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第10話:シリアス突入

お久しぶりです。

今回はちょっときわどいかなぁ。


 ここはどこだろう?

 頭がすぅーっとボヤけている。

 私は特に考えもせずモヤモヤした道をただただ歩いている。

 別にここがどこだっていいか。

 なんか今は考えたくない。

 楽になりたい。

 このまま歩き続ければ楽になれる気がする。

 それにこの先には光が見える。

 光を目指して歩けば楽に―――――――。

「・・・さん。・・・え・・・ん。ね・・・・・・ん」

 なんだろう?

 声が聞こえる。

 いったい誰の声だろう?

 なんか懐かしくて愛しい声。

 目の前にある光へ進もうとしていた私の足を止めてしまう声。

 楽になるために向かっていたのに、足が動かない。

 不意に左手が熱を持つ。

 暖かい。

 その温度は私を光から遠ざけ今まで見向きもしなかった背後の闇へと誘う。

 闇に進んでいるのにも関わらず何故か恐怖は感じない。

 いや、光に向かっていたことのほうが恐ろしく感じる。

 きっとこの声の先に私が求める何かがあるからだろう。

 楽になることよりも闇の中にある愛しい存在。

 私はその人がいてくれるだけで救われる。

 その人?

 自分でも良くわからない。

 ただ愛しい存在が人であるということだけはわかる。

 私は帰らなければならない。

 あの人がいる闇の中へ。







「ね・・・さん。・・・えさ・・・」

視界が開けていく。

 徐々に眩しさが私を覚醒させていく。

 ここは病室か。

「姉さん!良かった・・・。本当に良かった」

 私の目覚めにその人は涙を流しながら喜びを噛み締めていた。

 私が暖かいと感じた左手は彼が両の手で包んでいてくれた温もりなのだと気づいた。

「心配かけてごめんね。お姉ちゃん、もう大丈夫だからね。」

「姉さん。もう・・・ボク・・・姉さんがダメなんじゃないかって。帰ってきてくれてありがとう」

 彼はそう言ってベッドに横たわる私に抱きついてきた。

 周りにいる医者たちも慌てて私から彼を引き離そうとするが彼は私を抱きしめる。

 だからこそ、私は言い出せない。

 彼の幸せを壊したくないからこそ。












 結局私は意識を取り戻しはしたが、体は退院できる状態ではないので当分入院することとなった。

 彼は私のそばにいたいと泊まろうとしていたが、さすがに許可もおりず渋々帰っていった。

 私は彼が家に帰ってくれたことに安心している。

 痛いからだ。

 この痛みは彼と一緒にいる時や彼のことを考えている時に起きる。

 体ではなく心が痛いのだ。

 私は彼に会いたくない。

 彼を傷つけたくないから。

 私に笑顔で「明日も見舞いに来るからね」と言い残していく彼を苦しませたくない。

 でも、それは無理だろう。

 姉として私は彼を守りたい。

 たとえ彼に恨まれようとも、彼を守れるのなら。

 しかし、彼を守るには彼を傷つけてしまうことになる。

 この世界は何かを得るためには何かを捨てなければならない。

 私は彼を守るために彼を傷つけなければならない。

 許してとは思わない。

 私自身の存在が彼を苦しめるから。

 ごめんね、遥。

















           

 そういえば大学を一人で歩き回るのって初めてかもしれない。

 周囲の人間もいつもセットの姉さんが居ないことに変な噂をしている。

 姉さんのおかげで僕までとんだ有名人だ。

 とりあえず今日はサークルを休もう。

 講義もしっかり受けてそのまま病院へ向かおう。

 昨日は姉さんが急に倒れて、本当に死んでしまうんじゃないかって不安でたまらなかった。

 そして、そのことがボクの記憶を呼び覚ます。

 姉さんは覚えてないだろうけど、過去にも一度だけこういうことがあった。

 そのときはまだボクたちは幼かったけど、あのことが確実に今のボク達を形成させた。

 あの事故でボクは大切なものを失い、罪に溺れながら生きていくことになった。

 姉さんを傷つけたくない。

 だからこそボクはハルちゃんになった。

 
















 今日の講義は午後は一つだけだった。

 これだったら3時には病院に着くだろう。

 今は早く姉さんに会いたい。

 姉さんがあの事故を思い出さないように。

 自然と足も早くなる。

 午後は正門とは別の門が下校時に使用可能になるので、そっちの門へ向かう。

 そして、門を出ようとしたその時だった。

 ガシッ!

 手首を掴まれ後ろへと引っ張られる。

 バランスを崩しかけ、なんとかボクを引っ張った張本人を確認する。

 そこにいたのは鏡だった。

「遥、どこに行くの?サークルには行かないのかな」

「いや、姉さんがまだ入院してるしお見舞いに行かないと。だから、姉さんが退院するまではサークルを休もうと思ってるんだ」

 グググ。

 ボクの手首を握る鏡の手に力がさらに加わる。

「でも、お姉さんは目を覚ましたんでしょ。だったらいいじゃない、別に行かなくても。それに遥のことを待ってるのはお姉さんだけじゃないよ。私も遥にサークルに来て欲しいな。」

「気持ちはありがとう。でも、やっぱり姉さんの体調もまだ不安定だから心配で」

「遥は私よりもお姉さんをとるんだね」

 鏡が俯く。

 心無しか目のあたりまで影がかかり薄気味悪い。

「そういうことじゃなくて、まだ病み上がりだから心配であってどっちの方が大切だとかじゃないんだ「嘘だ。遥はお姉さんの方が大事なんだ」よ・・・。」

 会話に嫌な間が空く。

 疑いたくはないが、医者から姉さんの倒れた理由を薬物によるものではないかと聞かされた。

 可能性としては鏡の持ってきたケーキが怪しい。

 何度も頭に浮かんでは、なんてボクはクズなやつだろうと自己嫌悪した。

 でも、鏡を見ていると偶に鏡を恐ろしく感じることがある。

 もしかしたら鏡が仕組んだことなのではないかと。

「ねえ、遥に大事な話があるの。ちょっとでいいから、ダメかな?」

 急に発せられた言葉に何か恐怖を感じる。

「少しの時間でいいの。だから、お願い。私の話を聞いて」

「・・・わかったよ。じゃあ、手短にして」

「うふふ。ありがとう。遥ならきっと良いって言ってくれると思った。ここじゃちょっと話せないから、第5研究室までついて来てくれる」

「良いけど、第5研究室って滅多に使わないところじゃん。大丈夫なの?」

「ええ。ちゃんと許可は貰ってきたよ。だから安心して」

 なにか楽しそうに歩く鏡の後ろをついて行く。

 得体の知れない不安を抱きながら。













 彼は今何をしているのだろう。

 あの事故を思い出してしまった私は彼を許せるのだろうか。

 そして、彼も私を許せるのだろうか。

 私の本心としては当分彼に会いたくない。

 私が眠りから覚めた代償に目覚めてはいけないものまで目覚めてしまった。

 彼のことを考えれば考えるほど彼に対して憎悪が湧き上がる。

 お互いがお互いを、いや自分自身すらも騙してきたこの10年を私は許せるのだろうか。















 鏡に連れられて第5研究室に着いた。

 ここはこの大学の中で最も目立たない場所だ。

 本来はちょっとした実験や資料を置いておく物置のようなもので、鍵も教師や大学の職員でなければ開けることができないので生徒はまず寄り付かない場所だ。

 鏡はバッグから鍵を取り出し重い扉を開く。

 広さは教場の半分程度で大して広くはない。

「ねえ、そこに座って」

 鏡に促され椅子に座る。

「それで、話って何かな?早く姉さんの見舞いに行きたいんだけど」

「遥に聞いて欲しいことがあるんだけど、ちょっと準備するね」

 鏡はバッグから何かを探している。

 なぜか鏡に対して恐ろしいものを感じる。

 この待っている時間すらも落ち着いていられない。

「あった。じゃあ、いくよ」

 え?

 次の瞬間体に衝撃が走り意識が吹っ飛んだ。

「私がこれを探してる時から、ううん。その前からずっと怖がってるんだもん。可愛いなぁ遥は」

 鏡の手にはスタンガンが握られていた。











 体に若干の痛みを感じながらも意識が戻ってくる。

 えっと、何がどうしてたんだっけ?

 たしか・・・見舞いに行こうとしていたところで鏡に会って・・・それから第5研究室に行って・・・。

 スタンガンを喰らった。

 そうだ、急にスタンガンを・・・。

「おはよう。遥、目覚めたんだね」

 ボクを見ているのは本当に鏡なのだろうか。

 今までに見たことのない笑顔に体が震える。

「私が怖いのかな?」

「怖くなんかない。一体さっきのはなんなんだよ!」

 そう言って立ち上がろうとするも体が動かない。

 体を見ると椅子にロープで縛られている。

「あはは。遥、強がってても怖がってるのバレバレだよ。可愛い。食べちゃいたいくらい」

「な、何を言ってるんだ。いいからロープをほどいてよ。今ならまだ怒らないから」

「何を言ってるの?怖くなって何を言ってるのかもわからないんだね。ねぇ、もう涙目だよ。そんなに私が怖い?」

「こ、ここ怖くなんてない!早くほどいて」

「だーめ。だってこれから遥は私に食べられるんだもん」

「え?た、食べるって・・・まさか」

 不敵な笑みを浮かべ鏡がボクに近づいてくる。

「く、来るな」

「あはは、そっちまで行かないと、ロープも解けないけどいいのかな?」

「えっと、あ、・・・ああああ来るな。い、嫌だ」

 とうとう鏡の手がボクの肩にかかる。

「つかまえた。あはは、可愛い。怖がってたり嫌がってたりするのを無理やりするのって、なんか支配してるみたいでゾクゾクしちゃう」

「や、やめてよ。うう、助けて姉さん」

 恐怖の中でボクは絶対に助けを求めちゃいけない人に助けを求めてしまった。

「あはは、残念だけど、お姉さんは今入院中だよ」

「い、嫌だ」

 嫌がるボクを楽しそうに鏡がしゃがみ目線の高さを近づけてくる。

「いただきます」

 そして、嫌がるボクの頭をおさえ乱暴なキスをしてきた。

「うううん、ううう」

 鏡の舌が無理やりボクの唇をこじ開けようとする。

「気持ちいいよ。遥、口開けて」

 恐怖を感じながらも必死に抵抗をし、睨みつける。

「あはは。そんな眼で私が怖がるとでも思った。残念だけど、そういうことをされればされるほど犯したくなるんだよね」

 再び鏡の口がボクの口に吸い付き、舌が口を割って入ってこようとする。

 悲しいが今は嫌々と頭を振ることしか抵抗ができない。

「抵抗してくれるのは嬉しいけど、ご主人様の言うことをちょっとは聞くようにならないとダメだよ」

 パチーン。

 冷めた眼をしながら鏡がボクをビンタした。

 情けないがあまりの恐怖に失禁してしまった。

「あははは。怖くなって漏らしちゃったの?本当に遥はかわいいね。これ以上怖い思いをしたくなかったら私の言うことは聞いたほうがいいよ。あはは」

 鏡がボクの耳元で囁く。

 心の中でボクはもう助からないことを悟った。

 もう駄目なんだと。

 そして再び迫ってくる鏡の舌を受け入れる。

 鏡はボクの唾液を飲み、鏡の中から送られてくる唾液を押さえつけながらボクは飲む。

「やっと、素直になったね。私の言うことを聞いてくれて嬉しいよ。たっぷり可愛がってあげるからね」

 鏡は手元に置いてあった鋏に手を取りボクの服を切り裂いていく。

「支配してる感覚を楽しみたいから、遥が起きるまで服を脱がさなかったんだよ。遥が誰のものかをたっぷりと教えてあげるね」

 上半身はロープで縛ってある腕に服の切れ端がかかっている程度で胸や腹は露となっている。

「ご主人様がたっぷりと躾してあげる」

 鏡はボクの首元に口をつけてくる。

 ぴちゃぴちゃっと、わざと厭らしい音を立ててボクの反応を楽しんでいる。

 心は嫌がっているはずなのに体は快感に悶えてしまう。

「感じやすいんだね。これが私の所有物っていう証だよ」

 鏡は笑いながら首元に思いっ切り吸い付いてくる。

「うあぁ、あああぁぁぁぁ」

 思わず声が出てしまう。

「じゃあ、私も脱ぐね。今日はたっぷり楽しもうね。あはは、私の可愛い遥」

 絶望の中ボクは運命を受け入れた。
























 病室の窓から見える景色が切ない。

 別に彼が見舞いに来なかったことが悲しい訳ではない。

 忘れられたなどとも思わない。

 いや、むしろ思い出してしまったから切ないのだ。

 もし、彼にあのことを思い出してしまったことがバレてしまえば今までのような関係は崩れ去ってしまうだろう。

 しかし、バレなくても私が彼に対して今まで通りに接することができるのだろうか。

 自信はない。

 彼に対しての憎しみと申し訳ない気持ちが私を襲う。

「遥・・・」

 私は無意識に彼の名を呟く。





















「それじゃあ、また今日と同じ時間に第5研究室で。写真をばらまかれたくなかったら私の言うことは聞いたほうがいいよ。明日もお姉さんがいないなら家にも寄るね。楽しかったよ、ハルちゃん」

 そう言い残し鏡は帰路に戻った。

 お互いの体液に塗れた衣服を早く脱ぎたい。

 どれだけ泣いたのかわからない。

 これから先は鏡の言いなりになるしか残された道はない。

 最後に鏡は「ハルちゃん」とボクを呼んだ。


更新が遅れてしまい申し訳ありません。

できるだけ早く更新できるように頑張りますので応援よろしくお願いします。

感想待ってます。

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