Message ...by Takatoshi
※吉成視点
サブタイトル『Message ...by Takatoshi / 孝利からの伝言』
……事なきを得ても全然食べ物がてつかずになっちゃったなぁ。
皆には、迷惑掛けてばかりだった。分かってる。みんなも泣きたくなる世の中なのに、
自分だけメソメソしちゃって。……でも、兄さんも死んでしまった。
生きる希望がなくなったと言っても過言じゃない。それほど兄さんは……。
夜も遅くなったところで、ようやく涙が止まった。
皆はもう寝ているし、僕ももう明日に備えて寝なくちゃ。備える意味があるかどうかはおいておいて。
目を閉じると、今でも兄さんのことが思い浮かぶ。
もう、今すぐにでも兄さんの声が聞こえてきそうだよ。
『吉成……。』
そう、聞こえてきそうだ。いや、僕の頭ではそういう兄さんの言葉が響いていた。
『吉成!』
ああ、兄さんが呼びかけてくれるよ。
『しっかりしろ、吉成!』
頭にしっかりと聞こえてくる。兄さんの声だ……って、兄さん!?
『おお、気づいてくれたか、吉成。お前の考えている事はよくわかったよ。
先に逝ってしまって、本当にすまなかった。』
兄さん……!
『悲しい思いをさせてしまったな……。少しだけなら時間がある。お前の話、聞かせてはくれないか?』
うん、僕は新堂さんと出会ってからとんでもハプニング続きだったんだよ!
ショッピングモールまでの道は民家に侵入しちゃうし、ゾンビもあっさり倒しちゃうし、
大きなゾンビ相手に一人で逃げきったんだ!
『やっぱり、新堂先輩は頼もしい方なんだな。お前の命を預けるのにこれ以上の人間はいないだろう。』
新堂さんなら責任を持ってやり通すと思う。でも、僕には生きる希望が……。
『吉成、ここで諦めてはいけないよ。皆も希望を断たれたと思った事があるはずだ。
吉成だけじゃない。そんな中、吉成を私に合わせてくれる恩人達とめぐり合えたのだろう?
なら、吉成は恩人達に恩返しをしなくてはいけないよ。自分の態度で、
仲間にも希望の光を分けるんだ。希望を持てば、ゾンビなんて足元にも及ばないさ。』
そ、そうなの? 僕にはゾンビのことはよくわからないや。やっぱりに兄さんにはかなわない。
『何を言うんだ、吉成。吉成は今日から私を越える人間になったのだ。もっと、自信を持ちなさい。』
でも、兄さんはもうこの世には……。
『私の肉体は確かにこの世からは消え去る運命だ。しかし、心は違う。
吉成、私の魂は吉成が思っている限り、心の中で生き続ける。だから、もう悲しまなくても
良いのだよ。』
え、えそれじゃ、兄さんはこれからもずっと一緒でいられるの?
『吉成、いつでも会えるわけじゃない。心の奥底で、私は静かに見守る事にする。
新堂先輩達を信じなさい。 うっ! もう、時間が来たようだ。』
兄さん!?
『私はいつも見守っているから、もう悲しむことはしてはいけないよ……吉成。
最後に、どうしても堪えきれなくなった時の為に、私の宝物をあげよう。』
そんな、そんな! 兄さん!!
『うう、もうダメだ。吉成、最後にお前とこうしてまともに話が出来て、私は嬉しかったよ。
宝物は、枕元にそっと置いておくよ。吉成、私の生涯には悔いは無かった。最後に幸せになれた。
吉成には感謝している。 では、さようならだ、吉成。 希望を忘れずに生きるんだぞ……!!』
兄さん!!!!
それから、兄さんの声は途絶えてしまった。でも、兄さんのあの時の言葉は信じるよ。
朝が来た。新堂さん達も起き始めて、僕も目覚めた。
「吉成、昨日は眠れたか?」
新堂さんが心配そうに聞いてきました。
「はい、割と寝つけました。」
「そうか、よかった。」
ほっとしたような表情の新堂さん。
あ、そうだ。兄さん、枕元に宝物を置いていくって……あ、あった!!
枕元には、ペンダントがあった。写真付きのペンダントで、確か、
兄さんが高校進学祝いに作ったって言う……。
写真は見ると、僕と兄さんがニッコリと笑って自宅の庭で撮られた風景だった。
「そうだ、兄さんがどうしても取りたいって言ってて……」
小声で言った。聞き取れてる人はいないはず。
ペンダントを首に付けた。朝食の時に皆で集まると、
「ん、吉成ってペンダントつけてたっけ?」
藤島さんが聞いてきました。
「はい、これには、兄さんとの思い出が詰まってます。」
「おお、思い出の品か! くそー、俺もなんか持ってくるべきだった~!」
「アハハ、なんだか藤島らしいや。」
新堂さんが言いました。
「な、新堂! それどういう意味だッ!」
藤島さんが言いました。
「ええ? そのまんまの意味だけど……?」
「新堂ッ!! 今度、俺と決着をつける必要があるようだな!」
「何の決着だよ!」
メンバーはいつもよりも、友情と信頼で満ち溢れた雰囲気に包まれていました。
そうだ、僕もメンバーなんだ。もっと、明るい表情でいなきゃ!
そんな朝を迎えて、僕らは昨日の悪夢とは真逆の素晴らしい朝日を目にした。
兄さん! 僕、皆と生きるよ! だって、僕と兄さんは繋がってるんだから!
朝食後、街の皆に礼を言って後にしました。どこに辿りつくかは分からないけど、
どこに行ったって平気だよ。 だって、僕には、最高の仲間と兄さんがついてるんだからね!!