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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.3:Wonderer's load
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Grip

サブタイトル『Grip / 握りしめる』

まだ時間はたっていないが、若干把握できたことがある。

まず、宮殿の体勢だ。

統率された指示に対してきちんと動くので、乱れがない。

専門分野もくっきり分かれている。

いざというときには戦闘員がなんとかゾンビに対して殲滅を行って、

宮殿を守るだろう。

宮ノ小路……様は宮殿の主で、元の地位も日本では上位。

そんな彼女が皆を率いてこれたのは有意義な指示を下していたからだろう。


「私も、そこそこ良き主としてここを動かしてきたけれど、限界なの。」

「限界? ここはまだ活発じゃないですか。」

「それでも、ダメなの……。私もあなたも恐らく日本ではもう生きてゆけないわ。」

「ど、どうしてですか?」

「……日本は、近いうちに全てを失うわ。命あるもの全てが死にゆくのよ。」

「ゾンビがそこまで驚異的なものなのですか?」

「強い人は良く言うわ。今はもうゾンビが人を食うだけじゃない。

人はこの短期間で大きな成長と進化を遂げているわ。

能力を手にして、……生き延びようとしている。だけど、

今はもうゾンビだけが敵じゃない。能力者同士でも戦いが起こっていますし、

それに……生存者がもう足りないんです。」

「そうですよね。そろそろ研究員も動く頃だと……。」

「研究員?」

「え、ええ。風の噂ですけどゾンビの研究に携わっている研究員が

多数日本に潜伏していると……。」

「興味深いですね。生存者を見なくなったのはそれが関係している可能性が非常に高いと思います。」

「そうですね。僕たちも旅先でできれば研究員を発見でき次第、

事情くらいは履かせたいと思ってますけども。」

「……そう、ですね。」

ためらった? そんな疑問がよぎったか、些細な事。

そう思い、気にも留めなかった。

「研究員は徘徊している事もあります。僕も一度在った事がありますが、

明らかに人の所業とは思えない事をしてます。ここも警戒していただけると幸いです。」

「分かりました。以後、警戒に努めましょう。」

さてと、ここまで話もしたしそろそろ皆のところに戻るか。

「それでは、僕はこれで。」

「あ、待ってくださ――――」

その時、扉が開かれた。

「宮ノ小路様。」

「九条か。……新堂、もう帰ってもいいですわ。」

「え、あ、はい。」

引きとめられた気がしたのだが、空耳だったのか?

呼び止められたとしてもその理由が分からなかった。

歩きながら考えるうちに皆の元へとたどり着いていた。

「皆、ただいま。」

「お、幽。御帰り。話はどうだった?」

「旅先にはあんまり関係のない事だった、かな?」

「そうか、今日はまァ休むんだろ? 自由にしててもいいよな?」

「ああ、藤島がそうしたいなら。あんまり宮殿に迷惑かけるなよ?」

「できる限りな!」

そういうと、藤島はどこかに向かって走り去った。元気だな。

藤島が動くと各々も自由な時間を過ごした。

俺も今日はゆっくりしたい。

宮殿の外に出て、芝生が生えそろっている道を通る。

そして、宮殿を囲っている塀にもたれかかり、座った。

俺はこういう人気のない落ち着いたところが好きだ。

だから、たまの休みぐらいこういうのもいいよな?


その一人の時間、俺はぼうっとしていた。

しばらく暇を持て余すかのように眠っていた。

ふと目が覚める。まだ、空は明るい。

しばらく、考えてみたかった事がある。ゆっくり時間をかけて。

それは……自分の能力だ。抑えがたい魔性の力といってもいい。

藤島は、炎を扱う力だったよな。ああいうのがよかったんだけど、

そういうわけにはいかなかったのが現実だ。

聖奈も探知の力があるし、治癒も持っている。ゾンビを打ち消す素晴らしい力だ。

俺の力は、自分でも扱えない。自由に使用できない。

このままじゃ足手まといにしかならなくなるのも、時間の問題かもしれない。

せめて、手につかめるような感覚があれば……。


ん、手につかめるような感覚?


ちょっと不思議だ。自分が暴走するだけなのに手につかむって。


想像してみる。自分の暴走する力が……『何かの塊』に置き換えて、


それを、自分自身で触れてみる。それを思い描いてみる。


触れている間だけ、自分が力を得るだけなのだとしたら。


強くしがみ付くだけ理性を抑えられなくなるのだとしたら……。







「なるほど、な。」

独り言。たったそれだけのこと。

だけど、分かる。今の俺は5分前とは圧倒的な差があるような気がした。

「幽にィ?」

「聖奈、か?」

「うん。そこで何してるの?」

驚きだ。聖奈がここまで来るとは。一人の時間もここまでか。

「聖奈、今の俺をどう思う?」

「今の幽にィ? ……そういえば、さっきの幽にィとは違う感じがする。

ちょっとカッコイイよくて強そうかも!」

「そ、そうか……。」

帰ってきたのは聖奈独特の解答のような気がする……。

自分の能力を少しだけコントロールできる気がしたのだが、ただ気分が高揚していただけのようだ。


少しずつ、鮮明に思い描く『能力を掴む』感覚。

がっしりと掴む想像をしていないので果たして本当にコントロールができているか……。

今、掴んでみてもいいかもしれない。きつかったら、離せばいい。

俺はやってみた。


力を――――掴む!


……なんともない。むしろ、すがすがしい気分だ。

晴れやかで開放的だ。

「凄い……。」

となりで聖奈が呟いた。

聖奈は俺を見て呟いていた。

「さて、……そろそろ戻るか。」

「う、うん……。」

一足先に宮殿に戻った。やがて、日も暮れ始めてきた。

皆も揃って合流したが、俺は気づいた。

気づいてしまった。皆が、俺を見る目が明らかにおかしい事を……。

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