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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.4:Last scene for the new title
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Movement"Leave Japan"part5

サブタイトル『Movement"Leave Japan / 日本離脱』

パート5

「なかなか手こずってるようじゃん。」

気楽な態度で啓が言う。

「何やってんだよ……今までどこで何してやがったんだ。」

「まぁまぁ、そう怒らないでよ。 俺も……ふざけてたわけじゃないさ。」

幽から目をそらし、眼前に遠くの人影が移るように焦点を合わせる。

「ここからが肝心……ま、すぐに決着はつくでしょう。」

「硲……」

「幽君、心配には及ばないさ。僕らはただ見てるだけでいい。」

「ど、どういうことだ?」

「シッ、黙って見ていなさい。不穏な動きは見せないように。……美鈴が動いてます。」

「…………ッ」


美鈴。硲達が一目置いているらしい。俺から見たら容姿は拍子抜けするほどの体格だ。

見た目はただの女の子。華奢でとてもすたれたこの世とは不釣り合いな程だ。

だけど、一目置いているだけあって……強い。


少しだけ彼女の戦い方を見たが、あれは尋常ではない。

普通、いや……人間がゾンビとの接触や影響で増した力でもなしえないほどの動きができる。

身のこなしも素早いし、何より純粋な力がある。細い腕だと油断していると、あっさり首を落とされる。

それほど恐ろしい力を秘めている。人の事を言える立場ではないが、あの細身のどこにそんな力が…。


「もうすぐ、もうすぐだ……フフフ。」

弥栄が何やら呟きだした。

この反応を見るからにもう勝利を確信したのだろう。

だが、俺は手に持っている矛を収めたりしない。油断とは、そういうことだろ……。

「キタっ!」

あまりに耳障りな音量で発する。弥栄のやつ、一体どうしてここまで生きてこれたのか…

美鈴のおかげとしか言いようがないくらいアホというか、思慮が浅い。

次の瞬間、俺にも美鈴が人影に襲いかかる瞬間は目視できたが、……仕留めそこなった!


「追撃だ! 行くぞ!(弥栄のやつが余計な声を出さなければ……くそッ!)」

俺は突っ込む。美鈴なら時間をかければ容易くいずれこちらに勝利がある。

だが、そんな悠長な事をしている余裕はない。何せ相手にしているのは研究員。

これ以上余計な戦力を相手に持たせるのは分が悪い。疲労もかなり来ている……。


俺が相手にするのは……女の方だ!

そして、俺は女川と対峙して、ようやく気付いた。

「あら、あなた……。」

「お前は――――」

な、なんだ……この背筋が凍るような感覚は。いや、これは本当の冷気?

「ふ、ふふふふふふ……!」

「ふっ!」

矛を振り下ろす。そして華麗に避けられる。

「そうね、どうせ死ぬのだから、遊んであげましょうか。」

「だったら退屈させるなよ。」

怒涛の攻め。相手に攻撃の挙動を許すことなく続けた。しかしなんだ、

この悪寒は……。



しばらく続く荒れる戦況で、ついに敵が不審な動きを見せた。

「そろそろ、頃合いかしら。」

この言動がおかしい。圧倒的不利な状況なはずだ。


ザシュッ!


その隣で、ついに美鈴が男を仕留めた。

これでこちらの勝利は不動。ゆるぎないものだ。

だが……


「幽、美鈴、その他を人質にできたのは嬉しい誤算だったわ。さて、向こうはどう出るのかしらね?」

「人質だと? 気でも触れたか?」

「そうね、ためしに……彼で証明しましょうか。」

冷えた空気が伝わってくる。この空気はどこから……

そして、視界の先に氷があった。

「う、うわあああああ!」


氷の中には、良成がいた。


「良成っ!」

「ふふ、見事人質にできたわね。観念しなさい。」

こいつ……!


「てめぇぇぇ!」

「動くな! あなたも氷漬けにされたいの?」

……!

打開策……あるかもしれない。決死の秘策だが、旨く行けば……


「氷漬け? 笑わせるな。そういうのが油断だって言ってんだ。」

「あら、そうかしら?」

「自分の欠点にすら気づけないとは、哀れだな……ゾンビに取りすがるゴミが。」

「なんですって!?」

そう、怒れ、もっと激怒しろ。

「聞こえなかったのか? ゴミ。 おや、眉間にしわが寄って酷い顔だ。無様だな。」

「……死刑、確定ね!」

眼力を込めてこちらに意識を向けている。能力の発動には集中はつきものだ。

頼む、気づいてくれ! 美鈴っ!

視線を挑発相手のさらに後ろに向ける。

視線が合うと、美鈴がすぐにそれを察知したかのように駆け出す!


ぐぅ! 腕が、体が凍てつくような冷気が!

そう感じるころには、すでに首に今手刀を振りおろそうとしている美鈴の姿があった。

そして――――


























































「幽! しっかりしろ!」

「ぐぅぅ……こ、今回はちょっとやばかったかもな……。」

「んな弱気なこと言ってる場合か! 俺たち、勝ったんだぞ!」

「そうか……!」

「そうだよ! だからしっかりしろ! お前は俺たちのリーダーだろ!」

「へ、へへ……その言葉も懐かしいな。」

「後は待つだけだ。時間がたてば、飛行機が来る!」

「…………」

「おい、幽!?」

「な、なんか、すっげー眠てぇ。頼むよ、寝かせてくれ。」

「死ぬなんて意味じゃないだろうな!?」

「馬鹿言うなよ……一応、おれだって化け物さ。死線だって結構くぐりぬけてきただろ……。」

「そ、そうだけど……」

幽が最後まで聞かずに首を落とし、瞼を閉じる。


その後、同様の声があったが、飛行機はその後無事に到着し、生存者のすべてと荷物を載せて

離陸した。


機内は特殊な構造で、部屋がある。

広いが、隔離されているような状態だ。生存者全ては大きな一室で生活しなければならない。

通訳は硲がしている。コンタクトが取れているのは凄いと思うが、

硲を今後頼らなくてはならないというのは凄く不安でならない……。


俺も機内で意識を取り戻し、苦難について思い返す話をしていたところで

硲のとある言葉が耳に留まった。

「おお、そうでしたね。さすが啓君。一番の助手です。」

「んなことはいいんだよ。あれって、まだ生きてるんだろ? いいのか?」

「核でお陀仏になるのですから、関係ありませんよ。」

「対放射性あるとか言ってなかったっけ?」

「どうせ熱で焼かれますよ。生物の最大の弱点を克服できなかったのは残念ではありますが、

構いませんよ。何も知らずに死ぬのですからね。」



な、なんて物騒な! 放射性……馬鹿じゃないのか!?


そんなこんなで、戦いは終わった。俺たちは今、空の上だ。

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