着ますからそれだけは許して」
「なんかそれじゃアリスが無理やりやらせるみたいじゃん。その良い方も素直じゃないから嫌だな~」
「ひ、あ、あ。そ、の。ぼ・・・そ・・・・・・て・・・・・・たい・・・です」
「えっ?何かな。なんて言ったのかわからないからハッキリ言って」
「ボクは・・・それを着てHしたいです!」
「あはは、やっと素直になったね。でも、そんな変態みたいなことよく言えるね。今のも動画撮らせてもらったよ。これ今晩のオカズにしようっと。それじゃあ、着替えもさせてあげるね」
俯きながら涙を流すボクは「アリス」の手によって「霊羅」へと変わっていく。
「後は下着だね。パンツも脱がすよ。どうせ女の子用のパンツを履かせてもすぐ脱がすことになるんだけどね」
椅子に座らせられたままパンツを脱がされる。
ひんやりとしたプラスチックがボクの肌に悲しみを伝わせる。
「可愛い子には可愛いパンツをってね。じゃあ履かせるよ。全部着替えさせるまでは手を出さなから安心して」
こんな状況で安心など存在しないのだ。
「可愛い~!!そうだそうだ、メイクとウィッグもね」
いつも京橋弟と千堂は午前中には授業に出ているらしい。
明日はサークルを休もう。
二人が今どんな状況にあるのかを突き止めなければ。
これ以上の被害が出ないように。
どうか樹さんと鬼龍院も無事でいられるように。
みんな俺が救ってやるんだ。
「すごいね。本当にどこからどう見ても女の子だよ。霊羅だよ!!」
鏡を見ると霊羅がもし実写化したらこんなふうになるんだろうなという少女が写っている。
ボクはもとから女顔だし小柄だからこういうメイクをしなくても女の子に間違われることが偶にあった。
でも今のボクはそんなレベルじゃない。
自分でも恋をしてしまうくらいの美少女が目の前にいる。
「あれあれ~。もしかして可愛くなりすぎてビックリしてるのかな?でもね、アリスは一目見た時から霊羅はお化粧したら可愛くなるってわかってたもん!!だから運命を感じたの。きっと、アリスが愛する霊羅はここにいるんだって」
鏡の前で驚きを隠せないボクに「アリス」がそっと口づけをしてきた。
「これで完璧に霊羅はできた。じゃあ次はナニをするかわかるよね?」
「アリス」がボクの腕を掴み体を壁に叩きつける。
痛みによろけたボクの顔を「アリス」は顎を持ち上げ目線を合わせる。
「こんなに可愛い霊羅がいるんだから、思いっきり汚したいな。霊羅も汚されたいよね?」
さっきまで止まっていた涙が再び流れ出す。
ここでの問いかけには選択肢など最初からないのだ。
目の前にいる「アリス」の欲望を満たすために汚く犯されることだけがボクの運命なのだ。
「はい。アリスに汚されたいです」
さらに笑顔になった「アリス」はボクを力ずくで机上に押し倒す。
そしてさっきまで丁寧に着させた衣服を乱暴に剥ぎ取っていく。
怖いよ。
助けて。
会いたいよ。
姉さん。
そして今日も姉さんは帰ってこない。
体にいくつか痣ができ、体中が痛む。
せめて、こんな毎日が続くとしても姉さんに会いたい。
それだけでボクは立っていられる。
強引に飲まされた鏡の体液が口の中で血と混ざって未だに取れた気がしない。
姉さんのいない現実にボクは涙を流すだけだった。
感想くださった方々有難うございますm(__)m
捗りましたー!!
次回の更新はいつになるかはわかりませんが、近いうちにできれば投下したいと思います。
応援よろしくお願いします(o・・o)/