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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.3:Wonderer's load
66/73

Counsel time

サブタイトル『Counsel time / 助言する時間』

翌朝、そしてその後も気になる点はなかった。

旅路の途中とはいえ、九条という男は仕える者らしく

俺たちはその主の宮殿に一日の宿を取ろうということになった。

宮殿で、人の出入りも活発な場所は寝床というよりも、情報収集が目的だ。

3人組で、能力の大まかな目撃情報しか持ちえないので

決定打となり得る証拠や情報が手に入るとは思えないが、

このまま当てもなくさまようよりは幾分か状況は良くなるに違いない。

しかし、ここで情報が入らなければ本格的に大移動をしたということになる。

捜索は困難だ。そうなった場合の判断は江田 硲にゆだねられるわけだが……

その硲も結局のところ、弥栄に従順な……夜霧(やぎり) 美鈴(みれい)が邪魔なのだろう。

底知れぬほどの果てなき破壊力、未知の能力。

そして、何より驚異的なのは……弥栄の命令一つで感情を殺し切れる事だ。

ただの気まぐれで殺しさえも遂行するだろう。彼女はそこまでやり切れる……。

そんな中で今、唯一保証されているのは聖奈の命だけだ。

俺たちにはあらかた興味はないようにも思える。でなければ、

あの時……アジトの件で聖奈だけが優遇されるはずがない。






「何、流浪? 旅の者か。」

「え、あ、はい。道中怪物に出くわしまして……。寝床を貸していただけないでしょうか。」

「それなら、ここを使うといい。許可は取っておくから。ただ、

宮殿で立ち入っていいのはここだけだ。いいな、絶対だぞ?」

「はい、ありがとうございます。」

律儀っつーか、礼儀正しい奴だな。ん?

「あー、化け物ぶっ殺して気分爽快だったな。」

「聖奈、もうだめかと思ったけど、幽にィかっこよかったよ!」

「そんなことないって。ほら、今日はもう寝るぞ。疲れもたまってるし。」

「クク、居候とはふがいないですが、今日はこれで良しとしましょう。」

「あー、硲……これお前のせいだぞ?」

「終わりよければすべて良しじゃないか! 今日は休もう!」

「弥栄様、今日はいがかなさいます?」

「ああ、そうだな。今日は君も休んだ方がいい。」

「わかりました。」


何気なく場所取り、許可も取れた。

こうなると、久々に暇を持て余すことになるが……

今のご時世、暇というのは思考の贅沢だ。俺も今は、この贅沢を満喫したいと思う。


そうしてちょっとした時だ。

宮殿に仕える人間であろう声が俺の耳に入った。

「能力者の戦いだ!」

「やばいぞ! 九条と東条だ! 逃げろ!」


!?

な、なんの騒ぎだ!?

「ゆ、幽にィ……!」

「……敵か!?」

困惑から間もなくして、宮殿内の人が声をかけてくれた。

「九条と東条か……? ああ、流浪の方々は心配なさらずにいてください。

その二人は宮殿に使える身ですので。」

と、説明が入ったのだが……


ドゴゴゴ! グラグラッ


……ちょっと待て。激しすぎやしないか?

いくら身内の件だからっつってもこれは安い戦いじゃなさそうだ!


「……藤島。」

「ん、どした? つかこの揺れ……。」

「聖奈を頼む……。おれはちょっと様子を見てくる!」

「ちょ、幽!?」

幽が立ちあがると歩みだす。

「よっと、面白そうだから俺もついてくからな、幽!」

九もこの雰囲気に耐えきれなかったのか、幽の元へと駆け寄った。







物影に隠れながら音源へと向かう。

すると、会話が聞こえてきた。

「チッ、これでもか……。」

「……何がお前を動かしているのか、俺には理解できん。」

「そうか、ならこいつも理解されてほしくはないんだが……ね!」

ドゴォォォォォ!


「いい加減諦めてはくれないか。」

「ハッ、まだ言うか。ギャラリーもできたところでそろそろ決めるぜ。」

それだけを言うと、俺たちはようやく視認することができた。人影を!

一人は体格の良い男。筋肉質よりの体系で強そうなイメージを持たせるにはふさわしい。

もう一人は……九条。うすうす感づいてはいたが、まさかあいつか……!

一緒に戦った短い時間では、想像もつかない。

ひたすらに攻撃を続けていくあの姿が……。

よほど、彼の癇に障る何かがあったのか?

様子を見てみよう……。

俺も気づいているが、九が大人しく観戦だけで収まってくれる事を願う。

九条が、ギャラリーと俺たちを示唆している事にはかなり驚いたが……。







「爆発か。飽きない奴め。」

「お前だって回避の一択だろうが! 何をほざく!」

「む、今のお前には言葉は無用だな……。」

爆発は地上からのものばかりで、九条はよけてよけての連続だ。

脚力、瞬発力は素晴らしいものだ。また、洞察力も常人の域には収まっていないだろう。

余裕を持て余している。だが、なぜ攻撃に移らない……。

いや、逆か。なぜ、九条は攻撃している……?


激しくなる一方の九条。避けるばかりの東条……。


シャキッ


東条が、ついに腰に納めていたナイフの柄を握った!

「やる気か!?」

「おお、決着だ!」

東条が迫る!

九条は爆発を駆使するが、それでも迫る!

スッと、彼は迫り、九条はそれを許してしまった。

結果……


「だが、この状況なら、耳にも入るというものだろう。」

ナイフが、首元に……。刃が首を向いている。実力の差が、明らかになった瞬間だ。

「てめ……ッ!」

「これでも、まだ続けるというのか。宮ノ小路様もなぜお前のようなやつを入れたのか……。」

「チッ、そうだな。どうしてまぁ、宮ノ小路様も――――」

そこまで言いかけた時、九条の口元がつりあがり、笑みを浮かべる。

「ッ!?」


その時、俺は見た。

九条が、さりげなく忍ばせた左手が小袋をつかみ、その中身を東条に振りまいた場面を。

その中身が、粉であった事を。

さらに、粉が爆発を生み、二入りを包みこんだ瞬間を!


「――――俺の1位変動を許したのか。」

「グフッ、貴様……!」

「ギャラリーも増えてきたしな。後は宮ノ小路様に抗議するか……。」

「卑劣な手を使うとはな!」

「へん、そうか。せいぜい主を守って死ぬ時ぐらいまでには使わないようにしとけよ。

その台詞。あんまし聞いた感じ良くないぜ。」


……これが、強者の在りようというやつなのか。

九条の知られざる一面を見た気がした。

これで、本当に良いものなのか。

俺たちには知る由もない事だ。関係もない。

深く考えるのはやめよう。無駄だ。俺たちは未来を考える必要があるんだ。




俺たちは、そこから立ち去った。すぐに宮殿の入口に戻り。合流した。

俺は戦いは収まったようだ。 としかいえず、俺個人の考えはあえて伏せた。

話す必要がなかったから。本当は話したかったが、些細な事だろう。

水に流せば、全て済む話じゃないか。

そんな事を考えていると、九条が現れた。そして、俺たちの元に来る。

「君、名前は?」

「え、俺? 新堂 幽だけど。」

「宮ノ小路に会えるのは一人だけだ。ついてこい。」

「……皆、行ってくる。」

俺はそう言い残して、宮殿の中へと進んだ。

「どうして、俺を選んだ。」

「リーダーは君だ。すぐにわかるよ。良きリーダーは自然と人を集めるものだ。」

……そういうものなのか?

「ここだ。」

九条がノックすると、扉を開けて、俺たちは広間に入ったかのような感覚を覚えた。

中は広い。そこに、少数の人間。

「あなたが、新堂 幽ですね?」

「え、あ、はい。」

「少し、話がありますの。」

「話、ですか?」

宮ノ小路様と呼ばれる宮殿の主との対話。一体、何の話があるというのだろうか。

そして、話が始まった時にはいつの間にか、九条が部屋から退室していた。







「それで、九条さん。 幽はなんの話を?」

「幽は宮ノ小路様と適当な質問と応答をしているだけだ。本命は俺が君たちにする質問だ。」

「なるほど……幽が不都合だったわけですか。」

「すまない……。時間も限られているのでな、手短にお願いする。

君たちは見た当初では気づかなかったが、相当の(つわもの)の集まりじゃないか。

一体どうしてそこまで強い?」

「うーん、どうしてって言われましても……。

俺はゾンビが出てきた初日からずーっと連戦して、ヤバイ時は逃げての連続でしたから。」

「初日だと? 今までよく生き延びてこれたな……! 他も、そうなのか?」

「俺も、一応藤島と共に旅をしてきた中だ。」

「聖奈は途中からー!」

「え、えっと……私も途中からです。」

「在ったのはちょぃと前の話だ。ま、それでも駆け巡ってきた戦場は同じだ!」

「私も途中からだ。一応、迷惑をかけないよう努めてきた。」

「私とこちらも途中参加です。」

「えっと、僕とこっちも途中参加。」

「なるほど……。外の世界はサバイバルも容易ではなかったのだろう?」

「まぁな。なんとか今に至ってるけど。」

「……こちらとしても、是非加入してもらいたいのだ。ここに。」

「その意図は? リーダーなしでできる話ではないでしょう。」

「……他言しないと誓えるなら、話す。」

「分かりました。話して御覧なさい。」

突如、硲が担架を切って話を進めた。

「……宮ノ小路様は未だに、最終手段をお持ちになられている。

今は、海外との回線で通信をしている。近々、我々はアメリカへの移住が確定しているのだ。」

「なるほど……!」

「バカな……!?」

硲以外も驚愕している様子だ。

「軍事的な力を持つアメリカが、なぜ日本の我々を救おうとしているのか……

理由は俺たちの能力だ。原因を観察してくれる。人体実験ではないが、様子を観察する程度らしい。

俺たちは、移住後は平凡な生活が帰ってくる。だが……」

「だがって、なんだ? 何かあったのか?」

「3日前の事らしいが、『新堂(しんどう) 彰吾(しょうご)』が拉致された。」

「新堂……?」

「え、あ、そうか! あいつの両親は……!」

「両親……だと? そちらはまだ確認されていない。新堂彰吾は確か……祖父?

いや、祖父の弟に当たる人物のはずだ。」

「ってことは……道場の人の弟!?」

「何か知っているようだな。とにかく、拉致されただけならまだしもだな……。

とある組織が、その細胞を使って生物兵器を生みだそうとしている。間違いない。

新堂家には何かあるのだろうな。一人では飽き足らず、

未だに新堂の生き残りを捜索しているようだ。」

「な、な!?」

「信じがたい気持はわかる。だが、君たちは流浪すれば必ずつかまる……。

アメリカはついにゾンビを抹殺するために、核兵器を使うことを宣言した。

だから、我々はアメリカに移住しようとしている。それに、提案を持ちかけてきたのは

アメリカ側だ。新堂がつかまる前の提案だが、薄々感づいていたのだろう。

難しい事はいい。今はその生物兵器もろとも、なくしてしまう方針だ。

だから、君たちも加入してくれ……頼む!!」

「そんなこと、急に言われても……!」

「幽君も、納得してくれます。きっと。……加入しましょう。」

「お、おいてめぇ!」

「なんですか? 無駄死にが確定して五袋満足に今後を生きられるあてでもあるんですか?

今は生きる事の方が遥かに大事なのはわかっている事でしょう。

幽君にとっても、それが一番のはず。……弥栄氏はご自由にどうぞ。君たちとは無縁ですし。」

「冷たいなぁ、硲君……。僕たちもいいよね?」

「もちろんだ。」

「ほら、許可下りたよー?」

「あーもう、好きになさい……。」

「……では、今の旨を幽君に伝えてもらいたい。お願いするぞ。」

「わかりました。」

硲が取り仕切った場で事が決した。その頃、幽は――――?

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