After story
サブタイトル『After story / 後日談』
…………
ジャパンが滅亡したって?
ああ、その通りさ。
俺たちはその日本から来たんだ。
――――日本から離陸してまだ間もなくして――――
「あれって、まだ生きてるんだろ? いいのか?」
啓の不審な言葉が耳に響く。
そして、彼らの間で会話が進んでいく。危険から、日本から解放されたとはいえ黙っていられなかった。
「それって、マジなのか?」
幽が深刻な顔をしているのを見て、硲が言う。
「何をそこまで深刻に……? ゾンビについてはもう関係ないじゃないですか。」
「……お前、まだそんな怪物を!」
「あせらないでくださいよ。あれは戦闘用じゃありませんって。実質三流以下です。」
「どういうことなんだ?」
「彼らもゾンビ。もとは人型。そこを利用しようと考えていただけです。
もっと、もっと屈強な肉体を絞ってコンパクトに、そして能力を付加できるように考えていました。
そして、生物として持てる本能を生かせないものかと考えていました。研究は観察できませんでしたけどね。」
「ますます意味が分からない。何をしようとしてたんだ?」
「ようするに、疑似的新種ヒト型生物を作ろうとしていただけです。
新たな生物として機能しないものかと考えていました。ところが、大失敗。」
「失敗?」
「ええ。体細胞をある程度自然成長させてから特殊な培養液の中で成長速度を高めて
観察していたのですが、急激に身体がものすごい変化をしまして。
体は絞られるどころか、かなり戦闘タイプに近いものになってしまいました。
ま、あれほどありえない急激な変化をしている事ですしそうとう短命だと思いますよ?」
「なるほど……な。」
あきれ果てた様子で幽が言う。
「もう秘策とか、そういうのは残ってませんよ。」
「分かったよ。」
相変わらずの『信用できない』の一言が浮かんだ顔つきで去って行った。
「危なかったな、硲?」
「ふふふ、修羅場でしたね。なんとか話をそらせたのは大きい。
まさか……疑似的新種ヒト型生物が生殖行為を行えるとは思いもよらないでしょう。」
「手の内は最後まで隠しとくのは基本ってことかな。」
「そういうことですかね。色々ありましたが、秘密を全て知られていたら……
私たちは幽君一行には勝てなかったでしょう。」
「だろうな。で、どうなんだ。生存者の目星はついたのか?」
「ええ。確か生存者は……1000人ほどいるはずです。」
「意外と多いな。核を打つまでもないだろうに。」
「核じゃないとゾンビは死にませんからね。」
啓をじっと見ながら硲はいった。
「俺を見て言うんじゃねぇよ……」
「クク、常に事態は最悪のケースを想定しないと。」
「さてと、俺が回ってきたところの生存者ってのは今頃どうしてんだろうな。」
例えば……あれだ。ゾンビ事件が始まってから初めて幽にぃと会った時だ。
あの頃は慕っていた連中もいたなぁ。幽にぃも相当気張ってたし、
今更申告したりするほど野暮な真似はしねぇ。
ま、そいつらはめでたく……御愁傷さまってわけだ。
生き残りも全員だ。ゾンビと腐るほど戦う最後も、核で全部終わらせてくれるわけだ。
……ハッハッハ!
そんな、そんな下の連中の事を考えていられるほど俺は冷静で安全だ。
これを感じれるほど快感になれる事はねぇな。
戦いを勝ち抜いて、仲間と同等、優位な状況で作戦組んで成功して……
自分で作った今を強く実感できるほど、幸せな事は他にはないな。
俺は仲間のいた部屋に戻った。冬だからというのは言い過ぎな高い室温が俺を包む。
「良成は?」
「おお、幽か。安全ラインは突破だ。一命は取り留めている。」
「よ、よかった……!」
硲が最初見て言うには――――
「氷は高めの室温で溶かしてください。それだけで十分です。あ、一応通常の
所作は行ってください。急げばまだ通常通りの機能は取り戻せるはずです。」
と、言うのだ。氷漬けにされて果たして通常になるのかは心配だが、
なんでも能力で作ったものというのは普通とはどこか異質らしい。
例えば氷漬けの良成がいい例だ。
普通なら凍傷でもすまないほどのものだ。時間も経ってしまったし、
死んでもおかしくはなかった。なのに、硲の言う通りで
どこか異質な氷であったがために一命を取り留めている。
ゾンビで手に入れた異質なものの中で唯一今までのものと一致しているものは
『力』らしい。
硲がそんなことも言っていた。今は深く考える事ではないが、何か言いたげな台詞だったな……。
そして、俺たちの異国での生活は幕を開けた。
そして、あれから1年と3カ月が過ぎた。
「まさか、またこの面子が揃うとはな。」
「幽にィは嫌なの?」
俺たちは異国での生活にも慣れてきた。やっと普通になれそうだったのに、
『日本へ出動してほしい』
との命令が下るとは……
「軍隊はつらいね。」
「仕事まで決まってたのは想定外だったな。」
俺は住居、仕事まで決まっていた。なんでも学校に通わせるのは危険だ。とか
そういうことも騒がれてようやく今の位置づけになっている。
俺は聖奈と一緒で暮らしている。他は硲と啓、弥栄と美鈴。大門さんと良成。
一人暮らしは藤島と九と日向。
しばらくはあっていなかったけど、また再開できそうだ。
「日本到着は色々合わせて後18時間後だって!」
「そうか、長いな。」
聖奈も、こっちに来てから随分と成長した。
髪も少し伸ばすようになったし、かわいいという感じから、綺麗という風に変わりつつある。
でも、若干幼いところも残っている。
「今度は……生きて帰ってこれるか?」
「幽にィが言っちゃだめ! 聖奈も生きるから……そんなこと言っちゃだめ!」
「わ、悪かった。 一緒に帰ろうな、聖奈!」
「うん!」
俺たちは、またあの地獄のような記憶しかない日本跡地に戻ろうとしている。
なんでもビックニュースがあったそうだ。
『核の被害地から謎の生物! ゾンビの生き残りか!?』
というニュースだ。TVでかなり宣伝されて大騒ぎだ。
恐らく、硲が言っていたあの処分のし忘れだろう。いつまでも迷惑をかけてくれる……。
そんな硲は確か、研究員をここでも続けているそうだ。
何が平和で、何が調和なのか……。
全世界がゾンビという危機にさらされそうになって、核を使った。
その地域の全てが滅亡し、その代わりその他の全域が危険から解放されている。
何かの犠牲の上に、別の平和が成り立っている。そして犠牲は日本……。
今回も日本の滅亡で幕を閉じるのだろう。結局日本の所有権はアメリカが握ったし、
全て後になってご都合主義で回っていく。理不尽極まりない。
だから、俺は……少しだけ頑張ってみようと思う。
今回の事で活躍できたら評価されると思うし、それで少しでも犠牲という考え方が消えるなら……
ま、なにはともあれ……全ては生きて帰ってからようやく実現するものだ。
だから、俺は戦場に行く! そして、生きて帰ってくる!!
大事な事を忘れていたが、聖奈が最優先だ。家族だけは絶対に守らないとな!!
そして、掴むんだ――――――――本当の意味での平和を!!
その決意で俺は自ら戦場へと向かっていくのであった。
どうも、C.コードというものです。
このたびは『Death such as in nightmare』を読んでいただきまして
誠にありがとうございます。そして最後まで読んでくれたそこのあなたに、
僕は大感謝です!
今回はゾンビものとして書かせていただきました。
執筆開始の当初は『学園黙示録Highschool of the Dead』を見ていた経歴もあり、
ノリノリでしたが途中で意気消沈したりと色々ありましたが、
ここで完結です。自分の拙い文章力にはため息が出るほどですが、
それでもようやくここまで書きあげる事が出来ました。
ついでにいいますと、このサイトで凄く良かったゾンビ系のお話があったのですが、
いつしか探しても見つからなくなってしまいまして……。
ショッピングモールで奮闘するお話なんですけれども、そのお話が凄く好きでした。
僕の方はそこだけに焦点を当ててメインの舞台としてしまうと、
完全なパクリとか言われてしまいそうなのがすごく怖くて
作中の一部に登場した程度でした。かきあげててとても楽しかったです。
はい、そういうわけで……この物語はここでおしまいです。
少しでも読んでくださった方々に多大な感謝をします。
本当に、よんでくださってありがとうございました!
別の作品などを執筆するかは後日決めます。
また最近、(アナログですが)イラストを描く練習をしていまして。
いつの日か、文章だけでなく絵に描いたような物語でも
より皆さまに共感していただけるように頑張りたいと思います。
(そもそも小説を書いたのは 絵に自信がないのに物語を描きたかったからです)
はい、長々としたあとがきになってしまって申し訳ございませんでした。
それでは、ここいらで失礼させていただきます!!