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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.3:Wonderer's load
63/73

Anger

サブタイトル『Anger / 憤り』


※北山 邦銘視点。

「14もあるなんて手の込んだ仕掛けじゃねぇか・・・・・・!」

今更ながらの言葉を吐き捨てる。

言葉は沈黙の中に広まり、やがて静寂が訪れた。

「それにしても珍しいですね。図書室を使いたいなどと……。」

「調べものがあるだけですよ。すぐ終わります。」

図書室は宮ノ小路様同伴の元でないと使用許可が五近ですら降りない。

子供扱い甚だしいと本来なら自分のプライドが拒むのを

理性で無理やり押さえつけ頼み込んだ結果がこれだ。

メモは宮ノ小路様には見せられないのでこっそりと本を読むふりをしつつも

確認するという形になる。14も散りばめられたものを

一人で考えることになるのは想定外だったが……。

「それにしても高嶺のやつ、いよいよ戦闘訓練ですよね。

高嶺はわかりますが、どうして……三鷹まで?」

「三鷹さんが同伴してくれないと拒むかもしれませんからね。

それに、誰しも最初は苦痛が嫌いですし、耐えがたいものでしょう。

三鷹さんも一緒であれば、お互い乗り切れると思いますし。」

「お互いって……まさか、三鷹は見守ってるだけとかじゃなくて?」

「? 戦闘系ではないのでゆるいトレーニングをしてもらっている程度ですけれども。」

「ああ、そうですか。意外とゆるいですね。」

「ええ、ゆるゆるです。」


実際は――――


「どうしてこんなことになってるのかなー……。」

「ミッケー。ホントに鬼ごっこなの?」

「どうだろね……。」

俺たちは何をしているのかというと、鬼ごっこだ。

使命を課せられていて、門番が持つフラッグを奪い取れば俺たちの勝利。

制限時間は1時間だったはずで、歩いてきたからあと50分程度だろうか。

「それにしても門番だと……。」

噂だとゾンビが担当してるはずだ。ウムム……こりゃ大変だ。

体力と筋肉には相当自信があるはずだろう。

まずフラッグに近づくには持久走を制覇しなくてはならない。

奪い取るにも力がいる。……が、当然そんな力はないので奇策が必要だ。

能力未開花の高嶺に無理はさせられない。使えるのは俺の『透明細工(クリアサイト)』ぐらいだ。

おかげで建物の影という影、見渡す限りで俺の視界からは逃げる事は出来ないが

相手の間合いをいかにして詰めるかというのが肝心だ。要は俺の能力が要なのだ。

「ミッケ、どうするの?」

「やるしかないだろ。いくぞ。フラッグを取る……!」

「うん!」

先手必勝。透けて見えるぞ、フラッグを持つ人影が……!!


一方その頃――――


「っかー、後どことどこだ……?」

本棚。どこの本棚なのかは全然わからず。影っつってもなー。

「ん、影?」

ふと本棚をみると『影』という書物がある。なんだこれ?

手に取ってみてみるが、何かの小説のようだ。

『私は初めてその視線に気がついたのは13歳の時だった。その目は――――』

等と文が露わになる。パラパラとほとんど目を通すだけで次のページをめくる。

『私は彼女の死ですらも、心が波打つ事はありませんでした。

彼女の体が、黒に包まれて飲み込まれ、そして……食われてゆく姿を私はみてしまいました。――――』

んん、待て待て、なんだこの展開。

『私は、見殺しにしてしまいました。しかし、心は平穏なままです。』

感情がないってことか、この主人公? 共感が沸かないんだけど……ん?

この章が次で終わるッポイな。最後くらい見届けてやるか。

そう思い、紙をめくった。


「うわっ!!」


ボトッ 思わず本を落としてしまった。


本は落ちた衝撃で閉じてしまった。しかし、あれはなんだ?

なんであんな顔の挿絵(イラスト)が……。


おぞましい顔だった。バックが全て黒で、そこに青白い顔が堂々と大きく書かれたものだった。

もはや女性かどうかすらも判別がつかないほど奇妙な顔で、

どこかのピエロか、はたまたクラウンといったようなものを想像してしまうが、

そんな顔が俺は特に恐ろしく思えた。所詮はイラストだという思いが高まり、

再び堕ちた本に手を駆ける。

「脅かしやがって。」

ペラペラとさきほどのページに戻ろうとする。しかし、異変に気付く。

「イラストどこだっけなぁ。」

めくり続けると、ページが終わってしまった。

「やべ、飛ばしちまったか。」

今度は戻る。しかし……

「最初まで来ちまった……どこだ?」

いくら探してもイラストは見つからない。挿絵なのでパラパラ読みでも見逃すはずがない。

「あれ、あれ!?」

どうしてだ! どうしてイラストが消えている!?

さっきまで確実にあったのに!

一心不乱に探していると、とあるページが目についた。

それは、第7章の終わりのページだった。

終わりらしくせつない文章で、第8章に繋がろうとしていた部分だが、隅に書かれていた。

『驚イタ? 怖カッタダロ? 本当ノ事ヲ話シタイ。 宮ノ小路様ニハ内緒ノ密会ヲシヨウカ。

門番ノ元ニ行ケ。スグニ会オウジャナイカ。 祝ッテヤル祝ッテヤル祝ッテヤル』

片仮名表記か! 怖いな……。 クレイジー野郎に違いないが、

俺がビビっているようじゃダメだ。会うと言っている以上は、堂々と構えろ俺。

最後の方は一体何なんだ。祝ってやるって……新手の名言だろうか?


祝ってやる というのは力の事か? 力をくれるとか言っていたような気がしたが、

そんなものはどうでもいい。 とにかく、あいつの正体が分かれば。

「宮ノ小路様、そろそろいいですよ。ありがとうございました。」

「わかったわ。行きましょう。」

図書室を後にした。図書室の雰囲気って怖いな。ゾクッとしてくるぜ。






「すまない。帰還が遅れた。」

「おお、九条様! 長旅ご苦労様です!」

……きやがったな。序列1位、九条!

今までどこで油売ってやがったんだ。今回は恐ろしく遅延してたようだが。


「勝ったァ……!!」

「やったー!」

隣で高嶺と三鷹が何かを叫んでいるようだ。一体何があったんだ?

トレーニングメニューでもすべて制覇したのだろうか?

ゆるいトレーニングだったはずだが……。




「集会かよ、だりぃ……。」

急に収集がかけられた。五近が全に集まるらしい。なんでだ?

二人で十分だろうに……! ああああ、見張りとかどうしてんだ!?

イライラしつつも扉をあける。イラ立ちも加わっていて、荒々しく扉を開けた。

「1,2,3,4,5,6、……8人?」

五近と宮ノ小路様。合わせて6人。追加で2名だと?

「ああ、主役来たね。」

「主役?」

「僕は、今まで影で宮ノ小路様の護衛を担当してた『院ノ宮(いんのみや) 喜助(きすけ)』だ。

よろしく頼むよ。」

続いてその隣の禍々しいほどの圧力を放ち続けてる男が口を開いた。

「宮ノ小路様の護衛、『東条(とうじょう) (りゅう)』だ。」

2人目の方は愛想がないな。つヵ、こいつら……!

まさか、手紙で暗号吹っかけてきたのこいつらか!?

「紹介するわ。この二人が新しく仲間に加わるから、よろしくやってほしいの。

序列は後で伝えるから、各自仲良くしてね♪」

最後の語尾なんだ! まじめにやっているのか!?

「そうか・・・・・・。」

つまらなさそうにしていた九条が先に退室していった。

強者を目にしても全然動じないところをみるとゆるぎない信念があると見える。

……さてと、恐らくあの圧力放ってるやつが真の序列1位か?

となるとあの別の方は……?


「君君、ちょっとこっち。」

「?」

「暗号解読おめでとう。面白かった?」

「な、てめ、ふざけてるのか!」

「まーまー、そんなムキにならないでさ。」

「……!」

「お前が北山か。」

「東条……!」

挑戦的な目線だ。だが、それは俺も同じ事。こいつもかなり自信があるようだ。

「約束は守る。褒美をくれてやろう。」

「待て、それは……俺が受け取るもんじゃない。別の奴だ。」

「どういうことだ?」

「あー……3人で解いたんだ。暗号。だから、俺だけってわけにはいかない。」

「成るほど。なら、3人分くれてやる。受け取れ。」

何やら怪しげな小箱が取り出された。その中が開けられ……


「これだ。」


そう言われて受け取ったのは……

「んん? 指輪にネックレス?」

「3人分用意してある。常に肌身離すな。何があるかは、時期に分かる。」

「……ったく。褒美ってこれの事か。」

「貴重なんだから大切にしてよね? 俺たち努力の結晶ってところなだからさ。」

「ああ、大事にしとくよ。」

俺も退室した。悔しいことに、あいつらと共にいる空気には耐えられそうにもない。









「へぇ……そんなことが。」

「これキラキラしてるー!」

高嶺と三鷹は何の抵抗もなく指輪にネックレスを装着していた。

外もなさそうだ。俺もつけとくか。見た目はよさげだしなぁ。

指輪とネックレスに何の意味があるかわ俺にもわからないが、お守り代わりにはなるだろ。


そんなこんなで、宮ノ小路様直々に記した広告が宮殿に広まった。


『五近から七星へ 側近増加!』

見出しがこれか。だからさっきから周りが盛り上がってるのか。

『序列変動! まさかの九条1位失脚!?』

ん、九条が失脚ぅ? ってことは見かけ倒しじゃないのか。あいつら……!

1位:東条(とうじょう) (りゅう)

2位:九条(くじょう) 荘子(そうじ)

3位:北山(きたやま) 邦銘(ほうめい)

4位:三條(さんじょう) 神海(こうみ)

5位:冥加(みょうが) (はしら)

6位:広幡(ひろはた) 岸谷(きしや)

7位:院ノ宮(いんのみや) 喜助(きすけ)


俺たちの順にそのものは変わってないな。新入りが最上位と最下位に入っただけってか。

別に順位とかは関係ない。だがな、俺は面倒なだけなんだ。

九条が暴れだすんじゃないかって……。


俺は、三鷹と高嶺を先に見つけ、ほぼしてやるべきかどうか葛藤する羽目になった。

「何、流浪? 旅の者か。」

「え、あ、はい。道中怪物に出くわしまして……。寝床を貸していただけないでしょうか。」

「それなら、ここを使うといい。許可は取っておくから。ただ、

宮殿で立ち入っていいのはここだけだ。いいな、絶対だぞ?」

「はい、ありがとうございます。」

律儀っつーか、礼儀正しい奴だな。ん?

「あー、化け物ぶっ殺して気分爽快だったな。」

あの声

「聖奈、もうだめかと思ったけど、幽にィかっこよかったよ!」

あの姿

「そんなことないって。ほら、今日はもう寝るぞ。疲れもたまってるし。」

あの面々

「クク、居候とはふがいないですが、今日はこれで良しとしましょう。」

「あー、硲……これお前のせいだぞ?」

「終わりよければすべて良しじゃないか! 今日は休もう!」

「弥栄様、今日はいがかなさいます?」

「ああ、そうだな。今日は君も休んだ方がいい。」

「わかりました。」

あいつら!! やばい! シートゥエルヴの解き出くわしたやつらじゃねぇか!!

なんでここに!? バレたらやばい! あいつらなんてそうそう相手にできるもんじゃない。

お告げなんて忘れかけてたが、実力者ばっかだろ……?

俺の『爆熱余波(メルトボマー)』を喰らって軽傷ですませやがるような、

末恐ろしい集団だ。

とにかく、俺は見つかるわけにはいかねぇ!


俺はそそくさとその場を後にした。






「おい、貴様。」

「なんのつもりだ。九条?」

「貴様が1位で俺が2位なのが許せない。」

「ふざけるな。宮ノ小路様の厳正なジャッジにミスがあるとでもいいたいのか?」

「宮ノ小路様を疑うつもりはない。ミスがあるとすれば、貴様らの混入だがな。」

「……そうか、1位の前任か。」

「いや、今もだ。貴様に俺が負けるはずがない。」

「天狗の心に駆られるとは、愚かな……。俺も貴様に負ける気などしない。」

「なんだと……?」

「確かに、俺はお前は強い部類の人間だと思っていた。

今存在する人間の中でも特に上位のな。だが、違った。お前は殺す力は強いが、

所詮強いだけだ。子供だましで通じる世界でどこまで調子に乗ってきた?」

「ここで始末してやってもいいんだぞ、東条?」

「……ここは、宮殿の中じゃない。外なら能力は使ってもいいのか?」

「好きにしろ。」

「そうか、少しだけなら遊んである。」


ドゴォッ!


「能力者の戦いだ!」

「やばいぞ! 九条と東条だ! 逃げろ!」

周りがあわただしくなってきた。

「いよいよか、ヤルとは思ってたぜ。」

九条が我慢できるはずがねぇ。だが、あの東条って男も雰囲気はヤバイ。

九条でも、無傷で勝てる相手じゃない気がする。

俺でも九条にはかすり傷一つ入れるのは難しいが、九条がてんぱってまで

突っかかるほどの相手だ。下手するなよ、九条……!!


戦いの波は激しくなるばかりで収まりを知らなかった。

今日は夜までこのままか。流浪っていってたっけ。あいつら。

あいつらは何も知らないんだったよな。怪我しなきゃいいけど……。

宮ノ小路の部下による外伝的なストーリーはここでおしまいです!

次からは普通の物語に戻していきたいと思います!


なかなか話数が開いてしまったのでお忘れになっている方も多いと思いますが、

続きは過去に戻ります(They wait upon for the QueenⅡまで)!

そこの描写が最後となっておりますので、そこから続きますので、

何卒、よろしくお願いします! 感想、評価も随時受け付けております!

 

PS.PV80000HITS! 皆さまのおかげです。ありがとうございます!

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